果たして次はどんな依頼だろう。
うららかな暖かい日差しをうけて、草々がそよそよ揺れている。
キジムナーが持ってきた敷物の上に、おばあからの差し入れや
エン・マコの手料理が所狭しと並べられている。
「うわぁ~。おいしそうだなぁ~。これ、全部マコちゃんが作ったの?」
「うん。昨日から仕込んでおいて、今朝早く起きて作ったの。」
「すごい!ありがとう・・・・嬉しいよ」
「ジムさん、ケガ大丈夫?なんかひどかったって聞いたけど・・・」
「僕もね、ビックリしたんだ。こんな事になるなんて・・・でも
お見舞いにきてくれた人がいて、そのお粥を食べたら、元気になったんだ。
おばあも心配して、ヨモギ漢方を煎じてくれたり、いろいろやってくれたから
すぐに治ったんだ」
「そうなんだ・・・私も小さい時、よく伯母様にヨモギ漢方を作って
もらったわ。熱が上がったときとか・・・」
「え?伯母様って?」
「紫水晶様よ。」
「え??む、紫・・・・って、うちのおばあのこと?」
「そうよ」
「伯母ってどういうこと?」
「紫様は、私の母である橙の姉様なの」
「え゛え゛え゛え゛え゛!まじかい!!そうなの?」
「はい。私の母は私がまだ物心ついていないときに、
妖怪の壺に吸い込まれてしまったの」
「!!!!それって、もしかして金閣さんが吸い込まれちゃったやつ?」
「そうなの。父が吸い込まれたのを知って、母が助けに行こうとしたんだけど
一緒に吸い込まれちゃって。叔父の銀閣様も助けに行って吸い込まれたけど
壺のエラーで叔父様だけはじかれちゃったの。
叔父様は小さかった私をひきとって育ててくれたのよ」
「そうだったんだ・・・。もしかして・・・」
「どうしたの?」
「いや・・・なんでもないよ。まこちゃん、さびしい思いをしてきたんだね。」
「ううん。そんなことないよ。叔父様はいっぱいかわいがってくれたし
紫伯母様もいろいろ面倒みてくれたの」
「そうか・・・いい娘に育ってくれて、おばあも嬉しかっただろうな・・・
それで、なんか意味深にあれこれ持ってけとか言ったんだ。
ふだん結構冷たいからな。あの人・・・」
「冷たいの?」
「あ、いや、ビジネスライクってことだよ。やさしいよ。僕には思いやりあるし
いつもまこちゃんのこと心配してた!そういえば。今思うと納得だよ」
「なにかおみやげ持って帰ろうね。伯母様の喜ぶもの」
「そうだね。山菜がいいみたいだから、お昼たべたら散歩しながら
探してみようか?」
草原のさわやかな香りに包まれながら、2人は仲良く遠足を楽しんだ。
************
「おばあ~。だたいま。」
「おう、お帰り。早かったね」
「これ、おばあにお土産。山菜たっぷり。まこちゃんから」
「おーーーー。今日は天ぷらにしよう。」
「ところでおばあ、なんで黙ってたの?金閣さんと橙さんのこと」
「ぎょぎょ魚っ!もうばれてもうた?」
「みずくさいなー。なんで隠してるんだよ・・・」
「いや、あのーそのー。事実を言ったら、おまえが烈火のごとく
頭から湯気をだして、噴火して、リベンジいく!とか言いかねないと
思ったからさ・・・・」
「まあね。おばあからきいたら、そうだったかもしれないけど。
まこちゃん、愛情たっぷりに育って、今、幸せそうだから、
まいっか、って思っちゃったよ・・・おばあにも感謝してるって」
「そ、そうかい・・・それはよかった」
いつかは事実を知ることにはなろうと予測はしていたが、
思ったほど、キジムナーにとって大きな衝撃ではなかったことを
安堵するおばあだった。
(きじむなーも大人になったもんよのぉ・・・冷静に事実をみておる)
「おばあ。次の案件の準備はできてる?おばあ次第でGOだからね」
「あい、わかったよ。出発の準備はできておるぞ。いつでもOKじゃ」
「じゃ、あす早々に決行ね」
「らじゃー」
おばあとキジムナーは次の案件処理にあたろうとしていた。
********
都会の喧噪を通り越した町はずれの一画に、公営施設のアパートらしき
建物があった。
「なんじゃこりゃ?」
「うわぁ・・・腐った牛乳じゃないかな・・・」
