バチィッ!!!
「くあっ!!」
バシャッと冷たい水に倒れる
普通は目が覚めそうなもんだが意識が…
「そらっ!」
アルトが背中を蹴った
「ぐっ……!」
立ち上がる
何なんだこのフルフルってヤツは!
電気ってマヒするのか!
「ボォーウ………ホッハ」
鳴き声が変
見た目はもっと変!
一応飛竜らしく翼はある、
鱗がない、毛もない、
ブヨブヨの皮、真っ白な体色
目が無いためミミズのような頭
ズングリとした体、吸盤のような尻尾
真っ赤な口には尖った歯がズラリ
しかも…天井に張り付き動き回る
竜と言うより別の生き物では?
そして何といっても
「ギュアアアァアァアア!!!!!」
「ぐああ!」
この咆哮!!耳から首のほうまで響く、
腹に響く低音と違い
物凄い高音
しかも洞窟内で反響する
後ろに回り込みながら斬るが
フルフルがしゃがむ!
「クロフ!!」
急いで距離を取る
バチバチとフルフルの周囲に青白い光が走る
師匠は構わず貫通弾を撃つが…
俺は攻撃出来ない、踏み込むと短いながら
尻尾の振り回しもやる
「一度外に出ます!」
堪らずアルトに声をかけ奥の6番へ
「やりずらいです!」
「アッハ!だろうな」
「何か攻撃する間が無いっていうか
隙がないですよ」
一応剣を研ぐ、柔らかそうなのに
切れ味は消耗する
回復薬も半分になった。
「アタシも前から言ってるんだけどね、
フルフルの危険度上げろって」
「危険度…たしかクックより上ですけど
それほど高く無いですよね」
「アタシはリオレイアと同じ位だと
個人的には思うのよ」
「ええっ!そんなに!?」
「だけどガンナーやって分かったわ、
ただの的だわ、楽だ」
剣士だと辛いってことね。
あ…あれですか…
クロフは指差す
6番の奥に一段高い場所がある、石造り
のようだ
隣の崖下エリアの7番を見下ろせる
「これって………」
「まるで7番の 『何か』 を観察するのに
最適だと思うだろ?」
不思議だ、古代って………あれ?
「古代の文明って滅んだんですよね?」
「そうだよ?どうした?」
「どうして滅んだの?」
「それも調べる訳よ」
そりゃそうだ。
隣の7番へ飛び降りる、怪我はしない
…………しない
ペイントの匂いを追って8番へ
丸く開けた不思議な空間、足首まで
水があり小さな生物が逃げ回る
居た…ボーッとしている…
急にスンスン鼻を鳴らし…
「ギュアアアァアァアア!!!!」
「………っこのぉ!!」
思いっきり斬り着ける、
尻尾が回る、盾で逸らす、多少無理しないと
全くダメージ与えられない、
師匠はもうボウガンを仕舞って傍観
している
つまり……
決着が近い証拠!
足元をブレスが地を這うように
水面を滑って行く。
回避!斬れる!走り込む!しかし…
首がありえない位に伸び食らい付く
歯が鋭い
焦っちゃダメだ、だけど
潜り込んで首に斬り上げ!
出血!しかししゃがむと放電
ダメージ!回復薬グレートが…もうない!
武器を仕舞い歩きながら調合!
嘘でしょこの子!!戦いながら調合って!
上位でも出来ないヤツがいるのに!
決して嘗めてる訳じゃない、
家業だから手慣れてるだけだ、
……が…凄いぞクロフ!……え?
調合は出来たが至近距離で飲んでしまう
「うっわバカ!!!」
バチィッ!!!
ドザァ!!!ガラガラガラ……
「いっだぁ!!!」
……キャンプか………
焦ってミスした、勿体ない
厄介だ、盾で逸らせない攻撃…
音の攻撃か…
急いでペイントボールの匂いを辿る、
一番奥の10番、
ホットドリンクを飲み………
「来たか」
「え?何これ!」
天井からブラ下がって寝ている
「師匠…あれ…竜なんですか?」
「一応翼あるしな、
でも意見は別れてるんだ」
じゃあ落とすぞ、と徹甲榴弾を撃つ
「ボテ…」
そんな表現がピッタリの落ちかた
立ち上がる前に抜刀斬り、2回斬って
ガード!!!
「ギュアアアァアァアア!!!!」
ビリビリと洞窟内に響く、
足元に走り込んで斬り上げ!
放電、離れて終わり際に抜刀斬り
回転斬り、尻尾をかわして飛び込み
首を下から!
