冒険に異世界を求めるのは間違っているだろうか   作:その辺の人

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意欲はあるので続けます。
書き方は勉強と思って変えていきます。ご容赦ください。

やっぱり会話書いちゃう。おかげで5000文字なんてあっという間。どうしよう。


疑問と我慢と噂と変身

ベルは、一人ダンジョンを攻略していた。

目的はヘスティアにもらった新たな得物、真っ黒なナイフの試し切りを兼ねた生活費稼ぎ。

今日は片手にナイフ、もう片手に得物は持たず、石ころ、薬瓶、魔石灯、使えるものを必要に応じてころころ使い分けている。

本当は両手にそれぞれ短剣が欲しかったベルは、休憩を行う。

ふと、この前まで使っていたバッツの短剣が如何に出来が良かったか気付いた。

この街で恐らく最も有名で、多くの高名な鍛治師を抱えるヘファイストス・ファミリア。その銘が彫られたこの黒い剣は、はじめて握ったあの時から既に使い古したかのように馴染んでいた。それはとてもよい剣だということだと思う。

だが違うのだ。

あの短剣、バッツはグラディウスと呼んでいたあの剣は、何か厳かな、寝起きに浴びる朝日のような、そんな奇妙な感覚を帯びていた。それにベルにとってはバッツが付いてくれているような安心感があった。

正直グラディウスの切れ味はこの神様の短剣と比べてもかなり良かった。その頑強な刀身はどれほど強く壁に打ち付けてしまっても刃こぼれひとつなかったし、なんなら防御につかっても全く傷つかず平気な程。

シルバーバックと戦った時も、刺せば刺さると踏んで武器に頼った結果、自分の技術不足で中途半端に状況を悪化させたように思う。

ベルは握った黒いナイフが間違いなく凄い武器であると疑わなかったが、バッツの短剣が全く別のものに思えた。

まるでこの世のものでないような…。

バッツはグラディウスを拾ったと言っていたが、ベルには信じられなかった。

ベルはバッツの事をそれほど知らない事に気付き、考えた。今頃バッツは神様とどんな話をしているだろうか。

忘れたと言うことは、ステイタスもゼロに戻るのか?バッツへの疑問は尽きないが、その本人が最も困っているのだ。支えてあげるしかない。僕がバッツの分まで強くなるんだとベルは覚悟を改めて潜った。

 

「7階層!?」

ベルは戦利品を換金しにギルドへ行くとエイナに危機感その他もろもろが足りないと怒られた。

ベルは威圧に耐えて悲鳴をこらえながら、バッツに教わったあれこれと、エイナの知識に、観察を徹底すると問題なく7階層を攻略出来たことをアピールした。

「基本を守ってるんです。ほら、怪我ひとつないでしょ?」

エイナはベルを不用心だと思いさらに勢いを増して叱りつけた。

「怪我してからじゃ遅すぎるの!あなたはこの前!どんな思いをしたんだっけ!?」

ベルはバッツの事を誰にも口外しないようヘスティアから口止めされていた。バッツへの心配からか適当に答えるベル。

「シルバーバックに…」

エイナはついに周囲の職員も振り向くほどの大声を上げ少年の話を遮った。

「その前!殺されかけてるでしょ!?くちごたえなの!?と言うかシルバーバック!?」

「す、すいません…」

ベルは思わず謝ったが、説教が再教育の授業に変わる前に、ステイタスが到達階層に対して妥当であると主張した。

「でも、僕だってステイタスがDまで来たんです!」

ベルが本気で言っているように聞こえ、怒気を押さえて聞き返すエイナ。

「本当に?」

この後エイナは、まだ日の落ちていない時間に不安そうな子供を小部屋へ連れ込む様を同僚に見られ、ステイタス覗きの誤魔化しに忙しく過ごした。

 

ーーーー

時は少し戻って。

ベルが一人でダンジョンへ向かった頃。バッツは強気なヘスティアに再び厳命された。

「ジョブチェンジ及び魔法及び魔物が飛び出すツボとか、それっぽい目立つ特技とか、空飛ぶのも禁止!」

「えー。」

「えー。じゃない!あの騒ぎはもうどうしようもないよ!」

バッツが飛び入りとしてテイムを行ったあの一件は、以前ミアハの店に押しかけた神々の一部がヘスティア下界伝説の外伝と称し現実離れした尾ひれを山ほどつけ、噂話として蒸し返していた。

今日もじゃが丸くんの屋台にて労働予定であったヘスティアが顔を出すまでもなく、今日はお前に会いたいという人が多すぎて仕事にならないから店に来るなという旨の速達が届いている。

まだ部屋から出ていない二人は知る由もないが、噂の内容は要約するとこうだ。

 