「まるでゴミ屋敷じゃ・・・・」
「まんまだね」
「ここ、入って行くの?」
「しかたないよ・・・・」
2人は、ゴミをかき分けて、依頼人の元に進んだ。
「もしもし、そなたが依頼人かのお?」
「あ・・・そうです。私です。」
「とりあえず事情を聞いて、望みもきいておく」
「はい・・・私は若いときから、いろいろな男性とつきあってきましたが
長く続くことはなく、子もおりましたが、男性に夢中になってしまい
子供のことはほったらかしでした・・・
結局、私は良い男性にはめぐり会えず、最後に付き合った男性に
悪い病気を移され、後天性免疫不全症候群(AIDS)になってしまい
感染症を起こしてしまいました・・・
もう助かりません。最近は食欲もなく、このありさまです」
頬はこけ、やせほそり、衣類の上からもあばらがわかるほど
その女性はひからびていた。
「ほとんど動かずじっとしていましたが、近くを通った幼稚園児の歌が
耳に入ったのです。
『マリアさまのこころ、それはあおぞら
わたしたちを つつむ ひろい あおぞら
マリアさまの こころ それは かしのき
わたしたちを まもる つよい かしのき♪』
その時、私は悔い改めようと思ったのです。子供は成人しましたが
どこに行っても疎まれていました。なぜなら、人をみて態度を変えて
自分より弱いものにはひどい仕打ちをし、力あるものには
媚びへつらっていたのです。自分にとって益のないものには
徹底的にあしげにし、罵詈雑言を浴びせこき降ろしていました。
そんな様子を人づたいに知り、大変後悔いたしました。
私がこの子に愛を注がず、しつけもしなかったことから
非常識で非社会的な人間に育ってしまったことを
心から悔いたのです」
(太郎、資料をちょうだい)
(おばあ、これ)
「・・・・なるほど・・・・そうとうひどいな。
それでは、そなたは何を納めようと思ったのじゃ?」
「はい、病気になってからは働くこともできなかったので、
編み物をしていました。向こうの棚にマフラーや手袋、手提げかご等があります。
これらを私の子供に渡して、私のこれまでを謝罪したいのです。
また、残りは施設に寄付をして、親のいない子供達に差し上げて
欲しいのです。」
「わかった。そなたの気持ちを届けるとしよう。
思うに、そなたも親の愛を受けずに育ったのじゃな。情状酌量の
余地はあるようじゃ。」
「ありがとうございます・・・どうぞよろしくお願いします」
そう言い残すと、女性はゆっくり目を閉じた。
ぽちゃん
やせ細った魂は、虹色の浄化槽に送られた。
「おばあ?あのさ。まこちゃんが言ってた。両親はつぼに吸い込まれちゃったけど
銀閣叔父さんや紫伯母さんに、愛情たっぷりに育てられたから、私は幸せだって。
愛ってさ、与えられれば与えられるほど、豊かな人に育つんだね。
愛を受けたかどうかってのが、人格に影響するんだって思った。
僕も木の精霊達に、めいっぱい愛されて育ったから、すごく幸せだもん」
「そうじゃな。形は違っても、愛をたっぷり受けて育った子は、情緒も深いし
思考もしっかりとしておる。自分で考えることができるし、勉学や向上心も高い。
愛を知らない人間は本当に気の毒じゃ。人を愛して愛されて、そして人間は
豊になっていく。相手を思いやれるのじゃ。
おまえも大人になったら、まこと幸せになったらいい。暖かい家庭が作られるじゃろ」
「おばああああああああ!!!!」
「これこれ、おまえのハグ、強すぎるわい」
おばあは、成長したキジムナーが久しぶりにハグをしてきたので
照れてしまったようだ。
懐深いおばあと心暖かいのキジムナーの魂浄化の旅はまだまだ続く。
今回はいろいろありましたね。事実の発覚やら、案件の処理やら。
人間、愛は大事ですね。愛することで愛されるし、愛された人は愛を知っている。
愛は心を強くするし、自分に自信が持てる。つらいことも愛があれば克服できる。
お金は棺桶にもっていけないけど、愛は永遠。
と
宗教の時間に教わったような~
記憶はあいまいですけど、解釈は間違っていないと思います・・・
よ?