ありふれた狩人《チート》と世界最強の友達《魔王》   作:Y.U.K

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本当にお久しぶりです。Y.U.Kです。


ラスボス部屋と謎の少女

 

対サイクロプス戦……というか蹂躙を終え俺たちは次の部屋へと進もうとしていた。

 

だが……

 

「ん?開かない……。こいつら倒したら終わりじゃないのか?」

 

開けようとした扉が押しても引いてもスライドさせようとしてもうんともすんとも言わないのだ。てっきり、サイクロプスを倒せば終わりかと思っていたためがっかり感が否めない。

 

すると、ハジメは何かに気がついたように目を軽く開き、指を指した。

 

「ここにくぼみがあるんだが、おそらくこれに何かをはめるんだろう。例えば………あいつらサイクロプスたちの魔石とかちょうどいいんじゃないか?」

 

倒した証明が必要なら1番手っ取り早いのが魔石を取り出すことか。そして、あれはあいつらにとって欠かせないものだからな。なるほど、確かにすじは通ってる。

 

だが、ここで一つ問題がある。

 

「あいつ、絶対出てこないよな……。」

 

サイクロプスの魔石が必要とする。すると、先ほど見逃したあいつの魔石も必要なのだ。別にさっき殺さなかったのは殺す必要がないだけだったから今となれば余裕で殺す自信がある。

だが、あいつはもう絶対に俺たちの前に出てくることはないだろう。俺たちがいなくなるまで比喩ではない石像となり、微動だにしない。

石像状態で攻撃してもいいが、石像状態だと固いため衝撃がモロに魔石に伝わり割れてしまったら元も子もない。

 

「ここまで来て詰みかよ……。」

 

せっかくここまで来たのに。そう思い軽く落ち込んでいると頭に声が響いた。

 

『雷牙。お前って基本的にアホなのか?』

 

(え?イシス様?また見てたの?)

 

『まあ、ほんとに暇なのでな。ここのところはほとんど見てるぞ。』

 

なんか観察されてるみたいだな……。

 

『それよりもだ。なんで私があげた能力を使わないのだ?あれか?私のことが嫌いなのか?』

 

「あ!確かに!」

 

本当にこんな簡単なことが思いつかなかったとは……。マジで俺はアホらしい。

 

『やはり気づいてなかったか…。まあ、それを使えばそのサイクロプスから魔石だけ抜き出すなり、倒したサイクロプスの魔石を複製するなりどうとでもなるだろう。』

 

(確かにそうだな。ありがとうイシス様!)

 

『気にするな。あまりに見てられなかったから出て来てしまったが基本的には無干渉で見させてもらうさ。』

 

思わず手を出してしまったほどアホらしかったのか。まあそうか。アホだしな。

 

 

 

 

 

 

「で?何か思いついたか?突然声を上げていたが。」

 

「ああ、驚くほど簡単に解決できたよ。"複製"」

 

そして倒したサイクロプスの魔石を右手に持ち強くイメージをした。俺の魔力をサイクロプスの質に変えこの大きさの魔石を作る。魔力の質なんてわからないがそこはイメージ魔法にお任せだ。

 

「おお、凄いな。本当にできた。」

 

するとものの数秒で左手に全く同じ見た目の魔石がそこにはあった。

だが、少し身体に倦怠感があるところを見ると大量の魔力を消費したのだろう。まあ、この大きさの魔石を生み出したんだ。当たり前といえば当たり前だが。

 

 

 

 

 

「まあ、何はともあれ魔石は揃ったんだ。ハジメ、頼むぞ。」

 

「ああ、任せとけ。」

 

お互いにそう言うと俺は二つの手に持っていた魔石をハジメへと託した。やっとこさハジメの出番ってわけである。

ハジメが強くなったのは知っているが、それでも具体的な強さは知らないからな。直接見ることのできるいい機会だ。じっくり観察させていただこう。

 

ハジメに渡した魔石が扉に嵌められると直後、魔石から赤黒い魔力光が迸り魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、パキャンという何かが割れるような音が響き、光が収まった。どうやら複製は完全に成功していたようだ。

 

「おお……。」

 

 

すると、同時に部屋全体に魔力が行き渡っているのか周囲の壁が発光した。その光景に思わず感嘆の声を漏らしてしまったのだ。ハジメにとっては久しく見なかった程の明かりだったのだろう。少し目を細め眩しそうにしていた。

 

「…………どうやら開いたようだな。」

 

