寧々と服を買いに行った翌日。私は山の家に向かっていた。この家に置いておいた荷物を取りに来たのだ。
霊力強化・・・・・今風に言うなら魔力放出で身体能力を強化し、手付かずの山域を駆ける。とは言えここは私の庭も同然だから、迷う事も無いし私にとっては安全だ。危険でもそんな変わんないけど。
と、我が家に近付くと誰かいるのに気付いた。注意はすれど警戒はせず、また速度も緩めず近付く。
「誰だ不法侵入したのはーっと。あれ?黒乃か」
「妹紅・・・・・ごめんなさい。勝手に入って」
「いやいや。別に黒乃なら大歓迎さね。こっちも侵入者扱いして悪かったよ」
「ううん。悪いのは私だから」
「じゃ、お互い様ってことで」
黒乃にお茶を出してやる。わざわざこんな山奥まで来てくれたんだ。おもてなししてやらなきゃな。
「ねえ。妹紅は何処行ってたの?」
「あー・・・・・ちょっと拾い者してな。これから当分は街で暮らす事になった」
「そうなの!?じゃあ、山奥まで来なくても会える!?」
黒乃は興奮気味に捲し立てる。落ち着いているように見えても、こういう所は見た目相応の少女なのだなと感じた。
「多分な。っとそうだ!私は荷物を街の家に移すんだが、ついでにお前に会わせたい奴が居るんだ。着いてくるかい?」
「・・・・・それって誰?」
「西京寧々って言う女の子だよ。お前と同じかちょっと小さいくらいの」
「・・・・・行く」
数秒悩んだ様子だが、黒乃は寧々に会ってくれるらしい。これで二人とも仲良くなってくれればいいんだがな。
私は家に置いてあった骨董品や七輪なんかに【不老不死】の概念から応用して【不壊】の概要をくっ付け、適当に袋に放り込んで担ぐ。
そして黒乃と手を繋いで山を降りていった。
****
「たっだいまー、っと」
「ママおかえり!」
「ただいま。出迎えありがとな」
寅の坊主の道場の扉を開けると、寧々が飛び付いてきた。なので一度荷物を置き、寧々を抱きしめ返す。本当に寧々は可愛い。目に入れても痛くないなんて表現があるが、あれは事実なのだと共感しそうだ。
「ママママ!これ見てこれ!寧々も《固有霊装》出せたんだよ!」
そう言って寧々は二つの扇を・・・・・いや、鉄扇を見せてきた。
「はあ!?おい寅の坊主!こりゃどういう事だ!?」
「ほっほっほ、いやぁ『寧々もママみたいに《伐刀者》になりたい!』なんて言われてしまってのぉ。ちょっとコツを教えたら自力で《固有霊装》を出しちまったわい」
「あ、ああ?まじか・・・・・寧々、お前すげえな。ママは娘の成長が嬉しいぞ」
寅の坊主が何かやらかしたらしいが、これも寧々の才能と気持ちの成長だろう。それを喜ばない親は居ないさ。
「うん!寧々もママや寅爺みたいな《伐刀者》になるんだ!」
「お、言ったな?なら寅の坊主に鍛えてもらえ。お前なら寅の坊主なんて直ぐに追い抜けるよ」
「うん!」
「ほ、ほほ・・・・・やりそうだから怖いのう」
寅の坊主が震えてやがる。確かにこの時代の人間にしちゃあ大分強いが、五百年くらい前は《魔人》なんて割と普通に居たからなあ。まあそれでも五百人に一人くらいだったから、希少は希少だったんだろうけど。
「あの、妹紅?この娘が寧々ちゃん?」
「ん、ああ。悪いねほっといちまって。そうだよ。こいつは西京寧々、私の
そこでようやく黒乃を認識した寧々は、恐る恐る自己紹介を始める。
「西京 寧々です。えっと、ママのむすめです」
「こんにちは。滝沢 黒乃です。よろしくね、寧々ちゃん」
「うん!」
どうやら無事に友達(暫定)が出来たらしい。しかしこうして並んで立つと、寧々も黒乃も、背の高さはほぼ同じだ。案外同い年だったりするのかもしれない。
「ねえねえ、黒乃って何歳?」
「私?私は七歳よ」
「じゃあ寧々と一緒だ!」
・・・・・え?まじか。黒乃七歳なのか?
「ねえ妹紅、寧々ちゃん、また来ていい?」
「おう。いつでも来なよ。黒乃なら大歓迎だ」
「寧々も大歓迎!」
「・・・・・ありがと」
話を聞くと、どうやら黒乃はここから歩いて三十分位の場所に家があるらしい。七歳の足にはちとキツいが、まあ《伐刀者》なら問題無いだろう。
そしてそれから子供二人は遊びに遊び、日が傾き始めた頃に、黒乃はようやく帰って行った。
****
帰って行った黒乃を見守る為、烏を式にして飛ばす。私は様々な組織から狙われる身だ。自分のことは自分でどうにでもなるが、流石に遠くに居てはどうしようも無い。【不死鳥】の繋がりで鳥全般は半分私の式みたいな物なので、魔力を報酬として渡せば私の目となり手足となってくれる。
折角久しぶりに繋がりを持てた人間だ。小娘二人程度、何があろうと守り切ってやるよ。だから安心してすくすく育ってくれよ。寧々、黒乃。