不死鳥──the immortal──   作:カモシカ

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ふと思い付いた。


Prolog
一話 出会い 黒


 死にたい訳では無かった。

 

 けれど、生きているという事に意味が見いだせなくもなっていた。

 

 つまるところ、その程度の人生だったのだろう。

 他人よりちょっとだけ、哲学的な思考に囚われやすくて。

 他人よりちょっとだけ、幸が薄くて。

 他人よりちょっとだけ、才能が無くて。

 他人よりちょっとだけ、諦めが早くて。

 他人よりちょっとだけ、追い求める理想が遠過ぎて。

 他人よりちょっとだけ、狂っていて。

 

 

 

 

 誰よりも世界から─────浮いていた。

 

 

 

 

 

 

 ───面白いね、君。

 

 また一人、哀れな犠牲者が、暇つぶし(自業自得)の物語に、巻き込まれた。

 

 

 ****

 

 

 白い、何も無くて何でもある世界から、私は一人弾き出された。

 いや、あるいは拾われた?救われた?攫われた?堕とされた?投げ出された?

 

 分からない。分からないけれど、そんな事は、まあ、どうでもいい。

 私には関係の無い事。捨てられた私に、今更どうこうできるものでもない。

 

 造られた身体に、不滅の魂を宿して。

 

 

 私は一人、この世界に、産声を上げた。

 

 

 

 ****

 

 

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

 私が産まれてから大体千年と少しが経った頃、何度目かも分からない餓死から蘇った矢先に、そんな言葉を投げ掛けられた。

 

 まだ幼いながらも整った顔立ち。一本芯が通って美しく、真っ直ぐな立ち姿。後ろに結われた綺麗な黒髪が、サラサラと風に吹かれて揺れている。

 

「・・・・・ぁあ。大丈夫だよ。何でこんな所に居るのかは知らないけど、さっさと帰りな」

 

 声を出すなんて数年ぶりだから、発声まで時間がかかってしまった。肉体的な損耗は勝手に修復されるから、多分に精神的な要因なんだろうね。

 

「嫌です」

「はぁ?」

 

 事もあろうかその小娘は、帰るつもりなどないらしい。

 短くそう告げた少女は、私と同じように、私の隣に寝転んだ。

 

「家に帰っても、お父さんもお母さんも居ないので」

「そ」

 

 それならそれで、友達とでも遊べば良いだろうに。

 ・・・・・まあ、友達なんぞもう居ない私が言えたことでは無いだろうが。

 

「あなたは、何でこんな山奥に住んでるんですか?」

「んー・・・・・普通に暮らせないから、かな」

 

 答える必要なんて無いけれど、流石に子供を無視したくもないしね。私は、些か適当だけど、少女の話し相手をする事にした。

 

「・・・・・犯罪者?」

「なんでそうなるよ。違う違う。《侍》・・・・・いや、今は《伐刀者》って言うんだったか。ちょいと特殊な《伐刀者》なもんでね」

 

 時代の流れは激しい。たったの数年で、他人との交流がほぼ無い私は世間から置いていかれてしまう。今更それを寂しいとは思わないけれど、こんな風に子供と話す時は、自分の世間知らずを毎度毎度実感する。

 ・・・・・まあ、だからと言って、人との交流が出来るようにはならないのだが。

 

「そうなんだ・・・・・じゃあ、お姉さんも仲間だね」

「ん?君も《伐刀者》なのか?」

「うん。時間を操る《因果干渉系能力》なの。お姉さんは?」

 

 いつの間にやら丁寧語が抜けて、タメ口で話している少女。お互いに《伐刀者》であるという共通点を見出したから、なのだろうか。

 どちらにせよ私は敬われるようなお人じゃ無いから、そっちの方が良いってね。

 

「んー、私は《概念干渉系能力》だな。けどお嬢ちゃん。他の《伐刀者》に簡単に自分の力を教えちゃならんし、聞いちゃいけないよ。マナー違反ってのもあるが、自分の能力を知られたら弱点を突かれることにも繋がる」

「分かった。気をつけるね」

 

 見た目の割に大人びた少女は、素直に頷いてくれた。

 

「そら。もう暗くなる。送ってくから帰んな」

「・・・・・うん。分かった」

 

 誰も寄り付かない、指して標高が高い訳でもないが鬱蒼と茂った山林に有る、私の家とも呼べない掘っ建て小屋。こんなでも隙間風が吹いたり、雨漏りしたりする訳でも無いから、何気に気に入っている。

 

 歩く。まだ日は出ているが、夜が近づくと森は段々と裏の顔を出してくる。

 夜は魔性達の暮らす世界。今は無き幻想の住人達とは違う、只人による、只人を狙う為の魔性。

 

 そんなものにこの少女を関わらせない為にも、さっさとこの森から出してしまうに限る。

 

 少女も伐刀者だからか、見た目には釣り合わない体力の持ち主だったので、思っていたよりも早く森を抜ける事が出来た。

 

「じゃあな。どっから迷い込んだのかは知らないけど、もう迷うなよ」

「黒乃。滝沢 黒乃」

「名前か?私も名乗るのか?」

 

 少女、黒乃は、不思議な事に私の名前を知りたがっている。別に拒む必要も無いか、と、私は名乗ることにした。

 

「妹紅。藤原 妹紅だ」

 

 大体千年と少し前のあの日、貰った名前は棄ててしまった。苗字だけは今尚、戒めとして残しちゃ居るがね。

 

「・・・・・ねえ。また、会える?」

「んー・・・・・君が私を覚えていてくれるなら、いつか、また会えるかもな」

「そっか・・・・・じゃあ、またね」

 

 そんな言葉を最後に交わし、私と黒乃は別れた。

 もう会うことは無いだろうと思いながら、姿が見えなくなるまで手を振る。

 

 けれど、再会は、思っていたよりもすぐの事だった。




このもこたんは、正史の東方Projectのもこたんではありません。あくまで落第騎士の英雄譚の世界のもこたんです。それに伴って性格が違ったり、能力の詳細が違っている可能性があります。予めご了承下さい。

また、【不老不死】になった理由や幻想郷関連のあれこれもこの世界独自の設定になっております。
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