人生で大事な言葉
ありがとうと、ごめんなさい
今は………
「ごめんなさい」
クロフは頭を深々と下げる
子供の頃に食べ物を貰うために
下げたことが一瞬頭を過る
「嫌な話させて…」
師匠に辛い話をさせた
「いいさ、まだ笑い話には出来ないけど、
アンタが色々考えるキッカケになるならね」
「スゲェ話だったよ…」
全員が溜め息を吐く
「そこから頑張ってG級までいったんじゃな」
船長が飲みながら聞く
「途中で辞めようと思わなかった?」
女達が聞く
「あー、外の世界の広さが楽しいって
気付いてさ、アルマ家では外に出ずに
勉強ばっかりだったし」
クロフの部屋を思い出す
あぁ、そうか、似てたんだ
「師匠…」
「ん?」
「また聞いて良い?」
「話によるかな…」
ジョッキをクロフに向ける
「修行って?」
「おぉ聞きたいぞ!!」
周りが囃す
「一言でいうなら」
腕を組む
「言うならぁ?」
一同の声が揃う
「拷問」
「はぁ???」
皆が変な声を出す
「やって見せた方が早いか」
言うと
「クロフ、ちょっとソコに立って盾、構えな」
クロフは言われた通りにする
「しっかり踏ん張れ、行くぞ」
え?なに?なにすんの?
師匠の左足が一瞬上がり踏み込んだ瞬間
「ドガ!!!!」 右回し蹴り!!!
堪らず吹っ飛ぶ!!
ゴロゴロ転がって止まる
クックの尻尾並だぞこれ…
身体ごと持っていかれた…
前にもやった…なぜまた……
「大丈夫!?」
すぐにパティが駆け寄っていく
助け起こそうとする
これだ…パティは母親、
それなら子供を守ろうとする、
それだけじゃ駄目なんだ
だからアタシは父親に…
アルトがパティを怒鳴ろうとした瞬間
「パティ!!助けるな!!!」
全員が固まるほどの迫力
ヨシさん…
そうか、この人…多分…元戦士?…
そしてクロフの父親になりたかった…?
「パティ、いいんだ、一人で立てる」
クロフは立ち上がる
この村には同年の男がいない、
友達もいない、ライバルがいない
クロフはまだ歩き始めた赤ん坊、
村は全員で守ってしまう
ならば父親が身近な敵になるしかないか?
パティはオロオロする
アルトとヨシ以外は
村中がどうしていいか分からない
「クロフ、今ので何を学んだ?」
師匠が聞く
クックの時もそうだった、師匠は体験
させてるんだ、
分かる!!!
身体で覚えるってこと!!!
「力に対してまともに受けたら無理
っていうか…」
「良い答えだ、じゃあどうする?」
「もう一度お願いします!」
笑顔で
「構えな!」
こちらも笑う
左足が上がる
「ガシュッ!!…」
盾に当たる寸前身を低くし、
盾を頭に被る様にする、
アルトは脚を上に逸らされ
バランスを崩しよろける。
体勢を崩されたアルト、
反撃する余裕ができたクロフ
素人目にも理解できる状況。
「おぉーーー!!」
一同から声が上がる、納得出来た
「正解だよクロフ!!!」
頭をグリグリ撫でる
「力を避ける、逸らす、まともに受けない、
その連続だよ、これが修行!
アタシが最初にやった訓練!!」
イスに戻りビールをおかわり
「ほとんど拷問だよ、一回食らわせては
どうだったか聞かれるのよ」
飲みながら
「しかも12の小娘に!!」
師匠の話が始まる
「モンスターと体力で張り合える訳ないから
とにかく逸らすのよ、12の子供が
生き残れるように叩き込まれたんだ」
「ヤー、モンスター相手にそんな神業
みたいなこと…」
「逆よ、モンスター相手だから神業でも
やらないと生き残れない」
ビールを飲む
「盾の使い方を…」
盾になぜ丸みがあるのか分かった
「いんや、違うよ」
ジョッキを置く
「え?だって今…」
「アンタは片手剣だから教えたんだよ」
「え!?じゃ師匠はどうやって!!?」
「防具だけ着させられて、
クックの前に放り出された、武器無しで」
「ええーーーっ!!!!」
全員があきれる
「二人の兄貴が一緒でさ、
やって見せるわけよ」
腕を左右へ、そこから流れる様にうごかす
「尻尾、脚、嘴…ブレス以外の全ての攻撃を
食らって、痛みをおぼえて、逸らし方を
身に付けた」
クロフを見る
「そうすると自然にどう動けば良いか
理解できるようになる」
「クックは人は喰わないからね、
割りと安全な方なのよ」
クック相手にノーダメージの
理由はそれか!
