予想以上に勉強やら部活が忙しいです。演劇の台本とか書いてたり、キャストもやってたり、音響もいじってたり、二次関数でつまづいたり。ラジバンダリ。
ぼくの名前は、岸辺露伴。職はマンガ家、趣味は取材と……これは本当につい最近のことなのだが、『キャンプ』にハマっている。
「…………人造人間、インフレしすぎじゃあないか」
「だよねー……超サイヤ人のベジータとトランクスを軽くあしらって……」
「お前ら、いつの間にZの138話まで見たんだ?」
「えへへ、先生の家に置いてあって……」
「……なでしこ、お前…………」
「先生の家に行ったん?」
「うん! 近くにあるし、見に行こうと思ったら泊まりになっちゃって……」
引っ越してから少し経って、年明け早々に野クルからキャンプに誘われた。勿論仕事も済ませていたのでのこのこ取材……いや、今回は普通にキャンプをしに来た。
今回は野クルのみが参加。リンくんや斎藤さんはおらず、あおい、千明、なでしこの3人だ。
ちなみに新居には買い戻したDVD(先述のドラゴンボールZとかはマンガもある)やら仕事道具は一式揃えてあるが、前に比べると少し殺風景な気がする。写真でも飾ってみるか? 最近ドラゴンボールを見直したからな……どうせならセルのポスターなんかがいいな。確か甲府のらしんばんにあったはずだ、今度貼ってみるか。
「一人暮らしになったからな。今度はどこかの誰かさんが看病に来ても安心だ」
「じゃあ個人的に遊びに行くで〜」
「それとこれとは別な気がする」
「あたしも行くー! マンガ家のウチ見てみたいし!」
「私はもう一回行きたいなー♪」
こ、こいつら……図に乗りやがって……。
「……週末は取材に行かなければ、大体は空いている。来るならそこにするんだな」
「お、おお……これは『デレ』と認識していいのか?」
「馬鹿言えッ! 最近のラノベみたいな言葉を使うな! 君たちを読者……というよりかは、一人の友人として、認めただけさ。ふ……普通の事だろッ」
「せんせーっ!!」
叫ぶやいなや、なでしこが身体に引っ付いて、嬉しそうに頬をすりすりと擦り付けてくる。それにしても、意外に力が強い。
「ちょ、くっつくなッ! 犬かお前は!!」
「やっぱりデレやな」
「デレデレずら」
「国木田さん?」
「甲州弁だよ。ああ、なでしこはあまり知らないか……」
「静岡住みなら、まあそういう発想になるよな……」
「キャンプ場とうちゃーく」
「ついたー!! えいごリアーン!!」
「なつかしっ!」
「お前ら、よく外でそんな大声出せるよな。恥を持て恥を」
「そんなもの、山へ行けば誰でも捨てられるんだぜ。ほら、山登ったらやるやつ」
「やまびこ?」
「そう、それ!」
やらないやつ、割といるけどな。
今回キャンプ地に選んだのは、久しぶりの本栖湖。ぼくとリンくん、それとなでしこが互いに初めて出会った所。これがマンガや小説だとしたら、『聖地』って扱いになったりするのかな……そしたら現実の本栖湖には、リンくんやなでしこのステッカーを貼った車が沢山停まってそうだな。
まあ、この物語をマンガにするなら、間違いなくぼくは描くのに向いていない。
ホラー、ミステリ、スプラッタ。バトルものさえ入れている『ピンクダークの少年』や、昔描いた『ゴージャス☆ジョリーン』、『武装マージャン』、『魔少女ユーティ』などの作風が、ぼくの特徴だ。アイデンティティと言ってもいい。
今現在ぼくが体験しているぼんやりぬくぬくキャンプなんかは、描いたらクレームが来るほどに合わなさすぎる。絵からしてダメだ。それこそ、まんがタイムとやらの、最先端の『萌え』を取り入れないとな……。
