①のあP
今回の話のメイン人物。素直で照れ屋な性格。
面白い反応をするため、事務所のみんなによくからかわれる。(特にのあさん)
響子Pのどら焼き講座を三回受けている。
②高峯のあ
今回の話のメイン人物。クールでミステリアスなアイドル。つい最近、Cランクアイドルに昇格した日本の人気アイドル。
③響子P
アイドル『五十嵐響子』を担当しているプロデューサー。どら焼き好きで、時間が空いているときはたまにアイドルやプロデューサーたちにどら焼きを布教している。
④千川ちひろ
みんなの天使・悪魔的な存在。買い出しのため、現在事務所にいない。
⑤島村卯月・渋谷凛
通行人
高峯のあ
クールでミステリアスなアイドル。我が事務所のアイドルであり、新人プロデューサーだった俺が今も担当しているアイドルでもある。
つい最近、DランクからCランクアイドルへなり、彼女の人気もかなり上がってきている。
そんな人気急上昇しているアイドル『高峯のあ』に俺は現在悩みを抱えている。
別に彼女との関係が険悪というわけじゃない。仕事で失敗した俺を励ましてくれたり、共に『あの時はどうすれば良かったのか』と話し合って前回の失敗を糧にしている。
まぁ、のあさんの難しい言葉を翻訳もとい理解するのに時間がかかったが……
おかげで新人だったあの頃と比べてかなり失敗回数は減った。
逆に彼女がオーディションに失敗、Liveバトルに負けた時はお互いが空いてる時間を使って欠点を見つけて修正し、伸ばせるところはそれを中心としたレッスンを取り入れようと、俺のときと同様に前回の結果を糧にして次に生かしてきた。
そんな努力があったからこそ、Cランクアイドルへとなれたと俺は思っている。
他にも彼女とは色々なことがあり、親交を深めてきた。
今までの彼女のことを説明して分かると思うが、彼女とは険悪ではない。険悪だったらここまで彼女のプロデュースが続いているわけがない。
じゃあ、何故彼女のことに悩みを抱えているのか?
それは、彼女が俺を『からかう』ことである。
今回は、そんな彼女と俺が過ごす日常を話していこうと思う。
――――――――――――――――――
とある日、俺は事務所で事務仕事を、のあさんは雑誌を読んで過ごしていた。
事務員である千川ちひろは買い出しのため不在で、アイドル達はレッスンや仕事、休みで全員いない。他のプロデューサーも出張やアイドルの付き添いなどで誰もいない。
はっきりいって、事務所には俺とのあさんしかいなかった。
「P、お茶よ……。少し休憩したらどう?」
机の空いているスペースに湯のみを置き、のあさんは小休止することを提案する。
「ありがとう、のあさん。うん、少し休憩しようかな」
「それが正解よ……。さぁ……、茶菓子もあそこに用意しているからこっちに来なさい」
客間にあるソファーへとのあさんは誘う。
「分かったから、そんなに急かさないでください」
パソコンをスリープモードにし、湯のみを片手で持ってソファーへ座る。のあさんは俺の向かい側に座っていた。
「今日はどら焼きですね」
テーブル上のおぼんにのせてある四種類のどら焼きを見て、どれを食べるか考える。
「ええ。響子Pが買ってきたのよ」
「響子P、本当にどら焼きが好きだな」
同僚のどら焼き好きに思わず笑う。そういえば、来月に控えてある京都ツアーの参加、一番喜んでいたな。
スタンダードである『こしあん味』のどら焼きを取り、食べる。
「ん……美味い…。流石響子P、良い店のどら焼きを選ぶ。どこの和菓子店だろう。のあさんは知っています?」
「……」
「のあさん?」
俺の言葉に反応しないのあさんを見ると、いつもより口角が僅かだが上がっていた。
その表情を見て、長く付き合っていた俺には分かった。
あ……これ何か嫌な予感がするわ。
「……P、ここに置いてあるどら焼き……全てコンビニで買ったものよ……」
「えっ」
「……ふっ。このことは響子Pに伝えておくわね……」
「ちょっ!? やめてくださいよ! もうどら焼きの講座は勘弁したいんですよ」
どら焼きの講座はもう三回で十分だ。俺はのあさんにやめるようにお願いしたが、彼女は素直に聞いてくれなかった。
「どうしようかしら……? でも……、あなたが今の私の願いに応えられる『願い』を私に伝えれば、その願いは満たされるわ……」
「願いぃ〜〜」
また難しい言葉を……。つまり、それ相応なのあさんの願いを叶えないといけないということかな?
