Another〜夜見山北中学校三年三組の日常〜 作:いないもの
風見君と桜木さんが俺の元に来訪してから数日後。折れていた骨は綺麗にくっつきガチガチに固められていたギブスもとれ、やっと自由に歩き回れるようになったのだ。
自由に歩き回れるようになった俺は運動がてら院内をブラブラと歩くことにした。ここ夕見ヶ丘市立病院はとても古く、ところどころガタが来ていた。それでも施設としては立派な病院だ。
昼食を取ってからしばらくして俺は院内をブラブラと歩くことにした。まぁ市内では一番大きい病院であるが、デバートや水族館などとは違い見て回る部分も無く20分ぐらいで俺は院内を回りきってしまった。
院内を回りきった俺は喉が乾いたため一階に行き自動販売機で水を買うことにした。
「誰かー!!お願いそれを止めて!!」
「えっ?」
自動販売機で水を買いその場で水を飲んでいると、後ろの方からガラララと何かがこっちに向かってくる音と水野さんの叫び声が聞こえてきた。俺は「何ごと」だと思い後ろを振り返ると体温計などが乗っているワゴンカートが迫ってきてきた。俺は思わず「ええええ!?」と驚きの声を上げたあと両手でワゴンカートを止めた。
「ナイスキャッチよ武術少年君!!流石ね!!」
「いや、何やってるんですか・・・・・・。一歩間違えたら大事故になってましたよ」
「いや〜、本当に助かったよ。たまにこうゆうのやっちゃうのよね〜」
「いや、こんなことしたら駄目でしょ」
俺がワゴンカートを止めてからしばらくしてワゴンカートを暴走させた張本人水野さんが俺の元にやって来た。どうやら、水野が言うにはこんなことはたまにやってしまうらしい。よくそんな事を起こしておいて事故が起きないのか不思議しょうがない。これを気にお願いだから少しは反省してほしい。
「あら、もう自由に歩いて大丈夫なの?」
「あ・・・・・・はい。一応骨をしっかりくっついたので大丈夫です」
「あっ、でも激しい運動は禁止だって、先生が言ってたわ」
「へぇ〜、そうですか。それはご忠告ありがとうございます」
「あ・・・・・・あれ?武術少年君、なんか怒ってる?」
「いえ、別に俺はこれぽっちも怒ってはありませんよ・・・・・・」
「そ・・・・・・そう、それなら良かったわ。それじゃ、私は仕事があるからお大事にね」
水野さんは俺の左足首を見て心配そうに俺の足の状態を聞いてくれた。色々あったがこうやって俺の心配をしてくれた水野さんに心から感謝をした。だが、水野さんが次に放った言葉によってその感謝は無かったものになってしまったが。
水野さんは俺が少し怒ってることに気がつくと、そそくさとワゴンカートを押しながらその場を後にした。
「ぎゃーーー!!」
「キャッ!!おじいちゃん大丈夫!?」
「腰・・・・・・腰があああ!!」
しばらくすると、遠くから何かがぶつかる音と老人の悲鳴と水野さんの叫び声が聞こえてきた。どうやら、水野さんはワゴンカートを老人の腰に思い切っりぶつけてしまったらしい。
つくづく俺は思う。この病院はこれで本当に大丈夫なのかと。
「おっ、ラッキー。ちょうどいいタイミング」
水を飲みほし自分の病室に戻ろうとした時、ちょうどいいタイミングでエレベーターが降りてきた。俺は駆け足でエレベーターに乗り込んだ。
すると、エレベーターの隅に先客がいたことに気づいた。先客の正体は右眼に眼帯をつけフランス人形を大事そうに抱えている女だった。
女の服装は数日前に見舞いに来てくれた桜木さんと同じカーディガンだった。
「なぁ、その制服って夜見山北中学だよね。もしかして、君も夜見山北中学の生徒?」
俺がそう質問すると、女は少し間を開けてコクリとうなづいた。
俺は何気なくこのエレベーターが何処に向かっているのかと確かめてみると、どうやらこのエレベーターは地下二階に向かっていた。
地下二階。そこには入院している患者などは一人もいないはずだ。それなのにこの女は地下二階に何の用があるんだ。俺は不思議でしょうがなかった。
「な・・・・・・なぁ、ここ地下二階だぜ?一体なんの用が?」
「────届け物があるの」
「届け物?誰に?」
「私を待っている、かわいそうな私の半身が」
俺は女に地下二階になんの用があるのかと尋ねた。女はまた間を開けて届け物があると答えた。恐らく届け物とは大事そうに抱えているフランス人形のことだろう。更に誰に?と尋ねると女は間を開けず「かわいそうな私の半身」と答えた。
「あ。なぁ、きみ名前は?」
「メイ。ミサキ・・・・・・メイ」
俺は思わずエレベーターを降りた女に名前を聞いた。女は薄暗く廊下を進みながらミサキメイと答えた。俺はエレベーターの扉が閉じるまでずっとミサキメイを見ていた。
そして、ミサキメイと出会ってから一週間後の五月十二日。俺は無事退院し向かいに来てくれた祖父と共に家に帰った。