狂い咲く華を求めて   作:佐遊樹

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本日二度目です
寝ます……


オリキャラの覚醒展開って誰得だよ・後編

 雄たけびと共に、ランスが振るわれる。

 歓喜の声を上げながら、刀を振るう。

 

 彼女の穂先は俺の頬を掠め、俺の切っ先は彼女の腕を掠める。

 詰められた距離――空間が根こそぎ爆破される。寸前で回避こそしたが、余波が俺の身体を叩き吹き飛ばす。スラスターを一瞬吹かして体勢を整えれば、もう目と鼻の先にランスが来ていた。首を傾げ回避。

 アーニャの瞳が燃え盛っている。

 俺を討とうと、全身全霊を懸けている。

 

 既に他の戦力はあらかた壊滅し、アーニャにすべてを委ねたかのように静観するジブリルさんがいるのみだ。

 俺と彼女の一騎打ちの果てにこそ、戦いの結末は決定する。

 互いに一歩も譲らず得物をぶつけ合う。アーニャは昨日と比べ物にならない速度の反応で俺の攻撃を撃ち落とす――否、水のヴェールを広範囲に展開し、捌ききれない攻撃のダメージを最小限にとどめている。掠める瞬間に『零落白夜』を起動しようにも、水のヴェールは切っ先を絡めとりアーニャの身体から逸らしてしまう。

 そも、全方位から水の槍が襲い掛かってくる状態ではいまいち攻勢にも出られない。俺の動きを妨害しようと空気中の水分が増せば、即座に後退して距離を取る。左腕のクローを使ってもいいが、そこまでエネルギーを消費してしまえばこの後に控えるジブリルさんの相手が厳しくなってくる。

 

 ランスが唸った。アクアナノマシンを射出し、疑似的に射撃兵装へと変貌する――楯無さんがやっていた技だ。即座に横へ飛び退いて回避すれば、予期していたかのように槍本体が迫りくる。打ち払う。火花が散る。アーニャの血走った眼が俺を捉えている。

 

 ああ見ろ。見るがいい。これだ。

 これが本当に必要な存在だ。次の時代を守る戦士だ。

 

 安心した。

 

「良かったよ――お前みたいなやつがいて」

「何、をッ」

「でも譲れないな」

 

 突き出されたランスを弾く――もう一振りの槍が突き出されるのを、左手でモロに受け止める。

 装甲が砕け散り、シールドエネルギーが大幅に削られる。

 計算済み。突き出した刀がアーニャを捉える。

 

「何、を――勝手にッ!」

 

 はずだった。受け止められた。ランスを捨てた右手が刀身を掴み、火花を散らしている。

 驚愕に目を見開いた。馬鹿な。

 

「何を勝手に終わらせているんだ、あんたはァッ!」

 

 互いに相手の武器を素手で掴んだ至近距離で、アーニャがのけぞった。それから、思い切り頭をぶつけてきた。額と額が激突する。絶対防御を貫くはずもない。だが、圧された。

 心理的な問題だった。頭蓋骨が軋む。視界が明滅する。ダメージはゼロなのに、ただ単純に狼狽えていた。

 

「あんたを倒して証明してみせるっ――誰かを傷つけることなく、あっさりと、簡単に、世界は変えられるって! ()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 左のランスも手放して、彼女は拳を握った。

 俺はそれを――ただ、見ていた。

 

「答えなさい! 織斑一夏! 愛と平和のために戦っていると、心の底から言えるのか!」

「……俺は」

「即答しろよバカぁっ!」

 

 拳が頬にめり込んだ。力のこもっていないパンチだった。

 アーニャは――目に涙を浮かべて、そのまま俺に縋りつく。

 戦場に静けさが訪れる。

 

「敵相手に、何してやがる」

「うっさい」

 

 彼女は俯いたまま、言葉を必死に絞り出した。

 

 

「……あんたなんでしょ……()()()()……」

「ッ!」

 

 

