狂い咲く華を求めて   作:佐遊樹

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ハニトラで散々メインヒロインやってもらってるし一年一組出席番号一番の相川清香ちゃんは出さないでいいだろ~


 無 理 で し た


仏独はワンセットみたいな風潮に屈した非力な私を許してくれ・後編

 なんとか生存した俺は、半死半生の身体に鞭を打って働いていた。

 ISの整備である。

 

 超高層ビルの地下に備えられたIS整備ピット……そこに、量子から再構成された俺の愛機がたたずんでいた。

 

「これが伝説の機体……あれ?」

 

 初対面の黒ウサギ隊専属整備士が、純白のISに近づいて首をひねった。

 新入りだろうか。

 

「一夏殿のISは、普段はこの形態なんだ」

 

 俺のよく知る黒ウサギ隊隊員が、その整備士の後ろから捕捉する。

 さっきラウラと通信していたアンネ・フォン・アンデルセンという隊員だ。作戦立案を担当する、参謀ポジションの女性である。

 

 アンネの言葉に俺は頷き、愛機を見る。

 戦役を終えて、その過剰戦力を咎められ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「本来の力はまるで発揮できていないが、これだけでも十分だ。少なくとも、速度で他の第三世代機に負けることはない」

「第三世代機って……大丈夫なんですか?」

 

 整備士は不安そうにしていた。

 そりゃそうか。黒ウサギ隊、もといドイツ最強のIS運用特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼ。

 ()()()()()()()()()()()()I()S()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ハハハハハッ! おい貴様今すぐ一夏殿に謝った方がいいぞ」

「え、あああっ、す、すみません」

 

 俺の存在を忘れていたのかこの整備士。間違いなく大物だな。

 アンネは爆笑した後に、整備士を小突いた。

 

「いや気持ちは分かるから、別にいいさ。第三世代機と第四世代機じゃあ……パイロットの腕によほどの差がない限り第四世代機が勝つしな」

 

 経験則であり、多くの人々が示す事実だった。

 第四回モンド・グロッソにおいて、第三世代機はすべて予選トーナメントで敗退している。一機も残ってない。決勝トーナメントの戦いはすべて展開装甲持ち同士の激突だった。

 

 普通に考えて、もう、第三世代機ですら時代遅れなんだ。

 俺がかつてラファールを骨董品扱いした理由はこれだ。もうあの機体はすべて、展開装甲を装備するか、退役しているかのどっちかだ。まあ退役してもコアだけは抜き取られて新たに第四世代機になってるんだけど。

 

「それで、このISの名は」

「第一形態『白式(びゃくしき)』。初耳か?」

「そう、ですね、やはり一夏殿の専用機として名高いのは、ホワイト――」

 

 ちょうどその時、整備ピット中に響く音量で、誰かが手を叩いた。

 見ればそこには部隊長であるラウラ・ボーデヴィッヒがいた。

 

「あと一時間以内に整備を終えろ。今回は日本軍と合同で作戦を行うんだ、無様な姿は見せるなよ」

 

 幾分か背が伸びたラウラは、その立ち振る舞いもあって非常にこう、見覚えがある。

 本人は大して意識してないが、千冬姉に似てるんだ。

 

 本人が大して意識してないってのがミソだな。もう誰かの背中を追いかけるような年じゃないし。

 

「では私、あっちでレーゲンの整備がありますので」

「おー」

 

 新人整備士さんは俺に礼をしてから、たたっと駆けていった。

 整備場を見渡せば、かつて共に戦ったEOS四天王だかなんだかが後輩らに指示を飛ばしていた。世代交代ってやつだな。

 

「……なあアンネ、新人さんだけどレーゲンの整備やらせてんのか?」

 

 レーゲンというのは『シュヴァルツェア・レーゲン』、他ならぬラウラの愛機だ。

 

「彼女は天才ですよ? AICの新たな運用法を発明した才女です」

「へえ」

 

 隣に残ったアンネに尋ねると、そんな答えが返ってきた。

 いやはや、次世代を担う人材も順調に育ってるみたいだな、ドイツは。

 

「それと……一夏殿、何かこう、空いてる時間とか……」

「ん、ああ」

 

 頬を赤く染めて、軍服姿のアンネが半歩俺に寄った。

 瞬間、背筋を悪寒が走る。ラウラが眼帯に覆われていない瞳を、銃口のような冷たさで俺に向けている。

 

「っ、また次の長期休暇だな。今はさすがにだ」

「……了解」

 

 不満げにアンネは引き下がるが、お前自分の上司に殺されたいのか? 俺は殺されたくない。

 

「にしても整備、つってもな」

 

 一人で愛機と向き合うが、やることがない。

 第一形態故、装備は当然『雪片弐型』のみ。慣れ切った縛りプレイだ。

 ちなみに俺はあと二回変身を残している。いや、何回だっけ? 三回だったかもしれない。

 

