Another〜夜見山北中学校三年三組の日常〜   作:いないもの

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第1章 日常編
第1話 病院


「ハァ・・・・・・ついてないな俺も」

 

何一つ特徴の無い、真っ白い病院の天井を見つめながら俺はため息をこぼした。気分転換に窓の外を見ると春の訪れを知らせる暖かなそうな日差しが降り注いでいた。今すぐ外に出て暖かい日差しを浴びなら走りたいが、あいにくそんな事はできない。

何故なら俺の肋には包帯が何重にも巻いてあり、左足首はギブスでガチガチに固められつらされているからだ。少しでも体を動かそうとすれば骨に響き。

 

俺がこんなことになってしまった原因は交通事故だ。俺はここ夜見山市に先月引っ越してきたばかりだ。前住んでいた場所は日本の首都東京都だ。何故都会の東京からこんな田舎の夜見山市に引っ越すことになったのかそれは両親がオランダに長期出張が決まったことが理由だ。最初は俺も両親に着いていきオランダに行くはずだったのだが祖父が「中学生には海外はまだ早い!!」と両親に怒鳴り俺は両親の出張が終わるまで祖父母の家で過ごすことになった。

 

祖父母の家は夜見山市の北の方にある。俺は四月から新しい学校生活に備えてせめて学校までの道のりぐらいは覚えておこうと思い散歩がてら四月から通う夜見山北中学に向かった。

そして、夜見山北中学の手前にある横断歩道で俺は車に轢かれてしまった。原因は車側の信号無視。車が信号無視した理由は「休日だから人は渡らないと思った」らしい。いくら学生しか使わない道だといってもルールぐらいは守って欲しかった。

 

俺はそんなことを思いながら窓の外の景色を見つめつつ静かに目を閉じた。

 

 

 

「おーい、武術少年君」

 

眠りに入ってから数時間後。俺は入院してから結構お世話になっている病院の看護師水野沙苗さんに起こされた。俺は目を覚ますと外は既に薄暗くなっていた。

武術少年とは水野さんが勝手につけた俺のあだ名だ。俺は祖父の影響で空手や剣道やカポエラをやっておりそれが理由で俺のことを武術少年君と呼ぶようになった。因みに俺はそのあだ名を呼ぶことに関して許可した覚えは無い。

 

「水野さん、どうしたんですか今日は?」

 

水野さんはほとんど毎日「暇ー!!」と言い、俺の病室に顔を出しその日にあったことを永遠と話して行き、帰りにはオススメの本だと言い何冊も本を置いて行くのだ。本を置いて行くのはいいのだがほとんど毎日本を置いて行くため読むスピードが間に合わず本が溜まるばかりで困ったもんだ。

 

「今日は君にお客さんが来たから、知らせに来たのよ」

 

「客?」

 

俺は水野さんの言葉に首を捻った。客と言っても俺の見舞いにくる人など祖父母ぐらいしかいないはずだからだ。こんな平日に誰だろうか。

そんな事を思いながら視線を水野さんから病室の扉に移した。そこには紺のブレザーに身を包んだ男女が立っていた。

二人とも眼鏡をかけており、男の方は一般的な体型で色白だった。女の方は少しぽっちゃりしていた。両者とも見る限り優等生タイプだった。

 

「こんにちは。僕たちは夜見山北中学校三年三組の者です」

 

男はそう言うと水野さんと入れ違いに病室に入っできた。

 

「僕はクラス委員の風見智彦。こっちは同じくクラス委員の桜木さん」

 

「はじめまして。桜木ゆかりです」

 

「どうも」と適当に返事を返して、俺は二人に頭を下げた。「夜見山北中学校」とは俺は転校する学校の名前だ。そしてこの二人はこれから共に勉学に励むクラスメイトだろう。

 

「僕たちはクラスを代表してお見舞いに来たんだ。ところで大変だったね・・・・・・。二ヶ所骨折したって先生に聞いたけど」

 

「ああ、まあ。肋と左足首をね。でも大丈夫だよ、先生が言うにはあと少ししたらギブスが取れて退院って言ってたから」

 

「それは、よかったですね」

 

女・・・・・・桜木さんはそう言いニコリと笑みを浮かべた。恐らく愛想笑いだが、とても癒された気持ちになった。やはり女子の笑顔はとてもいいものだ。そんなこと思っていると話題が尽きたのか間が空いてしまった。俺から話しかけるのもあれだったため二人が口を開くの待つことにした。

 

「・・・・・・・・・・・・。桂間君は夜見山市に住むのは初めて?」

 

しばらくするとようやく風見君が口を開いてくれた。しかし、風見君の質問は少し妙な質問な気がするがここは正直に答えることにした。

 

「一応住む自体は初めてだよ。ここは祖父母の家があるから夏休みとかよく遊びに来てたけど、それがどうかした?」

 

「あっ、いや桂間君は東京の中学に通ってたのに、わざわざこんな田舎に来るなんって珍しいなって思って」

 

「風見君。あまり人の家庭事情を詮索しない方がいいよ」

 

「あっ、そうだよね桜木さん。風見君もごめん」

 

「あっ、いや大丈夫だよ」

 

なんか風見君を見ていると、何やら照れくさそうにしている。最初は初対面の人と話していて照れくさそうにしているのかと思ったらどうやら違うらしい。

さっきから、桜木さんを意識するように話しているし、桜木さんが注意するとすぐに桜木さんの言うことをきいているし、恐らく風見君は桜木さんに好意を抱いているのだろう。

だが、桜木さんは風見君に何の感情も抱いていないようだ。これがホントの片想いなのか、もし退院したら俺は風見君の恋を応援しよう。

 

「風見君。そろそろ・・・・・・。」

 

「あっ、そうだね桜木さん。じゃあ桂間君、お大事に。学校で待ってるから」

 

「またね桂間君」

 

しばらく、風見君と話していると桜木さんが時計を確認して風見君に声をかけた。風見君は桜木さんに声をかけられると直ぐに帰る準備をし俺に一声かけて桜木さんと共に病室から出て行った。

 

「あーあ、また暇になったな」

 

二人が病院を出て行ったあと、静かになった病室でそう呟き、再び目を静かに閉じた。

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