「せんせー! ペグ刺すの手伝ってー!」
「折れやすいから気をつけてな」
「ちょーどいい石ころ見つけたでー」
「……今行く」
ぼくのイメージと違うからこそ、こんな趣味にハマったのかもしれんがな。
「マハリクマハリタ……ヤンバラヤンヤンヤン……」
「なんか、呪文みたいな歌やね」
「呪文なんだよ。正確に言えば、魔法の言葉。テクマクマヤコンやピリカピリララと同じ部類だ」
「ええ……何ひとつとして分からん……」
「……ジェネレーションギャップってやつか」
「億泰! おっきい石持ってこい! 露伴がウンチク垂れてたぜ〜! ペグを刺すにはでけえ石だってな!」
ふと、背中に悪寒が走った。例えるなら、朝起きてケータイのアラームがかけられておらず、予定より少し遅れて起きた時の『ヤバい……』感。
いや、そんなチャチなもんじゃ断じてない。もっと恐ろしいものの片鱗を味わった……吉良吉影に爆破される瞬間まではいかないが、少なくともトンネルの中の部屋に閉じ込められた時ぐらいには……。
「康一! そこ押さえてくれ!」
「こ、こう?」
「仗助ェ〜! でけぇ石持ってきたぜ〜!」
「あっぶな!? ちょ、それ岩だろ!」
「………………」
「露伴せんせー、どうしたの?」
「テントに入る。寒くなってきた。色んな意味で」
「スケッチはせえへんの?」
「夜やる。じゃ、仮眠」
「やーけにササッとテントに入ってったな……」
ほっとけ。クソっ、ぼくは絶対に顔も合わせないからな。
「…………で、テントを張ったはいいものの」
「どうやってあの『女子高生』をくぐりぬけるか、だよね」
「いろいろ心配してるようだけどよぉ〜〜……オレらも高校生だぜ? 余裕だろ?」
「……うちの学校の女子にも『殺される』だとか『命の危機』だとか言われてたヤツは誰だっけ?」
「そっ、それは仗助も一緒じゃあねーか」
「いやいやいやいや! その前に男の人が女だらけのテントに突っ込むのがヤバい!」
「康一はビビりすぎだ! お前は平凡な見た目だし(褒めてるんだぞ?)! それに隣のテントに話しかけるのは、キャンプ場では日常茶飯事ッ! ……たぶん」
「ちょっと待って! 今小さくたぶんって付け足さなかった!? たぶんッ!?」
「釣れてますか? みたいなモンなんだよッ! ホラホラ! 思えば、オレらならまだしも、康一なら喜んで受け入れてくれるぜ?」
「………………そう?」
「健闘を祈るぜ康一!」
「骨は拾うぞ康一ィ!」
「な、なんでぼくが行くコトになってんの! ねえッ! ちょっとッ!?」
「す、スイませェん」
「ん〜? ああ、隣のテントですか?」
「ま、まあ。どうも……」
テントの中で、身体が反射的にビクッと動く。ナマで聞くのは久しぶりだな……ガマンできずに一旦杜王町に戻ろうかとまで思った、この声。ぼくの親友、『広瀬康一くん』の声だ。100メートル離れたところでも間違えない。幼さを残しながらも、修羅場を乗り越えて少し張りのある声になった、この高校一年生の声……フフッ。改めて成長したなと感じるよ。
じゃなくて! やっぱり来てたんじゃあないかッ!!
しかもだッ!! あの『ハンバーグとアホ』も連れてッ!!
To be continued……
番外の後編はこれで終わりですが、本文自体は続くような描写ですね。ここから普通に本編に繋がります。ややこしくてスイませェん。
最近、執筆の楽しさに改めて気づきました。前みたいなボリュームは書けませんが、このくらいの短い連載ならペースも上げられそうですわ。これ以上遊戯王にハマらなければの話ですが。ドラゴンメイド、マジかわいい。