生きる事は悩むこと   作:天海つづみ

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アルト・フォン・エイダス・アルマ

 

 閃光玉、クックは目を回す

 

 「せいやっ!!!」

 抜刀斬りから回転斬りまで

 流れるように斬った後、

 痺れ罠を置く。

 

 クックの目が回復、連続啄み!!が、

 アッサリ捕獲。

 

 「上出来上出来!」

 アルトをは拍手する

 

 村の人達が回収に来る、クックはロープで

 がんじがらめにされたまま、

 

 「クゥォー」

 

 寝ている。

 

 「捕獲のタイミング、分かりやすくて良いだろ」

 

 「耳閉じたら丁度良いんですね」

 初心者向きという話が今は理解出来る

 

 「クックは基本。

 だから先生なんて呼ぶヤツもいるんだよ」

 

 「先生…俺の先生は村長と師匠だね」

 

 「あー、うん、そうなんだけど」

 この話は早すぎるか?

 

 「違います?」

 

 「うーん、そうなんだけど」

 言っても良いかな

 

 「確かに先生だけどね、

 いっぱい先生居ないか?

 村の人達皆が先生じゃない?」

 

 この子は恨んでる、

 まだ早すぎるか?

 

 「皆が先生?」

 どういうこと?

 

 「良くも悪くも、あんたにモノを

 教えてくれてるってこと、

 影響を与えられたってこと」

 

 「良くも悪くも?…何だか難しい…」

 

 「まぁ気にすんな、何年かしたら

 この話を思い出してくれれば良い」

 

 何年かしたら…もしかしたら何十年も

 掛かるかも知れないけど、

 出会った全ての人に感謝出来たら…

 

 ま、アタシもまだ出来てないけどね…

 

 まだ親から偽善を教えられるべき

 だから…

 

 世の中灰色の話は…まだ早い……

 

 

 帰り道、クックは目を覚ます事はない

 

 「捕獲した後ってどうなるんですか?」

 クロフが聞く

 「おぉ姐さん、俺らも知らねぇんだよ」

 手伝いの村の人達も聞きたいようだ

 

 「王都で買い取ったり

 貴族が買い取ったりするのよ」

 

 「そこからどうなるの?」

 

 「王都の場合は前に話したように

 闘技場だったり、研究用になったり」

 

 「貴族は…バカなこと考えるんだけどさぁ、

 手懐けてみようとするのよ」

 

 「手懐けるぅう!?」

 

 「懐くのか?姐さん!?」

 

 「雛の時は割りと良い感じらしいよ」

 でかくなったら野生に戻る、と続ける。

 

 

 

 「お帰り、お兄ちゃん」

 いつものようにパティが出迎える。

 

 行商人も船員も運ばれて来るクックを

 見るが…

 

 パティとアルト、二人の美人と一緒にいる

 クロフが気に入らない。

 

 何とか絡んでやろうと思うが……

 

 「ヤハハ!!大漁だ!!」

 クックを生け捕り、ファンゴ×5、ランポス×5、

 他にキノコ、薬草類も山のように

 竜車に積んである。

 

 気に入らない、気に入らないが……

 認めざるを得ない。

 

 「クロフ一人でやったから

 アタシは報酬いらないよ?」

 

 

 誰も何も言えない。

 

 アルトは考える

 (まずいなぁ、これじゃ田舎の純朴な子で

 止まるぞ、もっと色んな人と

 話す機会が必要だよなぁ)

 

 村長は村から出すの反対だろう、

 この村にいて欲しいだろうし

 

 

 

 

 

 毎日の決まりになったギルドの飲み。

 

 今日は船乗りと行商人も混ざる、

 

 「人が怖く無くなったようだの」

 船長に話し掛けられる

 

 「はい、何であぁだったのか

 よく分からないんです」

 普通に答えられる

 

 「理由は様々だがの」

 

 「そういえば、前の時、

 お前みたいなのはいっぱい居るって」

 

 「おぉ、船乗りで色々な所に行くとな、

 人と話せないヤツがいるんじゃ」

 戦災孤児とか親を無くした子供とかな

 

 覚えがある、あるが……

 アルトを見る、アルトは気にせず飲んでいる

 

 「あの師匠」

 怒るかな、怒るよね…

 

 「何?」

 