浅い水面にバシャアアと横倒しになり、
動かなくなった
「勝ったの?」
ゼイゼイと息をする
「そう、良くやった!飛竜にアンタの得意な
前転回避からの斬り上げは有効だ、
足元は攻撃されにくいからね、
ただこいつは全方位攻撃出来るんだ」
相性が悪かったね、と付け加える、
ガンナーなら楽みたいだし
「これが電気…」
「厄介だよ」
「本と全然違う…」
セメク村に戻る、報酬にも皮を貰う、
「いやぁ、良くやってくれました、
ジャンボ村はいいですね、
こんなに強いハンターが来て」
「いや、アタシはともかくクロフは…」
「ええっ!クロフって…
お前道具屋のクロフなのか!?」
どうやら知っているらしい
「アッハ!村長 元行商人?」
「はい、それに最近行商人の間で
名前が出るんですよ」
別人に思われたようだ
隣村の住人も驚く、クロフは照れる
「すげぇ!あんちゃんが狩ったの?」
「うわ!気持ちワリィなフルフルって」
運ばれてきたフルフルを
子供達がツツイている
帰路に着く、クロフは照れっぱなし
「今から帰ると夜だな、まぁゆっくり
帰ろう」
「もしかしてフルフルの防具って…あったり
します…?」
「アッハ!もちろん!」
「うわー嫌だ!」
ブルブル震える
こんな気持ち悪い素材を体に着るのか
「便利なんだよ、耳栓付いてるし」
「耳栓?」
「あの声を軽減出来るんだ」
防具には属性の他にスキルがある
「ねぇ師匠?」
「んー?」
「変な質問していい?」
「何?」
「俺ってドコのダレだろう…」
確認したいんだな…自分を
自分の存在を。
「ジャンボ村のクロフだよ♪」
「不思議です、誰かと一緒に居ると、
何か話さなければいけないような
気になるんですが…」
「間が持たないってか?」
「はい、でも何話して良いか
分からないんです」
「アタシとはハンターの話が出来るだろ?
ヨシさんは道具、カダさんは大工、
村長はギルドの話が出来るだろ?
アンタは話題が豊富なはずだよ?
色々頑張って来たんだから」
「何にもないと思ってた…
ずっとバカだと思われてると…」
「共通の話題があれば良いわけよ」
「無かったら?」
「あんたの自分の事とか…」
「自分?」
「今日何した、誰と会ってこんなこと話した、
こんなことやった、何でもあるよ」
「難しい」
「アタシだって初対面の人と話す時は
それなりに緊張してんだよ?」
「ええっ!!師匠も!?」
対人恐怖症?被害妄想?
「努力した人は話題もあるのよ、自信持ちな、
誰もアンタをバカにしないから」
「お帰り、お兄ちゃん」
恒例の全身チェック
「なんか毛が焦げてる」
「ええっ!嘘!」
なんだかジョリジョリしてる
電気って火じゃないのに…なんで?
「疲れたでしょ?何か作る?」
お帰り!と村の人達が迎えてくれる
ちょっと戸惑うが
「ただいま!」
ハッキリ言う、言える。
「ヤハハ、フルフルはどうだった?」
「キツかったです」
耳を塞ぐ格好をする
「あの、おじさん、おばさん」
「何だ?」
ヨシが目尻のシワを深くする
「今日は…道具屋に泊まっていい?」
「何言ってんだいこの子は、自分の家だろ
当然じゃないか」
メヒコが呆れたように言う。
走って道具屋の自分の部屋へ、
いつもの匂い、敷き布の匂い、
幸せだったんだ、ここにいていいんだ、
ここが帰る場所なんだ。
初めて外に出て分かった、
この村の価値が、この部屋の価値が
ここが好きなんだ…
「交易船は行っちゃったのか」
アルトはキョロキョロする
「ヤハハ、今回は取引が少ないですし
でもクックの生け捕りで取引額は
大きいですが」
顔を見る限り上手くいったようだ。
村の匂い、道具屋の匂い、敷き布の匂い
セメク村の匂い………は何か違う
フルフル………実際は
また本を抱える
本では学べない。
体験出来ない。
電気ってビリビリする…なんて。
実際は痛い!痙攣するマヒする!
