ありふれた狩人《チート》と世界最強の友達《魔王》 作:Y.U.K
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。俺には縁遠いものだな……自分で言って悲しくなってきた。
「素敵……」
香織が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。そして、誰にも気づかれない程度にチラリとハジメに視線を向けた。ハジメは気づいてなかったが、俺と八重樫は分かったようだ。ハジメに対し殺意が湧いたのは悪くないと思う。
「だったら俺らで回収しようぜ!」
そう言って唐突に動き出したのはボロ雑巾もとい檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。どうせ、これを白崎にあげて好感度アップでも狙うつもりだろう。当然、パーティーをまとめるメルド団長はそれを見て慌てた。
「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」
しかし、檜山にとっては好感度のためには多少の危険など、どうでもいいのだろう。聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。
メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に念のためと騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。
「団長! トラップです!」
「ッ!?」
しかし、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。
檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。今回は檜山がまんまと引っかかってしまったのだ。
魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。
「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」
メルド団長はそう言ったが、恐らくは間に合わないだろう。
(ったく、つくづくくだらないことしかしないな檜山は。この感じだと転移でもさせられそうだな。転移先が「石のなかにいる」とかならなければいいが…………)
そう思いつつも一応メルド団長の言葉に従い、他の奴らとともに逃げようとしたが案の定、間に合わなかった。
ズドンッ!
「痛っ!?」
突然、魔法陣が強く光ったと思ったら強い衝撃が尻に来た。転移先はどうやら大きな橋の上のようだ。俺や殆どの奴らは尻餅をついていたが、メルド団長や騎士団員達、光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。流石というべきか。
「大丈夫ですか?雷牙さん。」
「あれくらいにも対応できないとは情けないニャ。」
少し遅れて、俺の目の前にコットンとノワールが落っこちてきた。流石は猫というべきか。難なく着地をしていた。
「流石にあれは立てないだろ……。にしてもここはどこだよ。さっきの場所とは大違いのようだが……。」
さっきはまさに洞窟のような場所だったが、ここは向こうの世界にもなかなかないレベルの大きな橋だった。迷宮の中にあるのは明らかに異常だ。
ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。
橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。ハジメ達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。
それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。
「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」
どうやら、かなりヤバい状況のようだ。メルド団長の普段からかけ離れた雷の如く轟いた号令に、俺たちはわたわたと動き出した。
しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現しからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が……
「………おいおい。この魔物の量もヤバいがそれ以上にこっちのデケェ魔法陣の魔物は………?」
階段側の橋の入り口の小さな無数の魔法陣からは、骨格だけの体に剣を携えた魔物“トラウムソルジャー”が溢れる様に出現した。空洞の眼窩からは魔法陣と同じ赤黒い光が煌々と輝き目玉の様にギョロギョロと辺りを見回している。その数は、既に百体近くに上っており、尚、増え続けているようだ。
だが、こっちは最悪俺らでも工夫をすれば倒せるレベルであろう。それでも今までの魔物とは比べ物にならないが。
しかし、通路側の巨大な魔法陣から出てきた、体長十メートル級の四足で頭部に兜のような物を取り付けた魔物。どこか武将とトリケラトプスを合わせたかのような姿を彷彿とさせるが雰囲気がそれを否定していた。禍々しいほどの圧倒的な存在感がそいつにはあったのだ。まるで、会ったら最後生きることは不可能だとでも言うような……。
「………コットン、ノワール。一応聞いてみるがあいつら含めて全員で戦ったらあのバケモンに勝てると思うか?」
「ふふっ、面白い冗談ですね雷牙さん。………万が一にもあり得ませんね。」
「雷牙は頭が弱いのかニャ?そんなこと言うなんて。」
「ハハッ、まさかノワールの減らず口で気持ちが軽くなる時があるなんてな。………そういえば、困った時に一度だけ女神と連絡を取れるんだよな。縋ってみるかな…。」
もしかしたら、打開策が貰えるかもだな。
「グルァァァァァアアアアア!!」
「ッ!?」
その時、バケモノが大きな咆哮を上げた。メルド団長曰くこのバケモノはベヒモスといい、かつて最強と言われたパーティですら歯が立たなかった正真正銘のバケモノだった。
(でもどーやって女神様と連絡を取れって言うんだ?まさか女神さまーって呼んだらでてくるのか……?)
