ありふれた狩人《チート》と世界最強の友達《魔王》 作:Y.U.K
「誰やねん。」
思わず、そう突っ込んでしまった俺はきっと悪くないと思う。
確かに、これがハジメだっていうことは分かる。この世界の人たちには珍しい黒い目とか身につけている服とか。てか、こんなところにハジメ以外に人がいるとは思えない。
だが……、言ってしまえばそれ以外は全部違うのだ。なにもかも全部。
「誰って………ハジメだよ、南雲ハジメ。というかそれ以外ありえないだろこんなところで会うなんて。」
「分かってるんだ……。そんなことは分かっているんだ……。無事とは言いがたいが、生きててくれて本当に嬉しいし、大歓喜したいんだがその前に壮大な疑問が出てきてな。」
誰があんなに優しそうな見た目をした少年が明らかに「何人も殺ってますよ」感が溢れすぎてる目をする少年に変化すると思うだろうか。しかも、今までに何度も死線を掻い潜ってきたのが容易に想像できる分、扱いに困る。ズカズカと触れるべきか「大変だったな……」と聖母のごとく優しい目をしながら慰めるべきか。
「まぁわからなくはないけどな。俺自身も引くぐらいの体験をしてきたし。……だから、異様に優しい目をしながら近寄ってくるな。別にそのことに関して傷ついてはいないし気持ち悪いわ。」
あらま、やっぱりハジメじゃないわ。こんな悪い子じゃなかったもん。こんな子に育てた覚えはありません!
「お前に育てられた記憶もないけどな。」
なぜ心が読めるし。
「まあ、冗談は置いといて改めて。ハジメ、本当に生きてて良かった。」
「本当に色々あったが……、まあ助けに来てくれたんだよな。ありがとう。」
そういって、熱い握手を交わした。お互いに聞きたいことはあるだろうがまずは、無事を祝うべきであろう。
「それにしても……本当よく生きてられたな。信じてはいたが改めて驚くわ。やっぱり銃の存在が大きいのか?」
「知ってるのか?」
「まあ、ここにくる前に銃を使ったであろう形跡がある洞穴を見つけたからな。」
「なんだ、そこにいっていたのか。ああ、このドンナーがあったから生きてられたな。」
ドンナーっていうのかその銃は。
「銃っていうのはあんなに威力があるんだなぁ。向こうの世界で厳重に取り締まられるわけだ。生き物が爆散って。」
そう呟くとハジメを筆頭に全員に呆れた顔をされた。
「雷牙……マジで言ってるの?」
「流石にありえないわよ。」
「もし、そんな兵器が向こうの世界にあったらあんな平和じゃありませんよ。」
「雷牙ってアホだったんだな。」
上からノワール、レイヤ、コットン、ハジメの順にバカにされてしまった。
「そこまで言うかお前ら!?」
「いやどう考えても俺が改造したに決まっているだろう。」
ハジメによると狼のような魔物の固有魔法“纏雷”により小型の銃がレールガンを軽く超える威力を持ったらしい。しかも、固有魔法の手に入れ方がその魔物を食べることっていうんだから驚いた。
「魔物って食べられないんじゃないのか?」
確か、書物に人間にとって魔物の肉は猛毒だと書いてあった気がする。
「ああ、なんか食べた時には身体に激痛が走ったんだけど体力回復系の水を飲んで耐えたら筋肉質になって髪の色が抜けて、魔物の固有魔法を使えるようになっていたんだよ。」
また強引な方法で攻略してんなぁハジメ。要するに人間の超回復の極致のような感じだろうか。自身に過酷すぎるダメージを与えて自己回復力とその水で無理やり治し続けて順応させたみたいな。その際に、魔物の肉が自身に適応するようになったのだろう。
「ハジメもバケモンになったのか……。」
「お前に言われるのは癪だけどな。なんだその強さ。正直勝てる気がしないぞ。」
ハジメは俺が持つ危険性を察したようだ。さすがは洞窟で生き延びた男。察知能力が異常に高い。
「まあ、色々あってなその核がモンスターハンターになるんだが……ーーーー
〜説明中〜
ってことだ。OK?」
