冒険に異世界を求めるのは間違っているだろうか 作:その辺の人
注意、話とか進みません
ヘスティア、シヴァと出会う
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この世界についてガネーシャ・ファミリアのホームしか知らないシヴァは街に興味が湧いたため、適当に用事を作ってオラリオを歩き回ることにした。
目をつけたのはオラリオに降りたその日から話し相手となってくれた、ガネーシャの抱える悩みである。
ガネーシャはそのファミリアの長だけあり、構成員がひっきりなしに連絡してくる。
今日も朝からトップクラスの戦闘員が娼婦に捕まって行方不明だの、祭りの準備が云々、何やら忙しいようである。
シヴァはガネーシャの言葉の端々から末端の構成員と意思疏通が取れず困っていることを察し、暇潰しに得意なことから手伝うことにした。
世界にもてあまされていた人ならざる荒くれどもを引き連れて神になったシヴァの過去からすれば、昔とった杵柄とでもいうべきか。
それが言葉のわかる人の子であれば、なおさらのこと簡単であるとシヴァはたかをくくった。
「ガネーシャ。お前のファミリアの構成員は何人だったか。多すぎると目が届かないのは必然だな。ここに来るまで我々はちからに頼りすぎていた。工夫を覚えなければ。」
「父よ、その通りだ。はっきりいって我が子たちの方が組織運営や生活の知識は素晴らしく、俺はずっと頼りきりなのだ。何とかしてもっと俺は子供たちの助けになりたい。」
「まあ、私もバッツ達から沢山学んだよ。長としてのあり方から、雨風のしのぎ方までな。」
「さすがは我が母!それは頼もしい!」
「私はここで毎日をおしゃべりだけで過ごすなどあり得んと思っていた。今日から直に外へ行ってガネーシャ・ファミリアについて聞いてくる。私なら顔も割れていまい。」
「俺はあなたに喧嘩を売って首をおとされたあの日から今まで、あなたより強いものを見たことがない。だからこそ言うが絶対に無理はしないでくれ。今じゃせいぜい小細工してもゴブリンといい勝負だ。」
「分かってるさ。私がどれだけ戦えないかはここに来て最初に確かめた。」
「!?…まさか街でなくダンジョンに降りてここまで上がってきたのか?」
「よくわかったな。当然わざとやった。」
「…何がそこまであなたを掻き立てる?」
「生まれもってのサガだよ。いい機会だから覚えておけ。どんなものでも持ってしまったサガは変えられない。神でも、人でも、悪魔でも。」
「よく覚えておく。引き留めて悪かった。案内をつける。」
「それは要らない。一対一で始めましてというのが大事なのだ。ガネーシャ・ファミリアと関係があることも隠したい。地図を寄越せ。お前が行かない場所にいる構成員をいくつか教えろ。」
「分かった。密偵のような事をさせてすまない。不出来な俺をゆるしてほしい。」
「やめろ、言い過ぎだ。私の子が弱気を晒すなどあってはならん。ただの暇潰しにまで気を使うな。どうせ今日だけでは何も進展しない。」
「…そうだな!少し疲れていたことは認めよう!今日は大人しく休む!何時でも帰って来るといい!」
「ああ、行ってくる。」
ガネーシャ・ファミリアのホームを出たシヴァは、その入り口で門番が働いているのを見かけ、声をかけた。
「ご苦労。ガネーシャは今日は休む。そこに止めている子も面会なら無しだ。」
「そうですか…ご連絡ありがとうございます。あなたを神様とお見受けいたしますが、わたしはあなたを存じ上げません。失礼ですが名前をお教え願います。」
「こらー!ボクも神だぞー!」
「私とバッツの装備を改めておいてそれは悲しいな。」
「!?…もしやシヴァ様?…しかしシヴァ様は女神様では!?」
「あの姿を知る者は少ないのでな。友にも分かるこの姿で過ごすことにした。」
「そうでしたか…!体を変えるとは、流石は神様…神話でしか姿を変えることを知らなかった私が、実際にそれを見ることができるなど…本当に私は幸せ者です!ありがとうございます!」
「それはよかったな。私はこれから…」
「こらー!無視するなー!先に話してたのはボクなんだぞー!」
「おっとそれはすまなかった。では門番、あとは頼むぞ。」
「はっ!どうかご無事で!」
「えっ…ちょっとまっ…あ、いや、何度も通してくれっていったけど、実はシヴァさんに用があったんだ。今のひとがシヴァさんなんだよね?」
「シヴァ様だ!敬意を払え。我がファミリアの長、ガネーシャ様の御尊親なのだぞ。」
「あっ!それでここにいたんだね。じゃあ、僕も行くよ。仕事の邪魔してゴメンね。」
「(もしかして俺は門番向いてないんじゃないか?こんな子供も信じてあげられない。守るべき主のご尊親も間違える…)…もしや本当に神様?」
「むっ!さっきから言ってるだろー!子供扱いして!ボクの名前はヘスティア!よく覚えておくように!」
「しっ失礼しました!」
「いいよ、ボクももっと神っぽくすればよかったんだし。じゃあね!」
バッツに勧められシヴァに会いに来たヘスティアは出足をくじかれることとなった。
