『対ブラックトリガー訓練を開始します』
通常の仮想訓練とは違う様のマップが展開される。通常は様々な特徴を持った世界が形作られるが、今はそれらが複合的に合わさった空間が作られていた。そして訓練を受ける3部隊は飛行機の様な乗り物、近界への遠征艇の周りに転送された。
『今回は射撃戦特化との事だよ』
全員に聞こえるようにA級1位太刀川隊のオペレーター、国近由宇が情報を話す。
「なるほど、今回は厳しそうだ」
それを聞いた太刀川がボヤく。
『膨大なトリオン反応!!遠征艇障壁を展開!!』
警戒を行なっていた風間隊のオペレーター、三上が遠征艇に向かって放たれた攻撃を検知。遠征艇にある防護シールドで降り注ぐトリオンの弾丸を防いだ。
「今のはおそらくハウンドか、あまりゆっくりもしていられないようだな」
風間隊、隊長の風間が言う。
『こちらにゆっくりと近づいてくるトリオン反応があります。おそらくターゲットです』
二宮隊オペレーター、氷見が伝える。
「相手は射撃特化になった比企谷だ。全員で囲み、気を散らさせ当てれる奴が首を取る」.
二宮がそれで良いか?と全員に確認し異論はでなかったので戦闘態勢に入った。
「んじゃま、いきますか『変化弾+炸裂弾=変化炸裂弾』」
太刀川隊の出水の得意とする合成弾の奇襲を皮切りに本格的な戦闘が始まった。
戦いは凄まじいものとなった。射撃トリガーは強靭なシールドに阻まれ、近接組みが近づこうにも縦横無尽に飛び回る変化弾(バイパー)に邪魔される。それを掻い潜ったら次は恐らくボーダー最強の威力を誇るアステロイドに晒される。
比企谷八幡……凄まじいトリオン量を誇り、『五大感覚強化』のサイドエフェクトを持つ。八幡の視野は1kmに及び、視線などを敏感に感じとる。犬などには及ばないながらも細かな匂いを嗅ぎ別け、聴覚も特化してる菊池原に一歩及ばないながらも聞き取る範囲は広い。味覚も常人より良いため妹や料理をできる親しい人からは味見をよく頼まれる。そして両親が旧ボーダーからの関係者だった事もあり幼い頃から訓練を受け、超感覚を十全に振るえるようになった八幡は存在がブラックトリガーとまで言われた。
「ふぅ、何とかなったな」
「今回は勝てると思ったんですけどね……さすがA級部隊です」
太刀川の一閃を受けて八幡が倒され訓練は終わり、勝利した3チームは次の遠征の最有力候補となるはずだったが……
「やはり、鳩原は人を撃てないようだな」
ボーダー総司令の城戸が訓練の映像を観て呟く。
「だが彼女の狙撃の腕は確かだ、連れて行っても問題ないのでは?」
ボーダー本部長、忍田が言う。
「私は反対ですな、遠征艇は狭い。同じスナイパーなら明確な戦力を連れて行くべきです」
開発室長の立場の鬼怒田が考えを述べ、
「私もそう思いますねぇ、鳩原隊員の狙撃の腕はあるがそれなら冬島隊の当馬くんや三輪隊の奈良坂、なんならB級隊員でも十分な腕を持つ隊員はいくらでもいる。」
広報担当の根付が言う。
「林藤支部長はどう考える?」
忍田が玉狛支部、支部長の林藤に聞くと
「うーん、うちの主義としちゃ鳩原ちゃんが良いけど……戦力どうこうよりもいざ敵対した時に敵の明確な殺意に耐えられるかが心配だね」
ボーダー内のランク戦はあくまで訓練の一環であり、トリオン兵はあくまで機械のような物のため、殺し合いというものをボーダー隊員は当たり前だが感じたことはない。訓練でも人を撃てないメンタルの持ち主が過酷な環境で耐えられるか、林藤はそこが不安であった。
「唐沢くん、君はどう考える?」
営業部長の唐沢に城戸が聞く。
「まぁ、少々過激ですが1度極限まで追い詰めるのはどうでしょう?やり方は色々あるでしょうが、追い詰めて追い詰めて……それでも戦力にならないと判断した場合は遠征から外せばいいかと」
そして唐沢の意見が採用された。
後日、二宮隊が司令室に呼ばれた。
「君たちには追加で試験を受けて貰う」
その内容は二宮隊だけで八幡をベイルアウトまで追い込めというもと、失敗した場合は今回の遠征から外すというものだった。断ればもちろん遠征部隊の件は無しである。
「了解しました」
そう二宮は返事をしたが……
結果は惨敗と言えるものだった。
二宮隊は鳩原以外全滅した。そして鳩原は最後の最後まで人をどうしても撃つ事が出来なかったのである。
「ユズル、やっぱりあたしはダメなやつなんだ……ごめんね」
弟子のような少年にそう伝えた鳩原はしばらくしたある日、一般人を連れて近界への密航を行なった。そして二宮隊はその責任を負い、B級へと降格させられた。