 「師匠の両親って…」

 怒らないで…

 

 「聞きたい?」

 ジョッキを置く

 

 「はい」

 

 

 

 「じゃ奢りな、人に話を聞きたいなら

 ソレくらいはしなさい、

 それにアタシもあんまり

 話したい内容じゃないからね」

 

 

 

 

 これもクロフの勉強になるなら

 

 

 

 ジョッキ片手に語りだす

 「シラフじゃ話せないからね」

 

 周りに全員が集まる

 

 

 

 アタシの生まれは王都のアルマ家、

 俗に言うお嬢様だった

 

 小さい時から勉強ばっかりでさ、

 将来はどっかの貴族といずれ

 結婚することになってた

 

 「何歳で?」

 船乗りが聞く

 

 9歳だよ、祖母が下流貴族の人でさ、

 上昇志向っての? 凄い強くて

 だから初めて父の商売の勉強で

 外に出た時は嬉しかった

 

 「何の商売?」

 行商人達

 

 ドンドルマ市場との提携と王都との

 流通の相場変動の調整、

 平たく言えば通商契約

 

 「何か難しい」

 俺には分からない、道具屋でも

 

 まぁ面倒な話だからアルマの息子、

 アタシの父が直接行ったわけ、

 

 「あんた直系の孫なのか?」

 船長が聞く

 

 

 ビールを飲みながら

 

 「そうだよ」

 

 父、母、アタシ、使用人の20人と

 護衛が20人でドンドルマに出発したんだよ

 

 「凄い数だな、何で移動するんだ竜車か?」

 

 「いや馬車だよ」

 

 「馬ってやつか」

 馬ってなに?

 ちょっとケルビに似た動物だ、

 王都周辺にしかいなくて

 凄い高価らしいぜ

 ワイワイと周りが騒ぐ

 

 「そ。それで移動してたのよ」

 

 護衛の隊長がカッコ良くてさ、

 立派なヒゲがあって…

 

 アルマ家に取り入りたい貴族が張り込んで

 用意したもんだから、

 やたら豪華な商隊だった

 

 何事もなくドンドルマまで着く直前、

 時間短縮のために砂漠を突っ切る道を

 選んだの

 

 「何のために?」

 

 それは後、その砂漠で事件は起きた

 

 「ドスガレオス」

 クロフが呟く、皆が見る

 

 「そう、ガレオスの群れに襲われた」

 

 護衛の実力なんて実戦になってみないと

 分からないもんよ

 

 ビールを一口飲む

 

 後から聞いたらほとんど王都育ちの

 兵士でさ、ガレオス初めて見たような連中

 

 「なんだよソレ、ハンターの

 経験者じゃないのかよ」

 若い船乗りが態度悪く言う

 

 「まぁ今のアタシなら分かる事だけど、

 まず馬車で砂漠なんか入ったらさ」

 

 「まぁ動きにくいわな」

 竜車でディアの素材を運んだカダが言う

 

 そう、なすすべなく次々喰われて行ったよ

 アタシはその地獄の中で

 たった一人生き残った

 

 「どうやって」

 

 

 「それは………」

 

 「辛いんでしたら…」

 村長が言い淀む

 

 

 

 

 

 

 「うん、ちょっと………これはキツい」

 アルトが目を覆う、初めて見る

 

 

 

 

 

 

 

 「ゴメンその辺りは…………」

 とにかくアタシだけ生き残った、

 足元に商材のドリンク類があったために、

 砂漠の暑さ寒さに耐えられたんだ

 

 「辛かったですね」

 師匠は俺と同じように、子供の頃にキズを

 

 聞いていい話じゃ無かった、

 今は区別できる、

 バカなことをした。

 

 

 

 

 

 師匠は顔を拭き

 「続きを聞きたい?」

 

 クロフは頷く、なぜだろう

 聞かなきゃならない気がする、

 まさかこの先まで話して貰えると

 思わなかった。

 

 そこにドンドルマから救援が来た

 三人のハンター

 

 「どうやって」

 周りの連中が聞く

 

 護衛の一人が片足失いながら街道まで出て

 行商人に助けを頼んだらしいの

 

 すぐって訳には行かなくて

 アタシは丸2日、砂漠に立ち続けたらしい

 

 「らしい?」

 

 到着したときそうだったらしいのよ

 アタシは覚えてないんだけど

 

 「ヤー、当然極限状態でしょう、

 誰が教えてくれたんですか?」

 

 「父ちゃん達」

 

 「父ちゃん?父ちゃんはさっき…」

 

 「あぁドンドルマの父ちゃんと兄貴達よ」

 

 「父ちゃんと兄貴?」

 

 「血は繋がってないアタシの家族

 ガストンとゼルド兄貴とガルダ兄貴」

 

 

 

 「なぁーーあああああにいいぃーー!!!!?」

 一斉に周りが叫ぶ!

