不老不死の血を飲めば、百年寿命が伸びる。
不老不死の肉を食えば、老いることが無くなる。
不老不死の肝臓を食えば、不老不死になる。
そんな、人間達の
そんな人間達を始末して、私は一人眠り続ける。
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「うぅ・・・・・ぐずっ・・・・・お腹空いたよぉ・・・・・」
浅い眠りから、そんな啜り泣く声で目覚める。まだ幼い少女の声だ。黒乃よりも幼いかもしれない。
こんな山奥だ。近所──と言っても十キロは先だ──の子供が遊んでいて迷い込んだか・・・・・或いは、口減らしで捨てられたか。
前者ならまだ良いが、後者なら街に降りなければならないだろう。そうなるとあの今はヨボヨボジジイ一歩手前のバカ剣士共の手を借りなければならない訳で・・・・・。
そこまで考えて、助ける前提でいる私に気付く。
不老不死に憧れる馬鹿どもの罠かも知れないというのに。
まあそんな奴らの罠にかかった所で、結局死ぬ事は無いのだから笑えてくる。
家から出て、蹲って啜り泣く少女の元に急ぐ。
「はぁ・・・・・おーい、そこの嬢ちゃん。こんな所に一人でどうしたよ?」
「お、お姉さん・・・・・誰?」
「私か?私は妹紅って言うんだ。この山に住んでる変わりもんだよ」
警戒しながらも、おずおずと近づいてくる少女。黒乃よりも身長が低いし、口調も幼いから・・・・・七歳ぐらいか。黒乃は多分十歳くらいだろうから、会わせてみれば案外直ぐに打ち解けるかもな。
「ぐずっ・・・・・あのね、私ね、お母さんとお父さんにね、捨てられちゃったの」
「・・・・・そっかそっか。ほれ、泣くな泣くな。可愛い顔が台無しだぞ。ちょっと行ったとこに私の家が有るから、そこで休もう、な」
「うん・・・・・」
少女をおんぶして家に向かう。私の足なら家から歩いて一分程の場所に、少女は蹲っていた。
聞けば本当に捨てられたらしい。それはやはり口減らしなのか、ただの育児放棄なのかは分からんが、場合によっては私もこの家を出る覚悟を決めなくちゃかもなぁ・・・・・。この家にはかれこれ百年位住んでるから、中々に愛着もある。
「そら着いたぞ。今用意できるのは猪肉の葉包み焼きくらいなんだが・・・・・食えるか?」
「うん。お腹空いた・・・・・」
「よしよし、ちょっとだけ待っててくれな」
そこら辺で狩って来た猪を、分厚くて大きな葉で包む。その時に、適当に種を撒いたら生えてきて、ちょっと世話したらスクスク育ったマンゴーを入れるのも忘れない。本当は半日くらい前に肉に擦り込んでおいた方が美味しいんだけどな・・・・・まあ、今はしょうがない。
《不老不死》の概念から派生した《不死鳥》の能力で火を作り出し、放っておいた土鍋に突っ込んで蒸し焼きにする。
「さて。これで後は待つだけだ。良ければ名前を聞かせてくれるかい?お嬢ちゃん」
私は少女にお茶を出してやる。森の中を彷徨ってたんなら喉も乾いてるはずだしね。
「あ、ありがとう・・・・・私は、寧々。西京 寧々」
「寧々ちゃんか。可愛い名前だな。さっきも言ったが、私は藤原 妹紅。好きに呼んでくれ」
「うんっ!じゃあ、えっと、えっと・・・・・もこたん!」
「も、もこたん?」
好きに呼んでくれとは言ったが・・・・・中々変な渾名が着いてしまったかもしれない。
十五分くらいそのまま放置して、マンゴーと肉の暴力的なまでに旨い匂いが漂ってきた所で、目をキラッキラに輝かせている寧々の前に出してやる。
「はわはぁ・・・・・た、食べていい!?」
「おうともさ。たーんとお食べ」
「いただきます!」
ガツガツガツガツ。
そんな擬音が実際に聞こえてくるのではないかと思わず思ってしまう食べっぷりだ。これは私の分なんて残らないかもしれない。
なので追加で、塩振って焼いただけの猪肉の串焼きを作った。かなりデカいのを十本は作った筈なのに、いつの間にか半分を寧々に食われてたりもした。どんだけ腹減ってたんだろうか。
・・・・・こりゃあ、口減らしの線が濃厚か・・・・・
「ごちそうさまでした。はー美味しかったぁ・・・・・」
「お粗末様。まあ、そんなに旨そうに食ってくれたら、私も猪も喜ぶさね・・・・・っと、寝ちまったか」
疲労も溜まっていたのだろう。寧々は食うだけ食ったら寝てしまった。寝る子は育つとも言うから、いい事なんだろうけどねぇ・・・・・。なんか、この娘が捨てられちまった理由も分かるかもしれない。だからといって寧々の親を許せる訳でもないが。
「いつの時代も、捨てられちまう子供は居るんだよな・・・・・」
龍馬の坊主や寅次郎のガキどもが勝ち取った平和な日本にも、まだまだこんな悲劇は残っているらしい。
「ままならないもんだ・・・・・」
私はせめて、こいつの人生くらい見守ってやろうと考えながら、眠る寧々の頭を撫でてやった。