気が重い、村に入るのがい
「おかえり!クロフ!」
思考の途中でパティが飛んできた。
「え、ちょっ」
村の女衆が皆来る
「大変なんだよぉ!食べ物足らなくて!」
クロフは女衆に囲まれる。
見れば行商人が増えている。
「おおぉー!きたきたぁ!!!」
早速素材の山に行商人が群がる
どれがいくらか値踏みする。
「皆!クロフがファンゴ狩って来たよ!!!
捌くの手伝って!!!」
女衆が騒ぐ
「良かった、狩りが成功して、
晩ごはん作れるよ!」
「いきなり人数増えたからね!」
「船乗りも行商人も喰うからねぇ」
「ヤハハ、活気があって結構!」
「村長は素材の販売とアルトさんへ報酬、
販売は中央相場にします?
それとも競りにします?」
パティが聞く。
「ヤハハどっちに…」
「早く!!!!」
食い気味
ギルドズタッフとして忙しい。
ディアブロスの素材は高値で安定する、
何しろハンター、特に大剣使いには、
確実に売れる。
アルトが言う。
「大剣使いは肩から角生やして一人前
って言うしね」
「?」クロフには分からない
じゃ先ずは甲殻から!
競り合いが始まる。
村長が頭上に掲げる。
スゲェ!傷も割れもねぇ!!!
マカライト20個!!!こっちは22個だ!!!
ポポのタンは!!!いやそれこっちにくれ!!!
こっちは現金900ゼニーでどうだ!!!
次は…………尻尾!!!
歓声
おぉー!!あれは高値で売れるぞ!!
今北部で値段が上がって……
あっちこっちで商談が始まった
喧騒は過ぎ日が暮れてきた、
みんな納得の行く取引が出来たのか
ビールで乾杯、食べ始める。
何故かクロフの周りは人が多い
「クロフのお陰で助かったよ!」
「ランポスまで倒したらしいじゃないか!」
「この村はアンタが居れば安心だよ」
「一人でこれだけ狩るとはなぁ」
誉められっぱなしで
クロフはどうにもムズ痒い。
「アタシは手ぇ出してないのよ」
いつもどうりジョッキ片手に
おぉー!と村人は感心する
「ハイ!クロフ!」
パティがファンゴのモモ肉を焼いて
持ってきた、大きい!
有料のはずだし、注文もしてない。
「え?頼んでな…」
「アンタが狩って来たんだし
村の危機を救ったんだ当然だろ?」
女衆が騒ぐ。
いくら取引が上手く行っても
村が食糧難ではカッコがつかない。
船乗りの一人が船長に聞く
「変な村っすね、ディア狩った事よりも
ファンゴとランポスで…」
「お前子供いたな、
初めて子供が立った時どうした?」
「そりゃあ飛んで帰りましたよ」
「そういうことだ」
「?」
「おい、クロフ」
大工のカダが話しかける。
ビクッとクロフは震える。
「汚ならしいガキが!!!」
過去に言われた事を思い出す、
怖い怖い怖い怖い
「ファンゴの毛皮売ってくれ、
敷物が作りてぇ」
「…え?」
「あれ?……」
「クロフ」
加工屋のアキシ
「働けねぇのに食いもんくれだぁあ!!!?」
「ランポスの素材と鉱石をくれ、それと」
アキシはクロフのハンターナイフを取る
え、それはアルトから貰った…
返して…返して
「あ…ああう…」
「こいつを強化してやる」
「え?」
「良かったじゃーん」
アルトが来てグリグリ頭を撫で回す。
皆が優しい…優しい。
だけど…今さら…許したら…
自分が…子供の…
ダン!!と立ち上がりクロフは走る。
「えぇ??!」
道具屋に行ってしまった、
みんなポカンとしている。
マズイ!
おかしな空気をアルトが変える、
「あいつぅ照れちゃって」
なぁんだ、照れ隠しか、皆が安堵するが、
アルトだけが気付く
(泣いてた、なぜ笑えないんだ
嬉し泣きか…それとも何だ?…)
「なぁ、道具屋さんいるかな?」
ヨシとメヒコが近くへ来る
「なんだ?姐さん」
「今までクロフを誉めたことあるよね?」
「当たり前さぁ」
メヒコが呆れたように言う。
「どんな反応してた?」
「いつも無表情でなぁ、反応が薄い」
ヨシが首を傾げながら言う。
「でも言われた事はきちんとやるよな」
「採取なんて誰より上手いよねぇ」
「大工仕事も普通にできるよ」
村中が話始める。
「こんなこと初めてだよねぇ、
照れてるように見えないけど」
「何だか昨日の辺りから変だ、
ただいまって言ったんだあいつ」
二人も不審に感じている、
無表情じゃない、戸惑い?後悔?
