冒険に異世界を求めるのは間違っているだろうか   作:その辺の人

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特に進みません。会話を並べてみたい衝動に駆られてしまったのでバッツの1日を書いてみました。
それでもよろしければどうぞ。


(会話のみ)無意識の苛立ち

「良い格好だな!似合ってるぞ。」

「ありがとうバッツ!見てよこれ、エイナさんが選んでくれたんだ!」

「それは?」

「見たままの前腕用プロテクターなんだけど、こうするとナイフが内側に挿しておけるんだ。僕はすぐ武器をダメにしちゃうから、今日は予備のナイフを入れておくんだ。」

「へぇー、便利なもんだな。俺も使ってみようか。」

「えっ?マネしないでよ!」

「もうお気に入りか。じゃあそいつを壊さないように腕を上げないといけないな。」

「うん。でも僕だって少しは強くなったんだ。色々忘れてるバッツになら一本取っちゃうかもよ?」

「俺は負けず嫌いだからぜったい譲ってやらない!」

「…変わってないみたいでよかった。」

「なんだ?聞き取れないぞ。」

「なんでもない!」

「そうか。それじゃあ…」

「「いってきます!」」

「いってらっふぁ~。ぐぅ…」

 

ーーーー

 

「あれは…おはようございます!シヴァ様。」

「おはようシヴァ。」

「いい朝だな二人とも。突然で悪いがベル、バッツを貸せ。」

「なんだって?ダンジョンに行くからそのあとじゃダメか?」

「ダメだ。彼女は忙しく、朝が最も都合がいい。」

「誰か待たせてるのか。それにしても、服が湿ってるな。いつから外にいるんだ。」

「なに、朝日が出るころ着いたから、ほんの一刻ほどだ。」

「早いですよ…どうしたんですか本当に。」

 

「察しが付くとは思うがバッツは興味のない問題を放置するからな。」

「この前の俺は何をしたんだ…」

「バッツに限って悪いことはしないから、きっとちょっとした勘違いとか、何かのお礼だよ。」

「ベル。お前はもう低い階層なら問題ないのだろう?ヘスティアが自慢していたぞ。ガネーシャに尋ねたがお前の攻略は事実ならとんでもなく早いと言っていた。」

「そうなんですか!?へへっなんか恥ずかしいけど、嬉しいなあ…」

「良かったな、褒めてもらえて。じゃあ悪いけど先に行っててくれ。できるだけ急ぐよ。」

「わかった。今日は7階層まで行くから、早く来てよ!」

 

「…行ったか。やはり子供は乗せやすくて良い。」

「そういうの、どこで覚えるんだ?」

「お前だよ。」

「なんだって?」

「気にするな。さて、ヘファイストス・ファミリアの工房へ行くぞ。」

 

ーーーー

 

「バッツ!会いたかったぞ!」

「なんだこいつ…こんな暑い部屋で元気すぎる…」

「…そうだな、ここは少々暑い。」

「無視するな!このまえ詰め寄ったことは本当に反省している!だが神シヴァの巡り合せでまたこうして顔を見れたのだから喜ぶなというほうが無理という話だ。」

「そうなのか…俺はバッツ!悪いけど名前から教えてくれ!」

「…その冗談は少し堪えるな…」

「悪いことに冗談ではない。それにお前を嫌って言っている訳ではない。」

「神シヴァ…では、バッツは?」

「ああ、オラリオでの生活どころか人生の記憶もおそらく虫食いだ。だからこうして顔を見せておこうと思ってな。」

「そういうことなんだ!まあその感じだと、俺と仲は良かったんだろ?俺はあんたになんかしちゃったらしいな。」

「…ああ!私は椿。正直に言えば我がファミリアで装備を買ってくれて、剣術を披露してくれたというだけだ。」

「ほう、どうだった?」

「それは筆舌に尽くしがたい素晴らしさだった!剣舞など切り口を見るまで戦闘用だと信じられなかったほど華麗なものだった。さらにその後上等な鎧を安物で刃こぼれ一つなく貫いて見せた。彼は本物、少なくとも私が見たなかでは一等腕が良い。」

