とにかく、今回は『前編』です。これを言ったからには後編を作らなければならないので、自分に枷を負わせるつもりで書きました。ということで、4ヶ月ぶりぐらいの新作をどうぞ。いやマジですまん。
エピソード#√144:番外ゼンペン
「ここがセンセの住んでる山梨か?」
「そうだぜ。富士河口湖町、近くにフジキューなんかがあるらしいぜ」
「ああ、絶叫マシンの巣窟とかいう……ってかもう観覧車とかコースターが見えてるよ。ディズニーなんかとは違ってモロだしだね」
「杜王町より田舎ってわけでも無さそうだけど……にしても空気が美味しいね」
「オレらの町とは違った魅力がある、って露伴は言ってたが……確かに360°山に囲まれてるってのは中々ねーよな」
「確かに! それにあの武田信玄公像、テレビで見たよ!」
歴史に弱い……いや、頭の弱い億泰は武田信玄公と聞いてもピンと来ないようだが、歴史に弱いオレでも確かにテレビかなんかで見たことはある。
オレ───東方仗助と、いつものメンバーこと広瀬康一、虹村億泰は、あの売れっ子マンガ家(笑)の岸辺露伴が引っ越したという山梨県に来ていた。途中で立ち寄った甲府周辺を見るに、それなりに都会なところもあるらしい。
しかし、寒い。正月近くの冬休みを利用してやってきたので、ここは冬真っ盛り。本栖湖の温度も摂氏4度。水深は富士五湖でいちばん深いし海抜が低いせいもあるのか、凍ってはいないが……他の富士五湖はほぼほぼ凍っていたりする。
「……で、ネットで見た情報だけだと、キャンプ場で目撃情報があったらしいね」
「何考えてんだかなあ、ホント……」
「とりあえずマトモに宿は取れないし(サスガ、外人も多くいる観光地……)、キャンプでもするか? マップで見る限り、ここなら空いてるし」
「本栖湖……だね。仗助くんがキャンプ道具持ってこいって言ってたのはこれかあ」
「おう、こんな寒空の下でキャンプするんだ。気合い入れたぜェ〜」
「オレは家にいくつかあったし、ジラフを買っただけで済んだぜ」
「それもしかしてシュラフ?」
「そうとも言うッ!」
とはいえ、腹ごしらえは肝心。歩いて行ける範囲内に、どうやらステーキ屋があるらしい。クチコミじゃあかなり評判はいいが、個人の店だしなあ。不味かったら黙って出ていくからなと意気込んで歩く。
「……ねえ」
「お?」
「どうして学ラン着てるの? 北国生まれとはいえ、防寒はしっかりした方が……ってゆうか、夏もずっと学ランだよね? 仗助くんと億泰くんの私服、見たことないなぁ〜って」
「オレらもそこら辺はキッチリしてるぞ。夏は汗を吸う半袖もしくはタンクトップ、冬はこの通りヒートテックだ」
「夏は下に何も着ねーけどよォ────……兄貴や仗助も着てる、そのビートたけしってやつは着てるぜ」
ヒートテックな。10秒前に聞いたやつも覚えられねーし、近代の言語にすら弱いとかそこらの偏差値20のDQNとタメ張れるぜ。
「お、おお……意外としっかり対策しながら着てるんだね」
「当たり前だろッ! 学ランは学生の特権だぜ? キチンと着こなさなきゃよォ〜」
「着こなすっていうのは、普通はピシッと行儀よくすることなんだよなあ…………改造に改造を重ねたその学ランじゃあ、学生というかもはや暴走族に近いというか、そもそもガタイが学生離れしすぎなんだよ2人とも」
「体格については康一が言えたことじゃあねーだろッ!?」
「ぼ、ぼくは一周まわってというか、逆にというか……ネッ?」
そうこうしているうち、それらしい建物が見えてきた。湖沿いを歩くこと十数分。景色もいいし、喋りながら歩いてるとあっという間だな。
サーフボードで出来たベンチに、『営業中』の看板。例のステーキ屋だ。
「おお、雰囲気あるぜ」
「不味かったら全員で出ようぜ」
「ちょ、店先で失礼だよ」
「いらっしゃいませーッ」
「あ、3人です」
「はーい、そちらのお座敷へどうぞー」
テーブル席がいくつか、座敷が横長に7畳ほど。客席のスペースはそんなところか。待ち時間用に週刊少年マガジンなんかも置いてある。すぐさま入口と同じ店員がおしぼりやらお冷を運んでくる。
メニューを覗いてみると、ランチ限定のステーキ……930円? ステーキで1000円以下って、なかなか珍しいな。ソースも醤油やらガーリックやらがあるし、ライスもついてくる。なかなか良さげだ。
「オレ、このランチセットにするわ」
「じゃあオレもそれッ!」
「ぼくもそれにしようかな。けっこう安いし」
「さーせーん。注文いいっすかァー」
「はーい!」
3人でだべりながら待っていると、割と早く3人分のステーキと大盛りライス(+50円)が机の上に置かれた。
