狂い咲く華を求めて   作:佐遊樹

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エイプリルフールネタがエイプリルフールに間に合わないって、これ一番エイプリルフールっぽくないですか?(おめめぐるぐる)


エイプリルフールネタ 露悪逆行
逆行ってこれからも一定数あるだろうしすげえジャンルだよな


 

 目を覚ました。身体が五体満足であることを確認した。愛機は手元になかった。

 最期の光景を思い出す。誰かに名を呼ばれた。手を思いっきり伸ばして、何かを掴んだ。

 それだけだ。

 

 誰と戦っていたのか、なんのために戦っていたのか、全部、何もかもクソッタレだ。

 学園を卒業して、亡国機業もいなくなって、それでも世界は平和になんかなりはしなかった。

 教師をやって、生徒に人殺しの技術を教えて、それでも結局俺は戦場に戻っていった、ような気がする。

 まずいな、記憶、かなりあいまいだ。

 

 ISなんて知るか。

 戦争なんて知るか。

 ただ日常が欲しくて、その日常を奪っていく存在がいて、俺は誰かがそいつらに日常を奪われるのがいやで。

 武器を手に持った。姉が栄光をつかみ取った技術と刀で、俺は人を殺し続けた。

 

 それだけのつまらない人生だった。

 明確に、その感触だけは覚えている。死んだ。刺されたとか撃たれたとか、そんなのは覚えてないけど、明瞭に死の感覚を思い出せる。

 

 俺は死んだ――最悪を回避できたと思っているけど、最良の未来をつかみ取れたとも思っていない。

 足りなかった。俺の力が、なんて傲慢な考えを振りかざすつもりはない。

 何もかもが足りなかった。備えはなかった。戦火が広まった時、露呈した世界の脆弱さに、多くの人々が殺された。

 

 

 そうだな。

 

 もしやり直せたらなんて、考えなかったことはないな。

 

 もしも。

 

 もしも、やり直せるなら――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之箒は困惑していた。

 IS学園一年一組、()()()()()()()()()()()()()()()の空気は、穏やかなものだった。

 

 箒が困惑している原因は、幼馴染である織斑一夏だ。

 入学初日に屋上まで引っ張られ、思い出話に花咲かせた。朴念仁っぷりは変わっていなかったが、それでもうれしかった。まさか自分と会話する時間を延ばすために授業をサボろうとするとは思わなかったが。

 

 世界で唯一ISを起動できる男子となってしまった彼は、この学園においても唯一の男だ。

 当然だ、ここはISの扱いを学ぶ場所なのだから。

 

 変わらない相手との会話、だった。

 寮に向かう前に、彼の姉である世界最強(ブリュンヒルデ)、織斑千冬に『あいつは変わったぞ』と複雑そうな表情で言われても気にならない程度には浮かれていた。

 

 彼の変貌に気づいたのは部屋に戻ってから――

 トレーニングウェアに着替え、夕食の直前までトレーニングに励んでいた彼は、部屋に戻ってもなお訓練をやめなかった。

 確かにそれは肉体を強化するためだった。よく鍛えられた身体。だが長年の代物というほどではない。ちょうど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼の訓練は、あくまで精神的な……意図して自分を追い込むためのものである。

 箒はそう見抜いていた。

 

(何故、だ? 一夏、お前は一体、何かに追い詰められているかのようだ)

 

 疑問はあれど、心身共に磨き上げようとする姿勢は好ましい。

 好ましい、どころではない。

 

 乙女回路ギュンギュンである。

 

 汗を滴らせながら、一心不乱に過酷なトレーニングに打ち込む幼馴染は、初めて見た。

 一種のギャップ萌えである。朴念仁だが芯は曲げない好青年の、求道者もかくやと言わんばかりのストイックさに、箒は数年ぶりの遭遇からの即恋心フルスロットルだった。

 

 精魂尽き果てるまで鍛錬を続けてから、彼はベッドに入り、朝早くから箒を起こさないよう――箒は一睡もできていなかった――部屋を抜けてグラウンドを走っていた。

 