「基地へ潜入するわけでもないとなると……割と真面目にこのままでいいんじゃないか」

 

 追加装備が思いつかない。

 ていうか想像できる障害物とか敵とか、正直全部刀一本でできると思うし。

 

 いかん……俺、思考回路が千冬姉みたいになってる。

 全部刀一本でいいとか考えてるから私生活も全部自分一人でやる羽目になるんだよ。せめて自分の鞘は見つけてくれ。

 

「一夏、それでいいの?」

 

 自分の整備を手早く終えて黒ウサギ隊の整備を見学していたシャルロットが、こちらに寄ってきた。

 

「別にいいかな。シャルロットは?」

「んー、近距離用のハンドガンを追加したぐらいかな。サイドアームは必要だと思うし」

 

 サイドアームとはライフル類をメインに据えた場合、その補助として扱う兵器のことである。

 つまり俺とはマジで縁のない言葉だ。

 

「貴様が実力者でなければ殴っていたところだぞ」

 

 様子を見に来たのか、ラウラも会話に加わった。

 

「あのなあ、俺は不可抗力でこの縛りプレイをやってんだ。誰が好き好んでこんなことするかよ、普通にシャルロットみたいにミサイルぶっ放したいわ」

「あはは……」

 

 実弾兵器でいいから使いたい。いつまで俺のISは江戸時代に閉じこもるつもりだ。

 そんな何気ない会話を、ラウラは苦虫を嚙み潰したような顔で聞いていた。

 

「…………『()()()()()()』、か」

「ん、どうした?」

 

 ラウラの言葉に、シャルロットさえも少し暗い表情になっている。

 なんだ、どうしたんだこいつら。

 

「いいや、作戦には関係ないことだ。整備が終わったのなら、作戦概要を再確認しておけ」

「ああ、分かってる」

「……うん、わかったよ」

 

 俺とシャルロットの返事を聞いて、ラウラはしかめっ面のまま頷いた。

 

 

 んだ、よ。

 ()()()だなんて……今更、呼べるわけないだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 山奥にIS6機で突っ込むの笑っちゃうな。

 相手も何機かはISを持っているらしく、俺たちは集団戦闘を前提に考えて、研究所があるポイントまで侵攻していた。

 

 既にいくらかの自動迎撃に遭遇しているが、全てをラウラがAICで破壊した。

 

 新人天才整備士が考えだしたという、『シュヴァルツェア・レーゲン』の新たな力。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、という……こう……いや学生時代にそれ思いついてなくて良かったよそれ。多分俺、それ食らってたらタッグマッチトーナメントで帰らぬ人になってた。

 

「ポイントB2まで侵攻します。後続部隊は一旦待機してください」

 

 副隊長であるクラリッサは別の任務に就いているらしく、今はラウラの次に偉いアンネが、俺たちに命令を下していた。

 指示に従って俺はシャルロットと共に直進。

 

「よーし、それじゃあ皆僕の戦い方を見ててね。射撃っていうのは狙いをつけて撃つんじゃない、狙いをつけたときには、既に撃ってないとだめだ」

 

 こいつ何言ってんだ……?

 普通に常識を破壊する超人理論に、しかし隊員たちはEOSを着込んだまま真剣に頷いた。

 EOSはISの超劣化版のパワードスーツだったが、今ではまあまあ普及している。IS相手に戦闘したら二秒ぐらいでパイロット死ぬけどな。

 

「あと、間違っても、一夏の戦闘はまねちゃだめだよ。なるべく見ない方がいい、見ただけで悪い影響がある」

「俺は条例に違反するポルノか何かか?」

「見るインフルエンザ、みたいな」

「悪化してんじゃねーか」

 

 あんまりな言われようだ。俺を庇ってくれる人はいないかと、後続するEOS部隊を見るが……全員目をそらしやがった。クソが!

 

「じゃあ、行くよ」

 

 俺が泣き崩れる一方、シャルロットは高度を上げた。

 当然迎撃システムが彼女を視認し、高射砲を向けようとし――

 

 シャルロットの視線が、戦場を右から左へ滑らかに切り裂いたことに、何人気づけただろうか。

 

 AIが『リイン=カーネイション』を認識し、自動で狙撃する。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 EOS組は何が何だか分かってないだろうな。

 狙いを定め、トリガーを引き絞り、弾丸を放ち、標的を切り替え、狙いを定め――それらの行動を一秒に極限まで詰め込んだ、神速の掃射。もはや銃身が十本ほどなくては、常人では彼女の射撃速度を再現できないだろう。

 

 ここに、シャルロット・デュノアが現ブリュンヒルデたり得る理由がある。

 代名詞になるような、超絶技巧はない。ド派手な必殺技もない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 言わば、シャルロットはあらゆる基本パラメータが全て上限をブチ抜いているから、固有スキルを不要としている。

