冒険に異世界を求めるのは間違っているだろうか   作:その辺の人

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PS4のスパイダーマンが面白い。


迷わずわめいて、迷って黙る

「おい、見守る会ってなんや!ウチを誘わないなんて不利益かつ隠蔽体質かつナンセンスが過ぎるで!」

 

ロキはすっかり接触を避けられているシヴァの散歩という回避行動に先手を打つべく朝から閑静なアイアム・ガネーシャの廊下をずんずん進み、案内の制止を無視してシヴァの部屋に押し入った。全てはバッツの情報を聞き出す為である。

 

先日あまりにしつこい質問の数々によって露見した見守る会なる謎の組織。その存在にバッツへの糸口をつかんだ確信を得たロキは、今日初めて話すにも関わらずさっきの話の続きとでも言わんばかりに捲し立てる。

既に足蹴に断り続けているのにプライドがないのかと眉をしかめて見つめるシヴァ。無言でなじられた女神は、むっとした顔でお姉ちゃんが見守らないでどうするんやと騒ぎだした。

 

バッツがついにロキの兄弟として神に格上げされる憂き目に会っているのかと想像したシヴァの目付きが険しくなる。勝手に押し掛けてきて勝手に騒ぐ女神の振る舞いも当然気分を害する後押しとなっていた。

 

神特有の我が儘を押し付ける発作的な行為で人から死を奪うなど、シヴァには到底許せるものではなかったが、そこでここがオラリオだと思い出す。神はファルナでない力の行使を禁じられており、そこまでの暴挙はあり得ないと気付き落ち着いた。

 

となればロキの私はお姉ちゃん発言とは、ヘスティア・ファミリアに神が加入したということなのか?

シヴァは神妙な顔になった。神にファルナを刻むなど滑稽に感じた。目の前のぐずぐず言う糸目が切れ者だとわかっているため、尚更であった。

 

シヴァはこれまでの経験でまともに相手をすると良いようにされると確信しているため、既にロキの話を聞く気がない。ゆえに、こうして怒ってみたり不思議がってと下らない想像を駆使してまで暇を潰し、彼女が諦めて帰るのを待っている。

 

それからロキが見守る会について一方的に想像を語ることかれこれ1時間。

シヴァは無言のロキいじりもネタが尽き、ついに口を開いた。

ロキの粘り勝ちである。

 

「まずお姉ちゃんとはなんだ。」

「それが聞きたければ…」

「今迎えを呼ぶ。二度と接触してくれるな。」

「冗談!冗談やんかー。やっとこさスタートラインに立てたんやからこれくらいサービスや、話したる。」

「…。」

「バッツはな、怪物祭でデートしたウチをお姉ちゃんと呼んだんや。ぐふふ。ウラヤマシイやろ。」

「…なるほど。こんな下らない自慢のために1時間わめき散らしたというのか。」

「なんやなんや!先をいかれた悔しさは隠さんでもええんやで?…とりあえずラムウの坊やが新しい遊びを始めたみたいや。続き?ここまでが、サービスや。さ、見守る会について教えてーな。」

「…こうして気ままにバッツを気にしながら少し話すだけの集まりだ。お前の想像ほどの計画性や目的はない。」

「へえ…ステキやん?」

 

ーーーー

 

「いやあ、俺が魔法を使えれば、1個や2個で足りないなら10個でも100個でも使いこなしてやるんだけどなあ。」

寝起きで注意が緩くなっていたせいか唐突に魔法を語りだしたバッツに、同じく寝ぼけていたヘスティアの目は覚めた。

なにか言いたそうにするヘスティアを横目に、魔法へ憧れるベルはそんなに使えたらいいけど、それは不可能だと返した。

「バッツ、スロットって覚えてる?」

 

当然さまざまな事を忘れているのを差し置いても、既に複数の魔法を使いこなしているバッツはそのような枠の存在など理解できなかった。

ベルの言うには、スロットとは一人あたりいくつか決まっていて、その数しか魔法を覚えられないらしい。

過去の勇者達の姿、振る舞い、技を受け継いだバッツには、自分のスロットなるものがどう働いているのか分からなかった。忍者になって使う白魔法とか、そういうもののことかもしれないと想像したが、すぐに空腹でどうでも良くなった。

