細かい砂粒が風に乗り、
陽炎の揺らめく砂漠、しかし……
クック装備の青年と、デスギア装備の
女性が地底湖にいる。
武器はチーフククリとガノスプレッシャー
「この前はさ、急いでディア狩ったから
全体が分からなかったのよね」
寒っ!とアルトは震える
「珍しいんですか?」
二人がいるのは5番、地底湖になっている
「旧砂漠には二種類あるの、もうひとつは
このエリアが流砂になってて…って…」
アルトはクロフに向き直る。
「この大陸には同じ地形が
無数に有るって事は?」
「知ってます、森と丘だけでも
百ヵ所越えるとか」
本に書かれていた
「そ、無数にあるのよ、
農場作ろうと切り開いたら森と丘とか」
「不思議ですよね?」
「それを調べたりするのも書士隊の
仕事なんだけどねー」
辺りを観察する。
外に出る、中の寒さから一転、
日差しが強くなる、歩きながら話す
「明らかに昔の人の手で
作られた場所もあるしねぇ」
寒かったのだろう、手を擦り合わせる。
「昔の人?」
「旧密林とかに石造りの物があったり、
レンガの残骸があったり、
あぁこの村の密林も多分あるはず」
「何があるんですか?」
「昔の建物の跡、レンガとかの」
「ありましたっけ?」
クロフは首をひねる
「ほら、昼に行ける島の壁」
「えぇっ!?あれ!?」
思い出すが、ただの岩じゃ……?
「もっと土砂の溜まって無い狩場だと、
窓みたいのあったりするんだ、下の方に」
アルトは地面を指差す
「他にも各地に色んな話があってさ」
「水中に都市があるとか、
狩場自体が実験場だとか」
「あぁ塔なんて全部人が造った物だし」
指を一本立ててクルクル回す
「実験場………?」
話が飛躍しすぎて分からない
「モンスターを観察するために
あの島が作られたとかね」
「……想像ではなくて?」
「んー、それに直接関係は無いけど、
過去に文明があったのは確かだよ、
困った事に物証が出てくるんだ」
腕を組みながら
「物証?」
ワクワクする
「『錆びた塊』って聞いたことは?」
「読みました、磨くと凄い武器になるとか」
「錆びた塊が変化するんじゃないんだよ?」
「?」
「古代の武器が錆びてあぁなってるの」
「古代の武器……?」
なんかかっこいい響き
「有名なのは、絶と滅
片手剣使うなら絶一門位は知っておきな」
振り返りニヤリとする
「強いんですか?」
凄いぞこの話!
「アンタが今持ってるのと同じくらい」
「それって弱いんじゃ………?」
ガッカリ…古代って………
「まぁ聞きなさいって、
ランポスは同じくらい何度も
斬らなきゃならないけど、」
間を置く
「リオレイアならその剣の三倍から
四倍の威力になる」
笑いながら
「意味がわかりませんが…」
「覚えておきな、属性ってヤツ」
「絶と滅一門は武器自体が
竜を憎んでるといわれてるんだ」
そんな凄い武器が存在するんだ…
「おー、いたいた」
砂漠の2番 広い場所にヤツらはいた
砂の中を泳ぐ変な竜、
それゆえ砂竜と呼ばれる
全身砂の色で目は見えないらしい。
その代わり聴力が異常に発達しており
砂の上にいる生物を襲う、
大きな翼はヒレのようになり
サメのような頭は左右に広がり、
そこに耳がある。
内蔵のキモが珍味で市場で
高値で売れる。
「知ってる?
本当は青くて綺麗な鱗だってこと」
「はい、前にいたハンターが狩ったやつを
剥ぎ取りましたから」
話していると、
ドザザァァ!!!
巨大な影が飛び出す!
ドスガレオス!!!
通常のガレオスはクックよりも
僅かに小さい位だが、
ドスガレオスはかなりの巨体、
ディアと大して変わらないが、
「体力は少ないからね」
笑いながら弾丸を装填する
「音爆弾はもってる?」
「はい」
「じゃザコは任せるわ」
「ヤツは……アタシの獲物だ」
「え?…キモの納品だから狩らなくても」
「いいの…アイツは見たら全部狩る」
目が鋭くなる
「ヤツは人を食うからね…」
声色まで変わる
キィンと音がする度にガレオス達は
砂から飛び出し、ジタバタもがく
5回位斬るとアッサリ死ぬ
怖いのはクックと同じように
尻尾を振り回し、
ブシュ!!!