 ジブリルさんの様子を確認する。彼女は腕を組んで、俺たちを見ている。それだけだった。

 アーニャが両手で、俺の肩を掴んだ。俺は刀を素早く彼女の首にあてがう。

 

「誰だよそいつ――何勝手に戦いが終わりましたみたいな空気出してんだ、ここは戦場だぞ」

「分かるよ、分かっちゃうよ。だって同じなんだ……愛と平和を犠牲にしているって言った時の、諦めきった眼。ショータ、ううん、織斑一夏、あんたも何かのために戦ってる。そうなんでしょ?」

「うる、せえ」

 

 刀があるのに――俺は彼女を引きはがそうともがいた。

 

「自分の行いでどれだけの犠牲が出るかなんて計算したんでしょ? それでも戦わなきゃいけなかったんでしょ?」

「――――ああそうだ。俺は、それでもやる」

「私は、楯になりたい。誰かを暴力や不幸から守れる楯になりたい。悪を斬る()()()にはなれなくても、楯になる。だからあんたの敵ってことになる」

「俺は、暴力や不幸と同じ扱いなのか? 傷つくぜ」

「あんたが望んでやってることでしょ。でもあんた自身が、暴力や不幸をなくしたいと思ってる。滑稽なぐらいにあんたは一人で完結している。私は許せない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を認められない」

 

 アーニャは至近距離で俺の顔を覗き込んだ。

 涙にぬれた瞳に、未だ、戦意は燻っている。身体が震えた。

 

「絶対に認めない。あんたは間違ってる。誰かが犠牲になる愛と平和なんてあるはずがない。私は、私はそれをあんたに証明する」

「お前」

「だから、堕ちなさいッ!!」

 

 爆炎が吹き荒れた。ゼロ距離で放たれた空間爆撃攻撃。

 自分諸共、彼女は俺を吹き飛ばそうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 愛と平和のために戦うと彼女は言った。

 そして――その行いは、俺すら守りたいらしい。

 笑える。倒せよ。俺を倒せよバカ。愛と平和のために倒すべき相手だろ、俺は。

 

 ああ、畜生。何だよ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 俺を負かして、俺の行いを終わりにしようとしている。俺のためにそうしている。

 

 気持ちの面で――負けたなと思った。

 完敗だ。悲しくなるぐらいに、俺は彼女の輝きに打ちのめされた。

 まっすぐな心に負けた。

 

 巨悪を倒すために、俺は悪になった。

 彼女は、アンナ・ブレジネフは、悪を倒すために――ではない。愛と平和のために、迷いを捨てて、人々の楯となった。

 構図にすりゃ明快だ。俺が勝てる道理なんてあるわけがない。

 

 挙句の果てには俺すら守ろうとしている。なんだよ、迷いを捨てたからって、振り切り過ぎだろ。極端なんだよ。

 

 アンナ・ブレジネフは人々の楯=正義の味方であり。

 織斑一夏は人々の剣=悪の敵であり。

 

 優劣がないとしても、両者が激突した時に、その高潔さが勝敗を分けるなんて分かり切っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも駄目だ。

 

「限定解除」

【Third Shift】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぇ……」

「言ったろ。譲れねえってな」

 

 何が起きたのか分かっていないのだろう。爆発は俺たちを呑み込む寸前にすべて()()()()()()()()()

 そしてまた――アーニャのISのシールドエネルギーが、一瞬で底をついている。

 俺のISは光り輝いて、それから輝きが収まるころには第二形態『雪羅』の状態だった。

 

「何、が」

「どうしても譲れない。だから、お前の勝ちではあるが、俺の勝ちってことにさせてもらった――ジブリルさん!」

 

 呼びかけてから、アーニャを投げ飛ばした。

 悲鳴を上げる彼女の身体を、即座に回り込んだジブリルさんが受け止める。

 

「どうします。この状態でやりますか?」

「…………」

「待て! 待って、織斑一夏! まだ負けてない、私は、私は負けてない……!」

 

 叫ぶアーニャに対して俺は、薄く笑った。

 その通りだよアーニャ。正しい言葉だ。

 

