ほのぼの学園物語 作:ゴリラ
「……ん」
差してくる陽射しに目が覚めます。
まだ眠たいけど今日は遅れるわけにはいきません。
ふらつきそうになる身体を腕で支えて身体を起こし、ベッドの上に膝立ちになってからカーテンを開けて窓を開けます。
すると入ってくる風が身体を通り抜けて部屋の空気を外の空気とが入れ替わります。
朝の空気は冷たくて身震いしてしまうけれど、冷えた風は残っていた眠気を覚ましてくれます。
「ふふっ、いい天気です」
空を見あげれば雲一つない青空。
今日の事を考えると緊張で胸が苦しくなってくるけれど、何だか今日はいい日になりそうな予感がします。
「今日も一日頑張ります。えいえい、おー!」
小さく手を挙げて気合を入れます。
……やっぱりちょっと恥ずかしいですけど最中ちゃんに言われた通り気合が入ります。
「高校生デビューです!」
今日から私は高校生になります。
ちょっとの楽しみと多くの不安を胸に抱いて、今日も一日スタートです!
「……取り敢えず朝ご飯を作りますか」
時間は……朝の6時。
今日も健康的な時間に起きる事が出来ました。
早寝早起きを心掛けることは大事です。
「……少し、緊張します」
もう眠気は完全に覚めました。
あとは朝ご飯を作りに行くのですがまだやる事があります。
目の前に掛かっているハンガー。
そこには黒いブレザーの制服が掛かっています。
これは今日から私が着ることになる学校指定の制服で近所からは可愛いということで評判も良いらしいです。
首元にあるリボンがお洒落で普通とは違って大きいのが特徴らしいです。
私はそういうのがあまりよく分からないのですが偶に見かけるこの制服を着た女子高生さん達が胸の前でリボンを友達同士で見せあったりしてる風景があります。
私が着ると前からはちゃんと見えなさそうかもしれないのがちょっと残念です。
「……すーはー……」
何だか緊張してきました。
これから私はこれを着て学校生活を送るんですよね……大丈夫でしょうか?
……取り敢えず制服を着てみます。
話はその後です。
部屋の鍵が掛かっているのをチェックします。
この前に瞬くんが寝惚けて部屋を間違えて私の部屋の扉を開けた事があります。
その時に鍵をかけ忘れていたのですがその時に私は着替えをしていてそれを見た瞬くんは顔を真っ赤にして挨拶をする前に出て行ってしまいました。
弟なので恥ずかしくはないのですがそれ以降部屋の鍵は閉めてほしいとお願いされたので確認しておきます。
「……よし」
ちゃんと掛かっています。
それでは……着てみましょうか。
来ているパジャマのボタンを外して上を脱ぎます。
勿論畳んでおくのは忘れません。
ズボンも脱いで同様に畳んでおきます。
この二つは後で洗濯機に持っていくとして、これから私はこれを着なければいけません。
しかと目の前を見据えます。
そこには相変わらず悠然とした姿で佇む制服の姿。
何か威圧的なものも感じる気がします。
「……ふぅー」
……よし。
私は別のハンガーに掛かっているスクールシャツを着ます。
この学校は男女両方とも襟の所が何と言うのでしょうか、とんがっていて中学の頃は丸かったので何処か新鮮です。
「……少し……キツい感じがします」
これはいつもの事なのですが服を着ると少し窮屈に感じます。
どうしようもない事なので仕方ないのですがスクールシャツということもあってサイズが一定のしかありません。
少し高くなってしまいますがやはり大きいのを作ってもらう方がいいのでしょうか?
次はスカートを履きます。
下から履いてボタンを止めてチャックを閉めます。
勿論膝より下の位置までの長さにしています。
膝上15cmとかにしている子を見ているといつも恥ずかしくないのかとこちらがドキドキしてしまいます。
最後にブレザーを着てボタンを止めたあとにリボンをつけます。
「……よし」
鏡の前で確認しておきます。
どこか解れていたり形が整っていないという所もありません。
取り敢えずこれで目立つ事はないと思います。
「作りますか」
準備も終わりましたしあとは歯磨きと顔を洗ってから朝ご飯の支度をします。
瞬くんと私の分のお弁当も作らないとですしね。
「これでよし……」
無事に作り終わることが出来ました。
時間は7時くらいですか。
そろそろ瞬くんが起きてくる時間です。
「……おはよう、姉さん」
「瞬くん、おはようございます」
瞬くんの今の格好は起きたばかりという事がすぐに分かるようなパジャマ姿です。
いつもこうやって起きてきて朝ご飯を食べてそれから慌てて制服を着て学校に行くという生活をしています。
あと10分早く起きて制服に着替えればいいと思うのですがその10分が惜しいらしいです。
「「頂きます」」
今日の朝ご飯はシンプルに目玉焼きにウインナー、サラダにご飯とまるで教科書のイラストにも乗ってそうなものになってます。
私がこれから新しい学校に通うからでしょうか?どうにも気分が高鳴ってしまいます。
「……なぁ、姉さん」
「……?どうしたの、瞬くん?」
「あぁ、いやさ……俺……学校までついていくか?」
「え……?あぁ、大丈夫です。迷惑はかけられないですしそれに瞬くんの学校は反対じゃないですか」
「遅刻するから問題ない。それに一人だとどうにも不安で」
「ふふっ、ありがとうございます。瞬くん」
「……別に」
そう言うと瞬くんはそっぽを向いてしまいます。
それでも食べる手を休めないのは男の子故でしょうか?
