ゆるキャン△ 〜岸辺露伴は止まらない〜   作:苗根杏

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お久しぶりです。『岸辺露伴は動かない』実写化と聞いたタイミングで、もう疼きに疼いて書きました。

アニメ2期までに次の話は書きたいです。


エピソード#0.1×20:三人ソロキャン

 

 

 

 こんなに遅くに、2人がキャンプ場に来たのは、それなりの理由があった。

 

 なんでも、リンくんがソロキャンプに行くとの情報を手に入れた斉藤が、リンくんの後を追っていたとか。いつの間に手に入れたのか、アプリリアクラシック50の背中にキャンプ道具を載せて。

 

 そして、初めて原付で遠出をしたという斎藤恵那は語る。

 

「言葉で説明すると長くなっちゃうんですケドね……自分がハンドルを回す。それだけで走るんですよ、何十キロ、下手をすれば何百キログラムとある鉄の塊が…………」

「……ふむ」

 

 そう言うと、綺麗なブラウンの焦げあとに身を包んだ焼きマシュマロを口に含んだ。頬の上からでも分かるぐらい、奥歯で数回噛む動きをし、またその目は閉じられているものの、笑顔のそれであった。

 

 斉藤やリンくんは、こうして静かに美味いものを噛み締める食べ方をする。反面、千明やなでしこはというと、うまーい!! という感情を思い切り前面に出してくる。

 

 どちらにしても、見ている側からすれば、その美味しさを十二分に伝えてくれるようなリアクションではあるが。

 

「ええ……乗ったとき、一瞬で感じたんです。1秒となく……もちろん本当ですよぉ。喩えるなら…………知ってます? ものすごく高級なスープって、スプーン1杯で『鍋いっぱいの具材』を表現できるんですよ」

「はぁ……なるほど……」

 

 二口、三口。一言一言の間に、その口には焼きマシュマロが頬張られていた。『んん〜♡』と噛み締め、普段から緩んでいる表情筋を更に緩みきらせる。

 

「うわッッ……動く……!! みたいな感動を、私は一瞬で感じちゃったわけですよ。周りには、車の免許でも乗れるし今はいいかなぁって、乗らない人も居るんですけど……私は、いち早く原付に乗って良かったなぁって思いました」

 

 スマホで撮ったらしい、愛車の写真をスワイプしては見せ、またスワイプしては見せる斉藤。確かにカッコイイな、コイツ。原付にしてはデカすぎる車体だが、それがいい。

 

「興味津々ですね」

「イヤ……16の頃には既にマンガ漬けだったもんで、原付免許を取りたての高校生が県をまたぐ位の遠出をしちゃう……みたいなのが、イマイチ分からないんだ。なるほど、これは参考になる」

「ああ、高校生で既にジャンプで連載してましたもんね。『ゴージャス☆イヴリン』……」

「読んだのかい?」

「単行本ですけどね」

「まあ、さすがにな。初期の連載だし」

 

 足元のマシュマロは、いつしか無くなっていた。ほぼほぼ斉藤1人で食べてしまったようだ。

 

「リン〜、おかわり〜」

「ねーよ…………っていうか、何だよ。このノリ」

「インタビュー形式でしてみたんだよ〜」

「ああ、通りすがりの誰々は語る……みたいな?」

「そうそう、刃牙VSピクル戦の烈海王みたいな」

 

 刃牙か。あんまりのデタラメさで、2部(バキ)の死刑囚あたりで読み疲れてしまった記憶がある。1部(グラップラー刃牙)は辛うじて読めたんだがな。見ていない人は、試し読みでいいから少し読んで欲しい。ある意味、面白いから。

 

 これから原始人や宮本武蔵、横綱が出てくるとなると……うん。ぼくの理解力では厳しいところがあったよ。

 

 絵は上手いんだ。中でも身体の動き方、戦闘の展開は見やすい。ストーリーの流れもぼくが読んでいる時点では良いんだ。面白くないワケではないんだが、それにしてもミスマッチなんだよな。それらを超えるトンデモ理論が。