「ああ。お前の勝ちだ」

 

 背を向けた。

 

「……アイリス様に報告しておこう。お前は――やはり、お前だったと」

「……何ですかそれ、意味わかんない」

 

 スラスターに点火。二人を置き去りにして疾走する。

 かつて捨ててしまった情念が俺の名を呼んでいる。アーニャの声がずっと追いかけてくる。俺の名を呼んでいる。

 ああ、でも、本当に――安心した。

 カラシニコフ社役員の男を護送している車を視界に収めながら、俺はそっと安堵の息をこぼしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 織斑一夏に一矢報いたとロシア政府は発表した。

 間違いじゃない。切り札を複数解放する羽目になるとは思わなかったし、機体の損傷はかなりひどい。

 ターゲットの男は殺した。車の眼前に降り立ち、停車させて、護衛していた連中を引きはがしてから斬殺した。

 目的は達成した。もうロシアに用はない。

 

 荷物をまとめて、それからふと外に出た。

 雪が降っている。手に振って来る雪の結晶を見た。俺のISと同じ色。

 

「ショータ」

 

 名を呼ばれた。ホテルのすぐ外で、俺を待っていた。アンナ・ブレジネフ。

 

「……ううん。一夏」

「ファーストネーム呼びかよ……」

 

 別にいいけどさ――戸惑っているうちに、彼女は歩み寄って来る。

 拘束しにきたか。警戒していたが、アーニャは手に持っていたコーヒーカップを俺に差し出した。

 受け取る。毒が入っているかもしれない。飲めない。

 

「次は何処に行くの」

「……西欧だ」

「遠いね」

「まあ仕方ないさ」

「まだ負けてないから」

「言っただろ、お前の勝ちだ」

「あんたを止めた時が、私の勝利よ」

「そうか」

「ええ」

 

 雪が降っている。

 

「あんたを止めたい――けど、その前に、私は自分の国を守らなきゃいけない」

「……暗部、抜けたんだってな」

「報道で明るみに出ちゃったから……開き直って、公式の選手にさせてもらったわ」

「次のモンド・グロッソが楽しみだな」

「あー、シャルロット・デュノアには勝てる気がしないのよね」

「無理だな」

「ひどい!」

 

 視線を交わすことなく、二人並んで空を見上げている。

 俺を捕まえるつもりはないのか。彼女の立場や信念を考えれば、俺を捕まえるなり殺すなりするべきだ。

 

「……何もしないわよ」

「何故」

「愛と平和のため」

「はあ?」

「多分、だけど。あんたは愛と平和を犠牲にしているって言った。それはてっきりテロ活動のことかと思ってたけど――違う。テロの被害をあんたは自分で補填している。犠牲になってるのは、あんただ」

「……だったら見逃すのか」

「違う。見逃せるわけない。私はあんたの楯になる。私は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 思わず彼女の顔を見た――こちらを見ていた。いつからだろうか。

 

「だからあんたも、戦いなさい。自分の信じる愛と平和のために」

「……俺の、信じる」

「きっとあんたの知り合いも大体同じ気持ちなんでしょうね――だって馬鹿だし」

「おい、どういう意味だ」

「あんたが馬鹿ってこと」

 

 けらけらと笑うアーニャの表情に、俺は毒気を抜かれて嘆息した。

 正直彼女がショータ=織斑一夏であることを明かさないのは、あまりに都合が良すぎる。すごく疑わしい。フランスに着いた瞬間拘束されるかもしれないとすら思う。

 

「それが、私なりに考えた結論だから。世界の愛と平和を守るためにあんたは戦う。私はその後に、あんたの愛と平和を守るために戦う。どう?」

「世界を俺が害するぞ?」

()()()()()()()()()()()()?」

「…………やめとけよ、つっても無駄だろ」

「勿論」

 

