(訳:筆が乗ったので久々に更新しました。大変お待たせしました、申し訳ございません。ではご覧下さい)
菓子を食べるのも、取材だ。
「こし餡か」
こうやって寒い中ベンチに座ってまんじゅうを食べるのも、取材なんだ。
身延まんじゅう……山梨県南部にある身延町の郷土料理だ。もとは修行している坊さんかなんかのための、いわゆる嗜好品だったらしい。久遠寺のある身延山では肉、魚、酒が食べられなかったため、地元の菓子屋が作ったのが始まりらしい。
これはぼくとリン、そしてなでしこのヤツが何度目かの再会を迎える前の、もうひとつの再会だ。この前の取材と、今回の取材の間に、本来なら『アレ』が来るんだが…とりあえず、こっちの方を話してしまおう。
「先生!!」
「……お前か」
「あれ、今度はあんまり驚かない…」
「お前につけられてるような気がしてな」
「あはは何それ!面白い!」
「シャレになってねーぜ」
フン!こっちは好きで会ってるワケじゃあないんだ。
「マンガ、どうですか?」
「変わらないね。変わらず大ヒットだぜ」
「さすがせんせー!」
「…逆にやりづらいな」
クソッタレ仗助とは別のベクトルで面倒くさい。イヤミもナシに、全力で、正面から、勢いよくぶつかる。ふもとっぱらの犬みたいだ。やはりこいつには犬が似合っている。
話すことも無いので、無難な質問を投げかけた。うまい棒のチーズ味くらい…初対面のヤツに『好きな食べ物ってなんですかァ?』って聞く合コンのOLくらい無難だ。
「高校、どうなんだ」
「あ、そうだ!高校!あのね、山梨に海ってないでしょ?だから静岡が羨ましいー!って!」
「ふん。海……か…」
ぼくの家からはズッと海が見えるから、あまり気づかなかったが、海がなかなか見れない県もあるのか…山奥ともなれば尚更だ。
「杜王町?って、海あるんですか?」
「ああ。特に僕の仕事部屋からはな…それが家を買う決め手だった」
「一人暮らしですか?」
「………一人暮らし『だった』」
「ん?過去形!?なんかまずい事ききました!?」
「あれは僕が博打に夢中になったばかりに…いや絶対にクソ仗助のせいだ」
「じょーすけ…」
「君は知らなくていい。あんなハンバーグ、関わるのなんて無駄だ………無駄無駄」
チッ、余計な事思い出しちまったぜ。
……まんじゅうが美味しい。身延の焼印が押された、分厚い皮の中に入った餡が、舌の上に乗る度、踊る…というより、静かに、ゆっくりと舞うようなカンジだ。
「それと、何しに来たんだ?」
「キャンプ道具を揃えに来たの!」
「………ぼくの目が節穴じゃあなかったら、何も買ってないように見えるんだが」
「値段が高くて買えなかったのー!」
「ああ…分かる。コール〇ンに給料を吸い取られた」
「ハマってるっ!?」
「お前こそ」
それにもうキャンプ用品店に長居はしない。アレは痛すぎた……。『ただでさえ借金あるんだから…』と康一くんに怒られてしまった。それを見ていた億泰からも呆れられる始末だ。
「せんせー!」
すると今度は、あちらから無難な質問を全力投球してきた。
「せんせーって、なんでマンガ始めたんですか?」
「ぼくの事を知らないヤツに話してもなァァ〜〜〜〜〜〜〜」
「……16歳から、ジャンプで連載してた…そうですよね?」
「…何故それを?マンガ読んでるようには見えないぞ、お前」
「調べたんです!露伴せんせーともっと仲良くなりたくて!」
「……………絵が、好きだったんだ」
もともと電車の模写や似顔絵、デッサンで小学校から有名だったんだが……マンガの世界に興味を持ったのは高校生だった。そこからどっぷりのめり込み、気づけば人気になっていた。
しかし知名度なんてどうでもいい。教室で書いていたらアマがキャーキャー寄ってくる。大半が『若いのにジャンプで連載うんたら』という褒め言葉なのもあるが、ぼくはただ『読んでもらうため』にマンガを書いている。チヤホヤされたい!などと悶々しながら執筆しているこのぼくではない。
ギャラだって多いさ。でもそれが目当てじゃあない。ただただ、『ぼくのマンガを読んでもらいたい』ンだ。それ以外はどうだっていい。命懸けで取材をするのも、そのためだ。
