それは動かぬでくの坊   作:我らに幸あらんことを

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やっつけ

 化物退治が人間退治に変わった。配役がまるっきり反対である。これではまるで情緒不安定ではないか。

 とはいえ、これも仕方がないだろう。いまだに光のない目で不気味に笑っている彼女をしり目に、自己弁護をする。

 死にたくはない。だから他人を犠牲にする。この流れに、不自然な点など存在するだろうか?むしろすがすがしいまで人間っぽいじゃないか。

 これは人間どもへの復讐なのだ。散々僕をいいように使って、けなして、罵って、その報いを、やつら受けるだけじゃないか。いい気味だ。因果応報だ。ざまぁみろ。

 ……いや、無理があるな。やっぱただ死にたくないだけだわ。ごめん、山田、田中。

 

 「それで、どうしよう?」

 

 僕が一生懸命に自分の罪を正当化していると、彼女が淡々と話しを進めてきた。

 

 「なにを?」

 

 質問を質問で返しても怒らない賢人様は、冷静に、物わかりの悪い子供を諭すような声で、説明を付け加えた。

 

 「それで、ころしかたは、どうしよう?」

 「……あー、えー、そうだねぇ」

 

 心臓を打ち、血管をめぐり、血液に乗せられたブドウ糖を受け取った体の司令塔が、何度も僕の人生を救ってくれた脳みそが、人間を食物連鎖の頂点に立たせてくれた人類の象徴が、導き出した答えは、

 

 「ばくさつとか?」

 

 この上なく、最悪なものだった。

 頭上を飛び回るカラスの鳴き声が、僕を馬鹿にしている気がした。

 ただ、笑顔の彼女を見ていると、そう悪くはないかもなって思えるのだ。

 

 

******

 

 

 結論から言わせてもらいたい。死人は出なかった。ただ、大けが一人と、辞職が一人。

 辞職はもちろん先生の山田であり(先生は田中だったか?よく覚えていない)、大けがはガキ大将の山田である。かわいそう。

 爆殺とまではいかなかったが、復讐自体は済ませることができ、りんちゃんはご機嫌な様子である。

 当初の目的こそは果たせないものの、人生をめちゃくちゃにできて大いに満足らしい。彼女は体をめちゃくちゃにされたから正当な復讐だ。めちゃくちゃにしたの僕だけど。

 順を追って話そう。

 

 爆殺、という言葉は別に適当に言ったわけではない。当時の僕はなぜか爆弾の作り方を知っていた。月に一回発行される「月間 革命マニュアル」の読者だった僕は、いろいろの訳があってそういうのに詳しかったのである。

 今になって調べてみたら有害図書指定にされていた。それはそうである。

 知っていた知識を使いたくなったのか?否である。僕が欲したのは爆発という結果ではなく、爆弾を作るまでの過程である。

 過程を一から紹介するとこの話も発禁になるためできないが、目を付けたのはその材料。

 莫大な動物の脂肪。

 これである。

 当時小学二年生の僕たちは、動物を捕まえるなんてことはできないし、町の肉屋に、「動物の脂肪をください」といっても相手にされない。ちなみにその肉屋は僕がいくつになっても相手にしてくれなかった。

 つまり僕の作戦はこうである。

 爆弾を作りたいけど作れないね。だからあきらめようね、である。

 これで一安心。できっこないことに頭を悩ます天才少女の隣で、考えるふりをしてほくそえんでいた僕だけど、まあ、何事もうまくいかないのが僕であるので。

 

 「あっ、おもいついた」

 

 「おもちついた?りんちゃん、おしょうがつはまだまださきだよ」

 

 このくそつまんねージョークセンスは、どうやらこのころかららしい。

 

 「おもいついた、というのはね、しぼうのあつめかただよ」

 

 「しぼう?」

 

 志望とはなんの志望であるか。それとも死亡か。頭の出来が悪い僕は先の会話をすでに終わったものにして、すぐに反応できなかった。

 

 「だってしぼうはここにあるよ!!」

 

 そうやって自分のおなかを指さすりんちゃんである。これは頭の出来が悪くなくても、同じ反応をすると思う。

 

 「しんじゃうよ?」

 

 「わたしのやまい、わすれたの?」

 

 つまり、そういうことだった。

 どういうことかというと、

 彼女はいかれていたんだ。

 

 

 

 

 

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