 

 主人公の父親からして、スタンドも呼吸も死ぬ気の炎も使わずにあの強さ。母親殺しちゃうし、息子に厳しすぎるし。アメリカと個人的に友好条約がどうたらのあたりで、『もうこれは、そういう漫画なんだなあ』と何となく察した。

 

 刃牙のことはともかく、今夜はここのキャンプ場に泊まることとなったらしいリンくんと斉藤。マシュマロを食べ終えた2人はというと、そろそろ夜飯の準備に入るところだった。

 

「…………作るか……」

「おおっ、露伴さんの貴重な料理シーン」

「そんな大層なモンじゃないぞ」

 

 一人前の材料として用意するのは、パスタ一束、細切りのベーコン30〜40グラム程度、小さめのブロッコリーふたつ、オリーブオイル大さじ1杯、クッカーに入るだけの水、塩を少々。

 

 ソースの材料は、卵ひとつ、卵黄のみをひとつ。粉チーズを大さじ1杯、粗挽きの黒コショウを適量だ。

 

 道具はクッカーにフライパン、スプーンとゴムのヘラ。

 

「えっ、なんか本格的じゃありません? 材料とか……」

「料理が作れないわけじゃあない。取材のために作ったりもするしな……それなりに、自信はあるほうだ」

 

 今回作るのは『カルボナーラ』。言わずと知れた、パスタ料理の代表格である。トニオさんの店ぐらいのを作るのはハードルが高いし(パール・ジャムを持っていないからという理由ではなく単純に手間がかかる)、キャンプ飯で作るにしても、いつもの夜飯よりは凝っている。

 

 たまにはいいだろう、と思ってね。

 

「斉藤は夕飯、何にするの?」

「カップめん♡」

「……お湯、2人分沸かしとく」

「おねがいしまーす!」

 

 まずは、パスタを茹でるお湯を沸かす。あらかじめやっておいた方が、今後の工程がスムーズに進むとのことだ。

 

 その間にフライパンにオリーブオイルを入れ、ベーコンを炒める。既に切ってあるやつを持ってきてもいいし、大きいのを買っておいて家で切ってくるのもアリだ。ベーコンから油が出てくるぐらいに炒めるのが『グッド!』だ。

 

 お湯が沸いたら、塩を少々入れて、パスタを茹でていく。クッカーの大きさによってはパスタを2つ折りにすると茹でやすいかもしれない。あと、標高の高い場所ではお湯の沸点が低いので、そういうキャンプ場では細いパスタを使ってみよう。

 

 パスタを茹でているところにブロッコリーも投入。一緒に水を吸わせ、茹でていく。そして、クッカーに入った『茹で汁』をベーコンのフライパンにスプーン1杯ほど入れて『乳化』させる。パスタ料理では、この『乳化』が欠かせない。

 

「『乳化』って?」

「水と油のように、分離している液体を均等に、そして均一に混ぜることだ。エマルションとも言う」

「ベジットってこと?」

「ゴテンクス……?」

「たぶんそう、部分的にそうだ」

 

 時を戻そう。パスタを茹でている間は、『ソース作りの時間』となる。卵と卵黄、粉チーズをスプーンでかき混ぜる。お好みで、この時点で黒コショウをかけるのもよし、仕上げに上からかけるのもよし。

 

 パスタが完全に茹で終わったら、火を切ったままフライパンに投入。ベーコン、ブロッコリー、パスタ、そして油を混ぜていく。

 

 一通り混ざりきったところで、ソースを投入。また混ぜる、のだが、今度はゴムベラを使って絡ませ、混ぜる。シャバシャバとしたソースが出てきたら、火をつける。気持ち的には、中火くらいの強さで。

 

 ソースがある程度固まってきたら、いったん火から離してかき混ぜる。これを数回繰り返した後に、『カルボナァ〜〜ラァァ〜〜〜ッ』然とした、ドロドロとシャバシャバの中間……イイ感じのソースになる。