「そんなことしてたのか。ひとごとに感じるよ。」

 

「椿、そこまで見たなら、お前が正気を保つためにもバッツはあらゆる意味で類を見ない人間だということを覚えておくべきだな。それで、この状況、私はお前がこいつに不利益なことをしなければ干渉しないでいるつもりでいる。」

「…どういう意味か具体的に教えていただきたい。」

「なあ、俺はどうすればいいんだ?」

「…たとえほかの女が卑怯というようなことをしても止めず、そしてその後どのような結果になっても私とヘファイストスはお前の味方だと言うことだ。安心して臨むといい。」

「なんと…これ以上慣れないことをして恥ずかしい思いをするのは、突然で覚悟が…」

「なあ!俺は何すれば…」

「まあ待て。椿、このまま黙りこんでしまえば好機のはずが悪くなるばかりだぞ?」

 

「ええい!バッツ、私はお前の剣に惚れた!まずは専属契約から始めてくれないか!」

「はあ、専属契約ってなんだ?」

「私が、お前の装備を作りたい!だからこれからは私が作る専用の装備だけをつかって冒険してほしい!そういう約束だ。」

「嫌だ。」

「!」

「なんでも気になるものは着けてみたいし、俺は拾い物の装備でも十分だ。今はこいつもあるしな。」

「くっ、だがその防具は、私が作ったものだ!」

「そうなのか!よく出来てるよ。動きやすいし、見た目より軽い。」

「光栄なことだが、その姿を見るにダンジョンへは潜ってないのだろう?」

「とりあえず道がわからなくなって帰ったけど、一人で10階層までは行けたぞ。」

「!?」

「なんだその顔、信じてないな?」

「…こちらを見るな。バッツが嘘を言っているようには見えん。」

「…無傷じゃないか。」

「まあ、無駄にやられることないだろ。」

 

「神シヴァ。バッツがここにきてからどのくらいたったかご存知か?」

「半月ほどになるか。私と同時にオラリオに来たのだ。それまでは当然ファルナなどないが、まあ問題ないだろう。」

「大ありだ!10階層を踏破できるものは9階層に比べパーティーでさえ目に見えて減るほど危険だ!剣の腕だけでは到底安心できない!」

「一通りのモンスターは倒したけど、あのくらいなら何回潜っても大丈夫だ。次潜るときは地図を買って、12階層までは行きたいな。」

「冗談じゃない。なんと言おうがそんな無駄死には許さない!」

「なんだよ!今までもそうやって生きてきたんだ!知らない事を知るのが危ないのは当たり前!それでいいだろ!」

「!…いったいどんな経験を積めばそんなことが言える?」

「過去の詮索は無しだ。結局はみな過去の話をせずにいられないのか。無理はないが、ここまでだな。」

 

「待ってくれ!どうしても潜るなら私の防具を着てくれ!バッツには生きて帰ってきてほしい。」

「…別に死にに行くつもりはないけど、そんなにいいものなのか?」

「ああ、今使える上等な素材はミスリルしかないが、下層の攻略には十分だろう。」

「ミスリルか。高そうだしやめとくよ。そんなに金を持ってないんだ。」

「金など取らない。いつか私の鍛えた得物で技を見せてくれればそれでいい。」

 

「なんか目が怖いんだよな…素直に受け取りづらいんだ。狙いがあるんだろ。」

「一目惚れなんだ!諦める気は毛頭ない!」

「お、おう…」

「…お前もこっちをみるな。好きにするがよかろう。」

「あ、あー…興味が、持てないな…じゃあまた、会うことがあれば…」

「帰るのか!?」

「酷いことになったな。笑い話にしかならん。では椿よ、義理は果たしたぞ。」

「あ、ああ…感謝する。」

「ああそれと、ヘファイストスによろしく。」

「…諦めないぞ!今度はこちらから遊びにいかせてもらう!」

「ああ、いつでも良いぞ。でも今みたいに押しつけるのはナシで頼む!」

 

ーーーー

 