そうだな……金が貯まったら、日本一のアトリエを作るくらいしか浮かばないし、マッ!ぼくは何処でも素晴らしいアイデアと絵が出てくるからな。そんじょそこらのマンガ家とは違うんだよ、才能ってヤツが。
「絵かあ……こんど私も『ピンクダークの少年』読んでみよっかな!」
「読者が増えるのは有難いが…大丈夫か?」
「なにが?」
「………ふ、まあいい」
トラウマにならない事だけを祈ろう。
特に今月号……あの『ペタリガ』が出てくる。アイツはヤバい。ぼくも倒すのに苦労した……(倒したのは主人公の仲間だがな。考えたのはぼくだ)。鉄分を操作するなんて、我ながら無茶苦茶だな。『先が読めず、楽しみです。次号も是非読みたいです』というファンレターは来るがな。
「あー!」
「耳元で叫ぶなッ!?」
「お、先生じゃん」
「こんちはー」
この前の…大垣くん、犬山くん……野クルで来てたのか。てっきり1人でキャンプ道具を漁るヤツだと、店員に思われてたのかと…。
「帰ってきたー!もー、遅いよ2人とも!」
「いや、見てたらどんどんのめり込んでなー。ほらお菓子って女の子の象徴やん?」
「ごみんごみん〜。それより邪魔して悪かったカンジだし」
「え?」
「楽しそうやったで、2人とも」
み………!見ていたのかッ!!クソッタレェ!自分でも顔が熱くなるのが分かるぜチクショウッ!
「ば、バカッ!勘違いするなよッ!」
「ん?どゆこと?」
「だからー、お前と露伴先生が」
「あー!あーっ!やめろッ!恥ずかしい!」
「………クソッ!」
自分に対して。自分がやった身勝手に対して…いや、身勝手は慣れっこなんだが、その不思議さに自分でも驚きながら、戸惑いながら、怒っていた。もう野クルとは別れた。
実は数分前。
大垣くんと犬山くんに先に再会したんだが、『店の中を10分ほどウロウロする』と上書きしてしまったのだ。そうした理由?分かれば世話はないさ。ぼくだって分からない。
少ししたら帰ろうと思っていたんだ。まだ大丈夫と思っているうちに、見られた。
ゆっくりまんじゅうを食べたかったから?ならなでしこにも上書きするハズだ。なでしこと話したかったから?ありえない。ぼくはハッキリ言って、犬山くんよりも犬っぽいアイツが嫌いだ。
………取材、か?
そう、取材だ。あいつの破天荒かつ奇天烈な行動はネタになる。前も話した。そうだ、そうなんだ。くくく、気づくのが随分遅かったじゃあないか岸辺露伴。
…………………………。
違う。
確信は持てる。後から無理くりに付けた理由に、無理矢理に納得したからだ。
が、真の理由なんて分からない。
ぼくは釈然としないまま、杜王町へ帰った…康一くんの待つ家へ。
「おかえりなさい、露伴先生」
「ああ。今帰ったよ、康一くん」
「また山梨の方へ?」
「……悪いか?」
「いえ別に(なんだあ?いつもよりギスギスしてるなぁ〜〜〜………………けど、どこか『満足げ』に見える………。いい取材、出来たんだろうなあ!なら良かったッ)」
「少し仕事をしてくる」
「はい。今日の晩御飯は、露伴先生の言ってた『餃子鍋』ですよ」
「ナニッ!おい!?ちゃんと浜松餃子を取り寄せたのかッ」
「ええ、偶然カメユーのギフトに載ってました」
「………仕事は、早めに終わらせるよ」
「(凄いッ!露伴先生がニヤケをコラえきれていないッ!餃子鍋……一体、どんな…?………ぼくも期待しちゃうじゃあないか!!)はい。準備しますね」
NEXT CAMP
「はいはい。食べられませんよーに、と」
「取材させてくれますように、と」
「高いけど」
「oh……」
「あるよ、とっておき!こっち!」
「は!?ちょ、お前…!」
エピソード#│a+bi│=√a²+b²:牛鬼シビレコ
To be continued…
皆さん。私のゆるキャン△熱はまだ覚めてません。始めたからには終わらせますよ、それが私なりのケツの拭き方です。
更新は月イチですけどね。
原作には追いつけずとも、アニメ最終話のクリキャンに、岸辺露伴は動かない的なストーリーを追加したいです。露伴先生が可愛くなりすぎてますし。あ、そういえばヘブンズ・ドアー出してないや。