まず、椎茸。卵のねばついた白身が絡んだ、それでいて清らかな茸が、舌に、腹に入り込んでくる。
次に焼き豆腐。ホロっと、砕けるとはまた違った…解ける。そう、自然にヒモの両側を引っ張って互いが離れゆくような感触だ。
そして肉、単品で行くぞ。
「んー!!」
「肉うまーっ!!」
……こいつらのリアクションで大体分かるだろう。美味すぎる。
全身で表現するタイプ、黙々と味わうタイプと反応が7人の中でバッチシ別れている。そして顧問こと鳥羽先生は、すき焼きに合う日本酒を忘れて号泣している。
「こうやってお鍋囲んでると、日本の年末!ってカンジするよねえ」
「全くないってわけじゃあないが、珍しい経験ではあるな…」
「女子高生とご飯?」
「…まあ珍しくはあるが、違う」
「じゃあ女子高生とキャンプ?」
「……そういうことでいいよ」
「あ、先生のサンタさん衣装忘れちゃった」
「着せる気だったのか!?」
「やだなあ、冗談ですよお」
ほっ、と胸を撫で下ろすぼくの予想とは裏腹に、斎藤がカバンから取り出したのは、トナカイの衣装だった。
しぶしぶ。と言葉に出そうなぐらいにしぶしぶ、ぼくはトナカイの衣装を身にまとう。
「っはははwwwwww」
「くくっ、く……んふふ」
「写真!みんな写真撮って!」
「やめてくれェ〜ッ…」
そうこうしている間にも、すき焼きの具が無くなってきた。
そこで登場するのが、『トマト』だ。先程炒めた玉ねぎをバジルと一緒に、トマトを火にかける。そして鍋に加えれば…『トマトすき焼き』が完成する。
まさに和洋折衷。同じ空間にさくらももこと尾田栄一郎が一緒に居るような、しかし違和感はない。切り分けた果実の片方だったかのような、『ベストマッチ』。
「反則的だっ……!」
「ワインが合うのにィィィ」
「また忘れたんすか」
「あ、チーズパスタあるで?」
「はーい!!私!私まだ食べれるよ!」
「すごいなお前…」
「一口だけにしとこー」
「ガスある?」
「あっ!?替えのガス持ってくるの忘れたッ」
「先生のバーナーのガスは?」
アウトドアに使われるガス缶は、ふたつ。2種類ある。
カセットボンベ缶(CB缶)。
アウトドア缶(OD缶)。
カセットボンベ缶の方は、スーパーや百均なんかにも売っている。ようは、手に入りやすく、安価だ。
アウトドア缶はというと、ランタンなどのアウトドア用品には大体対応できる。クッカーにも収まるし、携行性もメリットのひとつだ。
問題は、対応していても、もうひとつの方もガス切れしていた場合のことだ。
「明日の朝ごはん、作れない…!?」
「なんだとッ」
ヤバい……本格的にヤバいぜッ!
ハッキリ言うが、なでしこの料理はマジに美味い!上手いのだッ!
それが食えないとなれば、死活問題でもあるし、第一キャンプの魅力が半減じゃあないかッ!