 

「分かったか? ブリュンヒルデは人間じゃないんだ」

「こら、勝手にイメージ下げないでよね」

 

 一瞬の神業で敵の砲台を全滅させた女が、俺の傍まで降りてきて頬を膨らませる。

 EOSを身にまとう黒ウサギ隊の連中が、顔を引きつらせているのが分かった。

 そりゃそうだよな、人外が何人間のフリしてんだって話だし。

 マジでこいつも中身はゴリラかなんかだと思う。

 

「……すごく失礼なこと考えなかった?」

「全然考えてないぜ。オレンジ色のゴリラなんて珍しいなってだけで」

 

 ブレードが俺の喉元に突き付けられていることに、黒ウサギ隊員たちは二秒ほど遅れて気づいた。

 

「今のは人間の意識の間隙を突く動きだけど、これはお前らでもがんばればできるようになると思うぞ。中国の代表候補生が一人、これをできてたからな」

 

 劉明美(ラウ・ミンメイ)のことである。

 死の予感に全身を震わせながらもなんとか解説し終わった時、黒ウサギ隊員らからは、死に行く勇者への畏敬の念がこもった視線が向けられていた。

 いいから助けろバカ共!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究所が見えた瞬間にISが三機襲ってきた。

 日本から来た第四世代機『打鉄(うちがね)(あらた)』が迎撃態勢を取る。

 ちなみにここまで俺は何もしてない。

 

『一夏殿』

「どうした」

 

 アンネから通信が入った。

 

『時間をかけたくありません。相手は第二世代が三機……蹴散らしてください』

「やっとか」

 

 愛刀を召喚した瞬間、戦場にいる誰もが一瞬、たじろいだ。

 

「……じゃあみんな目をふさいでてね」

「おい新人共、今から見るものはフィクションだ。文字通り住む世界が違う、あまり魅入られるなよ」

 

 同級生二人がすごく失礼なことを言っていた。

 ふざけやがって、ちゃんと参考にしてくれよな。

 

 愛機のスラスターに点火。

 世界そのものが縮退したように、俺の居場所が飛び移る。

 

 三角形を描くような陣形だった敵の、ひとまず一番前に出て来ていた機体の眼前に、俺が出現した。

 

「な、ァッ……!?」

 

 悲鳴じみた声を上げながら、敵が手に持ったライフルを俺に向けた。

 トリガーを引きっぱなしにフルオート射撃。

 

 放たれる弾丸一発一発が見える。右手に握った剣を振るう。

 振り回す刀身が壁となって弾丸を叩き落す。IS用アサルトライフルの弾速なんて、蟻が歩いてるのと同じだ。

 

 マガジンに込められた弾を打ち尽くしたらしい。やつのISがリロードを指示するウィンドウを立ち上げたが、あと一歩踏み込めば刀で斬れる距離だ。ここでマガジンチェンジはできないよな。

 

「クソ!」

 

 敵兵がライフルを俺に投げつけて後ろに下がる。

 その直後、ドンと背中が何かにぶつかって、女は顔だけ振り返った。

 

 瞬時加速をスラスターごとに分割して行う個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)――を、極限まで短縮し、回数を増やして連発して、後ろに回り込んだ俺が、そこにはいた。

 

 ヒッ、と悲鳴が漏れた。俺は女の顔を掴み、思いっきり放り投げる。

 後ろにいた二人がそれを見て、金縛りが解けたように絶叫しながらライフルを連射。無論すべての弾丸を切り捨てる。

 

「……いいか。普通、刀で銃弾は切り捨てられない。砲弾ならともかくマシンガンの連射をすべて切り捨てるのは人間には不可能だ。絶対に真似るなよ」

「あとさっきの瞬間移動も、常人なら意識がトんじゃうから禁止ね。タイミングがコンマゼロゼロ1秒ぐらいズレたら機体も空中分解するから絶対しないように」

 

 国家代表二人に諭され、黒ウサギ隊員たちが顔面蒼白でうなずいているのが見えた。

 俺のイメージを勝手に下げないでくれ。

 

「この化け物ぉおおおっ!」

「うるさい」

 

 いくら撃っても無駄なんだから撃つなよ。弾丸がもったいない。

 俺は嘆息して、スラスターを蠢動させた。

 左右に広がる一対のウィングスラスター。先ほどとは違い同時に瞬時加速する――二次形態で可能になる二段階加速(ダブル・イグニッション)を無理矢理に再現する技術。

 

 俺がどこに移動したか目で追うこともできず、一体切り捨てられた。

 相方がやられたのを確認して、そちらに銃口を向けた女が、既にその背後に回っている俺に気づかず切り捨てられた。

 放り投げられていた女が空中に復帰した瞬間、頭上に瞬時加速した俺の一閃を受けて沈黙した。

 

