ありふれた狩人《チート》と世界最強の友達《魔王》 作:Y.U.K
「さ、切り替えて行くか。」
ベヒモスオーバーキル爆散事件のあまりの衝撃に一時呆然としていたが、時間は限られているため切り替えて降りていこうと思う。
「けど、どーやってこんな深い谷を降りるのよ?」
確かに底が見えないほどに深いし、とてもじゃないが降りることなんて出来ない。だが、俺らには
「なあ、キリンさんや。」
「………急に何よその口調は。」
「いやいや、ぼくたち人間にはとても難しいこの高さですが。ですが。キリンさんならぁ〜、あるいは?楽々降りれるんじゃないんですか?」
「……つまり、私に乗って降りるのが一番楽だから乗らせてくれということ?」
「いやぁ、話が早くて助かりますわ!ほな、いっちょ頼んますわ。」
「…………はぁ、まあいいけどね。私が最適だっていうのは分かってるし。」
そう言ってキリンは苦笑した。それだけで「絵になりますわー」と思わせられたのだから相当魅力的である。
"それじゃあ、行くわよ。"
「「「おーー!!」」」
キリンは元の姿………いや。どちらかというと獣形態って言った方がいいな。とにかく、モンスターの状態になっていた。そして、その背中に俺、コットン、ノワールが座る。
すると、後ろへの衝撃が最小限になるように動きつつ、最速で降りて行くという神業を披露しながらどんどんと進んで行く。
「やっぱ、キリンって速いなぁ〜。」
"まあ、スピードは私の武器の1つだからね。ここに関しては雷牙にも負けるつもりはないわよ?"
「ハハッ、頼りにしてるぜ。キリンさん。」
"……………"
「……………ん?キリン?」
会話の途中で声が途切れてしまった。進行は止まらずしっかりと降りてくれているのだが、どこか顔がぶすっとしている。……ように見える。モンスターの顔の変化なんか怒りかそうじゃないかしかわからん。
"………コットンやノワールには名前があるのに私にはないのが少し寂しかっただけよ。"
「あーー、たしかに。」
コットンやノワールは名前を自然とつけたが、こいつを召喚したのはベヒモスと戦う時だったため、そこで名前をつける余裕はなく、ズルズルと「キリン」のままできてしまっていたのだ。
"まあ、時が時だし流石にわがままは言わないわよ。"
「いや、別にいいぞ?」
俺は乗ってるだけだし。考える余裕くらいはある。
(キリンだったら、やっぱりあいつだし……あー、でもあの白い線のことも入れたいから……合体させると……)
「………レイヤなんかどうだ?輝きっていう意味の『レイ』とキリンっていったらやっぱり四神の『サクヤ』が出てきたからそれを合わせたってだけなんだが……。」
安直ではあるが、俺なりには悪くないと思われる。
「サクヤって方は知りませんが素晴らしいと思います!」
「雷牙にしてはいい名前だな!」
コットン、ノワールからもなかなかの評価だ。なぜノワールは偉そうにしてるのかは知らんが。
"レイヤね………。うん、すごくいいと思う!今日から私はレイヤと名乗るわ。"
キリン改め、レイヤも気に入ってくれたようだ。良かった良かった。
「じゃ、改めてよろしくなレイヤ。とりま、一番下まで。」
"ふふっ、了解しました。"
そう言って、レイヤは少し嬉しそうに返事をし、その気持ちを表すかのごとく加速を少しだけした。
「案外、速いもんだな。」
「ざっと、800mから1000mくらいかしらね。まあ、私にとっては思ったほど苦ではなかったわ。」
そんなもんか。深いには深いが些かレイヤにとっては余裕すぎたのだろう。
「さて、降りたは良いが………ここからどうするか。」
降りてみたらそこは幅5mほどの川が流れていた。深さは膝より少し下くらいだからそこまで深くはない。
そしてそこの空間は、上の空間と酷似していたのだ。ただ違うのは大きさ。上はせいぜい五メートルほどだった横幅はこちらの空間では優に二十メートルを超え、一番狭いところでも十メートルはある。
「ここでハジメを見つけるのはかなり骨が折れるが……やるしかないか。」
