それは動かぬでくの坊   作:我らに幸あらんことを

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見切り発車でーす(適当)


《恥まりの大失敗》
始まり


 今までの人生を振り返ってみると、自分という存在がいかに周りからズレているのかがよくわかる。

 

 子供のころから、いや、生まれた頃から僕の感情というものは大いに間違えていた。

 いつもは無関心。しかしある一定の心を揺さぶる出来事に直面すると、自分の感情はおかしくなる。

 例えば当時五歳。両親が交通事故で亡くなったこと聞かされたとき、僕は()()()をしてしまった。

 

 ()()()()()()()

 

 それが僕の障害であり、今もそれは直っていない。そもそも、直し方を知らない。

 そこで僕は対策をとった。

 

 何事にも動じない

 

 何事にもーー心動じない

 

 そんな人間になってやると

 

 しかし、その頃の僕は知るよしもなかった。心の動かぬ人間など、心ない人と等しく。また、感情が壊れているのと、感情がないのとでは全く異なっていることなど。

 

 そのせいで僕はいくつかの大失敗を引き起こすのだが、いたしかたないことだ。僕の大失敗に巻き込まれた人もいたが、まぁ彼等が気にしていないのなら別にいいだろう。

 

 

 幼心に決意した僕だったけど、最初は本当にうまくいかなかった。

 両親が死んでから幼稚園に入ったものの、周りがピーピー泣くものだから僕も釣られ泣きーーーーするところだけど、感情のおかしい僕はその時々に様々な感情をみせた。

 

 友達と喧嘩し泣いている子供の隣でーー恐怖したり

 

 皆で楽しく鬼ごっこをしている中ーー激怒したり

 

 徒競走で一位を取ったらーー恥ずかしがったり

 

 情緒不安定なんてもんじゃなかったし、そのせいで友達おろか先生さえ僕に近寄らなかったほどに、周りから浮いてた。

 

 僕を引き取った親戚もおかしいことに気づき、病院に連れて行ったりしたのだが結果は全滅。

 この障害は一生付きまとうことを知った僕は、絶望ーーするはずだったが、そんな真っ当なリアクションを許してくれる障害ではなく、諦めてしまった。

 もともと物凄く絶望するはずだったからーー物凄く諦めてしまい。

 障害と一生一緒に生きていくことに、「しょうがないな」の一言で終わり。

 今度はそんな反応に親戚が気味悪がって自分とは距離を置き、生まれたばかりの我が娘に愛情を注ぎまくる。散々甘やかすから妹の性格は歪になっていき、後々大事件を起こすのだがそれはもまた別の話。

 

 ともかく、僕には幼稚園まで誰一人として味方がいなかった。

 かといって僕にはどうしようもなく。

 いつも一人。

 そんなこんなで日々を過ごしていたけど、ある日僕の人生を変えたであろう一つの物事がおきる。

 

 その日はいつものように幼稚園に行き、部屋の片隅で一人じっとしていたときだった。いつもやんちゃな男の子が急に殴り掛かってきたのだ。

 これは後から耳にしたことだけど、好きな女の子にかっこいいところを見せたくて、いつもクラスから恐れられている僕を退治しようとしたらしい。

 教室から泣き声と大きな笑い声を聞き付けた先生は、笑っている子供にビンタしたのち泣いている子供を優しく抱きしめた。

 

 まぁ、打たれたの僕だけど

 

 男の子に殴られた僕はあまりにもいきなりだったので、ついつい笑ってしまった。

 

 何がおもしろくて笑っているのかはわからないけど、殴られて笑っている僕があまりにも気味悪がって、殴った本人が号泣。

 そこに先生が登場。

 殴られた僕が打たれ、殴った彼があやされる。

 今でもはっきり覚えているのは、先生の化け物を見るような目と「はやく謝りなさい」の一言。

 状況もろくに確認せずに僕を悪者扱い。そしてそれを間違えていると誰一人言わなかった周囲の有象無象。

 

 僕はさらに笑った

 

 所詮こんなものか

 

 人なんてこんなものか

 

 クケケ、クケケと笑う僕はできの悪い人形みたいで、その時になってようやく理解したのだ。

 

 僕は失敗作なのだと

 

 感情の狂った人間はもはや人ではない。限りなく人に似た化け物、あるいは人形。

 人間としてのなりそこないだと自覚したけど、だからといって僕は特になにも思わなかった。

 障害のせいーーではない、周りの人間がどうも自分と大差ないのではないかと、そう感じる。人間にしたって、化け物にしたって、人形にしたって、どちらにしろ同じように気味の悪い生き物であることに変わらない。

 

 僕は孤独の化け物で、彼等は集団の化け物。

 

 そのくせ、自分は正しいと思っている分僕よりもたちが悪い。

 

 正義の味方なんているはずもなく、このくそったれな世界で何を目標にすればいいのか、ほとほと困っていた僕だったけど、そんな迷いもとある少女の出会いで消し飛んだ。

 

 ()()()()()()だった。

 

 小学校の自己紹介で彼女を見たとき、そう感じてしまった。幼稚園の頃の自分の意見が、考えが、理屈が、全て消え去るぐらいに美しかったのだ。

 

 そしてそんな大きな感情は例外にもれず変わってしまった。

 

 僕の感情は一瞬にして感動から、憎しみに。

 

 憎い、と思ってしまった。

 

 それが僕の最初の大失敗である、《恥まりの大失敗》を巻き起こす原因となる。

 

 第一の犠牲者にして、第一の友達。

 

 僕と彼女が友達になるまでの、失敗談。

 

 こんな話、聞いて何になるかと聞かれれば、何にもならないとしか言いようがないが、とりあえず暇にならないことを約束する。

 

 前置きが長くなってしまったけど、そろそろ語らせてもらおう。

 

 《恥まりの大失敗》、僕と彼女が友達になるまでの失敗談、そしてーーー

 

 ーーー美しい化け物と醜い化け物の話を。

 

 

 




割と最低系主人公にしていきたい
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