「無力化完了。後で回収しとけ」

『……遊びすぎです』

「ちゃんと技術を見て盗めるようにしたんだよ」

『私たちの後輩の脳を焼き切るつもりですか?』

「そんなかよ」

 

 肩をすくめて、こちらにやって来る日独混合軍を見る。

 全員俺を見ようとしなかった。悲しい。

 

 

 

 

 

 研究所の廊下は狭い。ISを展開していたら一人ずつしか通れないな。

 

『敵性存在を99%排除しました。自動迎撃システムも、日本軍が中枢を破壊しています』

「じゃあもうIS要らなくない?」

 

 かくいう俺は既に生身の状態だ。

 他の連中も順番に装甲を解いていく。

 

「助かったよ。後は私たちで施設を捜索するから」

 

 砕けた口調で、日本軍将校の女性が軽くお辞儀をした。

 

「いや。俺も無理言って悪かった」

「君の戦闘を間近で見るいい機会だった。こちらこそありがとう。それとやっぱりこのあいだ日中合同演習で暴れたの君だよね?

「知りません」

 

 即座に目をそらした。

 日本軍将校は疑わし気に俺を見ていたが――

 

「まあ、何か事情があったんだよね。少なくとも悪意があったとは思ってないから」

「……買いかぶられてるな」

「世界で最も平和を願う男でしょ、君は。とはいえ問題児っぷりに年々拍車がかかっているのは否めないから。そろそろ生活を根底から見直すべきだよ」

「はいはい分かってる分かってる」

 

 こいつも戦役を共に戦った顔見知りだ。

 知り合いの女性の中で一番口うるさい。

 まあ同級生だがな。一年一組出席番号一番――相川清香(あいかわきよか)。懐かしい顔だ。

 

「……ここか」

 

 先導して歩いていたラウラが、部屋の前で立ち止まった。

 シャルロットが唾をのむ。

 

「実験室だよね」

「ああ。一夏、お前は別の場所に行け」

 

 は? なんでだよ。

 

「……私もそれに賛成。ここに君はいるべきじゃない」

『僭越ながら、私も同意します。一夏殿は別のポイントを捜査してください』

 

 相川に、アンネまで同じことを言ってきやがった。

 なんだ? まさか俺グロ画像に耐性のないお子様だと思われてるのか?

 

 その瞬間、だった。

 

「いやいやいや! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ドアが自動で開いた。

 全員身構える。

 

『……ISや自動迎撃システムの反応はありません。恐らく拳銃程度の武装かと』

「銃なんて持ってるわけないだろう、オレは研究者だぞ?」

 

 ドアの中から響く男の声。

 研究所のマッドサイエンティストがご登場か。上等だ。

 

「俺に用があるらしいな」

「待てッ」

 

 ラウラの制止を無視して、俺は部屋の中に入った。

 広い空間に、ベッドが何十も並べられている。その上には呻き、もがく男たちが横たわっている。

 

「被験者たち、か」

「そうだとも!」

 

 声の主は部屋の奥、巨大なモニターの前を陣取って、俺たちを迎えていた。

 

「ようこそ! オレのラボへッ! ……しかしまあ、ここで研究は終わりだがな! 抵抗する気はないぞ!」

 

 随分声高らかに降伏するなこいつ。

 伸びっぱなしで床を引きずるほどになっている黒髪と、よれよれの白衣。

 

「髪ぐらい切れよ。シャワー浴びてんのか?」

「君たちの到着は予期していた! 4時間23分前に入浴済みだッ! 森の香りがするぞッ!」

「バスロマンかよ」

 

 なんというか、気の抜けた男だな。

 

「これ、は……ッ!」

 

 シャルロットが声を上げた。

 彼女の視線を辿れば、誰も乗り込んでいないISが一機、このラボの隅に置かれている。

 誰もがそれを見て驚愕を露わにする。俺も少し、動揺した。

 

「……()()()()()()()()()

 

 そうだ。相川の言う通り、こいつには展開装甲が装備されている。

 だが展開装甲は、政府が正式に所持するISにしか装備されていないはずだ。

 

 研究所を防護していたISや、今まで戦ってきたテロリストのISがことごとく第二世代機であったのは――第三世代機と第四世代機は、非合法に所持することが難しいからだ。

 まず誰も手放さない。メンテナンスも高度な技術と装備が必要になる。第二世代なら比較的安価だし、手入れも簡単だ。

 

「どこから引っ張ってきやがった」

「ふふッ――いい質問だ織斑一夏ァ! その答えはずばり……この展開装甲は、オレが独自に作り出したものなのだよッ!!」

 

 何……だと……!?