きっとあの時の事を考えているのだと思いますが今は朝ですし大丈夫です。
「(あの時のもそうだが……姉さんはしっかりしてるけど変な所で抜けてるからな……あぁ、心配だ……道に迷ったりしないだろうか?)」
そんな感じで今日もいつも通りの一日は過ぎていきます。
「行ってきます、瞬くん」
「気をつけてなー」
「はい」
家の玄関まで見送りに来てくれた瞬くんに挨拶をして家の柵を開けて外に出ます。
我が家は一軒家ですが今は両親がいないので二人で生活するにはちょっと大きいです。
「おはようございます」
「あら、おはよう。美里ちゃんは今日から新入生だったかしら。その制服、似合ってるわよ?」
「ありがとうございます。佐藤さん」
近所の人と挨拶をしながら学校まで歩きます。
家から学校までは歩いて10分くらいなのでもうそろそろ着くでしょうか?
丁度直角になっている形で駅があるので制服を着ている人達が目立ってきました。
「……よし」
この学校は入試の時にも来ました。
けど……それでも大きいと感じます。
私立未来創造開発学園。
通称ミラ学は名前の通りに工業系なんてことは無く幅広い分野を取り扱っている学校です。
色々な系統の学校を合わせてみたかのような学校と言えば分かりやすいでしょうか。
普通とは違うこの学校はその敷地面積も普通ではありません。
確か東京にある有名なドームが敷地内に7……8個だったでしょうか?そのくらい入る程に大きいと聞いたことがあります。
学校見学に来た際も全部を見ることなんて出来ませんでした。
その広さ故か学校の教師ですらも全貌を把握出来ている人はいないやらなんやらで非公認で活動してる団体があるとか秘密の地下室があるとか代々受け継がれている秘宝があるとかいうはなしを最中ちゃんに聞いたことがあります。
「……頑張りましょう」
勇気をだして校門を潜ろうとした時、後ろから声がかかりました。
「あ、あの!」
「!……はい、何でしょうか?」
突然の知らない人の声に返事が小さくなってしまいます。
知らない人と話す時に緊張で上手く話せなくなるのを治したいのですが、上手く行きません。
「こ、これ落としましたよ!」
「……?」
そこにいたのはこの学校の男子制服を着た男の子で緊張しているのか顔が赤くなっています。
この学校はネクタイかリボンで男子女子分かれていて色で学年が分かります。
青色なので私と同じ一年生ですね。
やはり私以外の方達も緊張しているのでしょうか、それが分かると何だか少しほっとします。
この方の手に載せられているのは……私のハンカチ?ポケットから落ちたのでしょうか?
「ふふっ」
「……へ?」
「ありがとうございます」
何だか同じ様な気持ちの人がいてくれたことが嬉しくてつい笑ってしまいました。
その時、風が吹いてきました。
何だか優しい風です。
髪を手で抑えながら空を見あげます。
やっぱり今日はいい天気です。
「それでは、失礼しますね?」
「……あ、はい……」
「拾ってくれてありがとうございます。えっと……」
「……み、幹也です。志楽幹也……」
「……幹也さん、ですね?私は湊美里と言います。ありがとうございます、幹也さん」
それでは、とお別れを告げてから校門を跨いで校舎に向かいます。
今日はいい日です。
朝からこんなにもいい人と会えるとは思いませんでした。
これからもこういう出会いが待っていると嬉しいです。
その女の人は簡潔に言って美少女だった。
身長は俺より低い。160くらいだろうか?
綺麗な艶がかった黒髪を背中辺りまで伸ばしていて前髪は少し長く目元が少しだけ隠れている。
正に文学少女といった雰囲気を持っている人だが特徴なのはその胸だった。
他の女子はリボンが揺れているがこの人は揺れていない。
何故か?
それはリボンが胸に乗っているからだ。
これではいくら風が吹こうと揺れることはないだろう。
この人は美少女でもあるけど同時にエロかった。
そんな人がハンカチを落としたのを見た時に俺は運命を感じた。
これしかない……と。
すぐさま俺はハンカチを拾って声をかけた。
その人の声は正に文学少女といった感じで間近でみればその胸は更に偉大で緊張で顔に熱が集まってくる。
気づかれたやしないだろうか?
「ありがとうございます」
その言葉を聞いた時に、俺は胸とかそういったものをすぐに忘れた。
その人の微笑みは美しかった。
俺が穢れた存在だということがすぐに分かるほどに。
風が吹いた。
髪を抑える彼女の姿は女神の様だった。
あとの事はあまり覚えていない。
はっきりと覚えているのは湊美里という名前だけ。
そういえばあの時は周りにいた人は全員彼女の方を見ていた気がする。
それ程までに彼女は美しかったという事だろう。
「あぁ、今日は最高の日だ」
俺は今日が人生のピークなのだと悟った。
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