耳にはブーンと音がする
ギルドに持って行くと
「アッハ!恒例の焚き火か」
村人達にフルフルの話をしたあと
火を着ける
「師匠、本って…役に立たないの?」
「いやぁ…あー、全く役に立たない
訳じゃなくてさ」
上手く説明できない
「ヤハハ、先ずは情報だよ」
「情報?」
「例えば今回のフルフルの電気、
事前に知っていたよね」
「実際はぜんぜん違う感じでしたよ?」
「ヤ、でも『何かある』って事は知っていた」
そうだ、それは確かだ
納得した顔をすると
「二つめは頭の整理」
キョトンとする、全く理解出来ない
「体験した事柄を整理するヒントがある、
頭の中に種類別、
段落別に整頓する本棚を作る
練習になる」
「アッハ!そうか思考の部屋とか宮殿とかだ、
部屋ごとに考えを分けるって
読んだことあるわ」
「三つめは…暇潰し」
「ええっ!暇潰し…」
「そう、読むこと自体を楽しむため、
オイラの経験からだとこれが本かな」
情報、整理、暇潰し…
「アッハ!ごちゃごちゃ考えないで良いじゃん」
飲みながら
「『百聞は一見にしかず』、知ってるでしょ?」
「はい、聞くより一回見たほうが分かる…
あ、そうか、本って」
「そう!『聞く』なんだよ、もしくは聞く以下」
「以下?」
「こっちの意見は言えないし、
反応がないじゃん」
そうなんだ。
「物を知るには本を読めって…」
「じゃあ良い言葉教えてあげる、
父ちゃんの言葉」
『体験に勝る経験無し』
『体験のみが経験になる』
「体験主義者らしい言葉だけど、体験して
初めて理解出来るって事」
クロフは俯きながら
「人と関わらなければ、話さなければ
傷つく事は無い、
だから何も考えない様にしてた、
でもそれじゃ何も分からなかった」
アルトが(お前のせいだ)と言う目で
村長を見る
村長は首を竦める
「でも知りたい気持ちはあった…
だから本を…」
グッと拳を握り
「考えなければ…」
「アッハ!矛盾してるわ」
「矛盾………?」
考える、周りは静寂につつまれる、
篝火の薪がパチパチと燃える音のみ
クロフはハッと顔を上げる
「そうか!
傷つきたくないは、成長しない(したくない)
本を読むは、成長したい」
「そうだよ」
アルトは立ち上がりクロフの前に立つ
「アンタは立ち止まってるって言ったの
覚えてる?」
「はい」
「この例えで良いか分からないけど、
世の中は船だ、止まってないんだ、
みんな流れのなかに居るんだ。」
周りを見る、村人達を見る
「アンタは岸でそれを見ながら右往左往
してたんだよ」
分かる!今なら分かる!今まで何者
でもなかった
何者にもならないようにしてた
何者かになるのを拒否してた!
みんな手を伸ばしていてくれた
その手を拒否し続けて
一人で本を読み
船に乗ろうとしなかった!!
涙が出る、なぜだろう
「さぁジャンボ村のクロフ!
お前は何をしたい!?」
アルトは笑顔で質問する。
「成長したい!色んな物を見たい!」
なぜか叫ぶ
「今度はお兄ちゃんが出る番だね!」
パティがクロフの手を取る
「あの木の穴から出たんだよ」
「え………?」クロフは察しが鈍い
「ヤハハ、次の交易船までに考えれば…」
「アッハ!それまで村のために
稼ぐぞクロフ!」
(うらやましい…やはり同じ時を生きる
人同志か…
オイラは岸でなにをしたいんだろう)
プロローグ3
「じゃ、降りようか」
男は柵も無い場所を平然と歩き
「ここから降りるんだ」
指差すが、垂直の壁に梯子があるだけ
少女は怖じ気づく
風もあるし高いし…なにより少女の村に
こんな高い場所はない
「あれ?怖い?」
少女には笑ったように感じた
ムカつく。
「怖いわけないじゃん!」
わざと力強く近付く(怖ぁ…)
「じゃ行くよ」
男は手慣れているようで、スルスル
降りていく
意を決して降りてみる、
手が鉄錆び臭く、茶色くなるが
しまった!!こんなカッコ!!下から見たら!!
ザザミ装備は見た目カワイイけど…
「大丈夫?」
「上見んなぁ!!!」
何とか降りた、まだ少し足が震える。
辺りは商人や露店が並ぶ
大陸の東最大の街にして交易拠点
「ようこそ、ドンドルマへ」
デカイ鉄の門、くぐると
「うっわー!!!」
更に凄い人の数!!
少女は物珍しくキョロキョロ
「あっちがハンターズギルド、向こうが
街の集会所…」
「ねぇあれは井戸じゃないよね」
見ると数人が水汲みしている噴水の
ような場所
「あぁこの街の水源で、湧き水だよ」
「ハンターズストアばっかりじゃなく
エレーナ商会もヨロシクね」
言うと街の奥へ歩く、ヒョロッと背が高い
男は姿勢良く。
デッカイ建物…その前に立つ
今日からここのハンターになるんだ!
嘗められないように…と、
バァンと乱暴にスイングドアが空く
「だからお前は失敗するんだ!!
メインモンスターと戦うなら
事前に雑魚は片付けろ!!」
「師匠は考えが古いんだよ、
いまは鬼神化から………」
双剣使いの師弟だろうか、少女には
一瞥もくれず門へ歩いていく。
「………ムカつく」
今度は中からギルドスタッフの
女性が出てきた。
「あらぁ?ビールの配達まだかしら?」
「あ…あの!!」
メイド装備のスタッフは
「あらぁ新人さんね………?」
んー?と言いながら近付いて来る
目の前まで来ると顔をマジマジと見て
「あなた○○ちゃんね?」
何で名前知ってんの?