ハジメの言葉を確かめるため少し扉に触れてみると魔法陣が反応することはなく、代わりに力を込めると扉が開くことが確認できた。

 

「確かに開いたな。ハジメ、この先は極力お前に任せるつもりだ。お前の力を見たいしな。どんな敵かは分からないが準備はいいか?」

 

「ああ、どんな敵だって関係ない。敵は……殺す!」

 

そう宣言し、ハジメは勢いよく扉を開いた。そこにいたのは………

 

 

上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ている、長い期間ここにいたのだろう。少し霞んだ金色の髪を持ちそして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳を覗かせる十二、三歳ほどの美少女がいた。

 

「……だれ?」

 

いや、こっちのセリフである。なんせどんな強敵がいるかと意気込んだら囚われの少女である。ここはいつの間に魔王城になったのだろうか。

 

だが、あまりのことに反応できずにいるとハジメが動いた。

 

「すみません。間違えました。」

 

昔のような優しき笑みを浮かべそう言うとパタンと扉を閉じた。

 

「えー……。」

 

やはり色々ハジメは成長したな……と思ったのは言うまでもない。人としていい方向かは知らんが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でだ、どうするよ。流石にスルーは酷いだろ。この先に用があるし。」

 

別に酷いと言いはしたし実際に思ったが率先して助けるかと言われたらそこはまた別の話である。なのだが今回に限って完全スルーは出来ない。なぜならこの先に俺たちは用があるのだから。

 

「でもなぁ、あんな厄介ごと臭が溢れ出てるやつに関わりたくないしなぁ。脱出に使えるとも思えない。」

 

「まあ、それに関しては激しく同意。」

 

さっさと上に上がりたいのだからこんなところで時間を消費している余裕はない。

 

「でも、確かに私たちはこの先に用があるのですから、どうにか出来るならどうにかしたいのが私の意見です。あんなところにいて戦いの邪魔されたら堪りませんし。」

 

一方でコットンはあの少女を助ける……というか邪魔だからどかすという意見である。ほんわかそうな見た目でも流石は筆頭オトモ。戦いの邪魔が許せないそうだ。穏健派のコットンはいなかった。

 

「それもそうだな……。あ、でもなぁ、助けたとしても脱出の足手まといになるくらいだったら「ああ、その点は心配いらないと思います。」っ、そうなのか?」

 

足手まといになるくらいなら辞めた方が……という意見を言おうとしたら即座にコットンに否定された。

 

「はい、私は人間になってからなんとなくですが他人の魔力の量や質が分かるようになったのです。彼女は魔力に関してはかなりのものでした。恐らく魔力の量だけなら雷牙さんやハジメさん以上です。恐らく封印にもそれが関係しているのでしょう。ですので、足手まといにはならないかと。」

 

ならば、多少手間だが封印を解くのが良いかな。魔改造されたハジメや俺に勝る魔力量ならば足手まといどころかもしもの時の強力すぎる砲台となるであろう。

 

「ハジメ、俺はあの子を助けたほうが利になると思うんだがハジメ的にはどうだ?」

 

「厄介ごとは嫌なのだが……、仕方がない。そうしよう。」

 

ハジメにも了承を得たため、俺たちは再び扉の向こうへすすんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、来たは良いがどう壊すか……。」

 

再び扉の向こうへと戻った俺らは只今、謎の立方体に封印されている少女の前に来ていた。

因みに、扉を開けたときに見せた少し嬉しそうな顔を見てしまったため少し罪悪感があったのは確かである。

少し考えてみれば長い間封印されて、変化のなかった日々に現れた俺たちはさぞかし希望に見えたことだろう。だが、あの時は唐突だったため咄嗟のあの対応は許してほしいものだ。

 

 

 

「待て、助けることには今更反対はしないがその前にこいつが何者かは聞いておいた方がいいんじゃないか?こいつがここの主だってこともあり得なくはないだろう?」

 

たしかにその可能性もゼロではないし……。聞くだけならタダだろう。

 

「それもそうだな、なあ金髪少女よ。君は何者だ?」

 

するとコクと頷き、ポツポツと少女は自分がここにいる経緯を話し始めた。

 

「私は、先祖返りの吸血鬼……他の子たちよりすごい力持ってる……だから昔、国をおさめてた……。私も、国のために一生懸命頑張った……でも……ある日……裏切られたの……家臣の皆に……おまえはもう必要ないって……おじ様が……これからは自分が王だって……。すごく悲しかったけど……私、それでも良かった……みんなの為になるならって……。でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

