なお参考までに本文中の鍵括弧については、「」が日本語のセリフ、『』が朝鮮語のセリフとなっております。
それではお楽しみください!
『はっ。申し訳ございません…。それで議題とは何でしょうか…?』
しまった。つい考え事に没頭してしまい、周囲の話を何も聞けていなかったのだ。自分はまぁまぁ偉い立場の方で心配はあまりないだろうが、それでも処刑されてしまうのではないか、という不安に常に襲われている。
しかしやはり心配は無用のようだ、周りは笑顔で応答した。
『ははは、大丈夫だよ』『どうした?寝不足か?』
北朝鮮は、思ったより悪い国では無いのかもしれない… そんなことを頭をよぎった。しかし、そんな考えは束の間。次の言葉でその考えは完全に消え去った。
『それでだな……お前達を呼び出したのは他でもない。いわゆる、工作部隊を日本。日本の東京に送って欲しいのだ。』
こ、こ、工作部隊……だと?! 噂には聞いていたが、やはり本当だったのか。しかしなぜよりによって東京なのだろう。そう思っていると、丁他他の人が質問をした。
『は。それによる目的は何でありますか。』
最高指導者はすぐに答えた。
『実はな……。これはお前達を信用して言うのだが……。』
そこで彼は一息置いた。
『我が国がー、米国や日本、南朝鮮を初めとする国々に制裁という名目で輸出入を禁止されているのは、当然のことながらご存知であろう? このままでは、国の存続さえ危ないというのが、正直に言う所の、私の意見である。私も……こんなことをしたい訳では無いが、戦争を……始めるしかないようだ。この判断は、非常に難しいものだったのだが……。そこでだな、新しいミサイル……実戦に向けたミサイルを作るんだ。今までの実験用とは大きく離れた、戦闘に向けたそれをな。そのためには、日本の東京。そこには、ロケットを初めとする飛行物体のプロフェッショナルがいるということだ。それを拉致するのが、今回の作戦の概要だ。』
なん……だと……?!? 頭の中が真っ白になった。ということは、近い将来日本にミサイルが飛ぶ…のか。これは何としても阻止しなければいけない。友人、家族、恩師……そして、なにより一億二千万の国民を守るためにも。しかし、この場で最高指導者に逆らっても、無駄なことは十分わかっている。だとすると、しかし現実的なことではないが…。最後の手段、暗殺。やはりその二文字を頭の片隅をよぎる。
どのような方法で彼の息の根を止めるか…… それには、それなりの準備も必要だ。なにしろ、いくら彼を斃した所で、周りに見つかっては元も子もない。あくまでこの作戦は完全秘密裏に行われなければいけないのだ。となると、当然完璧な計画が必要となるわけで……
なぜか、こんな状況でワクワクしている自分がいるのに気づいた。今までの、つまらない、色のない生活。そんなのとは打って変わって、こんなスリル満点状況に来たのだ。なるほど、こんなのでワクワクしない訳がない。思い立ったら、すぐに立てだ。会議を上の空で聞き流し、颯爽と自らの部屋に戻った。
机の上に、大きな紙を広げる。それは、最高指導者を中心とした権力図であった。
「なるほど…ふむふむ…」
重要な人物にマーカーで線を引いたり、丸で囲ったりをして、情報を整理していく。そんな作業を繰り返しているうちに、段々と状況が掴めてきた。
まずは、周知の事実である通り、この国の実験は最高指導者が握っている。これは当たり前のことだ。スルーして次に進む。そして、次は…… コイツだ!いつも最高指導者の隣に居て、おそらくこの国のナンバー・ツー、
コイツとの敵対は、最高指導者の命を狙う以上、避けられないことになるであろう。それに関しては、また計画を立て直す必要があるな。様々な書類を机に並べ、夜も寝ずに考え続けた…。
翌朝。昨夜考え続けていたことを、実行に移す。最初、早すぎないか、などとも考えもした。しかし、これは一刻を争う事態なのだ。早ければ早い方がいいだろう。だが、肝心の方法には、かなり迷った。が、何度も何度も考えた挙句、やり易く、また確実な方法を導き出したのである。
只今の時刻は5:24。彼の起床まで あと6分―――
それまでに、全ての準備を終わらせなければならない。部屋に籠り、大急ぎで準備をする。そして、全ての用意は終わった。後は起床を待つだけである。
カチッ カチッ
時計の、時を刻む音。それが、不気味なほど静かな部屋の中に響き渡る。それに合わせてか、自らの鼓動も聞こえてくる。不安なこととは、考えれば考えるほど心配になっていくというものである。大丈夫だ。そう自分に言い聞かせ、落ち着かない気持ちを抑えようとする。
カチッ カチッ
5:29。これから起きる出来事に対し、不安と期待の入混ざった気分だ。
カクッ
分を刻む、針の音。いよいよ実行の時。部屋を出て、真っ直ぐ李の部屋へと向かう。計画通り。彼は部屋の外に出ていた。声の震えに気を付けながら、そっと声をかける。
『おい、廣佑。いい煙草が手に入ったんだぜ…!吸いたくないか? その名も メ・ビ・ウ・ス!本物だぜ?あの日本製の!』
『ナニ?!それは本当か、庾信!!』
素晴らしい。何から何まで計画通りだ。
『そうさ。気になるなら着いてこい!あっちの部屋で渡してやる。』
そういい、オレはあらかじめセッティングしておいた部屋に、彼を上手く誘導する。そして、ドアの鍵をしめる。準備完了だ。
『おい!早く見せてくれよ!』
彼の言葉に、敢えて反応せず、黙って見つめる。深く深呼吸をし、ポケットに手を入れる。
『なんだ?どうかしたのk』
パァン!!
早朝の平壌に、乾いた銃声が響き渡る。
『おまえ…ゆ…庾信… 何の…真似だ……』
意識を失いそうになっている彼を見つめ、冷たく声をかける。
『オレは金庾信なんかではない。 祖国を愛する、普通の日本人だ。』
彼は、驚いた顔をしながら、しかし喋る体力もないと言った表情で、何かを伝えようとしながら、やがて息を引き取っていった。オレは軽く手を合わせ、彼の亡骸を持ち上げ、窓の外に待機してあった、ゴミ収集車目掛けて投げ入れる。これで全てが終わった。
まずは一人目。民主化の道へと、一歩踏み出した。
どうでしたか?用事があり、久しぶりの投稿でした。文章力が下がってないか心配です…
恐らく次のは今週中にだせると思います!感想や評価貰えるとほんとに嬉しいです、励みになります。