『いや、その必要はないぞ。』
(女神様!?)
『いや、言い忘れてたがちょくちょく君の様子を見ていたのだ。なんせ、暇なんでな。そしたら、ピンチになっていて、どーするのか見ていたら君の声が聞こえたのだから声をかけてみたのだ。』
(声に出さなくてもいいのか……ってそうじゃない!女神様!この状況を打破したいんだがどうすればいい!?)
『ふむ……ベヒモスか。流石に今の君では厳しいな。よし、』
そういうと、いきなり周りの全てが止まった。
『少し、時間を止めてそっちの世界に行こう。』
すると、目の前に転生前に会った女神様が現れた。
「女神様ってこっちの世界にも来れるんだな……。」
「本来はタブーなんだがな。色々、こちらが迷惑をかけている点を考慮して、最高神であるゼウス様も目をつぶってくれている。」
最高神ってゼウスなのかよ。
「てか、今更なんだけどゼウス様がいるってことはもしかして女神様も地球の神話にいるような……?」
「ああ、地球の神話というのは大抵実在している神様なのだよ。気まぐれで短期間降り立ったヤンチャな神とかがな。まあかく言う私も人のことを言えんが……。私の名前はイシスという。地球では魔法を司っていると言われていたな。」
なんと、地球でも有名なイシス様だったか。俺はとんでもない方に拾われたようだな……。
「まあ、私のことはいい。それよりもだ。この状況をどう打破するかなんだが……」
「そうだ!イシス様!この状況をなんとかしたいんだがどうすればいい!?」
「そう慌てるな。この状況から脱出するには2つの方法がある。ここから逃げ出すのと、あいつを倒すことだ。前者ならば確実に逃げられる。だが他の人間は助けられない。出来て1人だけだろう。後者ならばまず、ある条件を満たさなければならない。それに選ばれなければまず後者を選択することすらできない。更に倒せる確率は0%から60%程になるだけだ。今のお前ではそれが限界だ。さて、どちらを選ぶ?」
そんなのもちろんーーーーーー
「戦って倒す。」
「ふっ、そういうだろうと思ったよ。」
ハジメのことを諦めらめることなんてあり得ないし、白崎や八重樫、龍太郎や光輝などの仲良くしてくれてる奴らを諦めるつもりもない。
可能性があるのならそっちを掴ませてもらう。
「で?俺はどうすればいい?選ばれる条件ってのはなんだ?」
「ああ、それなんだが君は何もしなくていい。ただ少し動かないでくれよ?」
そういうとイシス様は突然俺の唇を奪った。
「!?!?!?!?」
『突然で悪いがこれが条件ってやつだ。』
イシス様は頭の中に説明を加えてくれたが正直、それどころじゃない。彼女いない歴イコール年齢には軽くキャパオーバーだ。
いい加減、キャパオーバーで気絶しそうになっていると突然、身体が光り始めた。それを見ると、イシス様は満足そうに唇を離した。
「んっ、どうやら認められたようだね。」
「ちょ、ま、え?な、何したんですか!?」
「そこまでキスに反応されるとこっちとしても照れてしまうのだが……。まあ、これが条件というやつだ。これ以上、君に力を与えると流石に色々な方面に問題がありそうだし、何より君に負担が大きすぎるからね。いっそのこと、私の眷属としてしまえば全て解決できるということ思ってね。それで、眷属にする条件が
「俺ってイシス様の眷属になったの!?」
いつのまにか眷属になっていた。
「現に、ステータスにも変化が起きているはずだよ。ステータスプレートの時間だけ動くようにしたから見てみるといい。」
言われるがままに確認してみると
狩野 雷牙 17歳 男(イシスの眷属) レベル:???