「まあ何と無くだが。それにしてもえぐいなその能力。それに思い通りってのもえぐすぎる。なんにしろ雷牙を敵には回したくねぇ。」
「安心しろ。俺はお前の味方にしかならねえよ。」
ハジメのためにここまで来たんだ。ハジメを見捨てるわけがないだろう。
「もう一つ聞きたいんだが、その後ろの三人の女は誰だ?この短い間にパーティーでも組んだのか?」
そう言いながらハジメはコットンたちを指差した。まあ、分からないのは当たり前だな。
「いや?こいつらにはハジメもあったことあるはずだぞ?あの二匹の猫とキリンだ。」
そう紹介すると、今まで鋭い眼光をしていた目が点に変わった。
「は?いや、見るからにそいつら人間だろ?」
「これもモンスターハンターの力。MPを使って強化したら、コットンとノワールは大幅に振りすぎて人間になって、キリン……今はレイヤって名前があるが。とにかくレイヤは人化の能力を手に入れたんだ。」
「お久しぶりです。ハジメさん。コットンです。」
「無事でよかったねハジメ!」
「私も雷牙の親友のハジメとは話したかったから生きててくれて良かったわ。」
コットン、ノワール、レイヤの順に声をかけるとやがてハジメは何かを諦めたかのようにため息をつき、
「なんでもありかよモンスターハンター……。」
と呟いた。
生産職で兵器チートしまくってるハジメも大概だと思うけどなぁ。
「でだ。この見るからにボスがいますよ感漂う扉とその隣にいる一つ目巨人についてなんだが……。」
再会の喜びもほどほどに俺たちは一刻も早くこの五十層を抜けるため目の前にある異質な扉と対峙していた。
そこには高さ三メートルの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。明らかに一つ目巨人は近づいたら動き出すパターンだ。
「こいつらと奥にいるやつ。どっちと戦いたい?」
「奥にいるやつ。」
「デスヨネー。」
一応、ハジメに聞いてみたが案の定の答えが返ってきた。いつの間にこんなバトルジャンキーになったんだか。
「まあいいや。お前の戦いも見てみたいし。じゃサクッとやってきますわ。」
そう言いながら俺は2人の巨人へと近づいていった。
「雷牙、憑依は?」
「いや、そろそろ俺だけでも戦いたいからな。まあここの敵ならなんとかなるだろ。万が一、危なくなったら頼むわ。」
そろそろレイヤを個の戦力としても、戦わせたいからな。俺だけでも戦えるようにならないと。
「さてと、どーやって起こすんだこいつら。」
倒すためにはまず、動いてもらわないことにはどうしようもない。
だが、近づいても全く反応を見せない。触ってみてもだ。門番としてどうなんだろうか。
「となると……、この魔法陣をどうにかすれば動くのか?」
残り触れていないのは壮大な扉に書かれている巨大な魔法陣である。
しかし、生憎だが俺は魔法陣を解くとかいう高度すぎる技術を持っているわけではない。
「そういえば、ハジメって魔法陣読めたよな?」
どうしようか悩んでいると、ハジメがまだ「無能」と呼ばれていた頃、少しでも役に立とうと色々な知識を詰め込んでいて、「魔法陣の解読」も勉強をしていたのを思い出した。
因みに、どこぞの勇者様はそんなハジメを「戦いから逃げた臆病者」のように考え、罵っていたが所詮は突然力を手に入れ、祭り上げられただけの男だ。確かに、リーダーシップはあったようだが自分の考えが正しいと信じて疑わないのは大幅にマイナスだな。
いずれ、ラノベによくある堕ちた勇者のようにならないことを祈ろう。負けるとは思えないけどめんどくさいし。
「まあ読めるが……、正直これは全くわからないな。恐らく特別な暗号かもしくは昔の言葉か……。」
じゃあ、今回は魔法陣は無理か……。
「あー!!めんどくさっ!もういいや!ぶっ壊す!!」
一応、正しいルートで攻略してやろうと思っていたがここまで阻むのならば話は別だ。ベヒモスを潰したワンパンを舐めるなよ。
「うぉりゃぁぁあ!!!」
キュィィイイイン!!!!