今この瞬間にもあいつに命の危機が迫っているかもしれないのだ。ためらっている暇なんてない。
「見た感じかなり広い。固まって探していたら時間がいくらあっても足りなくなるので、二手に分かれて探そう。コットンとノワールは川の下流の方に向かってくれ。俺とレイヤは上流に向かって進む。それで、行き止まりまで行ってくれ。そしたら、川に沿って戻ってきてくれればいつかは合流できるだろう。いいか?確かにハジメを見つけ出すことが目的だが、あくまで一番優先するのは自分の命だ。もし、勝てそうにない敵が出てきたら速攻で逃げろ。」
そう伝えると特に反対意見もなく俺たちはハジメ捜索をスタートさせた。
「ハジメが見つからねぇ………てか、生きてる奴が居ないのだが。」
「見つかってもみんな死んでるわね……。」
そうなのだ。捜索を始めて早数時間。俺たちはハジメどころか生き物を1匹も見つけ出すことができて居なかった。
全ての生物が惨殺されていたのだ。それも攻撃を食らった場所が爆散するほど圧倒的な力によって。
明らかに異常な事態である。今までの迷宮の傾向を考えると同じ層には同じくらいの強さの魔物しか居ないはずだ。なのに、ここの魔物は全て殺されている。
「ここの世界の魔物の生まれ方は知らないが……。ここが迷宮の途中だと考えると普段ありえない強さの魔物がイレギュラーにポップでもしたか?」
そう考えると非常にマズイ。
迷宮というのは下の層に行けば行くほど魔物の強さは強くなるのがセオリーだ。そうなると、ここの魔物は上の層とは比べ物にならないほど強いことが考えられる。大体の魔物がベヒモス級かそれ以上と考えるのが妥当だろう。
そんな空間でサポート職であるハジメが生きていられるであろうか。流石に難しい。てか、無理だろう。そして今はハジメが落ちてから数日が経っている。最悪、ハジメもやられているかもしれない。そう考えると思わず、背中に冷たいものが走った。
「雷牙!見てこれ!」
最悪な結末を思わず思い浮かべてると不意にレイヤの声が響いた。そこには他の魔物と同様に惨殺されたウサギのような魔物もいた。そして、レイヤが手に何か光るものを持っていた。
「それは……?」
「何か手がかりがないかと思って探して見たんだけど……、そしたらこれが体内にあったのよ。」
「これは………銃弾?」
この世界にはあるはずのないものだ。だが、ここに存在している。そんなことが可能なのは………。
「まさか……ハジメなのか!?」
もし、ハジメが銃の構造をある程度理解していて、再現することができたら?ここの洞窟に火薬の代わりとなるものがあったとしたら?その火薬の爆発に耐えられる鉱石があったら?かなり低い確率であることはわかっている。だが、俺たちの世界のラノベにも『現代知識チート』なるものがあり、現に実物がここにあるのだ。疑わずにはいられない。
「ちょ、ちょっと雷牙。それがなんでハジメと繋がるのよ?」
「おっと、すまん。今から説明する。」
思わず、テンションが上がりレイヤを置いてきぼりにしてしまった。
事情を説明するとレイヤは納得するように頷き、そしてある場所を指差した。
「じゃあ……、これでほぼハジメは生きていることが確定するわね。」
そういいながら、レイヤはある場所を指差した。そこは一見、魔物の巣のような小さな空間だった。
だが、その中にあったのは
間違いなく、銃の生成の時に生まれた失敗作達であろう。
「よし。確信できた。あいつは生きてる。しかも、かなり強くなって。」
ベヒモス級の魔物を俺ほどではなくとも一撃で爆散出来るのなら少なくとも俺のレイヤ憑依状態と同じかそれに近い威力の武器を持っていることになる。
………自分で言ってて自分の化け物具合に改めて戦慄させられるわ。なんだ銃程度の威力のパンチって。図らずもルフィの子供の頃の理想を体現してしまったようだ。「俺のパンチはピストルのように強いんだ!!」てか。