「父ちゃんはさ、とにかく体験主義っての?
全モンスターの全攻撃を全て食らって
覚えて避けられるようにしろっていうわけ」
「攻撃範囲、予備動作、
攻撃後の隙の勉強しろってね」
「死んじゃわない?」
パティが聞く
「昔はホントに死んでたそうだよ、
でも今は誰も死なない」
「何でさ」
船乗り達
「その為に猫タク作ったのよ、
その為のギルドの仕組みなんだよ」
村の勇者は負ければ死ぬ
ギルドのハンターは負けても学べる
そうかそれでギルドが
作られたのか
ハンターが死なない仕組み
それがギルドか
「あ、一人この訓練の達人がいてさ
ナナキっての知ってる人いる?」
誰もしらない
「あれぇ? アイツはポッケ村の出身だし、
一人位いない?」
「ヤハハ、誰も知らないようです…」
「ま、いいわ、そいつは一回見た攻撃を
全部覚えちゃうやつなんだけど…」
「全モンスターの!?」
「そ。全部」
凄い
「頭も半端ないんだよ」
アルトは自分の頭を指でトントンする
「リオレウス程度なら防具着ないし」
「はぁああ!!!!???」
全員が叫ぶ
リオレウスってあれだろ
デカイ空飛ぶヤツ
火を吐くバケモノ
みんなざわつくが
「全部避けられるなら必要ないわけよ」
一口飲む
「何者ですか?」
凄い、師匠と並ぶほどの…
「現役ハンターの頂点、トップ、四英雄の
中でも最強」
「おぉーーーー!!!!」
伝説のガストン以上!?
現役最強かよ
化けもんだ化けもん
「天才ってヤツよ、
あっという間に追い越された」
「どのくらいで?」
「ハンター初めて2年で四英雄になった」
「なんだよそれぇ!!!」
一同驚愕
パティに向かって
「同時に………………変態」
「ええっ!!」
パティは後退り
「どういう訳か知らないけど、
お尻が大好きなんだよ、
この村来たら間違いなく狙われる」
「何でぇ!!?」
パティは反射敵に後ろを押さえる
「なんだか知らないけど大好きでさ、
アタシも一回触られた」
「姐さんは…?」
「もちろんブン殴った」
握り拳を作る
村中笑う、グーですか!
「その上さ、『筋肉ばっかりで男みたいだ』
って言うからもう一発」
大爆笑
喧騒が過ぎ今日は村長、船長、
アルトの3人だけ
「ヤハハ、面白かったです」
村長がビールを持ってくる
「おぉ、まったくじゃ」
髭を弄りながら船長が飲む
「二人ともナナキのこと知ってるだろ、
反応しなかったのは」
「ヤハハ、そりゃあ…」
「気を使わせたわね、アイツの話は
ポッケの全滅の話に繋がる…」
口を滑らせた
「おぅ、せっかくの場の雰囲気に
あの話はの…」
「で、話は変わるけど、クロフどう思う?」
「ヤハハ、言いたいことは分かります
外に興味が出てますよね」
「気付いてたか…」
「ワシの船で出るかの?」
「ヤー、この辺りの村では
満足出来ないかな…」
「ここの地理は知ってるけど東に一つ
そこから北に四つの村があって
一番北にポッケ村よね」
空を見ながら指をクルクル回す
「合ってますよ」
「でもここと変わらない田舎だよね」
指を一本立てる
「そうですね」
村長は腕組みして俯く
「どうせならさ…」
「デカイところが良いじゃろうの」
船長が南西を指差す
パティも一度、船にのって大陸の南の町で
ギルドマネージャーの研修をしに行った
今度はクロフ、
しかしハンターは危険な仕事だ
アルトは分かり安く死なないと言ったが
ギルドでは『死なない』のではなく
『死ににくい』だけだ
次期村長候補を失うリスクがある
「ヤー、クロフの意思を尊重するべき…
ですよね?」
「一般常識と世相に合わせるならね」
「成長を願うならリスクを取らねばの」
「うーん…」
考え込む村長
あと2週間でアタシは王都に帰らなきゃならない
クロフはどうしたいか…
次の日
アルトとクロフは隣村まで
半日かけて来た
「うわぁ怖い装備!」
「男じゃないぞ!」
