気が付けば、俺は俺であった。
いや、当然の事を言っているかのように聞こえてしまうがそれが現状であった。但し、俺が26歳であったという記憶に嘘がなければという前提の話だ。
今、俺は木製の机と椅子に座り、白い服を着ている。まぁ、そういったこともあるだろう。
だが、俺と同じくらいの背丈の少年少女達が自分と同じ白い服を着て騒いでいるのを見るとそうも言えなくなってしまう。
どこから見ても、彼らの年齢は五歳か六歳といったところだろう。まったく何が起きているのかわからないが、今の自分は彼らと肉体年齢が同じであるようだ。
「先生、さようなら~!」などと言って駆け出していく彼らの姿を見るにここは小学校で、授業が終わって帰宅時間となったのだろう。
駆けていく彼らの後に続いて、校門を目指す。学校名を見れば、自分が知っている場所か否か程度を知ることができるだろうと思ったからだ。
だが、ある意味でその予想は覆されたと言えるだろう。確かに知っている場所ではあったが、その土地には行った事もなければ行ける筈もなかった筈の場所であった。
『私立聖祥大附属小学校』
『海鳴市』
……リリカルでマジカルな砲撃魔王少女の世界にでも来てしまったというべきなのだろうか。俺が知っているのはこの世界には魔法があり、プログラムと演算処理によってそれが成されるという事と舞台である場所の名前、主人公が通うという学校名、あと知っているといえば主人公の別名が悪魔だの大魔王だのという事だけだ。
実際のストーリーについては触り程度しか知らず、友人に熱く語られたが故に知っているだけの話だ。
……あの友人が今の俺の状況を聞けば代われとキレ始める事だろう。
だが、俺はロリコンでもペドフィリアでもない。こんな世界に連れてこられても嬉しくはない。
まぁ、今俺がすべき事は自分の家を探すことだろう。
◇◆◇
家を探す事はさして難しい事でもなかった。このくらいの年になれば、迷子を防ぐための住所が書かれた紙が鞄に入っているものだ。
学校と自身が住んでいるマンションが近かったというのも探すのが簡単だった一因だろう。
そして自宅に帰って一番驚いたことは両親が以前と変わらず、今の身体が俺『森下 暦(もりした こよみ)』の幼い頃の物とほぼ同一の物であるという事だ。二十歳を越えても童顔のまま髭が生える事もなく、身長146cm、体重39kg前後から変化する事がなかったこの身体には変化がなかった。
友人からはリアル男の娘、リアルこよみちゃん等とからかわれる事が多く、プログラマーになった事もその理由の一端だったのではないかと今も思っている。
だが言わせてもらおう、俺は身体にコードを流して魔法を発動する事もコードを見る事もできない。ましてや、ありとあらゆるコードを変換して金盥を召喚する事もできないのだと!
……まぁ?そんなことを言っても意味の無い事ではあるし、既に系統が違うとはいえ魔法が存在するかもしれない世界に飛ばされているのだ。もしかするとそういった事ができるようになるかもしれない。
そんな事を考えながら生活していると、自分の身体が前とは何処か違う、何かがおかしいと思えるようになり始めた。
例えば、簡単な計算から複雑な計算まで以前より早く計算できるようになっている気がしたり、プログラミングの知識から日々の細々とした出来事を細部まで覚えていたり、知りもしない筈の基礎理論が頭の片隅にフッと浮かんだり、それはもう『あれ?なんかおかしくないか?』と思えてしまえるような出来事が多々あった。
そこで、バカらしい考えが頭に浮かぶ。以前、友人が話していたテンプレ転生、転生チートという言葉である。なんでも神様が間違って殺してしまった相手を転生させる代わりにチート能力をつけてくれるというものだとか、ここまで来てしまえばバカらしくともそういった考えを持ってしまうのも仕方の無い話だろう。
どういった訳か幼い頃の自分になってしまった上に、周囲の環境まで違うのだ。何が起きていても不思議ではない。
……まぁとりあえず、ノートパソコンを両親に強請って見るか。