なぜだ?、アルトは道具屋へ向かう。
薄暗い部屋へ借りたランプを持って、
「クロフ、入るよ?」
仕切りを開ける、大量の素材、調合本、
クロフは何かを読んでいる。
「凄い本の量だね」…無言
前に見たことがある、書士隊のメンバー、
やっぱり人と話せず本ばかり読んでいた。
そいつは知識はあるが協調出来なくて
トラブルを起こすやつだった。
経験から学ぶ事を否定して、
本で全てを学んだ、学んだ気になった。
アルトの中で何かが繋がる、
心は子供のままでも体は大人だ
体の成長は止まらない。
森と丘で最初に見た「クソッ」は、
心と体のバランスを保てないストレスで
いってるんじゃ?
最初の家で愛情が貰えてない…
なんだ?答えが見えそうなのに
何かが足りない。
「何?」
「何?じゃないわよ、なんで逃げるの」
「だって…あそこにいたら…皆…
皆笑って…」
「良いじゃない、皆誉めてるじゃない」
(なんで拗ねてるんだ)
「何も出来ないのに」
「何言ってんの?獲物獲ってきたろ?」
「ディアを狩った訳じゃない」
「あのな、昨日今日ハンターになったヤツが
狩れるわけ無いだろ」
(アタシに対して?)
クロフは振り返る、やはり泣いている。
(アタシに対してじゃあない、ハンター
として駆け出しなのは本人だって解ってる
そんな表面の話じゃない)
「なぁクロフ、大事な事だ、良く聞きな」
きちんと座り話始める。
「いつか分かってくれるだろう
こんな事は無いと思え、
もしもあるなら偶然だ」
「気持ちを伝えたいなら言葉で話す
これしかないんだ」
「アンタの過去は村長から聞いたよ、
辛い過去だ、でも前に進まないと」
出来るだけ優しく言うが、クロフは
膝を抱え
俯いたまま動かない。
なんだこの子に足りないモノは。
まさか心の成長が追い付かないのを、
知識で埋めてきたのか?
もしそんなことが出来たなら、
いや……出来てしまったら…
クロフにとって世界の全てがこの部屋!?
だめだ、何かが足りない。
ギルドに戻る
今日ばかりは篝火を増やし大騒ぎ
村人、行商人、船乗り、
皆が飲んでいる。
「村長、ドスランポス居ないか?」
狩りで教えるしか…
「ヤハハ、んーーどうだったかなぁ」
取引が上手く儲かったのだろう。
上機嫌で酔っている。
村中が酔っている、クロフを置き去りに
「姐さんもこっち来て飲みなよ~」
誘いを上手く避けながら
「パティ!」
忙しく走り回るパティを呼び止め、
クエストの有無を聞く。
翌朝、船が出港、行商人も隣村へ出発、
飲み明かした村人が数人ギルドで寝ている
「勝手に伝書鳩使うなよー!」
アルトが叫ぶと
「おぉ!すまなかった!」
「また会おう姐さーん!」
「なんでレザー装備ぃー!」
手を振りながら船が遠ざかる。
「もー村長!ギルドマスターでしょ!」
水を出しながら
「パティ、痛いイタイ頭痛い」
テーブルに突っ伏し耳を抑える
「仕事して!」
「アッハ!二日酔いか、情けない」
「アルトさん、お早うございます、
怒ってやって下さい!」
後片付けが大変なのだ
遅れてクロフが来た
「お早う…」
「おう、挨拶出来たな、じゃ行こう。」
「おーい待ってくれ!!」
加工屋のアキシ
クロフに
「これを着ろ!」
ランポス装備(頭無し)
「それとコイツもな」
ハンターナイフ改を渡す、
「代金は今回はタダでいい」
無言でアルトがこっちを見る、何?
バシッ!!!!
「ありがとうは!!!」
頭を思いっきりひっぱたく!
鬼の形相
「があっ!!あ、ありがとう!」
着替えて出発
村から一番近い密林へ入る、
湖に突き出たような形、
沖には昼に行ける小島がある
歩きながら
「人生で
一番大事な感謝がなぜ出来ない!!!!」
「ありがとうとゴメンナサイは絶対だ!!!」
怖い怒らせた嫌われた
いやだいやだ嫌わないで………
「前に言ったろ言葉の握手…」
「ひぐっ…えぅ…うー」
(うわ、ヤッバ!泣くとは思わなかった
どうしよどうしよ)
アタシの時は…
「大丈夫、次から必ず言いなさいね」
母親の顔を思い出す
優しい笑顔で…
「だ、大丈夫、次から必ず言うんだよ」
顔は少々引きつるが。
密林の2番
かなり広い見晴らしの良いエリア
ドスランポスはいない。
前のエリアで狩ったアプトノスの生肉を焼く
「焼き方出来る?」
アルトが聞く。
クロフは無言で焼き始める
上手に焼けました…だが、
うわーどうしよこの空気、
この子疲れると口数多いけど、
拗ねると黙るわ。
しかしそこに助けが来る
「道具屋にゃ~」
(うわー助かったぁ)
ここには猫族の集落があった。
クロフの周りを囲み、
「持って…ないにゃ」
すると口々に持ってない、持ってない
と言い始める。
「マタタビない、取引は?クロフ?」
族長らしき一匹が聞く。
「ゴメン、ハンターになったんだ」
クロフは申し訳無さそうに言う。
するとメラルー達は、盗む?盗んで良い?