「アッハ!そうよ!お姉さんよん」
子供達が寄ってくる
「良く来てくれました」
セメク村の村長が挨拶に来る
「ジャンボ村にいたハンターって
ここに来てるんじゃないの?」
「彼らなら北のポッケ村まで移動
しながら活動すると言って…」
「それで一番近くのアタシらに
依頼出したのか」
「旧密林のフルフルを倒して貰いたい」
村長は頭を下げる、
この村にはギルドスタッフが居ないようだ、
全部まだ若いこの村長がやるらしい
「了解だよ、さぁクロフ どうする?」
「午後から旧密林の採取に行きたいです」
「それはなぜ?」
「地形の把握と使える物の採れる
場所の確認しないと」
頭をグリグリ撫でる、
実力がつき自信が付くと、調子に乗るヤツ
がいる、そういうヤツは痛い目を
見せないと命を落とす
クロフは臆病だ、
それはハンターにとって長所になる、
調子に乗って態度が悪くもならない
ま、それはそれで詰まらなくも
有るけどね
これが旧密林…
獣道から崖沿いを歩くとキャンプに着いた
北側の崖の向こうには滝が、
南側には高台が見える。
早速行こうとすると
「ちょっとこっちおいで」
師匠に呼ばれ2番の方へ
「これは………門?」
「ね、こういう遺物が有るわけ、
キャンプにもレンガあったろ?」
南を指差し
「もっと奥の高台、6番にも遺物が有るんだ」
「来たことあるの?」
「無いよ、でも分かる、他もそうだから」
「………師匠」
「ん?」
「王立書士隊ってどうやったらなれるの?」
うっわ………この子………
「なりたいの?」
「良く分からないけど色んな所の…」
門を指差し
「こういうの……見たい……」
やりたい事が出来たのか
「あんたの歳から学校行くのはなぁ…」
「学校…って何?」
「5歳位の子供と一緒に読み書きできる?」
「え?…それは…なんか…でも師匠は?」
「アタシはほら、ハンターから入った
訳だし……他にもいるよ、
実戦部隊って呼ばれてるけど」
「実戦部隊?」
「隊内の通名だけどね、
モンスターを実際狩って調査するほう」
「それになるには?」
やる気かこの子?
「最低上位ハンターになること」
「じゃハンターやれば…」
「あぁ上位検定クエスト成功すれば、
推薦して貰える」
「検定クエスト?出来る所って?」
「管轄内に上位の狩場持ってる所よ」
こりゃ村出るぞ
「それは…どこ?」
「なぁ…クロフ…一緒にドンドルマ
行ってみる?」
夜、村のハンター小屋に泊まる
見た目はジャンボ村のと変わらないが、
匂いが違うのと、隣の師匠と普通に話せる
ほど壁が薄い点が違う。
敷き布も埃っぽい匂い、
食事に至っては村の人の手作り、
なぜかジャンボ村が恋しくなってきた
「師匠」
「んぁ…あ?」
寝ていたようだ
「ギルドに…スタッフ居ないと変ですね」
「パティが恋しいのぉ?」
ニヤケている師匠が目に浮かぶ
「違います」
ホンとは…そうかも
「珍しくないよ、田舎は皆こうだ」
「そうなんだ、なぜギルドガールって?」
「別の機会に教えるよ、もう寝な」
まだ腹が減っている、ジャンボ村では
腹一杯食べていた
誰が作ってくれた?
………おばさん………
敷き布は埃っぽく無くて、
太陽の匂いがいつもしていた
あぁ…恵まれていたんだ…幸せだったんだ
今…ようやく気づいた
恨んでいた……今も恨んでるはず……
……だけど
ジャンボ村の皆は?
怒られた記憶ばかりだが、
……同じ位誉められた……
そうだ
誉められていた!!
なぜ厳しかったか
「何を学んだ?」師匠の言葉、
恨みで一杯では気付かない
気付けない
生きて行けるように……
最初は違っていた、村中から敵意を感じた
でも何時からか無くなってたんだ
「アンタは立ち止まってるのよ」この意味
生きて行けるように
一人前に生きて行けるように
ずっと教えられていたんだ………
俺は………-バカだ………