駒王会談は終わり、三大勢力が会談を行った本来の目的──『和平』も無事結ばれた。その事は、協力して敵を倒したということにはっきり表れている。勿論、イレギュラーが無かったわけではないが…。
「で、メリオダス。お前さん一体何者だよ」
「何者ってどういう意味だよ?」
「そのままだよ。『白龍皇』であるヴァーリの、ましてや
「あの白い鎧って、そんなにスゲーものなのか?確かに、なんか力が急に抜けていったなーとは思ったけどな」
メリオダスは素でそう答えている。アザゼルにもその事は分かっている。仮にも堕天使総督だし、長い時を生きてきた。そこそこの付き合いがあるやつでもあるメリオダスが、嘘をついているかどうかは分かる。実際のところメリオダスが嘘をつこうと思えば騙す事はできるのだが。
「はぁ。お前さんホントに知らねえのか?」
「知らねえよ。白い龍とか言われても。こちとら冥界で酒場営んでるただの店主だぜ?」
「酒場じゃその情報は飛び交わねえのかよ。酒場ってそんな所じゃないのか?」
「ウチの店は庶民あたりが多いしなあ。専ら愚痴の方が多いな」
下級の悪魔の愚痴は大体、上司にあたる上級悪魔に向けられるらしいので、世界情勢に関する情報が入らないのも仕方ない。だが、アザゼルにはそれよりも1つ気になることがあった。
「なあ、お前さんのその剣。神器か?」
「こいつか?ああ。神器【魔剣ロストヴェイン】。俺の相棒だ」
「剣の形をした神器か…。初めて見たが、特殊な能力とかあんのか?」
「にししっ、そいつは秘密だ」
「ケッ、まあそんなこったろうとは思ったがよ」
実際のところ、メリオダスとアザゼルの神器の認識には違いがあるのだが…、どっちにしろ『凄い武器』ということに変わりはないので触れないでおこう。
「アザゼル、一つ頼みがあるんだが…」
「あ?なんだよ、無茶なことじゃなけりゃ受けてやるが」
苦労人のアザゼルは、三大勢力の中でも特に、他勢力とのパイプ役として動くことが多い。というか必然的にそうなってしまう。北欧勢力などとのつながりも深いからだ。今回の会談も、元天使ということで付き合いのある天界と、冥界住まいということで付き合いのある悪魔勢力とのパイプ役となっている。そんな訳で、多くの伝手を持つアザゼルには様々な厄介な要求が突き出される。メリオダスの頼みも厄介ならば断るスタンスでいたのだが…。
「住むところくれねえか?」
「よし来たすぐに用意してやる」
住居の用意くらい朝飯前だと言うようにあっさり承諾。アザゼルは内心でホッとしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それから半日ほどで用意されたメリオダスの家の中で。
「店には帰らなくていいのか?」
「お前の発明品、何日か経たないと使えねえだろ」
「俺の転移魔法陣使えばいいんだが…」
「……あ」
「で、どうするよ」
「その魔法陣くれ」
はいよ、と言って渡されたのは、コピー紙ほどの大きさの紙に書かれた複雑な紋様の魔法陣。これがこの世界での転移魔法陣らしい。
「転移するときは、それを床に置いてから『転移』って言えば飛ぶ。場所はお前の店の近くにセットしてあるはずだ」
「そいつはいいや。サンキューなアザゼル」
「おう、もっと感謝しやがれ」
「もうちっと真面目になったらな」
この2人の関係、いつの間にか軽口を言い合うほどに進展していた。中々の頻度でアザゼルが『豚の帽子亭』にやって来るものだから、双方その顔を覚えてしまっていた。
「けっ、そうかよ。ま、期待しちゃいなかったがな」
「けどま、実際感謝してるさ。ここ用意してくれたこととか」
