おばあの回想シーンからはじまる。
「一仕事終わると、風呂が気持ちいいのぉ~。
なんちゃら森林の香りとか、柚の香りとか、気分で選べるのがいいねぇ~
長いこと生きていると、いいこともあるもんだ」
おばあはお気に入りの入浴剤をたっぷり入れた湯船にゆったりと浸かっていた。
「そういえば、太郎との出会いもセンセーショナルじゃったのぉ。
あの雷雨の日、がじゅまるが雷に打たれて、そのそばにちっちゃいキジムナーが
号泣しておったな・・・・
親木のがじゅまるがまっぷたつになったその横で・・・」
おばあはキジムナーと初めて会った日の事を回想していた。
「みゃぁみゃぁ泣いていたキジムナーを連れて帰って
ミルクだのおむつだのとりあえず、銀閣から貰ぅて世話して・・・
だいたいおむつに男用と女用があるなんて、知らなんだ。
今時って、すごいのねぇ・・・紙おむつって出始めのころは
男女なかったと思うわ。トイレットトレーニングのために、わざわざ布おしめを
使う人もいたし。布だと不快だから、すぐに排尿を訴えて、おむつはずすのが
早くなるってね・・・
子供産んだことないのに、子育てすることになっちゃって・・・
あっという間に太郎もまこも大きくなりよってからに」
それまでは、おばあは妖怪連盟から指令を受けて、困った人の相談に乗っていた。
今はバイトで手紙相談だけを受けているが、当時は東西南北、世界各国を股にかけ
相談者に面会に行っていた。
ある時、おばあが手紙相談を受けた際、異空間移動能力を使って
遠隔地に到達した。そこで、死後、魂を浄化してほしいと頼まれたのだった。
なぜ依頼人はそんな事を頼んだかというと、その人物は魂浄化層の存在をを知っていたからだ。
依頼人は西洋僧侶で、聖職者として罪をおかしてしまったため、おばあに
死後の魂浄化を依頼した、というのが魂浄化作業のはじまりだった。
ちなみに、この聖職者の罪とは、異性を好きになってしまったのであった。
人間として生まれてきたならば、異性を好きになるのは自然のことであるが
この西洋僧侶の場合、人々に奉仕するために結婚はせずに神様のご意向に沿って
人々を助けます、という誓いを立ててしまった以上、恋に落ちてはいけないと
思いこんでいたからだ。
実際、西洋僧侶になっても、職を辞めて結婚した例もある。男女共に
聖職者だったが、一緒に奉仕活動をしているうちに、惹かれ合ってしまった。
そのままでは当然禁断の恋であるが、一旦辞職してしまえば、神の祝福のもと
家庭を築き守り、子を社会に送り出すという使命に変更されるだけのことだ。
しかし、おばあに魂浄化を依頼した西洋僧侶はそのどちらも捨て去ることができず
罪にさいなまれ自暴自棄になってしまった。
この西洋僧侶に会おうとした時には、まだキジムナーはちいさかったので
ひとり置いていけないため、やむを得ず、おぶって連れていった。
すると、キジムナーはどこから持ってきたのか、おばあの背中から手を伸ばし木の枝を渡したのだった。おばあがその枝を振ると、突如車が現れた。それが、今利用している異空間異動号である。
普段から子供用のゴーカートを乗りこなしていたキジムナーは
おばあの背中から降りると、すっとその車に乗り込み、さっそうと運転を開始した。
その時から、キジムナーはおばあのアシスタントとなって
魂浄化の行脚をすることになった。
「太郎も成長したのぉ。こどもなんてあっという間に大きくなるもんじゃ。
小さい頃は、よく生まれ育った森林に連れて行って、銘木古木達に絵本を読んでもらったなあ。
おかげで、あの子も本が大好きになりよった。
他にも、まこが読んでいた本を借りてきたり、こっちにあった本を持っていったり
妖怪連盟から送られた本を共有したり。
本を読むことは子供の情緒発達に良い影響をあたえるもんじゃ。うん。
それにしても、いろんな物語を考える人がいるんじゃなあ。
最近はネットでも読めるから、わざわざ本屋に行かなくてもよくなった。
ネット小説は、なかなかおもしろいからたくさんさん読みたくなってしまって、
時間が追いつかないわい。みんな本当に上手じゃ。
浄化作業の合間に見るのが楽しくて楽しくて。老後の楽しみにとっておけんわい。
って、わしの老後っていつ???
更新が楽しみじゃなあ~。」
昼下がりのおばあのひとりごとだった。
人間楽しみがないと寂しいですよね。
私もいつも楽しいことを探しています。
楽しいことがあれば、つらいことも乗り越えられると、信じて疑わない今日この頃。