あ、あと10000UAありがとうございます。皆Daisuke。
(なでしこのお土産、何か買ってくかな……雑貨とか?いや、あいつは京都の土産でも大仏キーホルダーより生八つ橋の方がいいやつなんだろうな。すなわち土産は食べ物…うーむ…。)
荷物を持ってしばらく歩くと、目的の温泉に着いた。
名前は『ほっとけや温泉』。
12月は6時から、7月は4時から…と、日の出の一時間前に開場するらしい。神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進の効能があるとホームページに書いてある。
ここまで書くと、逆に怪しいぞ。虫なんかが浮いてるんじゃあないか?ぼくは潔癖症でもないが、汚い温泉には入りたくないね。
「そこの休憩所に荷物置いてから入ろ!」
「右の方が空いてるみたいやな」
ありがちな木のロッジに入ると、暖房、座布団、長机、畳、テレビetc…広い室内に、快適極まりない空間が、帰すものかと足を掴んできそうだ。
この季節、山奥の気温はかなり下がっている。
直感した。
出られないッ…風呂上がりに、こんな所…!
「ひろーい!」
「このくつろぎスペース、人を殺せるな」
「尻に根が張るなんてモンやないで」
「風呂上がりの客を帰さないつもりだな…」
「ねえねえ!お風呂あっちにあるって!」
元気に指をさし、露天風呂にはしゃぐなでしこ。
「入ろか、温泉」
「だなー」
チッ、ジジイ……オホンッ!年配の方ばかりだな。スケッチブックやカメラを持ち込めないのが惜しいな…上がったら忘れないうちに書かなくっちゃあな。
軽くシャワーを浴び、登山の汗と疲れを流す。露天風呂に出ると、湯気の向こうに、見事な山並みとジジイのハゲ頭が並ぶ。山梨県の平均年齢って、こんなに高いのか?確か杜王町の銭湯は、こんなにジジイばかりじゃあなかったような気がする。
さっきも散々見たが、改めて見ると壮観だな。あの青い山を構成している1ミクロ1ミクロが、巨大な樹木だったりするなんて、考えられないな。今度はああいう山に行くのも良いだろう。
風呂の湯が極度に熱いことを除けば、景色もいいし風呂場は綺麗だし、結構いいんじゃあないか?ま、何にしてもここまで来るには相当疲れるんだけどな…後払いの至福、か。
「あかんやつやー」
「ああ、確かにこれはヤバいな…」
「まったり〜…♡」
先に上がっていた3人は、数年ぶりの実家にいるかのように頑なにそこを離れようとしなかった。というか、先に上がっていたというのは、ぼくが長風呂していただけだったんだがな。
……スケッチ、しようか。
「露伴せんせー、ご飯食べる?」
「……………」
チッ。あの素晴らしい風景を1ミリでも忘れてしまったらどうするんだ。
「ざるそばで頼む」
「私月見そばー」
「私は月見うどん〜」
「私は〜……って、ここで食うたらキャンプご飯食べれんくなるやん!」
ハッ!?
い、いけない……近くにスタンド使いでもいるのか!?いや、温泉に留まらせようとするスタンドなんて居ないか…でも密室殺人の線は有り得なくもない。
聞いたことがある、死刑囚の牢屋そのものが処刑場だったという話を……。
「温玉あげ美味しいよー」
「………………」
「……温玉あげだけ買ってこ!」
「せやな!」
「すいません4つください!」
「まいどありー」
…気が滅入りすぎていたみたいだ。ここでくらい、スタンド使いの線を捨てても……。
「はいっ、せんせーの分!」
「ありがとう。いくら払えばいい」
「部長の奢りです!」
「ちょっ!?こ、ここは野クル全体の奢りで手を打とう!」
「うちは部長の奢りに賛成〜」
「ありがとうな、大垣くん」
「え、あ、いえいえ!すげえファンとして嬉しい!願ったり叶ったりっていうのかコレは!」
「よし来たぞ」
高ボッチ高原…!
柵の向こうの草原では牛達がのんびりまったり暮らしている。こっちも落ち着く…。
あと6キロを気温2度の道で行かなくっちゃあならないのか…で、でもこの先には温泉が……!
ここで死んだら、コイツ(ビーノ)も浮かばねえ!