 

「マジかよお前すごいな!」

『何を素直に感心しているのですか』

 

 アンネが呆れながら俺に言った。いやだって、すごいじゃん。

 

「フハハハハハハッ! 称賛しろッ! オレは展開装甲を作り出したッ、しかしそれすら、このオレという天才にとっては通過点に過ぎない!」

「……何が目的だったんだ、貴様」

 

 ラウラの問いに、男はギラついた視線を返した。

 

「決まっている! 第四世代機の次――第五世代機ッ

『――――――ッ!?』

 

 絶句。

 こいつ何言ってやがる。正気か?

 

「一応聞いておくが。お前にとって、第五世代機ってのはどういう定義なんだ?」

「何度もいい質問をしてくれるなァ! 織斑一夏ッ! 素晴らしい着眼点だ!」

 

 両腕を広げる男の背後で、モニターが画面を変える。

 次々とISの設計図と人体の見取り図が並んでは消えていった。

 

「第五世代機とはッ! どんな搭乗者であろうともッ! 全く同じ戦闘力を発揮する究極のISッ! それは――パイロットが男性であっても変わらないッ!!」

 

 何度目の、驚愕か。

 つまりこいつは、()()()()()()()()()I()S()()()()()()()()()()()()()

 

「……成果は?」

「フハハハハハハッ! いや、まったく! 機体の自動性についてはクリアしたが、いやはや! 男性を乗せるとなるとまるで動かない! そこらにいる男どもの遺伝子情報を組み込み、生体反応のみをサインとして起動させようとしたのだがまるでダメだったッ!」

 

 駄目だったのかよ。

 

「……野良マッドサイエンティストではこのあたりが限界だろうね」

 

 シャルロットはそれだけ言って、ベッドに横たわる男たちに近づく。

 

「彼らを解放しても?」

「無論構わないともッ! 自由にしてやってくれッ! 志高き者たちだ!」

 

 こいつらもこいつらで、男性操縦者になろうとしてたんだよな。

 

「……何のために第五世代機を?」

 

 ふと気になって、尋ねてみた。

 

「何を言ってるの。第五世代機を作るのは目的であって……いや、まさか、それすら手段の一つってこと?」

 

 相川が眉をひそめた。

 俺だって深く考えた問いじゃないさ。

 でもなんとなく気になった。直感だ。

 

「――やはり君だけは理解するか」

 

 男の声色が変わる。

 

「亡国機業戦役で、多くのISパイロットが散ったな。再起不能になった者も大勢いる」

「……ああ」

「オレはかつてある研究所に所属していた。久しぶりに会うとなるとやはり気づかないか?」

「――倉持技研かッ!?」

 

 こいつ、俺を知っていたのか! 俺だけじゃない、『白式』の詳細なデータまですべて!

 だからこそここまで、第四世代機を研究できた。

 

「ああそうだ。そして、日本軍所属のパイロットが一人……戦役で散った。オレの恋人だよ」

「……だから何だ。ありふれた悲劇が、ありふれた狂人を生み出した。それだけか?」

「言うとおりだ。ありふれたことだ。しかし、しかしッ――()()()()()()()()()!? ありふれたことだろうと何だろうと、オレ達にとっては何の慰めにもならないッ!」

 

 先ほどまでとは違う。芝居がかった声じゃない、本物の感情が乗せられた絶叫。

 俺は、自分の身体が恐ろしいほど固まっていることに、その時やっと気づいた。

 めまいがする。この男を直視しているだけで全身が鳥肌を立てている。

 

「あんな戦争は二度と起こさせないッ! なら! 力が必要だ! いや……違うな。オレは彼女を庇えたらと思ったんだ」

「……それで、なのか」

「優れた機体を作ればパイロットの生存率も上がる。オレは誰も死なないような戦場を作りたかった。……あの第四世代機はその夢の、残骸だ」

 

 男は目を伏せ――次の瞬間に、絶叫した。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「――――」

 

 拳を強く握った。

 彼の絶望は、誰よりも、俺に突き付けられていた。

 

「一夏……」

 

 ラウラが俺の傍に来て、手を握ってくれた。

 温かい感触だった。生きているという実感があった。

 

「だから君の力を貸してくれ! 君の協力があれば、必ずオレは君以外の男性IS操縦者を作ってみせる!」

 

 彼の絶望の鋭さが、胸を突く。

 ラウラの小さな手を握り返そうとして、できなくて、咄嗟に俺は乱暴に振り払ってしまった。

 

「その代わりにといってはなんだが、オレは君のためにあれを作ろう」

「アレ?」

「分からないのか? あれだよ、あれ!」

 

 男は絞り出すように、地獄で燃え盛る業火のような声で叫んだ。

 

()()()()()()()!!」

 

 視界が、ぐらついた。

 

「まだ探しているんだろう? 君は、オレと同じだ! いつまでも希望に縋り続けて、絶望をまるで直視しようとしない――君も、オレと同じ、狂った人間だ」

 

 それだけ言った後に、男は、声を小さくした。

 