「……どこかのバーで飲みに行くというのは?」
「……駄目ね」
バーでも駄目か。なら、これはどうだろうか?
「二人でどこか天体観測をするというのは?」
「……」
「……一泊二日の温泉宿付きです」
「……いいわ。交渉成立……。その願い必ず叶えなさい……、P」
「ふぅ……よかった……」
なんとか響子Pのどら焼き講座は避けられたみたいだ。嫌な汗が止まってくれて良かった……。
さっきまで、汗が出たからなのか喉が渇いてきた。お茶飲もう。
「……」
「……どうしました? 俺の方をじっとみつめて。まさかまた何か湯のみに入れたんですか?」
「いえ……、何も入れていないわ。けど……」
「けど……?」
もう一度お茶を飲んで、彼女の言葉の続きを聞く。
「その湯のみ、私が口につけたものだったわ。間接キスになるわね」
「ぶふっ!?」
「何を驚いているの……? あなたと私は互いを互いに導き合う存在……。間接キスぐらい問題ないでしょ……。間接キスぐらい」
「ケホッ……ケホッ……! な、何をしてるんですかのあさん!? あなた、大人でクールで女性なんですから少しは慎みとか良識というものをですね……!」
「そう……間接キスじゃ物足りないのね。あなたも大胆のことを言うわ……」
ソファーから立ち上がり、ゆっくりと俺の方へ近づく。
「いや、なんで、間違った解釈をしちゃうんですか!? ちょ! 近づかないでくださいよ。何する気ですか!」
「とぼけたことを言うのね……。私と長くいたあなたなら、私が今からすることぐらい分かるでしょう……?」
「なっ……!?」
そう言って、彼女は段々と俺の距離をつめる。
彼女から離れようと動くが、俺をみつめる彼女の瞳を見て、俺はせいぜいソファーにもたれることしか動くことができなかった。
「動かないのね……。もしかして……、期待しているのかしら?」
俺の手が届く距離ほど近づいた彼女は、ソファーにもたれかけていた俺を上から見る。
彼女の瞳は俺の心の内を見透かしているように見えて、俺は思わず慌て声を大きくした。
「そ、そんなことあるわけないじゃないですか!」
彼女の言葉に強く否定するが、内心、そうかもしれない。これからの行動にどこか期待している自分がいたと思ってしまう。
「ふふ……」
彼女の喜ぶ声が聞き、少しずつ彼女に抵抗する意思は消え始めていく。
このまま彼女に身を委ねてみるのもいいかもしれない。
彼女の顔が俺の顔に近づく。
彼女の左手が俺の右頬に添えるように触る。
彼女の口が俺の口に近づく。
彼女の吐息がする。
彼女の匂いがする。
「……!?」
俺は彼女の視線に耐えきれず強く目を閉じた。これから行うであろう彼女の行為を受け入れることしか俺にはできなかった。
「……」
「……」
ピンッ!
「イタッ!」
おでこに痛みが走る。あまりの痛さに顔をしかめ、薄目でのあさんをみる。
「……デコピン。かわいい反応だったわ……、P」
「へ?」
すっとんきょうな言葉を出している俺を尻目に彼女は元いた場所に座る。
そして、抹茶味のどら焼きを食べ始めた。
「早く食べなさい……。あなたの休憩時間がなくなるわよ」
先程とは変わった彼女の様子を見て、長く彼女と一緒にいた経験から俺は悟った。
“また、からかわれてしまった”と……
「ただいま戻りましたー。あれ? のあPさん、どうして肩をプルプル……」
「高峯ェェーーーーー!!! 今すぐこっちに来ぉぉぉぉい!!!」
俺の怒鳴り声が出るやいなや、彼女は颯爽とクールにどら焼きを口にくわえながら事務所から出ていった。
俺はこの沸き上がる怒りを晴らすため、彼女を全速力で追いかけに行った。
「のあPさん……またですか……」
「あっ! 凛ちゃん見て! のあPさんがどら焼きを口にくわえているのあさんを追いかけている!」
「今日も事務所は平和だね、卯月」
ここまで読んで下さりありがとうございました。
のあさんの個性を上手く引き出せたのか、『からかう』とはこれで合っているのかとても心配です。
けど、読んで下さった皆さんが『良かった』と思えたならすごく嬉しいです。
更新は遅いですけど、これからよろしくお願いします。