砂のブレス、地面から飛び上がり
砂を吹き付ける、目に入ると大変
一方ドスガレオスは
長い脚のために片手剣では
届きにくい体高だが、
潜る度に徹甲榴弾で引き摺り出され
一方的に貫通弾でボロボロになっていく。
そうか…師匠の両親襲ったの…
「数は足りてる?」
「はい、倍以上です」
「囲まれても慌てないのは良いぞ」
「へへ…」
キャンプで装備の砂を落とす、
こんなに砂まみれになるのか
「これだから慣れない武器は…」
と言いながらアルトはボウガンの
砂を出している。
「師匠」
「んー?」
作業に手間取っている
「人と話すって事ですが」
靴の砂を出す
「うん、どうした?」
挟まった砂が取れない
「出来るだけギルドに居るようにして、
村の人と話すようにしてますが、
何か変わったんでしょうか?」
手を止める、じっとクロフを見る
「アンタはまだ子供だなぁ、気付けよ」
「アタシと話したからハンターになる
選択肢が出てきただろ?」
「カダさんと作業したから
大工の才能もあること分かったろ?」
「他にもいっぱいあったはずだよ、
誉められた事とか」
「人生の選択肢が増えたはずだ」
作業は諦めたらしい、ボウガンを置き
腰を伸ばす。
「選択肢…?」
「道具屋も行商人も教えられたりしてない?」
「行商人出来るよ」
おばさんの言葉……
「お前は何がやりたいんだ?」
なぜかおじさんに言われた事が
頭をよぎる。
ただ淡々と………
何も考えず………
そうすれば傷つかない………
そう思っていたはず………
何だか遠い過去のような………
村の人達への恨みは消えてないし
「俺、何がしたいんだろう……」
アルトは凄い勢いで振り返る
「俺ぇぇっ!!!!」
「あ…あの…」
不快だったかな、変だったかな、
俺みたいなのが自分を俺なんて
図々しいかな…………
俺みたいなのが自己主張って………
「クロフが俺ぇぇぇええっっ!!!!!?」
アルトは絶叫する、
ついに出来上がった!クロフの自意識が
出来上がった!!!
自分を認識した!!
自分の社会的位置を認識した!!
この子の時間は動き出した!!!
歩き始めた!!!
クロフには良い環境が出来ている。
成長を邪魔して
足を引っ張るバカがいない、
やること全て否定するヤツもいない、
妬みを持つヤツもいない、
村中の皆がクロフの成長を願う人だけ。
加速するぞ!!中身も19歳まで!!
何故か師匠は上機嫌。
「お帰り?」パティは不審な顔をする
やたらとアルトがニコニコしているからだ
「何かあったの?」
パティはクロフに聞く
クロフはモジモジする
「アッハ!いいこと教えてあげる!!」
『人を知る』
これが楽しいと思えれば
「我が弟子の成長がこんなに嬉しいとはね」
夕方、既にアルトは飲み過ぎている、
「ヤハハ、遂に出ましたか」
村長も顔が赤い、
「あの…俺…って変でした?」
二人がこっちを見る。
「うーん…俺…俺って感じじゃ無いなぁ」
アルトが腕を組み、見ながら言う。
「ヤー、もうちょっと…こう…何か…」
村長も見ている。
「何かが違うと言うか…」
「ヤー、似合ってないというか…」
パティがジョッキを下げに来る、
「お兄ちゃん、髪切ってみたら?」
パティが俺の顔を覗き込んで言う。
「「それだ!!!!」」
ハサミと村に一つしかない鏡が用意される、
何事かとワイワイ村中集まる、
こんな時に限って村の連帯感の
高さが恨めしい。
「え…えぇ?ホントに切るの?」
「任せて!カッコ良くするからぁ」
酔っ払った師匠の手にハサミがある、
オカシイってば!なにその笑顔!
悪い予感しかしないってば!
逃げようとすると
「まーまーまーまー」言いながら
村の人達に座らされる、
皆が笑ってるから…
なんか怒ったらダメな雰囲気…
何よりパティが笑ってるから……
パティが笑ってるなら……安心……?
クロフには冗談と本気の区別なんて
出来ない、
本音と建前の存在さえ知らない、
ようやく言葉を理解した子供と
大差ない。
「にゃにごと?」
白とタマがパティの傍らに来る、
「お兄ちゃんの髪をきるのよ♪」
楽しそうに、
パティ、なんか…ひどくない?