「…こうも何もないとは思わなかった。お前というやつは、伊達に王族の椅子を蹴っていないな。」

「まあ、怖かったからな。顔が。もっと普通にしてれば良いのに。」

「だがバッツ、これでお前もこの街で一人きりでない事ははっきりしただろう。心置きなく人を頼ることだ。」

「最初からそれが言いたかったのか。わざわざありがとう、元気が出たぜ。」

「ヘスティアに似たか?」

「そんなこと、あるかもしれないな。」

「ふっ…楽しんでいるようだな。」

「ああ!思い出せないってのもこれはこれで新鮮な感じだ!じゃあ俺はダンジョンへ行くよ。」

「さらばだ。」

 

ーーーー

 

「さて、7階層だって言ってたし、この辺にいるかな。」

「ベル様凄いです!あそこにもキラーアントが!」

「…ベル様?モテるのかあいつ、やるなあ。」

「ふう。これで一通りかな。」

「ケガはないな、俺もやるぞ。」

「バッツ!待ってたよ!」

「!…噂の師匠様ですね!お初にお目にかかります!リリです!」

「始めまして。バッツだ。多分俺はその師匠とやらじゃない。」

「僕が師匠だって紹介したんだ。それであの天井のキラーアント、どうしようか…。」

「任せろ、よっと。」

「凄い投擲ですね!さすがです!」

 

「お前はなんか、子供っぽくないな。」

「…申し訳ありません。」

「なんてこと言うのバッツ!」

「そもそも子供が当たり前な顔でモンスターの腹を開けて稼いでるのはどうなんだ。うちは3人しかいないから、仕方ないと思ったけど…みんなそうなのか?」

「ベル様は、3人で暮らしているのですね…」

「そうなんだ。バッツと神様に拾ってもらって、3人で暮らしてる。そういえば、リリはどうしてサポーターを?」

「サポーター?冒険者と違うのか?」

「リリも冒険者ですよ。しかし、戦闘がまともにこなせないリリは荷物持ちしか能がない癖に、そうしないと生きていけないんです。だからベル様のように強い冒険者様のお手伝いをしています。こうして少しだけ分け前を頂くのがサポーターです。」

 

「そういうことか。ならはっきり言っておくぞ。二人ともふざけるな。」

「「!?」」

「荷物持ちだって?ベルは生き残るための道具を持ってない。それでリリは戦えないとくれば、ちょっとはぐれただけで二人とも生きて帰れないってことだろ。実際ベルは腰の薬以外全部リリに持たせてるんじゃないのか?」

「そうだけど…でも…」

「もしもの時はでもじゃ済まないってわからないのか?仲間の命がかかってるんだぞ。」

「!!」

「リリはもうダンジョンには慣れたって顔してる癖に声を出してただけに見えたぞ。そうやって口だけで仲間に思いやりのない態度を続けるなら許さないからな。」

「「…ごめんなさい」」

 

「よし!とりあえず説教終わり!元気に帰るためにいろいろ言うから、まずは言う通りにしてくれ。そんなんじゃ見ちゃいられない。気持ちが落ち着くまでここで持ち物の整理からやるぞ。」

「あの、リリは…」

「良いから聞け!俺たちはみんなで帰るって決めたんだ。一緒に潜るのがたとえ今日だけでも、助け合えないとだめだ。ベルもリリも、友達が目の前でやられるのは我慢できないだろ。」

「友達…ベル様、リリは友達なのでしょうか。」

「僕は明日も一緒にダンジョンに潜ってもいいかもって考えてるよ?仲間で友達だって、思いたいな。」

「そういうことだ。顔見ればわかるさ。じゃあリリ、カバン開けてくれ。」

「…はい!」

 

ーーーー

 

「リリ!敵が増えた!ここから忙しいぞ!」

「前衛が崩れないように薬の準備!とっさにモンスターの注意を引く方法を常に考えておく、ですね!」

「もっとベルに寄っておけ!お互い囲まれないようにせめて1体は注意を引け!」

「はい!」

「バッツ!リリのほうが汗がすごいんだけど!?」

「文句も心配もなしだ!ベルは追いすぎて離れるな!リリの後ろでモンスターが出たら間に合わないぞ!」

「はい!」

「ふっ!」

「あっ…」

「これで俺が倒したのが3体目だな。言わんこっちゃない。休憩するかー?」

「「はい!今すぐ!!」」

 