天職:調教師
筋力:750
体力:600
耐性:800
敏捷:900
魔力:1000
魔耐:1000
技能:調教・言語理解・モンスターハンター[+MP強化]
MP:7000
憑依時間:5分
「めっちゃ強くなってる!?」
めちゃめちゃ強くなってた。更に、よく分からない効果が追加されていた。
「MP強化というのはMPの使い道を増やしたという感じだな。単純に全体のステータスを上げるというものだ。シンプルで、憑依よりも上昇率は低いが一度上がれば下がることはないので汎用性が高い。また、これの最大の利点は君が望めば召喚した子たちも強化できる点だ。これは状況によって召喚するかステータスを上げるかよく考えてくれ。ああ、そうそう。これも一度使えばMPの分だけステータスがランダムに上がり、MPはリセットされるからな。」
この強化はとてもありがたい。ステータスを一気に上げられるのは想像できることではないからな。
「ありがとう、イシス様。あっ、そういえば眷属化すると何かしなければいけないこととか……」
「ああ、その点は心配するな。眷属化というのはいわば女神がその人物を認めたということだからな。変化した点といえばいつでも私と連絡が取れるようになるくらいか。」
「じゃあ、俺にとってはプラスでしかないわけか。ますます感謝だな。」
「気にしなくても良い。こっちはこっちで普段、楽しませてもらってるのでな。」
そういうとイシス様は女神という名に相応しい優しい笑みを浮かべた。思わず、見惚れてしまった。
「では、そろそろ私は戻るとするよ。これから色々大変だとは思うが、とりあえずはあのベヒモスを倒してくれよ?」
「そうだった。何から何までありがとう。」
そう心からの感謝を伝えるとイシス様は消え、時間も動き出した。
「さて……まずはMPを使うか。」
「雷牙さん?………一体何があったのですか?」
「突然強くなったニャ……?」
おお、そういえば俺にとってはだいぶ長い時間だったが、他の奴らからしてみれば一瞬だもんな。
「ああ、実はなーーーーー
〜説明中〜
ってことがあったんだ。」
「そんなことが………雷牙さんは女神様の眷属ということですかニャ?」
「意味がわからないニャ……。」
「まあ、そうだろうな。だが事実だ。それよりもまずはあいつをなんとかしないと。」
今もベヒモスは光輝たち勇者組とメルド団長率いる騎士団がなんとか足止めをしているという状況だ。
トイソルジャーの方もなんとか拮抗しているがジリ貧になるのは間違いない。いずれにしろ、早いうちに決着をつけなければ。
「MPは…………今回に限っては普通に憑依したほうがよさそうだな。」
短期決戦にできるのであればそれに越したことはない。
「さて、何が出るかな……"モンスター召喚"」
すると、直径10mはあると思われるベヒモスに負けない大きさの魔法陣が展開された。
その光景に思わず光輝たちは戦いの手を止め、ベヒモスも新たな敵の出現の予感に様子を見ていた。そしてそこから現れたのは……
「これは………キリンか。」
そこから生まれてきたのは白銀に輝く美しい体毛と額から伸びる鋭い一本角が特徴の神々しささえ垣間見える幻想的な容姿をもつ幻獣 キリンだった。
「期待はしていたが……まさか古龍種が出てくるとは……。」
これは想像以上に頼もしい奴が来てくれた。キリンは一応は大型モンスターとして扱われているものの、その体躯は非常に小柄で、中型モンスターと見紛う程度の大きさしかない。
しかし、その身体とは裏腹に、キリンが誇る能力は非常に危険なものであり、その危険性は中型モンスターどころか並み居る大型モンスターさえ凌駕する。
その能力は自在に雷を操る力で、天に向かって鳴く度に無数の雷を落とす姿が確認されている。
また、自身は強い耐雷性を持っており自身が雷を浴びたとしても無傷で済む。それどころか雷によって新陳代謝を上げ、むしろ強化をしているらしい。
こいつにはモンハン時代にも素早い動きと雷にはだいぶ苦労させられて来た。
"あなたが私の主人だとお見受けするわ。"
「っ!へぇ、会話もできるのか。こいつはますます優秀だ。」
"それよりも状況は理解しているわ。早いとここの状況をなんとかしましょ。"
「そうだな。"憑依"」
すると、キリンの身体が粒子状となり俺の身体の周りで円を描いていた。そしてキリンが完全に粒子と化すと粒子たちが俺の身体にまとわりつき気がつくと俺はキリン装備を身に纏っていた。
因みに今の俺をステータスで表すと
狩野 雷牙 17歳 男(イシスの眷属) レベル:???