 

 四大英雄であり現四英雄のガストン!!!!?

 ドンドルマ専属の化け物兄弟ィィ!!!!!?

 赤鬼青鬼じゃねぇか!!!

 

 嘘だろ!!あんたはあの人達に家族として

 認められてんのか!!!!

 

 行商人達がお前見たことあるか!?

 ある!ない!とはなしている

 

 またワイワイ騒ぐ

 

 

 とにかく助けられたは良いけどアタシは

 意識を無くしてドンドルマの

 父ちゃんの家に寝かされたの

 

 町長の奥さんが看病してくれたらしいんだ

 で、アタシが意識を取り戻した時、

 全部終わってた

 

 「終わってた?」

 

 助けを呼んだ兵士は死んで、

 アタシは言葉を無くした

 

 「喋れない……」

 

 そう、精神的なものらしいんだけど

 だから自分のことを喋れなくて

 身元がハッキリしなかった

 このままだと孤児になってた

 

 なるほど、と村長は頷く

 

 

 「そんなことないじゃろ、

 アルマ家が探すはずだ」

 船長が髭を弄りながら聞く

 

 そこだよ、どうしても許せないんだ、

 さっきの隊長だよ

 

 「隊長………?」

 

 あいつが砂漠の横断を提案したの、

 で、ガレオスに襲われた時、

 真っ先に逃げ出したのよ

 

 「ひでぇ……」

 

 そして王都に戻って商隊全滅の報告をした

 

 「なんだよそれ!!」

 「ひでぇよ酷すぎる!!!」

 船乗り達が怒り出す

 

 アルマ家ではアタシも死んだことに

 なってたからね、探さなかった

 

 目を覚ましてから父ちゃんの家で

 家事やってさ、アルマ家からの

 連絡を待ってた訳よ

 

 じいちゃん……あぁギルドマスターが

 手紙出してさ、孫は生きてるって

 

 「それなら…」

 

 それがうまくいかないんだよ、

 何度出しても返事が来ない

 

 「なんで?」

 

 偽者だと思われたのよ、

 全滅したのを良いことに、

 誰かがなりすまそうとしてるって

 

 奇跡的に生きてるなんて誰が信じる…

 

 「ツラいな……」

 

 まぁね、家事をしてたんだけど料理の腕を

 買われてさ、すぐにギルドで料理を

 出すようになったんだ

 

 「それであの手際の良さ」

 パティが納得する

 

 そう、所属してるハンターだけで500人位

 いる大所帯だからね、

 ドンドルマで可愛がられたよ、娘だ妹だって、

 年下の子達からは姉ってね

 

 一年位したあとだ、アルマ家の使いが

 偶然買い出しにドンドルマ歩いてた

 アタシを見つけて……

 

 「大騒ぎ…?」

 

 まぁそうだね、直ぐにアルマ家に連絡が

 行ってさホントのじいちゃんとばあちゃんが

 馬車で飛んできた

 

 「それで帰った?」

 

 ジョッキのビールを飲み干す

 

 

 いいや、父ちゃん……ガストンの

 腕を掴んで放さなかった

 

 

 「なんで?」

 

 なんでだろうな、ばあちゃんに掴まれて

 引っ張られても、

 アタシは父ちゃんを掴んでた

 

 そしたらギルドマスターがさ、

 もう少しギルドで預かるって言ってくれて

 

 「引き下がるか?」

 

 下がらないよ、睨み合いになった

 

 百人を越える、良く言えば一流ハンター、

 悪く言えば山賊と睨み合う

 アルマ家のばあちゃん

 

 

 そこに……アルマじいちゃんが馬車から

 出てきてギルドマスターと話をつけたの

 

 「どうやって」

 