枯れた喉で必死にポツリポツリと語る女の子。涙は長い期間封印されて枯れ果ててしまったのだろう。感情も表せない。それは辛い日々にさらに拍車をかけたことであろう。

 

思っていた以上の波乱万丈な人生に誰もが複雑な心境を抱え、それがそのまま空気となって流れていた。だが、色々聞きたいことがあるのも事実な為、意を決して声を出した。

 

「あー、その、なんだ。想像以上に辛い人生だったな。話から察するに君はどこかの国の王族だったのかな?」

 

「……(コクコク)」

 

「なるほどねぇ。じゃあ殺せないっていうのは?強さだけなら封印もできるわけないし、他に事情があるよな?」

 

「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る。」

 

「自然治癒能力か、それは殺せないな。」

 

「あと……魔力、直接操れる……陣もいらない。」

 

「ん?どこかで聞いたような………。」

 

誰かもそんな感じだったような……。

 

「ハジメも一緒の能力を持ってたよね?確か会ったときにそう言ってた。」

 

「………そうなの?」

 

「ん?ああ、ノワールの言う通りだ。まあ、もともと魔法が使えない俺が持っていても宝の持ち腐れだがな。」

 

ああ、そういえばハジメもそんなこと言ってたな。

すると、ハジメはさらに言葉を続けた。

 

「だが、コットンによるとこいつは俺たち以上の魔力を持っている。そうだよな?」

 

「はい、今もビンビンに感じてます。」

 

「なら話は変わってくる。周りがチンタラと詠唱やら魔法陣やら準備している間にその無尽蔵とも言える魔力量からバカスカ魔法を撃てるのだから、正直、その辺の……いや、一流でも勝負にならない。しかも、不死身。スペックならこの中にいる誰よりもチートだな。」

 

そんなになのか。魔力を直接操るというのは。

 

 

 

「なら、話を信じるとして助けたところで大したデメリットはあまりないように思えるため、どう助けるかを思案しよう。」

 

もしかしたら全部、嘘ということもあるにはあるがもうそれはこの子がアカデミー賞ものの演技力と直木賞取れるレベルの話を作る才能があったとして割り切るしかない。

 

「この石を壊せばいいわけだが……多分これは壁とかと一緒の材質だろう。」

 

そう考え、軽く角を殴ると一時は壊れるがすぐに元に戻ってしまった。

 

「予想通り。となると俺はどうしようもなくなってしまう。思いっきり殴れば壊せるがこの子にも大きなダメージがある。かといって、ここに来たときみたいに雷氷を使ってもこの子がビリって凍る。」

 

「私も難しいわね。私の魔法は雷と氷だし。」

 

「私も難しいですね……。雷と氷以外も使えますがレイヤさんのように突出しているわけではないのでこの材質のものを壊すとなると……。」

 

「ノワールも武闘家だからこの子を傷つけないように壊すのは無理〜。」

 

俺に続き、レイヤ、コットン、ノワールも自分には無理と言った。

まあ、元々1番最適なのは分かっていたわけだが……

 

「ハジメ、おまえなら錬成でどうにか出来ないか?」

 

ハジメがなんだかんだで最適なのである。

 

「……まあ、いけなくはないが……。」

 

そういうと少女の方を向き、目をジッと見つめた。そして、それにつられ少女も目を見つめ返した。ハジメのそれはまるで相手の本質を見るかのように見え、助けるに値するか最終的に判断をするつもりなのだろう。

 

どのくらい見つめあったのだろうか?やがてハジメはガリガリと頭を掻き溜息を吐きながら、女の子を捕える立方体に手を置いた。

 

「あっ」

 

少女もその行動の意味に気がついたようだ。目を大きく見開いている。

 

「俺しか出来なそうだからな。俺もこいつを助けるべきと判断した。」

 

「そうか、じゃあ、頼むわ。」

 

どこで思ったかはわからない。昔のハジメの優しさを信じてたのかはたまた裏切られたという言葉に同情してくれるとでも思っていたのかもしれない。だが、随分前から俺は何となくハジメは助けてくれると思っていたのだ。そして事実、助けようとしてくれている。

 

ここでハジメはどんだけ辛い思いをしたかはわからない。だが、その中でこの少女と通づるものを感じたのだろう。

その時に支えてあげられなかったことに少し後悔をしながら、ハジメの錬成を見届けよう思い、俺はハジメの方を改めて向いた。

 

 

 

