「採取行くぞ」
今日は朝から師匠と二人で森と丘、
時間が有れば密林にも採取に出る。
一応いつもの装備だが師匠が言うには
「最悪リオス系飛竜が近くにいるかも」
と言う。
「拾うもの分かってるよね?」
「はい、回復薬系の素材、特にハチミツ」
「そ、後はカラ骨とカラの実拾って
弾丸作りたいから」
「買っても…」
遠慮がちに言う
「下位のクエストで弾丸買ってたら
赤字確定よん」
(確かに)
「ハンマー使えばいいんじゃ…」
「下位じゃ加減が分かんないのよ」
ハンマーを眺めながら続ける
「本当はクックが弱ってからアンタに
殺らせるつもりだったけど」
人外、この言葉の意味が分かる。
3番
「さて、何がいるかって…クックゥ?」
何故か師匠は不思議がる。
まさかもう他の個体が飛来した?
隣のエリアへ向かうと
4番にも別個体
あれ?…これって大発生?
年に数回、昆虫類が多くなった後は
イャンクックが増えるのだ。
「これが原因……?」
この程度でランポスが居なくなる?
師匠の予想と反するみたいだが
「狩っちゃおう!」
師匠はニヤリと笑う
「え無理ですよ、道具類足らないし」
「ん、アタシはペイントボールだけでいいよ」
「そんな無理ですよぉ」
いくらなんでも道具無しって。
アルトは見てろと言うと駆け出す
尻尾、前転回避から起き上がりに一回殴る
クックの振り返りに溜め3
耳が破れる
気絶、殴る
クックがかわいそうになってくる。
ものの2分程度で倒してしまう。
いやいやいやなんだよコレ、
これが師匠の実力
この前のランポスもそうだった。
「師匠、回復薬は?」
「ん?いらない、一発も食らってないし」
ノーダメージ……
「じゃあ次、一緒に狩るぞ!」
えぇっ!?緊張する
「頭はアタシが叩くから、
アンタは足元を狙って」
気軽に言わないでよ
攻撃を掻い潜りながら腹や脚を斬る、
師匠はこちらに合わせて的確に
頭を叩く、
5分程で倒したが、
「足引っ張ってますよね…」
ゼイゼイと肩で息をする。
「アッハ!誰だって最初はそうだ、
馴れよ馴れ!」
呼吸が全く乱れてない。
師匠はこっちを気遣って
思い切り攻撃出来なかったはず
「弱いなぁ…」
「何言ってんの!最近じゃ最初に
一人で狩ってないヤツいるんだよ」
「え………?」
「いきなり狩れるヤツが少ないの、
しかもその装備で」
「え?…ハンターナイフ改って弱いの?」
「アッハ!そう!
普通はもう一段階位はね」
「じゃあ何でソロやらせたんですか?」
大変だったし疲れた
「ソロで狩れて初めて勝ったと言えるのよ、
最近は人に狩って貰ったのに、
自分の実力だと思って
死ぬヤツが多いのよ」
ヤレヤレと首を振る。
「それで一人で…」
「アタシが一回だけ助けたけどね、
アンタはもうソロで狩れそうだ、
何と言っても大きな武器を持ってる」
「大きな武器?」
なにそれ?
「道具の知識!!」
クロフのポーチを指差す
「覚えておきな、どんなに優れた
ハンターでも回復薬、砥石、肉、最低
でもこれ等がないと戦えない、剣士はね」
説得力無いんだけど、
ズタボロで倒れているクックを見る。
とりあえず2頭で、後は採取して引き上げる
村に着くと猫族の使いがいる、
「ヤ、丁度良かった」
何事か聞くと、どうやら密林に
リオスの番が来ているらしい。
「あぁそれでか」
師匠は納得する、
雌のリオレイアが卵を産むのだろう、
そうなれば雄のリオレウスは
餌を捕りながら周囲を警戒する。
ランポスは手軽な獲物だ、しかし
密林のランポスはこの前数が減った。
その為に隣の森と丘へ雄が来たのだ、
ランポスが警戒したのはそのため。
「危なかった」
会わなくて良かった
今のクロフじゃ餌にされるだろう。
「アッハ!人間はあんまり襲わないよ」
「そうなの?」
「人間より美味しい獲物がいる限りはね」
今密林は食べる物があるんだろう、
そして卵を狙うランポスがいない、
ランポスが食べたいならすぐ隣の
森と丘へ行けば良い、
産卵には最適と言える。
「アプトノスが多いんだにゃ」
「んで?村長、どうする?」
師匠は聞く。
「ヤー…産卵してるか確認出来ます?」