\生きてるよ/
「急げ私っ」
途中落石やリスを避けながら、なんとか約150キロを完走した私は、温泉に……。
『10月をもって閉店いたしました。高ボッチ鉱泉』
「おいまじか」
引き返した私はこのどうする事も出来ない気持ちを胸に、なんとなく山登りをしてみた。
今日の松本市は曇ってるっぽいけど。ぼっちでボッチ山登り、寂しい…と、私が寒さに震えながら山頂に登った時、紅く眩しい夕焼けが目を焦がす。
「……なんだよ、こっちはちゃんと見えてるじゃんか」
帰りこそは!絶対!温泉入るぞー!!
自販機も止まっている山の中を、原付でガンガン奥に進む。悩みに悩み抜いた結果、見晴らしのいい台地をキャンプ地とすることにした。
さて、パスタ準備しよ。本を出してっと〜……。
「……あ、リンちゃんからだー」
スマホを取り出したなでしこは、その画面を見て、いつも緩んでもにゅもにゅした感じの顔が、もっと緩む。
「おいしそ〜♪」
「…キャンプ場チェックインしなきゃ!!」
「おいもう4時だぞ!」
「あかんあかんてー、ふふふー」
「ぼ、ぼくはどうすれば…?」
「露伴先生も急いで、早く!」
「……ヤバいぞッ!ぼくもキャンプ場に予約してるんだった!」
「薪はあそこにある物を使ってください。チェックアウトは…」
和菓子か寿司を作っている板前みたいな格好のオーナーを、ぼく達は物珍しい目で見ていた。勿論スケッチもするが。
「寒そうだな」
「寒そうだね」
「まるで職人やなあ」
「ふむ、こういう衣装もアリか」
「仕事熱心…!」
「これがピンクダークの少年に活かされる…のか?」
「あのマンガなら何でもアリやろ」
「強く否定出来ないな……」
自分でも、やりたい放題している『フシ』はある。編集者にも言われたよ。
さて、テントの設営を終え、晩ご飯まで少しだけ暇のあったぼく達は(なでしこに『露伴せんせーの近くがいいのー!』と駄々をこねられた)、大垣くんの提案で、『ウッドキャンドル』なるものを作ったりしていた。輪切りの丸太にローソクを入れ、着火剤を詰めて燃やす焚き火の方法だ。丸太の中心からローソクのように燃えていることから、『スウェーデントーチ』や『木こりのろうそく』とも呼ばれるらしい。
ここのキャンプ場の丸太は全て割れていたので、針金を使っていくつかの薪をまとめて、中に着火剤を入れた。本当にローソクみたいに燃えるので、ちょっと違った雰囲気で面白いぞ。
上が平らなので、鍋やコーヒーポットを乗せて調理もできるらしい。林間学校で作った飯盒炊爨カレーの後のコッヘルのように煤で真っ黒になってしまうらしいが。
最終的に針金は燃え尽き、ぼーっとしてキャンドルを囲んでいたぼく達は、薪が勢いよく倒れる音に不意打ちをされた。くそっ、間抜けた悲鳴とか、あげてないだろうな。こっ恥ずかしい。
「晩ご飯を作りまーす!今日はひと味違うカレーだよー!」
「やっぱカレーやー」
「カレーやー」
「カレーだな」
あらかじめ切って素揚げなどの下準備をしておいた具材を、ルーに入れて煮込めば完成…らしい。
「煮込むだけ…だな」
「煮込んでるだけやーん」
「だけやーん」
「カンタンでも美味しいのよ奥さんっ」
隠し味にインスタントのとんこつラーメンの粉末スープを入れてあるらしい。小麦粉と水で辛さを薄めてカレーに混ぜればOKという、これまたカンタンなレシピだ。
他にもおでんや肉じゃがをカレーに入れる、変身カレーなるものがあるらしい。本当に合うのか、と思ってしまうが、今回の粉末スープの件からすれば、案外カレーには何でも合ってしまうんだなと思ってしまう。
他にもさっきの焚き火で、焼き鳥やマシュマロを焼き、長い夕飯を楽しんだ。野外だと美味さも際立つ。そうこうしているうちに寝る時間になり、テントに入った。1時間ほどスケッチをしていると瞼が重くなってきた。
……寝るか。
さて、そろそろ寝るか……お、なでしこからメール。
『リンちゃんまだ起きてる?』
「……」
『ねてる。』
『そっちはどんな感じなの?』
『超寒くていもむしになってる』
『私も今いもむしだよー(*´W`*)』
シュラフ買ったのか!?…いや、アイツそういえば野クル?に入ってたな。そこの備品か何かか?
