ありがたさ
そこに気付けぬ者がいる
ただ愚かか
プライド故か
四人でパーティーを組んでから
一ヶ月が過ぎようとする頃……
「ホッホッお前たちのリーダーは誰だ?」
突然のギルドマスターの言葉に
クロフは戸惑う
リーダー…考えた事無かった…
クロフは左のマリンを見る、人柄、実力、
経験からすれば、マリンだろう。
が、マリンはこちらを見ている。
右のカンナとイシズキを見ると
二人ともこちらを見る。
「ん?…俺?」
「お前の指示で動いてっだろが」
今さらか、とイシズキが首を振る
「ホッホッホクロフだなぁ、
お前たちに遠征してもらいたい」
「遠征…ってなんですか?」
「遠くの依頼を遂行する事だよ」
「私行きたい!」
カンナは跳ねる
「俺も構わねぇぜ」
髪を立てる
「旅費は経費から出るけど竜車
だけだから、あとは自分達で何とか
工面するのよ?」
ベッキーから僅かなお金を渡される。
「何をやるんですか?」
「塔へ調査に行って貰いたい、
もしもモンスターがいたら特徴を
掴んで帰ってきて欲しいんじゃ」
一瞬周りの目がキツくなるが
四人は気付かない。
「うお!ついでに狩っても?」
イシズキが双剣を触る、マリンは
目で制する。
「構わんよ」
マスターはニッコリ笑う
「調子にのるな」
マリンはイシズキを諫める
「ホッホッホ、すぐに行け」
竜車に乗って西側へ、
クロフにとって初めての土地。
「よろしいんですか?」
ベッキーが聞く
「やつらが組んで一ヶ月…あの
パーティーの成功率は8割じゃからの」
「落雷が確認されてるってことは…」
「ホッホッホ、一度挫折して丁度良かろ」
パイプを吹かす
「勝てる相手しか戦わない、それでは
成長せんし、
クロフは慎重に見えて案外抜けとる、
悩む時間が必要じゃ」
ドンドルマから西へ出て、
山脈に沿って北へ
「皆はこっちの出身だよね?」
クロフは聞くが
「あんたねぇ、ドンドルマ自体が大陸の
東なんだよ?
西側がどれだけ広いと思ってんの?」
カンナは手を広げる
「そうなの?」
「地図みたことねぇんじゃ…」
「そうか、全体図を知らないのか」
どうやら俺の知ってる世界は狭いらしい
「ドンドルマから西へ行くと王都が
あるけど、徒歩だと一月はかかるのよ」
マリンが空中に指で何かを書く
「私の村はそこから北に1週間位かな、
ココット村の近く」
カンナも書く
「私は南に2週間くらい」
「イシズキは?」
クロフが聞くが
「俺は故郷無いんだよ」
「なんで?」一同が聞く
「キャラバンの産まれだからな」
「あのずっと旅してる…」
マリンは知っているらしい
「あぁ、南の大砂漠を移動し続けるんだ」
「私の故郷と近いな」
マリンはまた空中に書く
「マリンはどの辺よ?」
「バルバレ近辺」
片道1週間ほど北上した所に塔はあった、
近くの小さな村で依頼を確認
キャンプから走って行く
「凄い」
クロフは溜め息をつく
遺跡…デカイ…
「こんな大きな物があるんだ」
マリンも珍しく目を丸くする
「王都ってこんな感じか?」
イシズキがカンナに聞くが
「んーん、こんなのは見た事ない」
カンナは王都を知ってるらしい
塔の地図を確認すると、
ほとんど一本道のようだ
とにかく移動、
クロフが先頭で走っていき、
目配せすると、先にクロフが入る。
いつの間にか決まった狩りのやりかた
まず、クロフがモンスターの攻撃を
ガードし続け、出来るだけ覚える、
次に三人が入り、クロフの回避の
指示通りに動く、連続で攻撃はしない、
慣れたら自分の判断で動く。
この結果、このパーティーのリスクは
格段に下がり、成功率が上がった。
「凄い…皆入って!」
「うわぁキレイ!!」
足元に水が溜まり石の柱が崩れた
暗い場所、大きな金色の光が
フワフワ浮いている。
「触っちゃダメだよ、
それ大雷光虫だから」
マリンは知っているらしい
「ええっ!?」
カンナは手を引っ込める
興味を持ったものにスグ手を
出すのはカンナらしい
クロフは逆に観察する、
そして手を出す度胸は無い
イシズキは…麻痺してる。
「何で斬りかかるんだ…」
マリンが呆れる
暫く進むと螺旋階段に出たが…
何でこんなに一段がデカイんだろう、
クロフの背丈ほどもある。
「敵に攻め込まれないため…か?」
マリンが辺りを見回す
「住んでた人がデカイんじゃねぇの!」
イシズキが身振り手振りで表現する、
変な踊りに見える。
「まっさかぁ!…ってちょっと!