ーーーー

 

「バッツが3回倒したってことは…」

「本当ならリリたちは3回危険な目に遭っていたということです。でもベル様は声をかけずとも、何度も私の近くのモンスターに気付いて頂けました。背中を預けるというのはこういうことなのでしょうか…」

「僕は人の安全を意識して戦うのがこんなにつかれるとは思わなかったよ。ごめんねリリ。もっと僕たちは安全に進まないといけなかったね。」

「こちらこそ足を引っ張ってしまい申し訳ありません。それどころか貴重な連携の訓練をさせていただいてしまって、こんな見ず知らずの私に…それにしても…」

「うん。見張りをしてくれてるはずなんだけど、バッツがナイフを壁に投げると魔石が落ちてきて、それを拾ってるだけって、どういうことなんだろうね…」

 

「なんでしょうね…さすがとしか言いようがないです…よろしければ教えてください。お師匠様のレベルはおいくつなのですか?」

「…僕と同じレベル1だよ。ファルナを授かったのも同じ日なんだ。」

「!?」

「そういう顔をすると思った。僕も初めてバッツが戦ったあの時を、まだ夢に見るんだ。ゴブリンをね、こう、殴り返して倒したんだよ。」

「!?」

「リリもそんな人見たことないでしょ?」

「は、はい。なんというか、ものすごい人なんですね…だからベル様もお強いんですね!」

「あはは…バッツに比べればまだまだだけどね。何度か危ない目に合ってるところは見てたでしょ?」

 

「まあ…しかしおひとりでその強さは素晴らしいものですよ。そういえばベル様、黒いナイフは初めて見ました。駆け出し冒険者のベル様は、その立派な武器をどう手に入れたのですか?」

「やっぱり僕には不釣り合いに見えるよね…これは僕の主神様が無茶して用意してくれたんだ。一生の宝ものだよ。」

「それは…素敵なことですね。」

「バッツの持ってる剣もすごいんだよ?とんでもなくいいものだって、ヘファイストス・ファミリアの人も驚いてた。丁度今投げられてるあれなんだけど、あの程度じゃキズもつかないんだ。」

「へえ…私にも見せてもらえますかね?」

「頼めば見せてくれると思うよ?」

 

「お、元気出たか?二人とも。」

「うん!見張ってくれてありがとうバッツ!」

「お気遣いありがとうございます!おかげさまで、また頑張れますよー!」

「俺、実はこうやって一から教えるの初めてなんだ。二人にはつい声かけすぎちゃって…やりづらいよな。ごめん!」

「バッツ様!リリはこんなに親切に教えてもらったことはありませんでした…感謝しかありませんよ。」

「そうだよバッツ!…もしかして僕たち、心配させちゃってる?」

「!…いいや、二人がこの調子で行けば、あっという間に100階層さ!さあ続けるぞ。」

 

ーーーー

 

「もうこれでかばんも一杯か。ベル、リリを帰したらもう少し鍛えて帰るか?」

「うん!まだ帰るには早いよね。」

「…そんな、この量ですよ!まずはみんなで換金額を見てみませんか?」

「むむっ、そう言われると、気になるな…どうやって換金するんだ…?」

「っっ!…そうだねリリ。みんなで行って、バベルで換金してみようか。」

「バッツ様、換金方ほ…」

「リリ!そうと決まれば早く上がろう!!」

「は、はい!帰りの道案内は私におまかせください!お二人に武器は抜かせませ…」

「ほいっと。なんだって?」

「…すみません。早速一匹仕留めていただき、ありがとうございます。」

「悪かった!そう冷や汗かくなよ。油断はナシってだけだ、道案内よろしくな!」

 

ーーーー

 