 

バッツは知らないと返事しようとしたが、一人あたふたするヘスティアの必死のごまかしによって無駄に不穏な空気の漂う朝となった。

 

しかしながらヘスティアの必死さは当然で、バッツはなんの冗談でもなく魔法を使いこなしている事実を身をもって知っていた故である。

バッツが包み隠さず話せばその内容はベルは勿論、この世界の人の子はおろか降りてきている神々にも刺激が強すぎるので口止めしているが、事実であることは彼がその気になればすぐに見せつけることも出来てしまうだろうと思いその場でごまかすしかなかった。

無論、ベルの憧れがあいまいになり、ステイタスの伸びを悪くすることを嫌がってのごまかしでもある。

 

何より飛び起きざるを得なかったのは、魔法を100個使いこなすと言うのが冗談に聞こえなかった為だった。

 

ーーーー

 

ダンジョン7階層、バッツは一人ベルを待ちながら素手での攻略に励む。

武器無しでもこの階層の相手ならば問題なく、モンクへのジョブチェンジも必要なかった。適当に足をちぎって放置されたキラーアントの出すフェロモンで増えつづける群れを、文字通りちぎっては投げている。

すれ違い様に手をのばしては甲殻の隙間から剥がすようにちぎる。そのまま掴んだ固い殻を元気なキラーアントへ叩きつけそのアゴを砕いてはまた隙間から頭をちぎり投げて止めを刺す。

おおよそ普段のバッツの戦闘からは想像もつかない荒々しさは昨日見たベルの戦闘スタイルを試そうとした結果だった。

動機は同じ経験をしてみるのはおすすめですと言うエイナの教え。

よって今日のバッツはほとんど防御に役立つ装備を着けず、回避に重点を置いている。白羽取りの構えを崩さず、グラディウスと共にこの世界へ持ち込んだ防具であるエルフのマントをひらめかせ強引に立ち回る。

こんなやり方で潜るなんてベルも器用なやつだなあとのんびり思考するほどバッツには余裕があったが、通りすがりの冒険者は時おり三人に分身して見えるバッツの格闘戦に目を疑った。

 

少し疲れて最後のキラーアントに止めを刺すと例のごとく魔石のお裾分けを始めたバッツは、またも例の3人組に出会う。

戦闘を見ていたのか既に緊張の面持ちで、またも修羅だのとよくわからない言葉を呟く斧持ちにバッツは近づいた。

 

「よう、この前もあったよな?」

「ああ、また会ったな…いつも一人なのか?」

「もうすぐ仲間が来るはずなんだけどなあ。あ!そうだ、10階層の地図!ここの魔石全部やるから、持ってたらくれよ。みせてくれるだけでもいいからさ。」

「お安いご用だが…良いのか?」

「ああ、稼ぐのは仲間と一緒にやるし、これは準備みたいなもんだ。」

「これが…準備?」

 

目を瞬かせる斧持ち、その肩越しにバッツを見る二人の女性は、警戒と感謝が混じりつつも完全に引いており、何とも言えない顔をしている。

前回荒らされた10階層の有り様を思い出しているのは明らかだった。

 

バッツは地図を受けとり挨拶を交わすと7階層の入り口へ戻った。キラーアントとの戦闘を思い出しながらベルやリリの装備ではどう立ち回るのがよかったか考えるのはバッツには難しかったが、降りて来るはずのベルを待つ暇潰しにはちょうどよかった。

 

ーーーー

 