天職:調教師
筋力:750
体力:600
耐性:800
敏捷:900[キリン憑依+1500]
魔力:1000[キリン憑依+1000]
魔耐:1000[キリン憑依+1000]
技能:調教・言語理解・モンスターハンター[+MP強化]
MP:0
憑依時間:5分
こんな感じだった。とんでもない化け物になっている。
「雷牙さん………すごいですニャ。」
「カ、カッコいい………。」
俺のオトモたちも思わず驚いているようだ。ノワールは大丈夫か?なかなか奇抜な格好だと思うんだがこれ。
「さて……、やりますか。光輝たち、メルド団長。どいてください。こいつは俺がやります。」
「雷牙1人でやるのか!?それにさっきの魔物だってなんなんだ!急に現れたと思ったら突然いなくなって、雷牙の服装が変わってるし……。」
「そうだぞっ!?だいたい1人でベヒモスの相手なんかできるわけがない!無駄死にするだけだぞ!」
「もしかしたら勝てないかもしれません。………ですが、秘密兵器で時間制限がありますが今の俺は光輝やメルド団長よりはるかに強い。」
「だ、だが「それに!」っ!」
「いまはあっちのトラウムソルジャーの方が光輝たちの力が必要だと思いますよ?ほら、現に助けを求めてハジメがやってきたし。」
そういいながら後ろを指差すとハジメが光輝に向かって走ってきていた。
「天之河くん!」
「なっ、南雲!?」
「早く撤退を! 皆のところに! 君がいないと! 早く!」
「いきなり何だ? それより、何でこんな所にいるんだ! ここは君がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて南雲は……」
「そんなこと言っている場合かっ!」
ハジメを言外に戦力外だと告げて撤退するように促そうとした光輝の言葉を遮って、ハジメは今までにない乱暴な口調で怒鳴り返した。何時も苦笑いしながら物事を流す大人しいイメージとのギャップに思わず硬直する光輝。俺も思わず少し目を見開いた。
「あれが見えないの!? みんなパニックになってる! リーダーがいないからだ!」
光輝の胸ぐらを掴みながら指を差すハジメ。
その方向にはトラウムソルジャーに囲まれ右往左往しているクラスメイト達がいた。訓練の事など頭から抜け落ちたように誰も彼もが好き勝手に戦っている。どうやら、スペックだけで戦ってきていたのがついにほつれが出てしまったようだ。効率的に倒せていないから敵の増援により未だ突破できないでいた。スペックの高さが未だ命を守っているが、それも時間の問題だろう。
「一撃で切り抜ける力が必要なんだ! 皆の恐怖を吹き飛ばす力が! それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ! 前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」
呆然と、混乱に陥り怒号と悲鳴を上げるクラスメイトを見る光輝は、ぶんぶんと頭を振るとハジメに頷いた。
「すまないっ。雷牙!ベヒモスはお前に任せる!絶対に生き残ってくれよ!」
「なっ!?光輝!雷牙も一緒に「メルド団長、あなたも逃げてください。大丈夫ですから。」し、しかし「あなたも必要なリーダーの1人なんですよ。別に俺は死ぬつもりは一切ない。だからさっさと向こうを終わらせて加勢にでも来てください。もしかしたら、ベヒモスを倒した英雄になれますよ?」っ」