「へぇーこうなってるんですねえ。こうして持っているだけで分かる特別な感覚!でも名前はグラディウスって、普通の名前なんですね。」

「その感覚ってのはな…」

「使い込んで武器が喜んでるとそうなるんだって!」

「それはそれは…おっと、もうバベルに出ますね。」

「凄いな!歩いてもあっという間だった!もう道案内で食っていけるんじゃないか?」

「本当に武器を使わずに上がってこれたね…!ちょっと感動だよ!」

「ありがとうございます!運が良かっただけですよ。では早速、あちらの換金所へ行きましょう!」

 

「…!!」

「ベル様、どうしました?」

「…いや、最近妙な視線を感じるんだよね。」

「俺はいっつも誰かにみられてるから、気にしなくなったぞ!何でだろうな?」

「バッツ様の戦闘ははた目からみても凄いものですから、仕方ないと思いますよ。」

「うーん、普通のことをしてるんだけどな。」

「精度が異常なんですよ。初めてバッツ様の戦闘を見たときは、私がみた冒険者の中でも一番強いのではないかと思ってしまいました!」

「へへっ、ありがとな!」

「あっ!今の笑いかた、僕のマネしたでしょ!」

「ベルが俺のマネしてるんじゃないのかー?」

「…ほんとうに仲がよろしいようで。」

 

「リリ、明日もベルと組むんだろ?いまのうちに言いたいこと言っとけよ。もっと私を大事にして?とか!」

「なっ!バッツ様!」

「バッツ!ヘンな言い方しないでよ!」

「やっと二人とも子供らしい顔になったな。…それじゃあ…」

「なんでしょう?」

「様はやめてくれ。そう言うのは王様とかお姫様に言うもんだぞ。」

「もしかして、止めないと怒りますか?」

「そうだな…友達にはなれないな。」

「…」

「弱いフリするの、癖にしてるだろ。いちいち怖がってるのわかってるぞ。」

「バッツ、リリにも訳が…」

「あったらなんだ。俺はリリに死んでほしくないから言ってるんだ。みんな命がけってときにこういうやつに荷物を任せられるか?」

「…今日はここまでにしてください。お疲れさまでした。」

「リリ!僕は明日…」

「リリはいつでもバベルに居ますから、では。」

「また明日な。」

「…っ!お疲れさまでした。」

「…いけないな、俺は…」

「いけないことなんてないよ。気持ちは良くわかったもん。でもきっとリリは、僕より辛い思いをしてるような気がするから…」

「この街でも、そういう子供はわりと居るってことか…」

「次の方!」

 

ーーーー

 

「待たせてごめん!それと僕はこれからちょっと探し物するから、荷物お願い!先に帰ってて!」

「ああ!…この中でベルにいったい何が…入ってみようっと。」

「本日相談のお相手をさせていただきます、エイナです。バッツさん、お久しぶりですね!」

「前にもここであってたっけ?」

「いえ、そういえばギルドの外でお話しするのはこれが…初めてですね。怪物祭では大丈夫でしたか?」

「…ギルドか…」

「はい?…聞こえてますか?」

 

「まあいいか!俺、この前ちょっと喧嘩でやられて、いろいろ忘れちゃってさ!」

「はい…はい?」

「もう大体忘れた!さっきも魔石の換金がわからなくてベルに聞いちゃったんだ。」

「!?」

「だからごめんな、なんか面白そうだと思って入ったけど、相談なんて特に無いんだ。」

「そんな状況で相談ナシ!?」

「ああ!逆にエイナから聞いてくれた方が良いかもしれないな!」

「な、なるほど…では、装備の付け方はちゃんとしてますか?」

「そこまでバカじゃないぞ!今着てるこれで潜ったんだけど…あれ、武器が…ああ、リリに渡しっぱなしだ。」

「ふふっ、こんなこと言うのもなんですけど、さっきベル君は武器をなくしたって慌ててました…お二人はなんだかにてますね。」

「そうか?一緒に住んでるからかな。あ、ひとつ相談思いついたんだけどさ、子供に教えるコツ。教えてくれないか?」

「…承知しました。その他にも色々言っておかなければなりませんので、いまから時間を取ります。お覚悟を。」

 

ーーーー

 