「だが、これを見るともうこの辺にはいなそうだな。探し始めた最初の頃から爆散死体があったからあの奥………つまりコットンとノワールがいる方向だな。レイヤ、戻ってコットン達と合流するぞ。」
ここに実験の跡があり、今まで来た道にも爆散死体がある。そのことからハジメはこの拠点から下流の方に向かったことが推測できる。ならば、ここでの捜索を中断し、コットン達の方で効率的にやるのが理想だ。
川と爆散死体を目印に来た道を戻っていると丁度、こっちに来ているコットン達と合流が出来た。
「どうだコットン?ハジメは………その様子だと見つかってはなさそうだな。」
「ええ、申し訳ありません。ですが、下に降りる道を見つけました。」
「下に?」
そんな道があるとするとますますここが迷宮の途中だという説が濃厚になってくるな。この層にいないとなると………その道の先だと考えるのが妥当か。
「でもね、雷牙。その先の道はなんか………空気が違う?うまく言えないけどヤバイ感じがしたの。多分だけど、今まで通りには進めない。」
「ノワールの言う通りでした。明らかに異質といいますか………普通ではあり得ない空気がしていました。」
「ノワールとコットンの2人が言うんだから少なくとも普通ではなさそうだな。」
元筆頭オトモ達の勘だ。少なくとも無碍に扱うのはやめといたほうがよさそうだ。
「とは言っても、ここから動かないわけには行かないでしょ?とりあえずその下へ続く道っていうところに行くのはどうかしら?」
「レイヤの言う通りだな。動かないことには何も始まらない。コットン、ノワール。その場所へ連れて行ってくれ。」
「「了解!(です!)」」
そうしてコットン、ノワールの先導のもと、俺たちは問題の場所へと向かった。
「ここがその下への道か。」
「はい、そうです。」
「確かに……近寄りたくはない空気はしてるな。」
何と言うのだろうか。空気が熱いとか、凍えるような冷たさだとかではない。だが、こことは明らかに違う雰囲気がした。言うならば……濃密な死臭が格段に感じられる。
ヒヒィン!!!!!
すると突然、レイヤがもとのキリンに戻り大きく鳴いた。
「………どうした?」
「ああ、突然ごめんなさいね。ちょっと電気と声の反響具合でどのくらい奥に続いているか調べようと思ったのだけれど……。」
「お前はコウモリか。」
何とキリンにはそんな技能もあったらしい。
「でも、正直分からなかったわ。音が帰ってこなかったのよ。それくらい下にどんどん伸びているわ。」
となると、何十層も下へ伸びていると考えたほうがよさそうだな。
「となると、探すのも不可能だぞ……。一層でこんなに時間がかかったのにこれを何十層も続けるとなると見つける前に俺らが参る。」
問題はコレなのだ。ハジメを見つけることができない。同じ層にいるならいつかは会えるがこんなところでは見つけるどころかおれたちがはぐれそうだ。
「どうしたもんかねぇ……。」
「そうですねぇ。一気に一番下まで行ける方法があればまだマシなんですけど……。」
「……それだ!!」
どうしたものか悩んでいると急にノワールが叫んだ。何か思いついたようだ。
「どうしたノワール?何か思いついたか?」
「一気に下に降りればいいんだよ!そうすれば、いつかはハジメがやってくるだろうから探す手間もない!」
「そりゃ、出来ればそれに越したことはないが……っ!そうか!床を壊せば下の層に降りることができる!」
そうすれば、わざわざ攻略する必要もなく楽に一番下まで行ける。
「でも、どうやって降りるんですか?この床、再生しますよ?」
そういいながらコットンは床に雷を落とした。しかし、下まで貫通したものの、まるで生き物のごとくその場所が動き、すぐにもとに戻ってしまった。
「確かに衝撃を与えただけだが戻るが………動くなら凍らせるまでだ。」
すぐ元に戻ってしまうならば戻る前に凍らせてしまえば空いた穴もそのままだと考えたわけだ。
「てことで、レイヤ。憑依だ。」
「了解よ。」
そして、憑依を始めると……装備をまとう訳ではなく粒子が身体の周りを漂っていた。
"あら?何で?"