「じゃあ…」
「……はぁ」
「「ちょっとコンビニ行ってくるよ」」
「………ん?」
「はぇ?」
「えっ?」
リンくんと同時に立ち上がり、なんとなく気まずい空気に。
「…FORZA siは2人乗りだ」
「じ、じゃあ……行きましょう」
「ありがとー2人とも…ひぐぅぅ」
「泣くなよ。朝ごはんのために行くんだからなッ。別にお前のためじゃあ…」
「あ、じゃあチューブ生姜も!勿論お金は出すからねっ!」
「はいよ」
「じゃ、あたしグミー」
「ミント系のガムお願い」
「板チョコ食べたいなあ」
「調子に乗るなよお前ら」
「あってしにほんしゅうー!!」
「買えないことは無いが…ふむ」
皆のいってらっしゃいの声援を背中に受け、リンくんを後ろの席に乗せる。ビーノならば往復20分はかかるだろうが、これなら少しは時間短縮になるだろう。
そして無事、買い物終了。ヘルメットを再び被る前に、リンくんに訊いてみる。
「なあ」
「何でしょう」
「どうだい、大勢のキャンプは」
意図はほぼ無いと言っていい。無言が気まずかった訳でもなく、興味本位だ。取材でもあった。
「……悪くは、無いです。先生やなでしことキャンプをするようになってから、自分の中でも…何かが変わった気がします。なかなかどうして、皆でッ!とか、一緒にッ!っていうのが、前までは苦手…嫌いでした」
「というと?」
「気を使ったり、ずっと話してなければダメだって思っちゃったりするんですよ。でも、『さっきのみんなは違ったんです』」
「……違いっていうのは、どういう?」
「それが、私にもよく分からないんです。何故あのメンバーだと良いのか、よく────」
ぼくだって、分からない。人を好きになる理由。人を嫌いになる理由。寄り添っていたい理由。距離を置いていたい理由。
「それは、『気を使わずに喋れたり、話すことが沢山あるから』じゃあないか?」
「!!」
それは、『理由なんて無いからだ。』
そんなものは無い。存在しえるものではない。しても、認識などできないだろうから。
「苦じゃない。嫌いじゃない。ただそれだけなんじゃあないのか?リンくん」
「………………単純、ですね」
「単純でもいい。それが、納得できる結果ならな」
至極シンプル。たったひとつ。それは、惹かれあったからだ。それからなんだ。自然に好きになっていくのは。
ぼく達は、まるで『スタンド使い』かのように、惹かれあったのだ。
「………漫画……かかなきゃなあ……」
「先生が酔ってる!?」
「日本酒買ったの、失敗でしたかねえ」
「なんだとー!酒は百薬の長だぞー!」
「別に薬使わなくても良かったんだけどなあ、先生」
「ハハハ…ぼくの漫画が、日本一なんだ……」
「ちょっ、それ箸!」
「おぉりゃぁぁぁッ」
「……………………!?」
「どっ!ドリッピング画法!?コーヒーで!」
「しかもこれ、『ピンクダークの少年』の…!」
「ふへへぇ、リンくん…」
「な、なんすか……ってか酒くさっ」
「あけましておめでとう」
「はええよ…」
温泉に入り、ある程度酔いを覚ました。
「リンくんが、沢山いる…?」
「いーなー!私もやりたーい!」
「露伴先生もしまりん団子、やります?」
「いや、いい。それより何だそれ」
「しーっ。しまりんサボテン作ってるの」
「何だそれ」
笑いを堪えながらも写真を撮ると、ドヤ顔のなでしこが真ん前に写っていた。
「はーダメ!もう無理っ!」
「破壊力やべーなコレ!」
「なんじゃこりゃぁぁーっ!!」
いくつか写真を撮り、その後焚き火を囲んでココアを飲む。
こうして全員がいるのは、また全員がかかわり合い、まじわり合い、そして惹かれ合ったからなのだ。感慨深さを心から実感し、そして運命という壮大なスケールの、漠然とした。しかし体感できるようなものに触れていることを感じる。
「よしお前ら!夜はこれからだぞ!月額1280円の力を見せてやるー!」
「何見るー?」
「ニセコイ!」
「時計じかけのオレンジ!」
「アマゾンズー」
「鉄血のオルフェンズッ」
「よし、間をとって水曜どうでしょうだ」
「おいパイ食わねえか」
「それグミだよ」
「きくねりー!」
朝日が昇る。
富士山の右肩から顔を出し、さっきまでなでしこの絶品料理に向いていた7人の視線が、一斉に向けられる。
「まぶし」
「だねえ。あったかい」
「…よし、食べ切っちゃうぞー」
「片付けがんばろ!」
「年明けのバイトもね」
「テスト……」
「原稿…(実は余裕)」
「…………あー!おみそしるおいしいー!」
「納豆おいしー!」
「逃げるな」
「ふぇぇええええ〜〜………」
年が明けて、程なくして僕に助けを求める旨のメッセージが来た。
勉強会、かあ。
←テレビアニメ1期篇
ゆる岸△オリジナルエピソード篇→
To be continued…
平ジェネ行きたい。いや、ピクサーオタなのでシュガーラッシュオンラインも楽しみましたけどね。