「こちらは業物すぎてきっといわくつきだろうから禍根になっても困るし、こちらはなまくらすぎて値がつかないからどちらも引き取れない…?そんな冗談ありますか…?」

「そこのあなた。今の2本をどこで手に入れましたか?」

「ちょっと、リュー?」

「シルは下がっていてください。…その白刃と黒刃のナイフはどちらも私の知人のものにみえました。確認させて下さい。」

「…!何かの間違いでしょう。」

「早くしろ。こちらも暇ではない。」

「っっっ!…」

 

ーーーー

 

「ほんっとうに!!ありがとうございます!」

「それと、これはバッツさんのものですね?」

「あれ?間違いないですけど…ありがとうございます。バッツに渡しておきますね。…バッツも落としたの?」

「…っ!」

「リリ、どうしたの?汗が凄いけど、まだ痛むなら…」

「リリのことは気にしないで下さい…」

「…2本ともに、小人の男性が持っていました。私が追いきれず逃がしてしまいましたが…」

「なるほど…バッツが盗まれるなんて、あるのか。」

 

ーーーー

 

「全くクラネルさんと同感です、バッツさんともあろう方がどうしてあのような見事な武器を手放すのか…」

「バッツさんか…ベルさんにはいつも通りにしてほしいって言われたけど。良く武器の見分けがついたね?」

「バッツさんの武器からは触れずとも仄かに感じられる特殊な力があります。魔力に親しいエルフならば間違えることはないでしょう。」

「へえ…凄いんだね。私にはちょっとオシャレなナイフにしか見えなかったよ。」

「それはそうと、あの人と言えば私が圧倒されて見ていることしか出来ないほどだったあの喧嘩沙汰を思い出す…少々気が重いですね。」

「あの時ベルさんは居なかったんだよね…バッツさんが黙ってるなら、私たちも言わないでおいた方がいいよね?」

「はい、私たちは居合わせただけの他人ですから。」

「他人、か…」

「クラネルさんとの関係が進んでいれば話は別ですが。」

「なにいってるのリュー!?見たまんまだよ!」

 

ーーーー

 

「もうこんな時間か、エイナ…要注意だな。それにしてもグラディウスの代わりに投げる武器ってないんだな。飛んでる敵には手裏剣でも一杯買っといて投げるか?金がないのにそれはないか…魔法が使えたらなあ。」

「リュー、あそこ!」

「なんと…間の良い方ですね。バッツさん。こんばんは。」

「…悪いけどあんたらに覚えがないんだ。何か用か?」

「お、覚えてないんですね…あんなことがあったのに。それでも言わせてください。あの時はごめんなさい。」

「…?」

「…リューと申します。こちらはシル。私たちを覚えていないのは無理もありません。何度か来ていただいた酒場の一店員というだけですから。あなたとクラネルさんの武器を拾い、先ほどクラネルさんへ渡した帰り道だったので、声をおかけしました。」

「お、ありがとうな!ベルの探し物はみつかったか。」

 

「二人揃って武器をなくすとは、何か事件でもありましたか?」

「別にないぞ?俺は貸したまま返してもらい忘れたってだけだ。」

「貸したのですか?それにしてもあなたの得物に見合う使い手はそういないと思いますが…子供に見せびらかした覚えは?」

「よくわかったな!かっこいいから見せろっていう子に貸したまま忘れちゃって、明日にでも返してもらおうと思ってたところさ。」

「明日?…その子供には十分注意し、可能ならもう会わないほうがいい。」

「何か知ってるって感じだな。ベルもその子はつらい思いをしてるって言ってた。」

「クラネルさんは犯人を知っていた…?すみません、詮索はやめます。クラネルさんにも他人への同情は無用だとお伝えください。この街で貸した物が戻ってくるのは珍しく、子供であろうが他人の境遇などは尚更知るべきでない。これは冒険者の中では常識です。」

「そうなのか。ぞっとしないな、覚えとくよ。」

 

「…では私はこれで。」

「今度お礼に食べに行くからさ、店の名前はなんて言うんだ?」

「…豊穣の女主人です。必ず覚えておいてほしい。あなたの財布に私たちの生活がかかっているので。」

「おう!優しいリューが働いてるって覚えたから忘れないさ。じゃあまた!」

「ふっ…はい、おまちしております。」

 