「まあ、色よい返事がもらえるとは期待していないとも。狂人の戯言だ」

 

 男は自らこちらに歩いてきた。

 日本軍将校、呆然と立ちすくんだままの相川の前まで行って、彼は両手を差し出した。

 

「できれば私の待遇は、時として捜査協力を求められるようなポジションで頼むッ! ハンニバル博士のような男になるのが夢だったのだッ!」

 

 調子を取り戻したのか、男は哄笑を上げる。

 それを呆然と聞きながら、俺はその場に座り込んだ。

 

 同じ、なのか。

 

「一夏、考えちゃ、だめだよ」

 

 シャルロットの声が聞こえる。

 けど、俺は、何も反論できなかった。

 

 俺は今――あの男と同じような、狂ったことをしているのか?

 

 思考が渦巻く。床に座り込んでいるはずなのに、上下感覚があいまいになる。

 隊員たちが到着して。俺を見ている。

 この場には女も男もいる。

 

 いや、俺はずっと、本当は、世界中の男から見られていたはずなんだ。

 代表として。唯一の戦力として。

 もしも男女間で戦争が起きた場合、俺はすべてのISを打倒しなければならない。それはきっと今俺が感じているような作業ではなく、もっと重みのあることなんだ。

 

 考えないようにしていた? 違う。俺はずっと、考えなくてもいいようにされていたのか。

 隊員らが俺の傍から離れ、男たちを助け起こす。

 

「意識はあります。担架を持ってきてください、数は――」

 

 シャルロットが指示を出す。皆、俺に気を遣って、俺からある程度離れた。

 一人で座り込んだまま、俺は、俺のようになろうとした男たちを見ていた。

 

 事情があったんだ。決意があったんだ。覚悟があったんだ。そうだと思う。

 彼らはISに乗りたいという意思があった。

 

 俺には最初、意思なんてなかった。

 

 意識を取り戻した男たちは、黒ウサギ隊員らに支えられて立ち上がる。立ち上がれない人もいる。

 周囲を見て、状況を理解して、あろうことか悔しそうに泣き出す人間もいた。

 

「嘘だったのか」

「俺は、騙されたのか」

「ISに乗れるんじゃなかったのか」

 

 絶望がこんなにも、多くの人々の根底にあるだなんて。

 戦争がなくなっても、その絶望は打ち払えてはいないかったなんて。

 

 改めて現前する事実に、俺は目をそらそうとした。

 それよりも早く――1人の男が、俺を見た。 

 

 瞠目している。

 驚愕し、それから目を一旦そらして、伏せて、閉じて。

 そしてもう一度俺を見た。

 

 彼の瞳の中に、俺は業火を見た。

 

 

 

「どうして、あんただったんだッ!」

 

 

 

 絶叫だった。

 その声はラボの壁を叩いて、反響した。

 視界がガツンと揺れた。脳に衝撃がきた。立っていたらふらついただろう。

 

 誰もがギョッとして、男はでも、止まらない。

 彼だけじゃない。その声に、俺の存在を認識した男たちが、瞬時に激高した。

 

「何しに来たんだよお前!」

「笑いに来たのか、俺たちをッ」

「なんであんただけなんだよ! なんで、なんでッ」

 

 ああこれはきっとずっと言われてたことなんだ。

 俺がどれだけ結果を出そうとも世界を救おうともそんなことじゃ彼らは救えない。

 力では、剣では決して倒せない絶望なんだ。この絶望は彼らのもので俺にはどうにもできないんだ。

 

 でも、無視なんて、できる、はずがない。

 

「一夏、聞くな」

 

 ラウラの言葉に、俺は息を吸ってから、首を横に振った。

 言葉を絞り出そうとして、酸素がこぼれる音しか出せなかった。

 

「……そうか」

 

 ラウラは、悲しそうに視線を落とした。

 

 怨嗟の声が響く。彼らを助け起こすシュヴァルツェ・ハーゼの隊員たちが顔をしかめている。耳をふさぎたいのだろう。呪いの声は自分に対してでなくとも、聞いただけで心が蝕まれてしまいそうな、粘着質で、真っ黒で、澱んだ声だった。

 

 学園に生徒として通っていたころ、俺は守られていた。こういう声が耳に届かないよう守護されていた。それは悪いことじゃない。あの頃の俺がこんな声を聴いたとして、どう思ったかは分からない。変に気負うようになったかもしれないな。

 でも結局、正面から受け止めきることは、難しかったように思う。

 

 俺は歯を食いしばって、ずっと声を聴き続けた。視界がにじんで、顔を伏せた。

 男たちの声以外何も聞こえない。ずっと。これからもきっと、この声は俺の鼓膜から剥がれ落ちない。

 