 

 これを皿に盛り付け、お好みで黒コショウをかければ、トロトロのカルボナーラがキャンプ場に降臨だ。

 

 漂ってくる匂いは、料理店のそれだ。キャンプ飯にしては、少し本格的すぎる気もするが、まあよし。美味しければよし。

 

「おお〜っ!」

「めっちゃ美味そう……」

「ごきげんな夜飯だ……」

「たまにはいいかもですね、こういうの」

 

 既にカップめんを作り、食べ始めている2人が、思わず見入る程度の逸品。既に味のハードルは天井知らずに上がっている。

 

 一眼レフで写真を撮ってから、カバンからフォークを取り出す。皿に盛った麺を数本絡ませて、2、3回息を吹きかけて冷ます。出てくる湯気は、冬なのもあるだろうが、メガネが一瞬で曇るほどの量だ。目の前にあるカルボナーラの魅力を引き立たせている。

 

「いただきます」

 

 出来たてのカルボナーラが、ベーコンと一緒に口に入る。

 

 麺の表面のツルツルとした舌触りに、ベーコンとオリーブオイルの旨み、カルボナーラ独特のソースが絡まる。噛んでみればモチモチ、飲み込めば身体の芯が温まる。

 

 ……………………ふむ。これは困った。いや、本当に困った。これ以上の食事をすると、取材どころではない。

 

「……これは…………」

 

 いまいち、『美味い』以外の言葉が見つからないのだよな。

 

「料理ってのはいいよなぁ。時間と少々の金を使ってレシピ通りに作れば、三大欲求のひとつを大きく満たせる……」

「露伴さん、それ……ひとくち欲しいっ……!」

「斉藤は自分のがあるだろ(めっちゃ欲しい!!!)」

「ふふ。リン、顔に出てるよ」

「ぐぬぬ」

「少しならやるよ」

「やったー!」

「あ、ありがとうございます……っ」

 

 それから30分ほどの、静かな時間。周りにはぼく達3人しかいないキャンプ場で、麺を啜る音と、湯気を伴う満足そうな吐息だけが湖畔に存在していた。

 

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした〜」

「……ごちそうさま」

 

 食べ終わった頃、リンくんのスマホから着信音が鳴った。

 

「あ、なでしこだ」

「へえ、なでしこちゃんが。なんて?」

「ん……」

『バイト代入ったから、カリブーでランプ買った!! めっちゃ可愛いですっ( ´ ω ` *)』

「おぉ〜! レトロな感じで可愛い!」

「ほう。これは……」

 

 画面に映っていたのは、リビングの机で撮ったらしいガスランプの画像だった。マッチで火をつけるやつだな。家の中とはいえ、十分に雰囲気のある写真だ。

 

 もう1枚添付されていた画像は、何故かガスランプを中心にして、なでしことその両親、姉が並んだ集合写真だった。無表情そうな姉も含め、全員がイイ笑顔をしている。こちらまで和んでしまうような家族写真だ。

 

「ああ。アイツ、バイトしてるって言ってたもんな」

「年賀状のやつだね〜。そっかあ、やっぱりキャンプの資金に使うよねぇ」

「斉藤も犬用のドームテント買ってたよな。吊り下げ式のドームテント、結構いいやつ」

「リンくんも伊豆キャンプに使ってたじゃあないか。なでしこと一緒に海を見に行ったとか」

「露伴さんも最新刊の単行本の巻末、ほっとけや温泉の写真でしたよね〜」

「…………ま、最終的に考えることは一緒……か」

「だね〜」

「……うん」

 

 

 キャンプ、楽しいかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 To be continued...

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろ、冬が来ますね。ゆるキャン△の季節です。そして私が、アニメ1期頃の彼女たちと同年代になります。ウソでしょ。中学の頃から書き始めてからここまで来たと考えると、感慨深いです。

それはそうと、新章『伊豆の乱』篇に繋がるオリジナルエピソードもここでおしまいです。まだまだおみまいするので、気長にお待ちください。
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