「っ!?」
ベヒモスを潰した時より遥かに力を入れて殴ったが突如、障壁が発動し扉に届くことはなかった。
「壊すことはできないってか?ーーーーだが、まあ本来の目標は達成だから結果オーライか。」
そして、隣の二匹の巨大な影が突如として動き出した。
「さぁ、少しは耐えてくれよ?」
動き出した一つ目巨人はまんま、サイクロプスだった。
手にはどこから出したのか四メートルはありそうな大剣を持っている。未だ埋まっている半身を強引に抜き出し無粋な侵入者を排除しようと雷牙の方に視線を向けた。
オォォオオオオオオ!!
「おお、案外迫力あるなぁ。」
四メートルもの巨体から発せられる雄叫びは部屋全体に響き渡り、流石番人なだけあると思わせるほどの威圧感を発した。
だがーーーーー
サイクロプスに許された行動はそれが最後になったのだ。
ドゴォォォォオン!!!!!
いざ、サイクロプスが雷牙に攻撃をしようと手に持った大振りの大剣を振りかざしたその時、突如として先ほどの雄叫びとは比べ物にならないほどの轟音が部屋中に響き渡った。
そして、衝撃によって盛大に上がった土煙が晴れるとそこにはベヒモスの二の舞と言わんばかりに身体に大きな風穴を開けたサイクロプスと右手を振るった状態の雷牙が立っていた。
「ーーーーまあ、所詮はそれまでだがな。」
雷牙がしたのは勿論、
振りかぶって殴る。それだけで想像がつかないほど長い間、門を守り続けてきたサイクロプスの、挑戦者を待ち望んだサイクロプスの命を終わらせたのだった。最早、雷牙強さに驚く以上にせっかく出来た出番を一瞬で退場させられたサイクロプスに対し、哀れさを感じてしまう。
ワンパンで門番を潰す雷牙はどこぞのヒーローなのだろうか。趣味でヒーローでもやっているのだろうか。
閑話休題
「やっぱり、ワンパンで終わっちまったよなぁ……。いよいよ俺も化け物か。」
当の本人はある程度予想がついていたようで今更すぎる事実を確認していた。
そして、残されたもう一対のサイクロプスの方を向いた。そのサイクロプスに最早、戦意などというものはカケラも存在しておらず、部屋の隅で体育座りをしながらガクブルしていた。少しどころじゃなくシュールである。
そんなサイクロプスの姿に流石に罪悪感を感じたのか
「あー、その、なんだ。別にそこを開けてくれるなら見逃すが……どうする?」
雷牙は救済措置を差し出した。その提案をまるで神からの救いの如く感じたようで、レイヤもびっくりの速さで首を縦に振り、小躍りを始めた。
本来であれば、情けなどかけず即殺するのが正しいのだろうが雷牙は自分の命が救われたことに心の底から喜んでいるサイクロプスの姿を見て、追い討ちをかけることをやめた。流石にそこまで人の心をなくしてはいなかったのだろう。
「ほら、さっさと戻れ。気が変わるかもしれないぞ?」
雷牙の言葉を聞き、小躍りを中断させたサイクロプスは即座に元の場所へ戻っていった。今のサイクロプスの心情はさながら「いのちだいじに」だろう。命の大切さを噛み締めているわけだ。
こうして、雷牙VSサイクロプスの戦いはサイクロプスの戦意喪失により圧倒的な力を持ってねじ伏せた雷牙の勝利となった。
「いつのまにか親友が化け物になっているんだが。」
ハジメから呟かれたことばがとどくことはなかった。
これからは、日曜に定期更新となります