 旧知の仲だったの、後から聞いたら

 アルマじいちゃんはドンドルマの

 最初の人なのよこれが

 

 師匠の顔がようやく普段に近づく

 

 「どういう………?」

 

 あの岩山で水源見付けて、15の時に

 水売りから商売始めた人なの。

 

 「なんと!!」

 

 

 

 で、アタシは結局ドンドルマで雇われる

 ことになって、筆談で状況を説明したの、

 何が起こったのか書いて

 

 そしたらさ、アルマ家は調べ始めた

 

 「何を?」

 

 なんで隊長は虚偽の報告をしたか

 なんで砂漠を横断したか

 

 「そういやそうだ、なぜ?」

 

 横断したのは恩を売るため

 

 「そういうことか!!」

 

 周りはすぐに理解するが、

 クロフだけ理解できてない顔

 

 それを見るとアルトは説明を始める

 

 そう、適当にゲネポス辺りを倒せば

 アルマ家に恩が売れる、

 そう考えた

 

 このまま何も起きずにドンドルマに

 着いたら手柄がない

 

 しかし思惑は外れてガレオスの

 大きな群れが来た、予想を上回る

 ドスガレオスのオマケ付きで

 

 太刀打ち出来ない事を知っていた

 素人集団だから

 

 で、一人で逃げ出した、

 馬車が全部引っくり返るのを

 遠くから見て当然全滅したと思った

 

 

 さらに護衛を用意した貴族に

 調べが及ぶと

 恩を売れと指示したのは貴族自身

 

 しかも王都の兵と偽って出した護衛は

 自分の私兵

 

 「最低だ……」

 

 アルマ家の財力を味方に付けて

 出世しようと目論んだ

 

 見事に失敗した上にさ

 

 「上に?」

 

 自分の私兵を王都の兵と言った上に全滅、

 つまり王家に恥じをかかせた。

 

 「どうなった?」

 

 前王の怒りは凄まじかったよ

 王家に泥を塗った上に

 アルマ家の跡取りを死なせたんだ

 

 アルマ家は王都にとっても

 重要な存在だった

 

 隊長と貴族、その家族まで

 全員首をはねられたよ

 

 「んでアルマ家に戻った?」

 

 「いやーそれがさ……」

 師匠は照れたように頭を掻く

 

 「何度も迎えが来たんだけどアタシは

 拒否を続けて、12歳の時に…」

 

 話辛い…訳ではないみたいだ、

 顔がニヤケてる

 

 「なんだなんだ?」

 

 「アタシの声がようやく出たんだよ」

 

 「おぉ良かったじゃねぇか」

 

 「…それがさ…」

 

 なぜかアルトは照れている

 

 皆が見る

 

 

 

 

 

 「数年ぶりに出た言葉が『カタキ取る』だよ」

 

 「えぇえー??」

 

 お嬢様から出る言葉じゃあないわよね

 だけどね、その言葉を聞いたら父ちゃん達は

 「良く言ったぞ!!気に入った!!

 俺が鍛えてやる!!!!」

 

 ばあちゃんは怒ってさ

 「アルマ家の大事な一人娘を

 こんな連中の所に置けるかぁぁ!!!」

 

 「こんな所とはどういう意味だババァ!!!」

 

 「チンピラの溜まり場だろうが!!!」

 

 

 

 

 「すげぇな、ばあさん引かねぇな………」

 

 「気丈な人でさ…………」

 

 またギルドマスターとアルマじいちゃんの

 話し合いで、ギルドでハンター修行よ

 

 今思えば、恨む相手が首斬られて…

 いなくなったから…ドスガレオスに

 八つ当たりしたかったのよね…きっと

 

 「大変だったろ、お嬢様からハンターって」

 

 「そうね、修行で何度も死にかけたわ」

 笑いながら

 

 笑うところですか、クロフは思う

 

 「ま、こうなるわな」

 アルトは腕を捲る、俺より太い腕には

 無数の傷痕がある

 

 「そうしてアタシが出来たわけ」

 

 「アタシの話はこんなとこだよ」

 

 クロフの顔を見る、後悔しているのか

 複雑な表情、

 

 アタシに辛い話をさせたことを

 悔いているのか

 

 アタシに気遣いできたのか

 

 これが少しでも成長に繋がって

 くれれば安いもんだよ、クロフ

 

 

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