ゆるキャン△ 〜岸辺露伴は止まらない〜   作:苗根杏

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メリクリ。あけおめことよろ。バレンタインデーキッス。


エピソード#p(10)=42*:星夜プラチナ

「少し早かったかな」

「他のみんなは来てるらしいですよ〜?」

「そうか……ん?」

「せんせー、ちくわと遊ぶ?」

「さ、『斉藤恵那』ッ!」

「やだなあ、身構えないでくださいよ〜。とって食べる訳じゃないですから。紹介しますよ、チワワのダニ…ちくわです。私の愛犬なんですよ〜?とっても利口ですし、決して人は噛みませんから」

「違うッ!そういうのを言っているんじゃあないんだッ!『何故ここにいる』!」

「クリキャンですよお」

「だから違うんだッ!何故ぼくの居場所が分かったんだッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぼくの名前は岸辺露伴。今の住所は富士河口湖町だが、かつては……というほど昔の話でもないが、M県S市杜王町に住んでいた。

 

 あそこもキレイな街だったさ。しかし今は、キャンプや山に惹かれてしまってね…。

 

「あの子はこうして…ほいっ」

 

 斎藤の飼い犬───ちくわはうさ耳のカチューシャをノリノリで付けてもらい、曰くなでしこ達のいる方面へ走らされていった。いや、走るのもノリノリだった。

 

 思考回路を斉藤と繋いでいるのかもしれない。リンくんに見せてもらったものでは、同じような表情で、同じような体勢で毛布にくるまって寝ていた。

 

 で、今度は斉藤から見せてもらった写真なのだが、リンくんがひたすらスモアを食べる写真である。

 

『スモア』焼きマシュマロとチョコレートをビスケットやグラハム・クラッカーで挟んだお菓子。キャンプでよく作られる。もう少し欲しい、という意味のSome moreが名前の由来。起源はハッキリしていないが、1927年のガールスカウトの本に載っているのが最古の文献らしい。

 

「で」

「ん?」

「ぼく達は歩いて行くんだな?こっから」

「そうですねえ。これを送って…と」

 

 ………別に覗き見の趣味はないのだが、リンくんとのトークルームのやりとりが、とてもフツーの女子高生とは思えないほどにレベルが高い。

 

 ノリが良すぎやしないか、リンくん。

 

「で?」

「…何がだよ」

「リンちゃんとはどうなんですか?」

「どうと言われても、仲はいいぜ?」

「『違いますよ』」

「…………?……」

「私は別に、お二人の今までの友情なんて『訊いていない』んですよ。リンちゃん、普段から露伴先生のことばかり話していますからね」

「何が目的だ?」

 

 くっ…………なんだッ。なんなんだよ。

 

 まずい!何かがまずい。こいつには、尋常じゃあない『スゴ味』があるッ!そう、既にこれは只の『質問』ではなく『尋問』ッ!

 

 思わず自分が唾を飲み込んでいるのが分かった。

 

「そう、私が『訊いているのは』……」

「『ヘブンズ・ドアァ───ッ』(天国への扉)」

「…『リンちゃんとの恋の進展』ですよっ♪」

「ブゥ───────ッ」

 

 自分の予測──こいつが、斉藤恵那が『スタンド使い』であるというものを大きく外れ、ぼくは思い切り吹くと同時にヘブンズ・ドアーを戻す。

 

 心当たり?

 

 無いに決まっているだろうッ!

 

「あ、もう見えてきちゃった……と!ちくわはどこだ〜?」

「………………」

「あれ?どうしたんですか先生。なでしこちゃんとリンちゃん見えてきましたし、行きますよ」

「あ、ああ。今行く…」

「……今度また、『訊きますからね?』」

 

 背筋を何かが走った。それは別に初めてのものでは無かったようだ。

 

 トンネルの中の部屋に閉じ込められ、養分を根こそぎ吸い取られそうになったとき。

 

 背中に取り憑いたモノに、極限まで追い詰められたとき。

 

 窓ガラスの破片が相手にひとつも刺さっていないにも関わらず、少し離れていたぼくの左手の甲に刺さっていたとき。

 

 スタンドをバラバラにされたり、敵に爆破させられたり…………自分の原稿を見ても操られないヤツを見つけたとき。

 

「ッ………………」

 

 なでしこ達の方へ行ってみると、ちくわが毛布の下へもぐってしまったのだそうだ。

 

「やあ」

「あ!せんせー!」

「おはようございます、露伴先生」

「……で、こいつは誰なんだ」

「ああ、説明してなかったなあ〜…」

「…………………?」

 

 説明すると長くなるというのだろうか。それとも説明するのを憚られる事情があるのか。

 

 それはともかく、ぼくは…我われは、この丸メガネを知っている。いや、この酔っ払い具合とこの鼾を知っている。

 

「焼き鳥の救世主の……彼女か?」

「いや、まあ。『そうですね』」

「オイオイオイオイオイオイオイ。『そうですね』じゃあ無いんだ…『なんでここに居るんだよ』」

「この人が『野クル』の『顧問』だからです」

「…………ほう?」

 

 ヘブンズ・ドアーを使いたい一心にかられているが、今は我慢しておくとして、こいつが………焼き鳥の救世主の彼女が、なでしこ、千明、あおいが居る野外活動サークルの顧問?