かつて男娼としてヘスティアに遊ばれたあの男は実は神に恋したせいで非業の死をとげた勇者の末裔。

自分の血筋など知らない彼は真の力を発揮しないまま慎ましく過ごしていた。

ある日の事。ほとんど裸で街を闊歩しても誰もものが言えないほどの権力者がヘスティアに惚れた。彼はそのときヘスティアの側にいたことで俺より美しい男など許さんと目の敵にされてしまう。

その後、怪物祭を利用し無理やり戦いを強要されると、仕方なくその力を振るった。

 

意味不明である。

しかし、街の状況は推して知るべしとでも言いたげな内容の手紙は店がヘスティアを守ってくれている証拠であり、バッツも街に出れば様々な危険が待つことは想像に難くない。

そんな面倒事の危険を感じる二人は廃墟地下の狭い部屋から、往来を歩く自由を得るために必死に会議していた。

実際は二人の想像より騒ぎの規模はずっと小さく、ごく一部の街の噂好きが鮮度の良い世間話のために本気で駆けずり回っただけである。

 

外に出れないまま、延々と禁止事項を並べたヘスティアにうんざりしたバッツは立ちあがって言った。

「要はここでならジョブチェンジも魔法もありなんだろ?」

ヘスティアはすかさず言い忘れていた大事なことを付け加えた。

「ベルくんの前でするのも禁止!今なら良いけど…」

バッツはヘスティアが言い終わる前にパッと光るとすっぴんから三つ星を携えて大きな帽子とローブを身に纏った。顔は帽子の影になって全く見えず、長い襟を立てると横顔の輪郭さえ伺えない。

「これでどうだ!」

ヘスティアは相変わらずの妙技に思わずベッドから立ち上がった。

「おお~、いいね!」

言い終わってから思いついたヘスティアは、ぱんと一つ手を叩くとそのまま続けた。

「そうだ、ここで魔法でも何でも使って変装して、買い物ついでにシヴァに会いにいこうか。」

バッツはラムウ以外の知りあいがこの街にいることを知って、今日初めて笑った。

 

ヘスティアとともにガネーシャ・ファミリアへ向かう道中は快適だった。

ヘスティアは折角だから魔法でよろしく頼むよとバッツにねだり、ミニマムをかけられると小人族の子供にしか見えない姿になってとてもはしゃいだ。

ローブの大人が幼女に引きずられる光景は、さしずめ理屈の効かない子供に連れ回される魔法使いの親といったところか。二人とすれ違った人々は思わず微笑んだ。

 

本物の子供より子供らしく、跳ねるように前を歩くヘスティアへ、バッツが聞いた。

「シヴァの他に誰がこの街にいるんだ?」

ヘスティアの声は日頃より幼くなっている。見た目に合わせてか、元気良く返した。

「わかんない!」

バッツは拍子抜けした。街の落ち着いた様子に、ホームでの会議が杞憂だと感じ、気だるそうに言った。

「外、思ったより平和そうだぞ。やっぱり心配しすぎたな。」

ヘスティアは子供になって浮かれていても、実際バッツと似たようなことを考えていた。我に返って少し落ち着いた歩き方になったが、振り向かなかった。街がどうだろうとバッツが心配だった。

「…しすぎてない!」

少し歩いて、バッツはヘスティアに合わせるのが面倒になった。

「変身解くか。この帽子暑いし。」

いつか言うと思っていたセリフへの対抗策として無視を決め込んだヘスティアは、駄々をこねる子供よろしく言いっぱなした。

「ダメー!」

言うが早いか走り出したヘスティアに驚いたバッツが追いかける。通りを抜けて広場を曲がると、目の前には大きな象が現れた。ガネーシャ・ファミリアのホームである。

ヘスティアは門番に近づいて話しかけた。

「お久しぶりというほどでもないかな?お勤めご苦労様です!」

門番は初めて見る顔に、素直に返した。

「んん?君とは初めましてだね?その年で言葉遣いがしっかりしていて偉いじゃないか。」

えへんと胸を張る子供の後ろに近づいてきた大きな帽子に門番は警戒した。のっそりと、気だるそうな歩き方で近づく帽子が暑さに負けて外され、汗にまみれたバッツの顔が見えると、門番の顔は明るくなった。

「ここにシヴァはいるか?」

案内した門番は、いつかのように気さくでないバッツに違和感を覚えた。しかし急ぎの用事故の余裕のなさだろうと考え彼の異変に気付くことはなかった。

ヘスティアはバッツの子供ですと言い張ってほとんど無理やり付いて行った。おそらくオラリオ広しといえどもそんな適当な理由でホームの門を開けるのはガネーシャ・ファミリアだけだろう。

 