「分かった、クロフ!行くぞ!」
密林の7番
大きな広い洞窟、いくつも通路が
通り日光が入って明るい、
緑色、20メートル位の体に大きな翼、
牙だらけの口、圧倒的存在感。
雌のリオレイア、
静かにその巨体を休めている。
洞窟の入り口から観察する、
「見えないなぁ」
双眼鏡で師匠が見ている
「温めてるんですか?」
小声で恐る恐る
「え?鳥じゃないんだから」
「そうだとばかり思ってました」
恥ずかしい
「産んだら雛が育つまで世話はするけど」
何も知らない、いつもだ。
「どかさないと見えないなぁ」
こっちを見てニヤリとする、
悪い予感しかしない。
師匠はペイントボールを取り出す、
刹那
風を斬る音、気付いた途端
「グオォォォォッ!!!!」
リオレウスが飛んできて着地する、
ズシンと重そうな音がして、
埃が舞い上がる。
「チッ、間が悪い」
身を低くする。
お互いに匂いを嗅ぐように
鼻を鳴らしている。
「あの」
「何?」
「肥やし玉、作りますか?」
「さっすが♪」
二匹とも追い出し見てみると
確かに三つ卵がある。
「アイテムの知識が高いのは
自慢出来るぞ、クロフ」
一通り見て
「よし、確認終了!」
「まずいです」
「何が?」
「2ヶ月くらい密林は
採取出来なくなりました」
「あぁ、でもアンタいるしな」
「?」
「分からない?
アンタはもう立派なハンターなんだよ、
しかも村で一番役にたってる」
「そうなの?」
首をかしげて
「一番下の役立たずだと思ってました」
「卑屈だなぁ皆が認めてるじゃない」
師匠が言ってくれなかったら、
わからなかった。
「立派な男だよ」
頭をグリグリ撫でる
パティも師匠も認めてくれた。
それはいいが
でも何か、
「納得出来ないの?なんで?」
素直に喜べない。
顔が曇ったままだ、笑えない。
「前に誰も助けてくれなかったのに
今になって…………」
「アッハ!そうか!今さら認められても
素直に喜べないのか」
「はい…………」
「時代が悪かったのよ、許してあげな」
「……でも…」
「周りを変えたいなら
自分を変えろ、って言葉は知ってる?」
「知ってますけど……」
「アンタの場合周りが変わって行ったの、
アンタは立ち止まってるのよ」
「そんな事いったって…」
「恨んでるの?」
頷く
「時代が悪かった、子供一人で
抵抗出来ないわよ」
「…………」
「じゃあ許せ、とは言わないけど、
過去の自分だけは許してあげな」
「自分?」
「アンタの中に居るんじゃない?
小さい時の無力なアンタが」
怒り哀しみ、なんとも言えない気分、
そこまでズケズケと人の心に
入って来るのかこの人は!
「べつに」
こんな言葉しか出ない
「アタシは凄いと思うよ、小さい時のアンタ」
「なぜ?」
大嫌いな無力な自分
「一年もパティ育てたんだろ、
普通の子供に出来る事じゃない」
「だから許してあげな、何より自分を」
なんで、なんでそこまで
言われなきゃならない!!
色んな感情……と、
「アタシはさ、目の前で両親を喰われてさ、
無力な自分を恨んでるのよ、
アタシの中にも居るんだよ、
無力な過去の自分がさ」
言いながらアルトは気付いた。
そうか、アタシはこのために、
自分と向き合う為に、
向き合えると思えたから
クロフの師匠になったのか。
ボリボリ頭を掻く
どこまでが御膳立てなのか知らないけど
多分じいちゃんの手のひらの上。
「すぐには無理かもしれないし、
少し歳を取らないと
理解出来ないかもしれないけど」
クロフの額に手を当て
「いつか過去の自分を受け入れてあげな」
「あんたにしか出来ないんだから」
「師匠は出来たの……?」
(この人の中にも………)
「んーもう少しかな」
「弱い自分を否定したくて
鍛えて強くなったけど、
否定してもダメなんだよ、
過去の自分は変えられないから」
「受け入れるしかない?」
(過去を捨てるのは間違い?)
「そ、否定しても悪夢見ちゃう」
確かに、起きてても
過去のイヤな事を思い出す。
「受け入れる、どうすれば?」
「毎日人と話す事よ」
「それだけ?」
「人と話すとね、反応があるでしょ?