 なんだお前は。

 顔が良くて自分の味方をしてくれる存在、というだけなら、そりゃあ多くの人から好意的に受け止められるだろう。

 しかしその、男真っ盛りと言わんばかりの顔! ひたむきさ! ダメダメダメ! 箒は内心絶叫していた。好ましい。好ましすぎる。

 

(う、うぅ、今日の昼食、どんな顔で食べればいいんだ)

 

 二人で食堂に行く約束となっている相手が、三日会わざればを地でかましてきた男だ。

 対人能力に多大な欠陥を抱えている箒にとっては分が悪い。

 

 和風乙女がウンウン唸っている間にも、時間は進み。

 

「では、クラス代表を選出する。クラス代表は学年別トーナメントにも出場するクラスの顔だ。自薦他薦は問わんぞ」

 

 授業の前に、担任である千冬が放った言葉。

 多くの生徒が反応する中、一夏がすっと目を鋭くするのに気づいたのは何名だったか。

 

「はいはいはい! 織斑君がいいと思います!」

「私もー!」

 

 自分の名が出てきた瞬間に、彼は苦笑した。

 完全に予期していたのだろう。それでいて気負った様子はない。

 

 要するに――受ける気だ。

 

「……いいのか、織斑」

「いや、他薦は断れないって言うんでしょ、千冬姉のことだし」

「織斑先生と呼べ」

 

 出席簿が振り下ろされ、一夏が悲鳴を上げる。

 箒はそこで事態に追いついた。一夏を推薦する声は、そこまで真面目に考えたものではないだろう。しかし一夏は笑って受け入れていた。

 

 やがてイギリス代表候補生が机を叩いて立ち上がり、演説をぶち上げる。

 一夏は席に座ったまま、彼女の方に振り向いてそれを聞いていた。

 自身を中傷する内容だ。国ごと貶めるような内容だ。

 それを彼は、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ました時に、俺はISを身にまとっていた。

 

 おいおい生き残ったのかよ、死んだんじゃなかったのか。愛機に確認して身体状況を報告させる。何の問題も発生していない五体満足の俺。『打鉄』からの報告。愛機じゃない。

 ぶったまげた。そして部屋に入ってきた女が俺以上にぶったまげた。俺は部屋にいた。

 どこだ。なんだこの骨董品は。テロリストだって第二世代機に手を加えているぞ。まさか無改造の第二世代機に俺が乗る羽目になるとは――違う。ここはどこだ。ここは、何だ。

 

 俺を見て女が叫ぶ。

 

『そんな――()()()()()()()()()()()!』

 

 気の利いたジョークだと思って、俺は笑った。

 確かに死後の世界じゃあ初めてだったかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言いたいことはそれだけか」

 

 イギリス代表候補生セシリア・オルコットは自分がクラス代表であるべき理屈を語り終わった。

 確かに内容は過激だったが、ズブの素人とエリートである代表候補生ならば、選ぶべきが誰かは、一目瞭然だ。

 

 それを受けて、一夏は席から立ち上がった。

 少し困ったような顔。一秒後には、苦笑に変わっていそうな、どこにでもいそうな青年の顔だった。

 

 誰もが、口論が始まると思った。セシリアがかみつくのは確定で、あとは一夏がどう応じるか。

 あの織斑千冬の弟というからには、もしかしたらすげなく流してしまうかもしれない。箒は彼の訓練を知っているから、少し、身構えた。

 

「ええ。貴方にも理解できるよう、もう一度説明して差し上げましょうか?」

「そうじゃない」

 

 空気が激変した。

 

 

「お前はそんなくだらない理由しか語りえないのか、と聞いている」

 

 

 視線に射抜かれ、セシリアは二の句が継げなくなった。

 彼の瞳はこちらに向けられている。他の誰でもないセシリアに。

 

()()()()()()()()()()()。いや、今はいいかもしれないか。でも、ISを使って世界の表舞台に立つような人間がそんなんじゃ……困るんだ」

 

 誰も言葉を発せない。一夏は場の空気を完全に掌握していた。千冬の覇気とはまた違う、もっと冷たい異様な雰囲気。

 