 作戦は完了した。

 俺たちは任務を達成した。

 けれど、うれしそうな顔をしたやつは――救われた人々にさえ、なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休暇の最後の一日に、シャルロットは俺を連れ立って海に来ていた。

 学園を取り囲む海とは、少しだけ違う見え方がする、ような気がする。

 

 今日一日、シャルロットはいろんなところに俺を連れまわした。

 ラウラたちが事後処理に勤しんでる中だ。最悪だな。

 

 クローン生成について、あのマッドサイエンティストはある程度成功していた。

 遺伝子情報を操作し、男性でありながらも、ISには女性と認識されるような存在を作ろうともしていたらしい。あらゆる角度からISのシステムの隙を突き、男性でも起動できるようにしようとしたが――結局俺たちが到着するまでに成功することはなかった。

 

 今度、面会に行くつもりだった。

 話をしたかった。

 聞きたいことがいくつもあった。俺が話したいことも、いくつもあった。

 

 海辺の、砂浜をしばらく歩いたら見える崖。

 回り込んで、草木を踏みつぶして、その崖の先端まで、俺とシャルロットは歩いた。石だらけで舗装されていない道だ。

 誰かが飛び降りたりしたのだろうか、崖の先端には、飛び込み防止の柵があった。その気になったら乗り越えられるような代物だ。

 

「明日からは仕事だね。僕も頑張るよ」

「ああ。俺も、頑張るさ」

 

 生徒の前でこんな顔はできない。

 なんとか調子を取り戻したいのに、身体はうまく反応してくれない。

 神経全体が鈍っていた。喜怒哀楽の感情がマヒして、ずっと思考がうごめいている。それは形にもならず、ただ脳と精神を圧迫し続けるだけだ。

 

 知っていたことを、再確認するだけでも、こんなに痛い。

 誰もが知っていることだ。

 それなのに、こんな風になるってことは、俺は全然大人になれてなんかいないってことだろう。

 

 俺たちは並んで、水平線に沈んでいく夕日を眺めていた。

 丸い太陽が、はるかかなたの一本の直線に触れて、押しつぶされていく。

 ずっと黙って、その光景を見ていた。

 

「ねえ一夏」

「ん?」

 

 不意に彼女が口を開いた。オレンジ色の世界の中で、緩慢とした動きで俺は彼女を見た。

 シャルロットは、微笑んでいた。

 

 一枚の絵画だと言われたら納得してしまうぐらい、夕焼けに包まれて、美しい笑顔を浮かべていた。

 

「僕と一緒に、どこか、誰も知らないところに逃げちゃわない?」

「……はは」

 

 いい提案だなと思った。

 何もかもが、今となっては重すぎる。昔は感じなかったことを、感じるようになった。見えていなかったものが、段々と見えてきた。成長したからこそ、背負うものは増えていった。

 結局俺は、まだ、何も終わらせられないガキのままなのかもしれない。

 それでも。

 

「ありがとな、シャル」

「……久々に、そう呼んでくれたね」

「悪い。忘れてたわけじゃないんだ。でも……」

「分かってる。大丈夫だよ」

 

 シャルロットは、シャルは、身体を俺に向ける。頬を、どうしようもないぐらいに透き通った涙が伝っている。

 

「学生だったころを、思い出しちゃうもんね」

「ああ」

 

 大の大人になっても、俺は過去とまともに向き合えていなかった。

 

 彼女を取り戻せば欠けたピースが埋まる。

 彼女を取り戻せばどうしようもなく感じる()()が収まる。

 

 そう信じて、だから、結局は向き合わずとも解決できる問題だからと、受け入れるのがつらくてもいつかは美しい思い出に戻るからと、俺は過去から目を背けていた。

 

 受け入れることには、痛みが伴うだなんて。

 高校生でも知ってるのに……俺はできていなかったんだ。

 

「俺、やっぱり、逃げるのだけは、したくないから」

「そっか」

「ごめんな、シャル」

「いいよ、全然。けど、後悔しても知らないからね。一夏のばーか」

 

 泣いていたけど、シャルは、笑っていた。

 その笑顔に幻視する。

 IS学園の制服を着ているシャルを、重ねてしまう。

 

 けど、別にいいんだと思う。

 過去を受け入れること。きっとそれは、俺にとって今必要なことのはずだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねえ待って! これなんか、僕失恋したみたいになってない!?」

「気づくの遅いぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園に戻った俺が部屋に入ると、誰もいなかった。

 一人部屋だから当たり前だ。ベッドと机の置かれた部屋の中まで進み、シャワールームに振り返る。

 バスタオル姿の少女が出てくるような気がして、ずっとシャワールームのドアを見ていた。

 誰も、出て来やしなかった。

 

 空には星が煌めいてる。

 

 どうして俺だったのかなんて、それは一人の天災が脚本に私情を持ち込んだからに他ならない。

 