その反応、意見によって
自分がどんな人間か解る、
そして自分を大きくするんだ、
本だけじゃダメなんだよ」
「難しい………」
「馴れよ、あぁでも努力しないのはダメ」
指を一本、クロフの鼻先へ
「努力しない人間はバカにされても
仕方ない、なんでもいいからね」
「努力……?」
「アンタは大丈夫、毎日ハンターやってるし」
「ヨシさんから聞いたよ、
何でも頑張ったって」
「大工とか…キャンプ作ったり…」
「ほら、スゴいじゃない!」
いっぱい誉められたはずだよ、
と話している内に、
「グオォォォォ!」
あら早い、もう戻ってきた。
確認を終えて村へ
「ヤ、どうでした?」
「3つの卵を確認した」
アルトは指を三本立てる。
「どうしようかな」
村長は考える。
「卵泥棒は勘弁してよ?」
「卵泥棒?」
クロフには分からない。
「そういうクエストもあるんだよ、
主にバカな貴族の依頼でね」
「ヤー…暫く密林は無理かな」
「じゃあ砂漠と、森丘か」
クロフに向き直る
「ま、あとは明日だね、
クロフ、加工屋行って
クックの装備の相談しておきな」
加工屋
普段は農具の手入れや細かい
金属部品を作っている。
「あの…」
この人怖い…
「おうクロフ、どうした?」
作業を止めてアキシが来る
「クック装備…」
「作るか?」
「うん」
「一週もしない内にクックまで狩るとはなぁ、
お前才能あるんだな」
あ、これが誉められたって事?
なんだか居心地が悪いような、
良いような。
照れが自分でも分かっていない
「お願いします」
「おうよ!!お前の注文なら
最優先で作ってやる」
あれ…?怖くない…
「素材が入ったら何時でも来な、
何でも作るぞ」
有料だがなと笑う。
つられて笑顔になる
(お?初めて笑ったよコイツ)
(あ…アルトに言われた大事な事、
人生で一番大事な言葉)
「あ…ありがとう……」
「お…おおう!」
(変な間が…でも初めて聞いたな)
次の日
「クロフ、一人で狩ってきな」
クックなら一人で十分だろうと任される。
しかし
「おおーい!姐さん、待ってくれ」
大工のカダが止める。
「クロフを今日は休ませてくれ」
「なにかあった?」
「アプトノスの飼ってる場所を
覆わないと危ないんだよ」
密林は村から一番近いため
狙われる危険がある。
「クロフの手が必要なんだ」
「ヤ、それなら仕方ないでしょう、
急ぐクエストもないですし」
「よし、アタシも協力するよ」
村のはずれに荷車を引くアプトノスが二匹、
大きな体で白地に黒の模様がある
四つ足の竜、草食でおとなしい上に
人になつく、繁殖力もあるし肉も美味しい。
またその為に肉食に襲われやすい、
村で柵に囲まれていたら逃げ場がない。
「先ずは小屋の強化だな」
クロフは指示通りに
柱を立て板を打ち付ける、
ネットをいくつも作り端を縛り大きくする。
「おーいヨシさん、蜘蛛の巣と蔦を追加だ、
村長、材木が足らない」
「ヤハハ、村総出の作業は久しぶりだ」
「村長、サボらないで」
パティがロープを運びながら叱る
「おいおい姐さん、
モヤイ結びはそうじゃない」
「えぇ!?こうじゃないの?」
「じゃあもう一回見せるぞ?」
カダがやって見せる
「アタシはこういうの下手だなぁ」
手元でロープがダンゴになっている
「やったことないんだねぇ」
女達が笑う
「料理は得意なんだし器用なはずだよなぁ」
それに比べてクロフは器用に作って行く。
小屋はほとんど完成、後は小屋の周りの
空が見える部分をネットで覆い、
上から小枝や葉っぱをバラ撒くと。
「出来た!!!!」
小屋の辺りは日陰になり
空から見えにくいだろう。
「クロフのお陰で早く終わったぞ」
「お前は本当に器用だよな」
「大工でも食っていけるんじゃないか?」
カダも怖くない…
あぁ、これ誉められてたんだ
今初めて素直に受け止められた。
「大工仕事はクロフのが師匠だな!」
カダが笑う
「アッハ!面目無い」
クロフはモジモジ挙動不審になる。
皆で昼ゴハンを食べる、
少し離れた所から
「ヤー、照れてますよね」
「そ、誉め言葉もちゃんと通じてるし、
嬉しい感情も出てる」
「一人前になったかな?」
腕組みしながら村長は眺める。
クロフは笑顔になっている。
「お兄ちゃん……」
いつの間にかパティが横に来ていた、
アルトに抱き付く。
「ありがとう…ぅぶえぇぇ…」
「アッハ!泣かない泣かない」
パティをなだめる。
人として教えられる事も、あと…少し