引っ張ってよ!!!」
カンナを引っ張り上げる
一同笑うが…
巨人ならこの塔を造れそうだな…
切り出した石を組んだ物だろう、
壁を見ると石の境目が糸のように
細い、
過去にどれほどの文明が
あったのか…
また暫く進む…クロフは先に入る
…と、
(何だ…あれは)
クロフは観察する、大きめのケルビ?
馬?白く光っているような
数歩近付く…と、突然振り返り
「キュロロロ…」
白く光るたてがみに、うっすら青い体
威嚇……?……敵意?
これが調査対象のモンスター?
走ってくるが
早っ!!!
「バァン!!!」
咄嗟にガードする、小型のモンスター
なのに衝撃が凄い!!
「キュロロロ…」その場で威嚇する
次は何だ?
しかし気付く、
あれ?
俺が光ってる…?
「ドザァ!!」
「いっだぁ!!!」
「は?……キャンプ?」
三人が走ってくる
「何があった!!?」
「解らない……全然見れなかった」
「ガードしたんでしょ?」
マリンが顔覗き込む
「したはずなんだけど…」
体を自分で確認する、髪が焦げてる
まさか…電気……?
特徴を三人に言うと
「ヤバイぜ、そいつはキリンだ」
イシズキが答えを出した
「キリン………?」
「キリンって幻獣キリンか?」
マリンが腕組みして聞く
「あぁ師匠に聞いた、古龍になってる
ヤツだ上位やG級じゃねぇとまず無理だ」
「古龍か…どうするクロフ、
私達のクエストは調査だ、引くか?」
「えぇ??私も見たい!!」
カンナは口を尖らす
「俺も」
イシズキも本物は見た事がない。
あんなの…どうしたら……
「…攻撃は禁止…全員回避のみで」
皆頷く
「何で俺が……リーダー………」
こんな…何も出来ないのに……
うつ向く
「あきれた、自分で気付いてないの?
皆アンタの指示で助かってんだよ?」
カンナがふんぞり返る。
マリンを見ると無言で頷いている
「俺達の命を危険から守ってる
じゃねぇか、一斉に飛び込んで
たら全滅してるぜ?」
でも頼られるって……
怖いよ………
全員で進む…居た…
「あんな小さいの?弱そう!!」
キレイとか言うカンナ
綺麗だけど…
こっちに突進!!!
「早ェエ!!!」
「何だコイツは!?」
キリンは左右にステップしながら
駆け抜ける
「武器構えてたら危ないぞ!!」
クロフは叫ぶ
「キュロロロ…」
動きが止まり前脚を上げ嘶く、
カンナとイシズキが
抜刀斬りに行こうとするが
「待て!!」
(うわ!命令しちゃった!怒る?)
二人は止まる
地面が僅かに光る
これだ!!これを食らったんだ!!
「パキィーン!!!」×6
まるで剣を剣に叩きつけたような高音、
近くのイシズキとカンナは目が眩む
遠くに居たクロフとマリンは見た。
轟音、空気を破裂させる衝撃、
そして光…
雷?しかも自分を守るように?
6回も!?
フルフルは自分で電気を起こして
いるらしいし、クロフもそう見えた、
キリンは違う、
空から雷を降らせている!!
こんなバケモノ敵う訳無い!!