俺が少しふざけた様子でそういうと本当に絞り出したかのような声で「すまない」と残しトラウムソルジャーの方へといった。
「………さて、それじゃあ英雄にでもなりますか。コットン、ノワール。お前らには別の仕事を頼みたい。」
「………それは一緒に戦ってはいけないということですかニャ?」
「そんな……そんなこと嫌だニャ!」
本当に………本当に俺にはもったいないほどできたオトモだ。自分では到底かなわないと知りながらも命を懸けてまで残ろうとしてくれている。
「これは信頼しているお前らにしか頼めない。いいか、これは俺が生きるための保険だ。俺はこいつを憑依できている時間内に殺すつもりでいる。だが、万が一間に合わなかった場合を考えるとこんな強力な力だ。反動がないとは思えない。最悪、動けない状況になるだろう。もしも、そうなった場合にお前らには憑依から解かれて現れたキリンとともに俺を逃がしてほしい。」
おそらく、憑依後は良くて全身筋肉痛。悪ければ力が入らない状況までになると考えるのが妥当だ。どっちみち、ベヒモスから逃げるのは不可能に近いのだ。
「………絶対に死なないと約束できますかニャ?」
「勿論だ。こんなところで死んでたまるか。」
「死んだら地獄の果てまで追いかけますニャ。」
「だから死なねえって。」
「………信じてます。」
「おう。」
そう言ってコットンは納得をしてくれた。
「………ノワールにも頼めるか?」
「でも、でも!もし雷牙が死んじゃったら……」
「だから死ぬつもりはないんだけどなぁ……」
「それでも!絶対に死なないなんて言えないニャ!死んだら嫌だニャ!」
……普段は憎まれ口しか叩かないがノワールなりに俺のことを心配してくれてたんだな。
俺は嬉しさと少しの気恥ずかしさに頭をポリポリ掻きながら、こう言った。
「信じて待ってろ。」
「っ!!」
「………お前の言う通り絶対なんてないかもしれない。だけどそれを言い出したら世の中全てがそんなもんだ。だから、今回は俺のことを信じて待っててくれないか?そんで、もし俺がダメになったら全力で俺のことを助けてくれ。」
「………………その言い方はズルいニャ。」
そう言うとノワールは目の端に溜まっていた涙を拭き取り普段の調子を取り戻した。
「ぜっっっったいに帰ってくるニャ!ノワールのご褒美を買うまでは絶対に死んじゃダメニャ!」
「まだ覚えてたのかよ……。まあ、任せとけ。」
「もし、雷牙が疲れてぶっ倒れちゃったら………仕方がないから助けてあげるニャ。」
「そん時はマジで頼むわ。」
そう言ってノワールも下がってくれた。
"随分といいオトモを持ってるわね。"
「キリンか……。ああ、俺らはあいつらのためにも戻らなければならない。だから期待してるぜ?」
"任せて。まだ私はあなたと出会ったばかりですもん。死んでたまりますか。"
「はっ、その通りだ。」
すると不意に俺の手に対になった双剣が現れた。赤と青の角のような形の双剣で青は直線的、赤は曲線的と若干違うデザインをしていた。
「これは?」
"私の武器、双雷剣キリンよ。今のあなたにはこれが一番使いやすいと思うわ。"
確かにとても軽い。だが強い力を感じる双剣だった。
"オトモたちが使う剣よりもはるかに強い雷属性を持っているわ。その武器と私の雷撃であんなやつボコボコにしなさい。"
「ああ………さてとわざわざ敵さんも待ってくれてたけど、さっさと退場願いますかね。」
「グルァァァァァアアアアア!!」
ついにベヒモスと雷牙との命を懸けた戦いが幕を開けた。
次回はバトル描写か………。頑張ります。