「分かりやすく説明したほうがいいか? ガッカリだ、と言っている、イギリス代表候補生。理屈は正しいが、代表候補生でなくお前が相手なら、俺の方がマシだ」

「――――!」

 

 セシリアは強く拳を握った。

 

「……コケにしてくれますわね」

「期待していた分、裏切られると悲しくなっちまったのさ。俺は俺を自薦するよ。お前はどうするんだ」

「……自薦しますわ」

「なら話は簡単だな」

「吐いた唾は吞めぬ、とはそちらの国の言葉ですわよ」

「なんだよ、馬鹿にしてた割には勉強してんじゃねえか」

 

 軽く笑って、一夏は右の人差し指を銃口のように向けた。

 

「決闘だ。俺は全世界の男の意志を背負って、お前を倒す」

「受けますわ。叩き潰して差し上げます」

「お前じゃ無理だよ――この場にいる全員無理なんだからさ」

 

 その言葉は。

 その言葉は、よりにもよって一年一組で吐かれた。

 

「な――ッ!? 一夏お前、千冬さんがいるんだぞ!?」

「そうだな。だから何だ?」

 

 さすがに箒が声を上げたが、一夏は涼しい表情である。

 もはや少女たちの頭脳はオーバーヒートを起こす寸前だ。代表候補生に喧嘩を売った、この時点で常識に則って考えれば『あ、あいつ死んだな』だというのに、実に自然な流れで今度は世界最強に喧嘩を売り始めたのだ。

 

「……一夏。私も今の言葉は、いささか不愉快だが」

 

 教壇に立つ千冬の声は暗く、冷たい。

 怒りや苛立ちからくるものではない。どちらかといえば悲しみ、あるいは、絶望からだ。

 

(そこまで背負う必要はなかっただろう、一夏……)

 

 彼の魂胆に気づけたのは、血のつながり故か。

 だが彼女の内心の悲哀になど目もくれず、彼は教室全体を見渡して嗤う。

 

「俺は全世界の男の代表――お前ら全員が束になろうとも俺は勝つ。勝つ義務がある。だから、代表候補生なんていうチャチな連中には苦戦している暇すらない」

「あ――あなたという人はッ!」

 

 教室を見やる。全員からの視線に、負の感情が混じり始める。

 疑念。猜疑心。憎悪。苛立ち。

 すべてを受けて、一夏は口元を吊り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 足りない――足りない、足りない、足りないッ! 何もかも足りない。

 ()()()()を回避するためにはすべて足りない。千冬姉ですら強化が必要だ。

 このままかつてのように、皆で仲良く手をつないでゆっくり強くなるのか。その結果があの荒廃した世界、死んでいく友人、そして何も守り抜くことなく死んでいく俺だ。

 

 俺が強くなるだけですらだめだ。

 全員が強くならなくてはならない。

 セシリアたち代表候補生だけではない。それこそ、このクラスにいる一人一人が、今のセシリアぐらいは瞬殺できる程度に強くならないといけない。

 

 考えた。考えた。足りない頭をフル活用させて。

 

 壁を、作ればいい。

 忌むべき存在を、共通の敵を作ればいい。

 そして焚き付け、折れないように調整しつつ連中を引き上げていく。それだ。

 

 ISを起動させてしまった日。もう学園に行くことは決まっている。手回しはできない。かつてと同じペースで学園生活を送り、その中で周囲の少女たちを徹底的に鍛えていく。

 たとえ誰からも好かれなくとも。

 たとえ全員から憎まれても。

 

 それでも、もう、あんな結末はごめんだ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




相手は未来で全世界のISパイロット全員が束になっても負けかけた相手だけど頑張れセッシー!
本来の愛機だとBT兵器乗っ取られて丸裸にされてるけど、今はクソザコブレオン欠陥機が人間の知覚限界ぶっちぎった速度で突っ込んでくるだけだからやれるぞセッシー!
偏光射撃習熟して五百発ぐらいのビーム同時に制御できるようになった未来の君なら一矢報いてたぞセッシー!

まあ逆行したとはいえ所詮ワンサマなので、本格的な嫌われルートは突入せずに適度にツンデレ発揮して『この人ワルぶってるだけじゃん』ってなってみんなから可愛がられると思います
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