分かりやすい上裸の神が順調に路地を進むのを、ヘスティアは見た。
見失う焦りから走って追い付こうとするヘスティアは辛そうな表情を隠しもしない。
なにやら事件の臭いを嗅ぎ付けた、無意味に街をぶらつき暇をもて余している顔見知り達の絡みを振りほどき、息を切らして何とか追い付いた。
全くヘスティアに気付く素振りのないシヴァに、ヘスティアは置いていかれるまいと、思わずその腰布を掴み引き止めた。
ついでと言うわけでもないが周囲も止まった。
とりあえず息を整えさせてくれと下を向いて足を止めたヘスティアには前にいるシヴァの状態がどんなものか知るよしもない。
唯一言葉を発することが出来たのはヘスティアに絡んでいた雄神たちのみであった。
「「何もハイテナイ…だと!?」」
そんな周囲を全く気にとめもしないシヴァは唯一の服を引ったくった犯人に近寄った。
犯人はいまだに息が整っていないようで、うつむいて肩で息をしている。
「お前が寒ければくれてやるが、出来ればかえしてくれ。友に服を着ろと頼まれているのでな。」
「ぜぇ…あっ…はいっ…ごめんっ…ぜぇ…はぁ…もう少し…落ち着かせて!」
「こちらからは特にない。好きなだけ休んでいけ。ではな。」
「「全くブレない!」」「「何てクールなんだ!」」
「「誰か!誰かヤツの名を知らないか!?」」
周囲の顔をそらしていた人々の主に女性の視線がシヴァに集まり始めた頃、布を取り戻し巻き直したシヴァが再び歩き始める。
ようやく息を整えたヘスティアは目的を思いだした。
バッツについて今オラリオで最も詳しい彼なら助けてくれると信じて走ったのだ。
一刻も早く解決したい一心だったヘスティアは思わず想いのままを口にした。
「ボクには君しかいないんだ!シヴァ!話を聞いてくれ!」
「「ヘスティアが告白だと!?」」
周囲の温度は氷点下から勘違いを経て沸騰寸前である。
当の二人は片や必死、片や無関心。全く逆の感情であるが、共に周囲を全く気にしていない。
シヴァが何事もなくいつも通りの口調で返事をする。
「私に何のようだ?ここで力になれることなどないと思うが…」
「バッツが!バッツを助けたい!」
「「バッツって誰!?」」
「…何があった?」
この翌日には伝説となるヘスティア露出告白事件の真実である。
当然エンターテイメントを欲する神々が、あのヘスティアの色恋沙汰を聞き逃すはずもない。
飛び火した噂の広がりにつれて、本人を他所にバッツの名前だけが広がっていく。
その後二人はアイアム・ガネーシャへ移動し、ヘスティアはバッツをファミリアに迎えたことと彼のファルナについてをシヴァへ隠さず話した。
「と、言うことなんだ。ボクは正直、年を取ら無いって言うのは…僕らと同じ苦しみを味わってほしくないから嫌なんだ。独りよがりだとは、分かってるけど…」
「あいつが大丈夫と言ったなら、何も気に病むことはない。そもそも何が起こるかわからないものを、勝手に読み違えてるだけかもしれないのだから。」
「その通りだよ…でも…」
「全く。いいか、バッツを心配するだけ無駄だとわかるまでいくらでもあいつの話をしてやる。まずはだな…」
シヴァの語るバッツの笑える自由人っぷりと、襲い掛かる数々の理不尽をすり抜けて決して止まらないその生き方を聞かされたヘスティアは、帰る頃には笑顔を取り戻した。
「でもボクだけじゃあ、正直バッツのやることが心配だから、これからシヴァも見守ってよ」
「たった数刻の話で言うようになったじゃないか。そうだな。私も時々そっちにいって話をしよう。ここに来たら世間話と言う物もしてみたかったことだ。」
「あ!神々あるあるだね!近所の人と出会い頭にさ、昨日小指ぶつけちゃってちょっと痛かった話とかして笑ってみたい!ってね。」
「そうだな。今の体ならあれこれ察してしまうこともないし、痛いものは痛い。これはなかなか新鮮で素晴らしい。」
「じゃあ、これから二人でバッツを見守る会だ!」
「会とは言うが、面子は増えそうにないな。」
「細かいことは気にしない!あ、別にこの会じゃなくてもボクを頼ってよ!頼りっぱなしは性に合わないんだ。昼間は大抵じゃがまるくん売ってるから、よろしくね。」
「ここに来てはじめての友と言うわけだ。頼りにさせてもらう。早速引ったくりの相談があるんだが。」
「ああっ!その事は本当にごめん!もうあんなことは絶対にしないから!」
「逆だ。相談したいのはな、犯人がやたら気落ちしてしまっていることでな。大事なことのためならあの程度のことはさっさとやってしまえ、そしていちいち気にするなと伝えたかった。」
「ふふふっ…ありがとう!本当に会えて良かった!」
「ではまたな。ガネーシャにも、時々ここにヘスティアが来る事になったと伝えておく。」
こうして、引きこもりのヘスティアには少し大変な一日が終わった。
因みに、あの伝説の地から次章を紡ごうと、ヘスティアについて行こうとした者達はシヴァがひとにらみで追い返した。
その目は悪鬼の爪のぎらつきにも、聖なる槍の煌めきにも見えたと言うのは、その場に偶然大量にかめのこうらを買い漁ろうと居合わせた、小さな薬屋の主の談である。