白とタマも注目している、
「あっれー?…あ、ヤバ…まぁいいか…」
ジョキジョキ音がする、
師匠の酷い言葉が出る度に村中が笑う、
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい
「師匠?大丈夫なんですか?」
不安だ不安だ信用できない…
「大丈夫だってば♪まだあるから」
「まだ………まだって何!!!!?」
村中爆笑
「あらあら、アタシが直してあげようか?」
メヒコが言う
「アッハ!お願い!」
「今どうなってるの!?鏡見せてよ!!」
クロフは丸太のイスに座ったまま
鏡を探すが、
「いいからいいから♪」
パティが鏡を持ったまま
見せてくれない。
「クロフは年に3回位しか切らないからねぇ」
「ねぇねぇ普段は誰が切ってんの?」
「この子自分で適当にやっちゃうんだよぉ」
チャキチャキと音がする。
既に足元には取り返しの出来ない
髪の毛が大量だが、どうするのか
「はい、出来たよ」
「ありがとう」
自分でも驚く位すんなりと言葉が出る
「おんや、初めて言ったよこの子」
嬉しそうにクロフの頭を撫でる、
クロフも嫌がらない。
小声で
「ホント成長早そ」
「ヤハハ、親子になれそうです」
鏡を見る、ボサボサの髪がスッキリ短髪に
なった俺がいた。
色の白い、165センチの俺がいた。
「あっれー?アンタ
結構いい男だったんじゃん!!」
アルトが酔っ払って言う。
「街に行ったら結構モテたりしてぇ」
完全にタダの酔っ払いが
パティを見ながら言う。
パティは膨れながら、そっぽを見る、
俺が悪いの? 違うじゃん…
ヤハハ、遂にクロフはジャンボ村の
一員になれた、
ようやくこの村が一つになった、
この村がスタートした、
オイラの仕事は…
もう終わるかなぁ…
交易船が来た
「おお!村長、変わりないか?」
太った色黒の船長が降りてくる
「ヤハハ、船長、あいかわらず貧乏ですよ」
「この前の素材は高く売れたぞ!」
ニコニコしながら
船員と行商人が降りてくる
「えー、姐さん、今日はデスギアかよぉ…」
若い船員がガッカリする
「アッハ!アンタはいっつもソレな、
何? キリン装備でも着ろってか?」
「そうそう、露出の高い…」
「シラフで言う事じゃないよ?」
「うわぁ………」
パティが引く
「いやパティちゃん違うんだよ?
…ロマンと言うものがあって…」
「アンタらが来たって事は、
もう2週間たつのか…」
残り2週間か…
「こんにちは、荷下ろし手伝う?」
船長に若者が聞く。
「おぉ、ウチの船員だけで足りとる…
………ヌシは誰だ?」
「ヤハハ、クロフですよ、道具屋の」
「なんじゃと!!あいつかぁ!!!?」
「まるで別人だぞ、何があった?」
クロフをまじまじと見る、
見た目は髪型だけだが、
纏っている雰囲気が違う。
他の船員も見ている。
この前まではオドオドして常に
挙動不審だった。
今は普通にしている、
何の気負いも、劣等感も感じない。
クロフも自信が出来て
人を怖がらない。
「ヤハハ、ビックリしたでしょう」
「こんな短期間で
こんなに成長するもんかのう」
「アッハ!必要なのは良き師匠よ!」
さて、良いところにきてくれたじゃない、
良い人ばかりじゃ成長しないからね
パティがいるから必ず妬みが始まる、
船員達は気が荒いからねぇ
人生は綺麗事ばかりじゃないしね。
「パティ、何か必要なものある?」
背は少々低いが、割りと良い男が
美人の少女と話してる絵になる。
「必要なのは食べるもの全般、
特に肉と付け合わせのキノコ、
あとの物は村の畑から出せるし…」
「パティちゃん、ここに置くぜ!!」
若い船員がビールの樽を持ってきた
目がキツくなる
若い船員達が絡んでくる
「おい、オメェはさ、何?ハンターなの?
なら話は終わったろ?もう行けよ」
しっしっと手で払う仕草、ハッキリ言って失礼
クロフは怒ることが出来ない、
トラブルとかは苦手そうだが………
さぁどうする?
「お兄ちゃんお願いね!」
「え!?兄貴なの!?」
驚く船員達
あらららこりゃダメだ、
イヤな人間は必ずいるし
慣れなきゃならない問題なのに、
この村はクロフにとって環境良すぎるわ。
いっそケンカにでもなったら
成長するんだけどね
人を知り自分と比べる
その差異で自分を知るんだ
やっと、やっと一人称が書けた
ここまで主人公の造形をボカシ
続けるの、辛かった。
ようやく少し楽に書けます