「さぁ……。力は普段通りなんだが……。」
『あー、それは私が少し改造しておいたからだからだ。』
「あ、イシス様。」
"イシス様ってことは……雷牙を眷属にした女神様?"
『ああ、君はレイヤだね?君の言う通り私は雷牙の主になるのかな、とにかく女神のイシスだ。』
「それで?この演出の違いの原因は?」
『まあ、そんな深い意味はないんだがね?君たちの様子を見ている神たちからキリン装備の男バージョンがとてつもなく不人気でな。仕方なく変えたんだよ。私は案外好きだったのだが……。』
「なるほどねぇ。まあ確かに頭の部分とかはダサかったよな。」
まあ、良かったと考えるか。
『……作者がモンハンは毎回女で男のキリン装備のダサさを知らなかっただなんて言えないしな(ボソッ』
「なんかいった?」
『何でもないぞ?』
何か聞こえた気がしたが……。メタ的なやつが。
(すみませんでした。まさかあんなダサ……個性的だったとは……。)
「まあ、いいや。とにかくやろうか。」
"そうね。"
イシス様のことは置いといてとりあえず下に降りようと思う。
イメージは雷に氷の魔法を付与させる。ただ纏わせるだけでは意味がない。落ちた瞬間に周りを固めるようなイメージで……
ズドォン!!
そのイメージで雷を落とすと見事に穴が開き、そして周りは氷で固められていた。成功である。すると
[強いイメージにより魔法を使用。それにより[イメージ魔法]を所得]
というアナウンスが流れ、微かな光が身体からあふれ出た。
もしかしたら、これも[思い通り]の結果か?自分が願った結果現れた魔法が今後も使えるよう入手したみたいな。流石にチート過ぎるかな?
『いや、眷属になった時に記念に与えたチートが[思い通り]だからな。間違ってないぞ。』
あっ、チートがいつの間にか手に入っていた。つまりは[思い通り]はイシス様の力で[魔力強化]は普通に手に入れたのかな?
試しにステータスプレートを見ると
狩野 雷牙 17歳 男(イシスの眷属) レベル:???
天職:調教師
筋力:5500
体力:4500
耐性:4700
敏捷:4000
魔力:5500
魔耐:5000
技能:調教・言語理解・モンスターハンター[+MP強化][+魔力強化][+思い通り](イメージ魔法)
MP:0
憑依時間:60分
と書いてあり、思い通りの派生のような形になっていた。派生の派生だな。ややこしっ。
「雷氷」
そして先ほど生まれたイメージ魔法を使ってどんどん突き進んでいく。
"そろそろ終わりが近づいてきているわ。"
「やっとか……。マジつらかった。」
「これは少し強引でしたね……。」
「もうこんな方法こりごりだよ……。」
垂直落下方法によって下へどんどん降りていく俺たちだったがその道のりはとてつもなく過酷だった。
この方法だと魔法発動のために各階ごとにどうしても数秒止まる必要があるのだ。その数秒が辛いのだ。
気温50°C以上の空間で暑さに耐えしのいだと思ったら次の層ではマイナス30°C以下の極寒地域だったり、落ちたところが毒の沼だったり、魔物の巣窟だったりとかなら過酷だった。
特に毒の空間は不味かった。真面目に対策するべきだったと後悔したもんだ。まあ、周りの空気を凍らせてどうにかなったが、数秒で抜けられるからこそできたことだ。
だが、ついにその辛い辛い旅も終わりを告げ、最後の層にたどり着いた。
そこには優に三十メートルは超えるであろう大きさの門。そして……
「……雷牙?」
白髪隻腕であり、一見満身創痍。だが、目に潜む光は今までのどんな魔物よりも強い。そんな男がおれのなまえをよんでいた。
更新遅れました。
荒野行動が悪いんや……