 いい笑顔だった。ムカつく。

 歯ぎしりして悔しがる俺を見て、アーニャが爆笑する。何もかもが馬鹿らしくなって、コーヒーをぐいと飲んだ。変な味はしない。本当にただのコーヒーだった。

 それがなんだか、不意に腑に落ちた。全部疑っていた。全員敵だと割り切って、テロ活動に没頭していた。けれど違った。アイリスは俺を信じている。ノホホン……のほほんさんだって俺を信じてついてきてくれている。そして、アーニャも俺を信じてくれている、らしい。

 見ようとしていなかったものが見えた気がした。気が楽になるのを感じた。

 

「あー、そうだ。すっかり忘れてたんだけど」

「ん?」

 

 何でもないことであるかのように、何気ない感じを装った言葉だった。

 隠しきれていない緊張が伝わって、眉を寄せる。

 

「どうした」

 

 答えは返ってこない。

 無言のまま、アーニャはそっと俺に寄った。

 見上げてきて、背伸びされて、

 

 

 唇に唇がぶつかった。

 

 

 ――――――――!?

 

 

「……アソんであげるって言ったけど、その、私、ビギナーっていうか、したことないから……とりあえずこれで勘弁して」

「ぇ、は、はい?」

「じゃ、じゃあね! 絶対無駄な犠牲者は出さないように!」

 

 顔を背けて、彼女はだっと駆けていく。

 取り残された俺は、ぽかんと口を開けたまま、その背中を見送った。

 ……お前、いいのかよそれで。

 

 なんだか、教師を辞めてからの方が人間関係こじれてきたな、と空を見上げてため息を吐く。

 悪い気はしないんだけどなあ。

 

 

 嘘だ。

 すごい悪寒がする。

 なんでだろう。

 

 

 後ろを振り返った。

 空港までレンタカーで向かう予定だった。借りることになっていた車がそこにあった。運転席には満面の笑みのノホホンがいた。

 

 

 ――――あっ(察し)

 

 

 アクセルが踏み込まれる。

 俺は反転し、脱兎のごとく駆け出した。

 

「――ショーショーさぁぁぁ~~! こういう時に一番最初に頼るべき人間が誰なのか全然分かってないよね~~~~~~!!」

「ごっ、ごめ、ごめんさないごめんなさい! 違うんです! 今回はただ相手が悪かったというか、そう! 俺に似てたんです! 親近感! 親近感故の急接近なの!」

「それ一番許せないんだけど――――! 羨ましい妬ましい~~~~!!」

「う、うわああああぁぁああぁあぁああぁっ!?」

 

 レンタカーが爆音を奏でて俺を追いかけてくる。

 全力疾走でロシアの街を駆け抜けながら、俺は天を仰いで絶叫した。

 

 

 

「ちくしょ~ッ! もう後輩指導なんてこりごりだ~~ッ!!」

 

 

 

 やっぱり俺の負けだった。基本的に即負けしてる気がするぜ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・アンナ・ブレジネフちゃん
 公式選手デビュー決定! CDデビューとかもすると思います
 正直スタンスの最終的な落としどころはすごく悩みました
 ワンサマを憎み切った状態でもいいかなと
 でも愛と平和を守るための戦士として覚醒してるし、器がありえないぐらい大きくなってそうだなって思って今回の結論に至ります
 人を守るために戦うから、誰かを傷つけるような人を守ったっていい! みたいな
 あと公式デビューは今回の任務失敗のせいで暗部のエースとして格が堕ちたというのもあります
 カタナにはなれないし楯無には及ばない、だから楯になるってロジック我ながらすき(自画自賛)

・ワンサマ
 自分の愛と平和を犠牲にして誰かの愛と平和を守る戦士
 なお巨悪にとっての愛と平和は勘定に入れてない模様(多分これうまく説明できてない……)
 偽悪とか悪の敵とかそんな感じです

・女騎士
 くっころさせたかったけど今回は保護者ポジで
 そのうちもっとメインな回を書きたいです
 イラスト見直したらヒールじゃありませんでした、最高か?

・愛と平和
 正直ゲシュタルト崩壊しました


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今後もやっていきます。
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