激しく動き回るキリン
「せめて一回位!!」
マリンが抜刀斬りをするが、
「ガスッ!!」
「何だ!?これ!!!」
柔らかそうな白い体毛だが
「信じられない位硬いぞ!!!」
マリンが叫ぶ
(当たる直前で弾かれた???)
「えぇ!!?早い上に!!」
地面を転がるカンナ
「硬ぇのかよ!!!」
イシズキは逃げる
「皆!地面を見て光ったら逃げて!!」
クロフは叫ぶが
「そんな余裕は……」
マリンも回避する
ジグザグにステップ、止まる所に
集まって斬ろうとすると
落雷が追いかけてくる!!!
「カンナ!!イシズキ!!」
「バキィーン!!!」
「クエスト失敗ですニャ」
ずいぶんと久しぶりに、
ネコタクのアイルーに言われる
帰りの足取りは重い、さすがに
口数は減り皆元気を無くした
竜車の中は無言…
しばらくはカンナとイシズキが
「あの時なんであぁしなかった!?」
だとか
「お前が悪い!!」
とか言い合ってライラしたが、
人のせいにした所で失敗は覆らない
「マリン…」
「何?」
「リーダー代わって…無理だよ…」
マリンは少し考えて
「あんたはリーダーって何だと思う?」
「皆をまとめて…」
「それも大事かも知れないけどさ、
誰も死んでないよ」
眠ってる二人を見ながら
「あんたが守ってるじゃないか
それで十分だよ」
でも……
初めてだ…ここまで何も出来ずに、
手も足も出ない負けかた…
ギルドで報告
「以上です…」
クロフがモンスターの報告を終えると
「マスター!!クエストは!?」
振り返ると上位とG級達が大勢いる
「ホッホッホ、くじ引きで決める!」
そう言うと皆バラバラに
テーブルへもどるが……
人気のクエストなのか??
「良く無事だったなクロフ」
「大きいケガもなく帰って来れたな」
「古龍相手に良くやったぞクロフ」
クロフの肩や背中をバシバシ叩く。
失敗したのに…クロフは俯き涙を流す
「何で泣くんじゃ」
ロクスが聞く
「失敗したのに…」
「あらあら、皆認めてくれてるのに」
ベッキーが料理を持ってくる
「失敗したのに…?」
「もう…上の人達クロフって言ったでしょ?
認められたのよ?」
そう言えば小僧って言わない…
「ワシから見ればまだまだ小僧じゃがのぉ」
ロクスが笑う
悔しさと嬉しさ、複雑な気持ち。
「ワシからの奢りだ、食って前に進め、
無様でもカッコ悪くても、
生き残ったら勝ちだからの!!」
クロフは泣きながら食べる、
これは……勝ちか?
「悩んどるのぉ」
「ホッホッホ、存分に悩めば良い
じゃろ、答えなんぞありはしないしの」
「あらあら…」
「フム、これで腐るようなら…」
「ぞごまでのヤヅだ!!」
次の日
「クロフー起きてるー?」
カンナの声、気分が乗らない。
ドンドルマ 下位の宿舎、セメク村の
ハンター小屋と変わらない
壁の薄いホコリっぽい部屋。
鍵つきの箱と藁、なぜかブタがいる
粗末な部屋
重い体を起こしてドアへ
「何?」
「外いこ!凄いよ!」
階段を下りてギルドを通り外へ、
「こっちこっち!!」
手を引っ張り中央広場へ
「うっわー!!」
クロフが珍しく声を上げる。
「おい!口はしっかり縛れ!!」
「台車もう一台持ってこい!!」
「麻酔足りるか!!?」
アプトノスが四頭で特大の台車を
引く、巨大な岩の塊が載っている。
「夜にゼルドさんとガルダさんが
捕獲したんだって!!!」
町の人とギルドスタッフ達が大勢で
取り囲み、作業している
眠っているのは黒いグラビモス…
見ていると……また……
「………俺…弱いなぁ……」
「俺達でしょ…」
カンナだって同じ思いだ
「あんな所までいけるのかな…」
「分かんないよ…」
「どうしたらいいんだろ…」
「師匠に聞いてみっか?」
「「え?!」」
振り向くとイシズキも見に来ていた。
「あんまりイイ雰囲気だったから
声掛け難くてよ」
ケラケラ笑う、
手繋いだままだった…
ギルドの中、上位のハンターが
集まる辺りにイシズキの師匠は居た
「師匠のナガエさんだ」
ゲリョス装備に双剣の男、
細身だが装備のせいで太って見える、
40位だろうか
気の良い近所のオッサンて感じ
「ナガエだ、四英雄の弟子に質問
されるとは光栄だね」
クロフとカンナは握手してもらう
「あの、どうやったら強くなれますか?」
「んー、クロフ、質問になってないぞ」
ナガエは真面目に言う
「え?」
戸惑う、どう聞いたら
答えて貰えるのか…
質問に……なってない?