『冬用シュラフって暖かいんだねー』
『カイロ足元に入れるともっと暖かいよ』
『ホント?やってみるよー』
『そいえば温泉行ってたらつぶれてた…。』
『OH……』
『明日は絶対温泉はいる!!超はいる!!』
『超頑張ってね!!リンちゃん!!(`v´)b』
ちょっと外出るかー…話長引きそうだし。おーさむっ。でも夜景が綺麗だな。街からはこんな星空は見えなさそうだ。
『こっち星空と夜景がすごいよ』
『リンちゃん しばらく起きてて!!』
「ん……」
外に出てきてよかった。丁度少し待ちそうだ。数十分後、持ってきたココアを飲んでフライングキッパーごっこをしている途中に、やっとなでしこからの着信が来た。
『おまたせー!!』
そこに映っていたのは、日本三大夜景にも数えられる、フルーツ公園の夜景……と、不機嫌そうにピースする露伴先生だった。
なんで!?
「せんせー、起きてせんせー!」
「……………?」
重りのついた上まぶたを擦って、無理矢理目を開ける。もう朝か。モーニングコールなんて頼んでいないぞ、と思いながらスマホを見ると、深夜の0時半だった。
さっき寝たのは…0時半だ。
1分も寝ていない。
「夜景、見に行こ!」
「はあ……?」
「早く早くー!」
「……周りに迷惑だ、静かにしろ…」
ハッ。
そうだ、なんやかんやあったせいで、本来の目的である夜景を見るのを忘れていた。それはそうと、何故ぼくとこの女が一緒に行かなくっちゃあならないのかというと、長野にいる志摩くんに夜景を送りたいんだとか。
「で、なんでぼくなんだ」
「だってあおいちゃんも千明ちゃんも寝てるんだもーん」
「……そもそも、同行する理由は?」
「こわい!!」
「スゴいッ!スゴすぎるぞッ!!」
「私は露伴せんせーのスケッチの方に気を取られて全く夜景に集中できない!」
「夜景!スケッチせずにはいられない!」
「もうここまで来ると、褒めるしかないよね…ある意味ではこういう『姿勢』、憧れるなー。本当スーパーマンガ家だよ、せんせー」
…スーパーマンガ家、か。悪くないな。憧れの的になるマンガ家もどきのタレント気取りをしている自称芸能人が、ぼくは一番キライなんだが(自分の本来の職業を見失っている姿は実に愚かだから)、単純に心から褒められるのは、悪い気持ちはしない。
こいつはウソをつけないタイプだ。言っている事は素直に受け止めておいた方が、お互い得だろう。
「露伴せんせー!こっち向いて!」
「ン?」
「ピースしてー!」
注文の多い奴だな。って。
「何を撮っているんだい、君ィィ〜〜〜」
「リンちゃんに送る写真!ほら、笑って笑ってー!」
「チッ!」
君のいうスーパーマンガ家のぼくと、岸辺露伴と写真を撮れるって、光栄に思えよ…なでしこ。
その後、素晴らしい夜景をスケッチして帰ってきたぼくは、今度こそ素直にテントで寝る事にした。
が。
「寒いですねー」
「…………おい」
「へ?」
「何故ここにいるッ!?」
「だって1人寂しい…」
「だからといって、ぼくのテントに入っていい口実にはとても足りないなあ!」
「いいじゃん暖かいし!」
「ぼくはお前が隣にいるだけで寒気がするぜーッ!」
結局、寝たのは深夜3時だった。
NEXT CAMP
「あれ、今度はあんまり驚かない…」
「お前につけられてるような気がしてな」
違う。
確信は持てる。後から無理くりに付けた理由に、無理矢理に納得したからだ。
が、真の理由なんて分からない。
エピソード#1010₀=1:饅頭ナデシコ
to be continued…
なんて、なんて遠い更新日。
おのれ高校受験。それしか言う言葉が見つからない。
そんなことより、修学旅行が楽しみでなりません。明日は前日指導に行くのですが、事前に荷物やら何やらを検閲した上で集めてしまうので、小説を書くiPhone7もゆるキャン△漫画も持っていけません。めちょっく。