と言い始める。
族長らしき猫を取り囲み相談する。
まるで伝言のように隣の猫へ言葉を伝える
「出来れば盗まないで欲しい
これからの取引もあるし」
「分かったにゃ!クロフはクロフにゃ」
族長が手をあげ叫ぶと次々復唱する
にゃあにゃあ五月蝿い。
ホント猫族とは普通に話すんだなぁ、
あれ?メラルーが盗まない宣言?
これって…
盗み無効?
アルトが考えていると木の根元にある
集落(って言うか穴)から子供のアイルーが
親猫と一緒に出てきた。
「うっわ可愛い、
人前にまず出てこないのに」
クロフには全く警戒しないようだ
四脚でヨチヨチ歩き、
石ころや葉っぱの匂いを
嗅いでいる。
まだ二足で立てないらしい。
抱き上げたら怒るかな?
考えた時
子猫が無言で小さな石を拾い親に見せる
何の変鉄もない石ころ
親猫は受け取り笑顔で抱き上げ
顔を舐めている
まだ言葉が喋れないんだろう…
小さな取るに足らない勲章を親に見せ、
親はそれを認めてやる、
人間の小さい子供と変わらない。
「ああぁーーーーーっ!!!!!」
アルトが
突然叫ぶ!猫達は蜘蛛の子を
散らしたように逃げる!
恐る恐るクロフが聞く
「な…何?」
アルトがクロフの顔を見る、
「わかった!わかった!」
器を作るのは愛情なら
愛情はどうやって与えるか
答えは言葉で褒める事じゃない!
言葉なんかいらないんだ!
ただ抱き締めてあげればいいんだ!
人間の子供だって言葉なんて通じない、
ただ笑って抱いてやればいいんだ!
それだけで子供は自分の存在を理解する
『自分はここに居ても良いんだ』って
クロフだってパティにそうしたに違いない
クロフは戦士の家に生まれ
戦う事を義務づけられた
親は早く大人にしたかった。
ジャンボ村でも早く働けるように
早く大人になることを望んだ。
クロフ自身も
急いで大人になるしかなかった!
小さい子供の時代が不十分なんだ!
クロフを笑って抱き締めるべき母、
考えるまでもない
パティだ!!!
「クロフ!!!
ソッコーでドスランポス狩るぞ!!」
大きな体にランポスの倍ほどの跳躍力、
ランポスの群れを統べるドスランポス
体長も5メートルになる
オマケに単独でなく、
だいたい部下のランポスと一緒。
普通の村人ではまず勝てない
下手したら喰われるが…
「おらぁあっ!!!」
次々にランポス達は
黒いハンマーで吹き飛ばされ
頭が四散する。
クロフはドスランポスに前転して斬り上げ、
チャンスには
複数回叩き付けるように斬る、
大きいと足元が広くて動き安いし、
防具のお陰でケガもしない。
ドスランポスが横に二回飛ぶ、
クロフの視界から消えるように、
「避けろ!!!」
クロフは側転する、
ドスランポスは飛び掛かるが
そこにクロフはもういない、
「斬れ!!!」
息を止め二回三回
前転から真上に斬り上げ
アルトはランポスに囲まれながらも
的確に指示を出す
ドスランポスはのけ反り距離が空く、
跳躍から飛び掛かる!
「クロ…!!!」
ガキィィ!!!
咄嗟にガードするが衝撃が凄い、
直ぐには立ち上がれない
息が上がる、脚が震える
怖い怖い怖い!!!
まずい!
「転がれ!」
噛みつきから逃れられない
頭を咄嗟に守る為に左腕を噛ませる
「ぐううっ」
「クロフ!!」
真下から剣を喉に一撃!!
喉から刺さる!!
最後の声を出すことも叶わず
ドスランポスは倒れた
「大丈夫か!?」
左の手甲に大きな傷
肘の内側に牙が食い込んだのだろう
出血している、
「ほら回復薬」
教わったように患部に塗り、飲む
「凄いぞクロフ、だけど今のやり方は
感心しない」
「盾を噛ませようとしたんだけど…」
「良いアイデアだ、それならよし」
頭をグリグリ撫でる、疲れたのだろう
クロフはされるがまま。
「 お帰り!クロフぇえええっ?」
ドスランポスはともかく
夥しいランポスの死体の山に、パティは引く
ドスが仲間を呼ぶたび
全滅させるもんだから20匹以上狩った、
全て何故か頭が吹き飛んでいる。
「ただいま」
「これってクロフが………?」
「師匠が」
村長が来る
「ヤハハ…群れ一つ全滅してないコレ?」
村長は声が震えている。
そんな言葉を無視してアルトは
パティを連れて
「女同士の話だ」
「村長、小屋貸して」と続けて、
頭が無いランポスを指差し、
「覗いたらこうなる」
ニヤリと笑う
言って村長の小屋へ入った。
少し引きつった顔の村長は、
なにがあったか聞くが
クロフは首をかしげるしかなかった。
村長の小屋の中、窓を全部閉めて
ランプを点ける。
「あの、話って何ですか」
「パティ、クロフと寝な」