「…本日もよろしくお願いします。」

「やっぱり来たな。よろしくリリ。」

「ベル様、バッツ様は物忘れが激しいのでしょうか?」

「えっ?…突然なに?そんなことないよ。ここまでに出てくるモンスター全部の魔石を狙って壊せるんだよ?」

「おい、いきなりひどいぞ!おれは面白いものを覚えるのは得意なんだ。」

「みんな面白いものは覚えてると思うけど…」

「ははっ、確かにな!じゃあ始めるか。」

「その前に一つだけ。リリをちゃんと雇って潜ることにしたんだ。だから、リリも仲間だと思ってやっていこうよ。」

「約束したから仲間ってのはなんか違うんだよな。この前はああいったけど、リリが俺たちに安心してくれないと仕方ないんだ。でもまあ、リーダーがそう言うならいくらでも付き合うよ。」

「リーダー!?それはバッツでしょ!」

「俺は…影のリーダーだ!」

「「よくわからないです。」」

 

バッツの実戦指導は危なげなく終わった。

リリの大きなかばんがいっぱいになるまで続いた戦闘は、小さな体のリリを中心に据えた専用の立ち回りとして前回より洗練されていた。部外者で他人の自分を、守るべき仲間として見てくれている暖かさがあった。

 

バッツがヘスティアを拾って帰るといって別れたあと、リリルカ・アーデはバッツのお前次第だという言葉を思い出しながらモンスターの居ない帰り道を慣れた調子で選んでいく。

繰り返し思い知らされる不遇を日々飲み込んできた人生に、初めて出会った瞬間からこれほど真っ直ぐ向き合ってくれた人が一人でもいただろうか。

心のなかでは彼らに裏があると疑い、騙してでも剣を盗んで大金を手にしたい自分がいる。あいつらはやり返せる力があるから何だって言えるんだといつだって高らかに叫んでいるが、あまりに素直なベルの前では自然となりをひそめた。

 

稼ぎが想像以上で喜ぶわりに分け前はしっかり二分してしまう無欲なベルにリリは思わず変なのと呟きつつも、上機嫌なベルに連れられて豊穣の女主人の看板を見せられるまで、自分が彼らに安心できるのかリリは反芻し続けた。

 

ーーーー

 

「ヘスティア、ちょっと助けてほしいんだ。」

「!!すぐに仕事を切り上げるよ。」

「いや、おれも手伝うからそのあとでいい。急いではいないんだ。」

「本当かい?助かるよ!じゃあここのみんなに挨拶からね…」

 

「おかげでいつもより早くあがれた!まさかバッツがあんなに売り込み得意とは…」

「はは、まあ武器と防具なんて大抵の種類は使ったことがあるし、相手の事を良く見れば、ちょうどいいものをおすすめ出来るだろ。そうやって仲間と旅してきたからな。まだ全部は思い出せないけど。」

「…そうだよね。それだけの経験は積んでるんだって、たまに忘れそうになるなぁ。」

「気にするなよ。じゃあ、歩きながらで悪いけど聞いてくれ。一緒にこいつの謎を解いて欲しいんだ。多分魔法が関わってて、こういうものはベルには見せない方がいいんだよな?」

「なんだい、その石細工は…はっ!」

「どうしたんだ、なにか知ってるのか?」

「こ、この気配は…」

「なんだ、気になるぞ!」

「…ベル君!」

「へっ?」

 

走り出したヘスティアを追うとベルが子供と手を繋いでいる。子供が少女とわかると3秒前に聞いていたバッツの頼みなど霧散し、ヘスティアは茫然自失となった。

バッツがあれが噂のリリだと指差すと同時に、愛すべき我らが少年の少女との逢瀬によほどの衝撃を受けたのか、無闇にベルから距離をとろうと走り出した。驚いたバッツが追いつく頃には涙目で呑むぞ呑んでやるとわめきちらす有り様だった。

 

調合練習中だったミアハを連れ出し酒場でヘスティアによる一方的な愚痴やら愛の告白を聞いているうちにその日は終わってしまった。

ヘスティアが何を言おうとも絶対に暗い顔を見せなかったうえ、喜んで全額支払ってくれたミアハにバッツは同じ男として尊敬を覚え、それを見習って放り投げられた謎解きは大人しくまた今度頼み直すことにした。

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