メリオダスにとっての「別荘」とも言える。当初、『豚の帽子亭』2号店にしようかとも画策していたが、移動酒場だからこその『豚の帽子亭』であること、ホークが2体もいない事とが相まって残念なことに頓挫した。
ちなみにこの別荘、使う人はメリオダス、エリザベス、ホーク、黒歌、白音と、たまーにオーフィスがやって来るくらいなのに、何故か二階建て+庭付きという無駄に豪華な作りになっている。しかも酒屋のすぐそばという好立地。
「あ、そうそう。俺もここ使わせてもらうからな」
「は?」
「いや、俺も使うって。どうせお前ら滅多にこっちこねえんだろ?なら、空いてるだけもったいねえじゃねえか」
「はぁ、だから一部屋だけ変だったのかよ」
その一部屋、大量の日本グッズや鎧、掛軸、屏風で埋め尽くされていたのだが、メリオダスには興味がなかった。
「ま、エリザベスにはしばらく戻らねえって言っちまったしな。こっちの生活を楽しむとするか。アザゼル、町案内してくれねえか?」
「おお、構わねえぜ」
そう言って、堕天使総督と古の魔神は、日が傾き始めた町へと繰り出した。
◆◇◆◇◆◇
「酒もだが、飯も進化してんなー!」
「だろー!いや、お前さんとこの酒も美味いが、ここの酒もまたうめえんだよ!!」
「こいつは参考にしなけりゃな!」
「おうおう、しちまえしちまえ!もっとウマくなりゃ最高だ!」
5日ほどかけてじっくりと行った町案内の最後は居酒屋。2人とも無類の酒好きなので、こうなる事はある意味必然であった。居酒屋というのは日本独自の文化で、外国には存在しない。『豚の帽子亭』は居酒屋によく似たものではあるが、本物の居酒屋の雰囲気はもっとフランクだった。
場の雰囲気というものがフレンドリーで、人間関係の輪が広がりやすい。堅苦しくないので酒もどんどん進み、濃いめに作られた料理がそれをさらに増長する。結果的に、酒は一升瓶が何本も消えていた。アザゼルは酒に強いのだが、そのアザゼルは眠りこけてしまい、メリオダスはまだ料理に舌鼓を打っていた。メリオダスつおい(酒に)。
「アザゼルも潰れちまったしな……、すいませーん!お会計いいですかー!」
「かしこまりましたー!」
「(いい挨拶だなあ。エリザベスにやらせてみるのは………アリか…なあ)」
1人エリザベスが元気の良い応対をしている姿を妄想しながら「グヘヘ」とか思いながらニヤけるメリオダス。若干引き気味の店員が会計しにやってきた。
「お会計でーす!ええと、ひい、ふう、みい……、はい、会計5679円になります!」
「さーて、5679円……っと、5709円でいいか?」
「はい、5709円頂きますね!お釣りは30円になります!」
「おーう、サンキュ」
「ま、またお越しくださいませ!」
星が天上に輝き始めた頃、店の暖簾を出たメリオダスとアザゼル(酔い潰れ)。親と子ほどの身長差があるので、肩を貸しても引きずるようになってしまうが、そこは仕方ないだろう。
堕天使総督の高級そうな革靴を引きずりながら、用意した家に辿り着く。一階にあるリビングの、如何にもふかふかなソファーにアザゼルを放り投げ、自分は二階のベランダ付きの部屋に入る。なぜかダブルサイズのベッドがあって、1人で過ごすには少し広めの部屋。
「アザゼルの野郎…、多分偶々だと思うんだけどな…」
さらに深くなった闇に目を向けてそう呟き、ふと『豚の帽子亭』を思い出してから、ふう、と息を吐いて部屋に戻る。明かりを消して、剣を壁にかける。そのままベッドに飛び込んで、久々に1人で寝ることに寂しさを感じながらも、そのまま眠りについた。
次の日、2日酔いに悩まされた2人が洗面所で顔を合わせ、同時にゲロった。
日本円に強いメリオダス。だがな、実はアザゼルの財布だ。
メリオダスが吐く姿、想像できないけど書いちゃった(・∀・)