ハジメの手から赤黒い……いや、限りなく濃い紅色の魔力が流れ出した。だが、ダンジョンの鉱石ということでなかなかうまく通らないらしい。

 

「ぐっ、抵抗が強い! ……だが、今の俺なら!」

 

ハジメはさらに魔力をつぎ込んだ。

 

「改めてですが、ハジメさん凄いですね……。こんな短時間でここまでの魔力をつぎ込むなんて……。普通だったら耐えられませんよあんなの。ほら、もう6小節分は流してる……。」

 

なにやら、コットンが珍しくブツブツと呟いている。魔法使いとしてレベルの違いを感じているのだろうか。

 

既に、周りはハジメの魔力光により濃い紅色に煌々と輝き、部屋全体が染められているようだった。

 

「!?まだいくのですか……。7……いえ8小節分はいってます……。」

 

どうやらさらに魔力をつぎ込んだらしい。俺は凍らせるという搦め手のような方法で攻略したが真正面から突っ込むと想像もつかないくらい大変なのだろう。

 

「まだまだぁ!」

 

「9小節分を無理やりですか!?自分自身が壊れる……いえ、ハジメさんに限って有り得ないですね。まさかここまでハジメさんとの差があったとは……。」

 

若干、興奮を見せながらさらにコットンが独り言という名の説明をしてくれた。

どんどん輝きを増す紅い光に、誰もが目を見開き、この光景を一瞬も見逃さないとでも言うようにジッと見つめ続けた。

 

だがやはり、ハジメも辛いのだろう。ハジメはやがて、脂汗を流し始めた。だが、これだけやっても未だ立方体は変形しない。

 

「まだダメか……だぁ!こうなったらフルパワーだぁ!ぶっ壊れろぉおらぁ!!!」

 

恐らく、今つぎ込める最大の魔力をつぎ込んでいるのだろう。光がさらに強くなり、さながら太陽の如くあたりを爛々と照らした。

 

 

 

正直、ここまで本気になってくれるとは思っていなかった。やれることはやってくれるだろうが最初は反対していたため、ある程度で区切りをつける……なんてことも想定していた。

だが、実際は自分のフルパワーを出して封印を解こうとしている。なにがハジメを突き動かしているかはわからない。

だが、なんとなく裏切られたという事実がハジメの奥底にある今は息を潜めてしまった……いや、分かりづらくなってしまった前のような優しさの部分を刺激しているのかなとも思える。

 

だが、その時は唐突に訪れた。フルパワーをつぎ込んだ数秒後、突如として立方体が融解し始め形を崩した。

そして、ついに、少しずつ彼女の枷を解いていく。

 

 それなりに膨らんだ胸部が露わになり、次いで腰、両腕、太ももと彼女を包んでいた立方体が流れ出す。一糸纏わぬ彼女の裸体はやせ衰えていたが、それでもどこか神秘性を感じさせるほど美しかった。そのまま、体の全てが解き放たれ、女の子は地面にペタリと女の子座りで座り込んだ。どうやら立ち上がる力がないらしい。

 

流石のハジメも疲れ果てたのだろう。枷が解けたのを見るとハジメも座り込んだ。肩でゼハーゼハーと息をし、すっからかんになったであろう魔力のせいなのか一歩たりとて動けそうにない。

 

「……やってやったぞ…。」

 

「ああ、お疲れ様。ハジメ。」

 

そう言いながら何かを取り出そうとするハジメの手を弱々しく少女の手が握った。

本当に弱々しい、力のない手だ。小さくて、ふるふると震えている。ハジメが横目に様子を見ると女の子が真っ直ぐにハジメを見つめている。顔は無表情だが、その奥にある紅眼には彼女の気持ちが溢れんばかりに宿っていた。

 

そして、震える声で小さく、しかしはっきりと女の子は告げる。

 

「……ありがとう。」

 

「…………どういたしまして。」

 

かくして、少女は数百年ぶりにハジメの手によってかいほうされた。




原作と比べ、ハジメは雷牙が来たことによって少し、ほんの少しだけ残酷性が薄くなっています。


改めて、本当にお久しぶりです。お待たせ致しました。
長い期間開けてしまい申し訳ございませんでした。遅くなった理由?言い訳?としてはここでは書ききれないため活動報告に書かせていただきました。
もし、気が向けばご覧になっていただけると有難いです。「知るかそんなこと」という方はなるべく早く新しい話を出せるよう頑張りますのでそれまでお待ちくださると幸いです。
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