 それが、果たして『俺だったから』と言えるのか。俺は首を横に振った。

 織斑一夏である必要はなかった。

 

 唯一の男性IS操縦者は、篠ノ之束の妹と仲が良い男であればそれで良かった、と思う。

 

 でも選ばれたからには俺にできることをするしかない。

 ああそうだ。俺にできること。剣を握って。敵を斃して。斃して、斃して、斃して斃して斃して斃して斃して斃して斃して斃して。

 

 戦う技術が高まるほどに、かつて抱いていた誰かを守りたいという意思は朽ち果てていった。

 戦果を積み重ねていくほどに、かつて大事にしていった人々が遠くに行ってしまう気がした。

 

 俺は守り抜いた。

 多くの人々を救い、俺の身の回りの人々の笑顔も消させなかった。

 

 取りこぼしたものはただ一つだった。

 

 俺じゃなかったら、救えたんじゃないだろうか。

 

 シャワールームは物音一つ立てず、静かに俺の視線を受け止め続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

「おい私はいつまで待機していればいいんだ」

 

 超シリアスこいてたらベッドの中から全裸のラウラが出てきた。

 

「嘘だろ……」

 

 この状況でやることか?

 

「いや……先回りして驚かせてやろうと思っていたんだが、その、そこまでお前が深刻な顔をしていると、出にくくてな」

「いやホントだよね」

 

 ぬっ、とベッドの中から、あろうことか日本軍将校相川清香さえもが出てきた。全裸である。

 二人共シーツや毛布で身を包んではいる。が、肩とか太ももとかが普通に見えている。

 

 マジで俺の感傷を返せよ。全部吹っ飛んだぞ。

 

「今出てくることあるか?」

「今だからこそ、だよ。織斑君にとって私たちは、()()()()()()()()()()()()

「私たちは……ある種の鎮痛剤だ。それは互いに了承しているだろう」

 

 プライベートの口調で相川が言い放った内容に、押し黙る。

 そうだったな。確かに俺は、お前らを、そういう扱いにしてしまっている。

 

 いつになったら誰かと向き合えるんだろうか。

 

「どんなにつらくてもきっと、いつかは楽しく話せる過去になる。それは思い込みだったかもしれないけど、少なくとも、絶対に間違いなんかじゃないから」

 

 相川の笑顔に、俺は、少しだけ救われたような気がした。

 

 ああ、そうだったっけか。

 結局あいつを見つけ出せば全部解決――それ自体には、誤りはないもんな。

 

「というわけで一夏。次の協力要請がある。クラリッサが担当している任務が難航していてな。調査自体は進んだんだが……その結果、学園にも関係あるということが分かった」

「詳しく聞かせてくれ」

 

 ラウラをベッドに押し倒しながら、俺は問う。

 

「え、聞く気あるの? 言動が一致してないよ?」

「お前本当にうるさいなコラ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、その概要の全貌は一晩かけてちゃんと理解できた。

 朝までカンヅメで会議してたということだ。

 つまりこれは仕事である。

 だから大丈夫。

 

 目の前に佇む、青筋を浮かべたシャルに対して、俺はベッドに横たわったままそう言い聞かせようとした。

 俺の両隣には日独合同演習の参加者が眠りこけている。

 

 完璧に詰んだ。何部屋に入ってきてんだよ。今日仕事じゃねえのかよ。

 

「一応、最後に挨拶しようと思ったらこれだからね。一夏はほんとにしょうがないなあ」

 

 声が完全に殺人鬼のそれだった。

 貌だけは美人なのに、それ以外のすべてが怖い。

 

 ……オレンジ色のコスモスの花言葉は『野生の美しさ』らしい。

 つまりシャルも野生の美しさを持つ。なら優しさをふ()()()、なんちって。

 

「だから、何?」

 

 心を読んだうえで、ツッコミを入れずにその反応は殺意が高すぎる。

 

「ああもう一夏なんて知らないからッ! もしもし織斑先生!?」

「織斑先生ならここにいるが」

「一夏じゃない方だよッ! すみません失礼します一夏の部屋までいつものお願いします!」

「あっ」

 

 終わりました。

 

「一夏の馬鹿はどこだァァァァァァァァァァァアアアアァァァァッッ」

 

 直後、天井を木っ端みじんに砕いて、千冬姉が上のフロアから飛び込んできた。

 

 待機場所が斬新過ぎる。両隣の二人をベッドから叩き落すと同時、俺の首すれすれにIS用ブレードが突き込まれベッドに刺さる。

 

 シーツが解け裸体を露わにする二人を見て、千冬姉の目が赤く染まるのを確認して、俺は笑った。

 

 

「やっぱ他人の裸見ると緊張する? 年齢=彼氏いない歴はこれだから――」

 

 

 その後俺がどんな目にあったかは、たぶん、俺の戦闘機動より悪影響があるので言えない。

 

 

 

 

 




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