 

 さっきまでベーコンを焼いていた形跡が残ってやがる。酒のツマミにしては大きすぎる袋だが、もうその中に入っていたであろうベーコンはこの酔っ払いの腹の中だ。

 

 そしてこの酔っ払いが、いち教員であることが分かった。理解した。ああ、脳では受け入れられずとも、なんとか咀嚼して事実を飲み込む。

 

「だいたい分かった」

「それは何より」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 互いのキャンプ道具を見せあったり、フリスビーで現地の子供達(どこかの民族みたいに言っているが、ここの研修施設に来ている保育園の子だ)と戯れたりしている間に、かなり冷えてきた。

 

 さっきの子にもらったクッキーで全員、一旦休憩。お茶にすることにした。

 

「ごめんなさい、いつの間にか寝ちゃってたわ」

「おそよーございます」

「気持ちよさそうに寝てたよねー」

「あ、先生。ココア飲みますか?」

「ありがとう。『いただくわ』」

 

 メガネの内側には、優しそうに生徒を見守る、ごく普通の先生のような……いや普通の先生なのだろうが、ココアの中にラム酒をドバドバ注ぐ赤らんだ顔には、間違いなく『ヤツ』の片鱗が見えていた。

 

「っぱぁ〜〜〜〜〜〜。温まるわぁ」

「グビねえだ…」

「こんな人だったっけ」

「四尾連湖ではこんな感じだったよー?」

「だな」

 

 直接聞いてみるか?いや、しかしキャンプを続けるのに支障があるなら、あるいは───。

 

 くそっ。ゼイタクな悩みだぜ。好きなことの間に揺れ動くなんて…。

 

「おろ?あなたは………?」

「げっ」

 

 なッ!あ…『あっちから来たぞッ!』

 

「……また会ったな…」

「ああ、やっぱりそうでしたか。この前はどうも」

 

 根は常識人だな。

 

 否。ぼくは仗助達から多くのことを学んだ。根が常識人だとして、常識的な常識人だとして、それの裏には、知らない『何かがある』ッ。そしてそれには、必ず『譲れない何かもある』のだ。

 

 あのクソハンバーグを例に挙げれば、たとえぼくと康一くんぐらいの友情で結ばれた友人でも、そこらにいる名前も年齢も知らない……つまり赤の他人だったとしても、『髪型を馬鹿にされるとキレる』。それには…これは康一くんから聞いたのだが、まあ悔しいが、コレもマンガのネタになりそうないい話だった。

 

 ぼくだってマンガをバカにされたら少しは怒るし、ヘブンズ・ドアーを悪用して『今日一日で50回転ぶ』くらいは書くだろう。

 

「赤富士、キレイだね」

「ね」

 

 ……………………問題は、酒にこだわったりする理由や、酒に関するプッツンポイントが特に見つからないという事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず、鍋に牛脂を広げ、牛肉に軽く火を通す。次に砂糖、醤油、酒を入れてひと煮立ち。具材は榎、椎茸、しめじ、舞茸、ナメコ、薷、松茸、ツクリタケ。

 

「キノコ鍋作ってんのか」

「嘘やでえ」

 

 まあ本当のところは椎茸、榎、葱、焼き豆腐、しらたき。春菊を乗せたら蓋をし、暫し待つ。

 

「正統派のすきやきだね」

「関西風やでー。あ、あき。スキレットでこの玉ねぎ炒めといてくれへん?オリーブ・オイルとにんにくなー」

 

 順調に夕飯の支度が整ってゆく。あとは全員でブランケットに包まり、夜景を眺めて待つだけだ。

 

「あ!!」

「うおっ」

「せんせー、山梨に引っ越してきたってホントですか!?」

 

 リンくんにしては大きな声を上げ、ぼくに顔を近づけてくる。

 

「マジか!」

「ホンマかいな!?」

「おおー」

「…まあな……富士河口湖町の精進湖に近いところだ。最近はバイクも買ったし、本栖湖のキャンプ場にも行ける」

「いいなあ、せんせー」

「あれ?なでしこは知ってたの?」

「えへへ、この前出かけた時に教えて貰ったんだぁ」

「……リンちゃんのみならず…」

「先生もすみに置いとけねーな」

「やなー」

「何の話だよ」

「またまたー♪あ、卵配っとくぜ」

「サンキューあき。そして出来たで…晩ご飯!」

 

 それぞれがお椀に卵を割り、かき混ぜる。

 

「それでは」

 

『いただきます。』

 

 それを言ってからの一同の箸の動きは、実にせかせかと忙しいものであった。




2話同時に更新します。私からのささやかなクリスマスプレゼントです。

三者懇談と、フォロワーさんの神引きへの嫉妬が生み出したものなので、こう、期待とかはナシで。2話同時ですよ。あと数ヶ月はお預けかもしれません。次回ぜんぜん出来てません。ごめんなさい。
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