シヴァの部屋に付いたバッツとヘスティアは、読み物を止めたシヴァに座るよう促された。

シヴァはヘスティアの酔狂な変装を一瞥するだけで看破し、すかさず椅子を引くローブの男へ視線を動かす。

バッツは、シヴァと机を挟んで向かい合って座るなり、挨拶もなく睨みつけられた。

「バッツ。どの面下げて私に会おうなどと考えた?」

ヘスティアはシヴァの本気に固まった。もとより強面の切れた目つきがさらに目尻を釣り上げ、燃えるような灰色の髪が体の震えに合わせて炎を思わせる。彼を神と知っていても悪魔に違いないと思ってしまいかねない形相だった。

バッツは気圧されながらもはっきりと答えた。

「俺の知り合いはラムウとお前しかいないんだ!見た目は変わっても俺にはわかるぞ!聞きたいことがあるんだ。」

シヴァは閉じた本を机に投げて言った。

「お前はこの期に及んでシラを切るのか…」

ヘスティアはバッツを守るために自分を奮い立たせ、神威を発しながら目の前の悪魔へ正直に伝えた。

「バッツは…今記憶がめちゃくちゃでね。落ち着いてよ。シヴァのことを覚えていたのも運が良かったんだよ。」

シヴァは素直に驚愕した。ヘスティアの素直さは、身内の事となれば尚更であることは知っていた。その言葉は怒る彼の心にすんなり受け入れられた。

 

しばらくの静寂のなか、シヴァは怒りを少しずつ収えた。

「すまなかったな。二人とも。私はどうにも怒りが抑えられない質でな。大変な時に状況を悪くさせてしまうところだった。」

バッツはシヴァが男に変わっている事より現状の理解を求めた。

「なんでもいい。教えてくれ。仲間たちは無事なのか?」

シヴァがかいつまんで過去を伝える。まるで神話のようなその内容はバッツの脳裏を過ぎる超常の数々を肯定するものだった。

最後に、仲間と世界の安否を聞き、安堵した表情のバッツを見たシヴァはようやく柔らかい表情を見せた。

「お前が変わっていないようで何よりだ。だが、怒っていたのはまさにそこでな。お前なら祭りがあのような惨事になる前に終わらせられる。面倒なら竜王でもなんでも呼んでしまえばそれで十分だった。」

竜王の2文字がさらっと飛び出し固まったヘスティアをよそに、バッツは頭を掻きながら答えた。

「アイツ山くらいでかいんだぞ。街が滅ぶだろそんなの…冗談はさておき、俺もなんのこっちゃわからないまま街を歩いてたもんだからさ。体の調子もずっとおかしいし。寝起きみたいに力が入らなかったり、昔を思い出すと首が痺れたり。」

シヴァは顎を撫でながら言った。

「体のことはきっと良くなる。気楽にしていろ。それと、お前にもう何度目かわからんが通り過ぎようとしている春があったことも覚えてはいないか。」

ヘスティアは竜王など忘れて浮足立った。初めて聞く、戦いばかりであったバッツのうわついた話である。

「その話詳しく!!」

シヴァは微笑んで返した。

「詳しくはお前の新たな職場の取締役にでも聞けばいいだろう。やたら値札にゼロの多いあの武具屋だ。そういえばお前もたくさんゼロを抱えていたな。」

ヘスティアは苦い顔をした。

「ぐぐ…そんなとこまで知っているのかい…?でも、バッツのあれこれは聞かせてもらうよ!会の一員として、絶対ね!」

バッツが割って入った。

「春って?」

二神は呆れながら口をそろえて言った。

「「惚れられているんだよ。バッツ。」」

バッツは、持ち前の好奇心に珍しく、惚れてきた相手とやらに興味を示さなかった。

「ふーん。それよりその本、何が書いてあるんだ?」

シヴァは本の表紙をなぞった。神々の文字でウォリアーズ・オブ・ライトと書かれている。

「ラムウの書いた戦う人々の話だ。まあ人でない主人公もいるが。実は無断で拝借しているのだ、今の話は忘れろ。…さて、お前が何をするかわからん危険人物になった以上、何かの備え程度はするか。ではな。」

結局現状に変わりはなかったが、バッツは仲間が平気だと分かり心がすこぶる晴れた。

皮肉が出る程度にはストレスを溜め込んでいたらしいシヴァに、危険人物でないと訂正を入れるヘスティアをなだめながら別れを告げ、街へ出ると、日差しと空腹がすっぴんにもどったバッツに昼を過ぎている事をしらせた。

 

「じゃあ僕は新しいバイト先に行かないと。今日だけはまっすぐ帰っておとなしくするんだよ!」

一方的に言い終わると走り出してしまったヘスティアは、この後ミニマムの解けていない体でヘファイストスを閉口させた。無論、武器も持ち上げられない腕力では、仕事がまともにこなせるはずもなく、追い返されることとなった。

 

ヘスティアと別れたバッツは、街の構造をすっかり忘れていたことを思い出した。

怪物祭の日にもらった地図の存在を思い出し、開くと丸がついている。意味の分からないこの丸に興味を引かれたバッツは、まっすぐ帰る言いつけなど放り投げて駆けだした。

 

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