「優しいリューだってさ?」

「止めてください。私は褒められるべき人間ではない。」

「自分のことになるとすぐ出るそれ、やめないとダメだよ。褒めてくれたバッツさんにも失礼だし。」

「…シルがそう言うなら。甘んじて受けいれます。」

「今はそれでいいよ、少しずつ変わっていこう。」

 

ーーーー

 

「お前も今戻ったんだな!リューに会って聞いたぞ、武器を落とし…」

「ああ!!お願いバッツ!今からホームに入っても神様には言わないで!」

「さては後ろめたいんだな?しっかり取り返したんだし怒られないさ。」

「そうかな?…そうだよね!」

「安心しろって。そういえば俺のも持ってるだろ?」

「うん。はいこれ。いつ握ってもいい気分だよね。」

「ほしいか?それ。」

「いらない!バッツが持っててよ!絶対に他の人にあげちゃダメだからね!」

「わかったよ。俺も帰り道に代わりの武器が見つからなくって困ってたしな。」

 

「「ただいま!」」

「おかえりなさーい。」

「そういえばそれって握ると光るよな!」

「不思議だよね、どうなってるんだろ。」

「おお!そこに目をつけるとはわかってるね!!」

「ヘスティア、なにか知ってる顔だ!」

「そのナイフはね!僕のもう溢れんばかりの愛が込められているのさ!いや、込めすぎて溢れたから光るのさ!!」

「「なんか良くわからないけどスゴイ!」」

「ふふん!そうだろう?…本当はバッツの分も作りたかったんだけどね。」

「気にするなよ。一本だけのほうがスゴそうな感じするからな!」

「神様、本当にありがとうございます!」

 

「さ、じゃあそろそろ食べようか。なんとミアハから日頃のお礼にって色々貰ったから、今日は豪華だよ!」

「ありがたいですね!今度買い物に行ったらお礼を忘れないようにしないと。」

「お礼と言えばリューの店も行かないとな。」

「うん?リューってのは、女の子かい?」

「そうですけど…」

「きっと美人なんだろうね。」

「そうだな…俺が見た限りでは…アイズといい勝負だな。」

「!!…ベル君!」

「はいっ!?」

「うつつを抜かしちゃだめだよ!ボクがいるというのにこれ以上手を広げる必要はないだろう!」

「何言ってるんです!?」

 

「ああ…リューはベルを何とも思っちゃいないみたいだぞ?」

「なんだって?…そういうことは早く行ってくれよバッツー。」

「まさか怒り出すとは思わなかったからなあ。」

「そうですよ神様。びっくりしました。」

「まあまあ、今のは流してくれよ二人とも。で、店って?」

「いつか行ったことがある酒場だってさ。」

「ちょっとしますけど、量もあっておいしいですよ!早く行きたいね。」

「そうだな。ヘスティアも連れてみんなでいこう。」

「ボクも良いのかい!楽しみだなあ。」

 

「それじゃあどっかで武器屋のバイトを休まないとな。」

「いつでも良いよ!ボクくらいになれば好きに休むくらいわけないのさ!」

「…神様、ただのサボりじゃあないですよね?」

「なんてこと言うんだい?これはあれだよ、絶対にクビにならないからこそ使えるあれ、無限の労働力としての信用から繰り出す必殺の…」

「ひらきなおり!おれも良くやる!」

「ほら!バッツもやるなんてさすがだなぁ!ね?ベルくん、バッツのお墨付きだよ?大丈夫なんだよ!」

「…わかりませんけど!わかりました。」

 

ーーーー

 

「さ、寝るか。ベルは明日も早いんだろ?リリを待たせないようにしないとな。」

「また女の子だ!!」

「神様!?」

「じゃ、おやすみ二人とも。」

「おやすみバッツ。さあベル君、包み隠さず話すんだ…夜はまだ始まったばかりだよ…」

「ひぃっ…」




長!しかし楽しくかけたので仕方ないですね。
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