醤油を頼んでみたが、いい匂いだ。バターとレモンも乗っている。
「じゃ」
「うん」
「おう」
『いただきまーすッ』
1時半ということもあり、割とがっつく3人。しかし一時的にその手が止まる。まだ一口しか食べていないのに、だ。
「……!!」
「な、なんだこれ……」
「……これはすげえぞ」
「ゥンまぁぁぁ〜〜ィいいいいいッ」
「代弁してくれ! 億泰!」
「うむ……ハッキリ言ってそこまで期待をしていなかったオレをぶん殴りてえッ! 若干赤さの残った肉の中に、これでもかと言うほど主張をする醤油のうま味ッ! そして一口、もう一口とダイエットをやめられねー主婦みてーにフォークを進めてしまうのは、この固めのライスだ! こいつが全ての元凶! 零れたソースが染み付いたこのライスを平らげるなんざ、セミの抜け殻を親指と人差し指だけで砕くみてーに造作もねえッ! それだけ『クセになる』!! そこにレモンとバターでサッパリ味も加えるだとォ〜〜!? カラアゲにレモンなんかは賛否両論だが、この元々アッサリした味付けの醤油味のステーキには鬼に金棒ッ! バッハにピアノだぜッ! よりキレが増して、『合う』味付けになる!!」
「つまるところ?」
「んまァいィィィイイィッ!!」
そうだよな、そうだよな。その一言に尽きる。
「お、おい……なんだよ、コーンとグリーンピースの中に『小さくカットされたニンジンが混ざってやがる』!」
「……普段はこんな固い白米は食べないけど、何故か合うね」
「たぶん肉の感触とマッチしてるんだぜェ〜」
「………………もう他のステーキ食えねえな」
「こんなリーズナブルな値段で? ホントにシャレにならないよ、露伴先生が居着くのも無理はない……」
「……フゥ〜〜〜〜ッ、食った食った……」
「はやっ! ……と言っても、ぼくももうすぐ食べ終わるんだけどね」
トニオさんとはまた違った、和洋折衷っつーか、テーマが定まっていないからこその『綺麗さ』『美しさ』があるんだな。トラサルディーは、キッパリしたイタリア料理。このステーキ屋は、『独特』かつ『新鮮』なんだ。
「ごちそうさまでしたッ!!」
チクショーッ、最初こそ不味かったら金なんざ払わないつもりでいたが、倍ぐらい払っていきたくなったぜ。
ステーキ屋から戻ってキャンプ場に入った時、丁度他のキャンパーとすれ違った。
「ついたー!! えいごリアーン!!」
「なつかしっ!」
「……お?」
「なんだ、アレ。キャンパーか」
「随分と重装備だね」
「マジ寒いからなー……オレらと同い年、もしくは中坊だな」
つっても、いろんな意味でオレらとは同級生には見えんな。原因は主にオレたちにあるんだが(本当にいろんな意味で普通の高校生とはかけ離れている)。
「ピンクの髪のひと、メガネのひと、眉毛がすごい人、露伴先生……」
「…………おい康一、今なんつった?」
「いや、だから『露伴先生が女の子とキャンプしてるみたいだよ』?」
「バカ!! さりげなくとても受け入れ難い事実をいとも容易く受け入れてんじゃあねーぜッ!」
「え、えっ!? いや、そりゃあジャンプの人気漫画家が女子高生と寝食を共にしているなんて、スキャンダルものだけどさあ」
「ぐぅぅぅ〜ッ、あんな漫画キチガイでもハーレムだと……! 最近のルフレみてーだぜッ!」
「おい億泰、いつからファイアーエムブレムの話になった……?」
「多分、ラノベのことだと思うよ」
「……とにかく、あの眉毛の主張が激しい人は見たことがある。知り合いかな?」
「知ってんのかよ康一!!」
「あ、一応由花子さんには教えないでね?」
当たり前だ。あのメンヘラ、康一が他の女と知り合ったとか、何やらかすか分からねえぞ。主に女の方が被害者になるだろうが。
とにかく知っているなら話は早いが、どうしてあんな女子と露伴のヤローが? 根本的な問題は解決してねー……。
「…………おい、アイツらもここでキャンプをするんだよな?」
「え? ああ、そうみたいだけど」
「ならよォ〜〜ッ、やることは……」
「1つしかねえよなァ?」
「……まさかとは思うけど……」
「「そう!! 『パパラッチ』!!」」
「…………だから気に入った」
To be continued……
3000文字くらい書けてよかった。
これは後に活動報告かなんかに詳しく、というか長ったらしく書きますけど、高校に無事入学しまして。で、リアルに忙しくなります。こればかりはモチベとか関係ありません。半年に1回更新とかにもなりうるので、できるだけサボらずにやりたいです。
あ、そういえば古代の機械の他にも儀式青眼組んだんですよ。でも亜白龍が高くて高くて。仕方なく閃刀組もうとしたらそっちも高いのなんのって。もう財布のライフポイントはゼロよ。