ナガエは黙って見ている
どうしよう、何て言ったらいいんだろう、
待ってる、言葉を、あの、だから
「あ…あの…え…えと…」
クロフの口からはこんな言葉しか
出てこない
「質問が悪いとか…?」
カンナは首を傾げる
「大雑把過ぎる、そんな質問は
答えるのに何日掛かる?」
「クロフ、俺達は何がしてぇ?」
イシズキが助けてくれる
強くなる、そのために必要な事は
「えと……あの…何でキリンに
手も足も出なかったんですか?」
ナガエは満足そうに答える
「そうだ、何で負けたか考えなきゃ
強くはならない」
これ…師匠にも言われた事ある!
……いつも考えるはずなのに……
何か変だ……
そうだ!!!
ビールを頼む
「ハッハァ、分かってるじゃないか!」
笑顔
『人に話を聞くのなら…』
師匠に感謝する、教わっていたんだ
飲みながらナガエは答える
「まずは…お前たちは何を知っていた?」
「「「え?」」」
三人とも答えられない
やれやれと首を振りながら
「行き先は塔、その他は?」
えと旅費の話と………
「初めての狩場だろう?」
ナガエは三人の顔を見る
「情報不足で行ったってことね」
マリンが来ていた
うんうんと頷き
「その通り、特にクロフとカンナは
ヒントがブラ下がってるのに
気付きもしなかった」
「「ヒント……?」」
「お前ら二人位だぞ、下位で気軽に
ロクスさんや
赤鬼青鬼としゃべれるヤツは」
「俺なんかはG級のテーブルの方へ
行けねぇもんな」
「私もちょっと近付けないな…」
そうだったのか、聞く人はいた。
「そうか!狩り場によって何がいるか
だいたい絞れるし」
クロフが気付く
ナガエは満足そうに頷く
「キリンはその中の一つだったの?」
「それすら知らねぇで突っ込んだ」
「失敗が当然か……」
「その通り!情報を集めなかった時点で
結果は決まっていたんだ」
ビールを飲み
「賭けさえ始まらなかったぞ、
皆死なないことを願ってたんだ」
「何の対策も準備もしないで…」
それでも狩れるのは…
外のグラビモスを思い出す
俺達はナメた行動を取ったのか……
そうだ嘗めてかかった…
「でも…何かおかしくないか?
あくまでも調査のはずなのに…」
マリンは腕を組む
「俺もそれが気になってな、まるで
『討伐』に失敗した気になって
仕方ねぇんだ」
髪をイジる
「あれぇ?そうだよ、何でこんなに
気分が悪いの?」
カンナは首を傾げる
ナガエは笑いながら答える
「大体調査ってのは未知の土地、地形、
遺跡、モンスターを調べる事だ」
「キリンと分かった時点で調査
は終わった…………?」
クロフは何だか釈然としない
「そうだ、じゃあ分かり易いように、
一つは情報不足
二つ目は色気を出して討伐しようと
考えた、欲が出たんだ、
『どうせなんとかなるだろう』とかな」
「クエストの本来の目的を見失ったか」
マリンが俯く。
「そして三つ目」
「まだあんの?」
「どうせ何とかなるだろうと思った
原因だ、クロフに先行させる戦法
は良い、成功率も高い、
それがお前たちの自信になった、
だがそれがゴールじゃない」
「ゴールじゃない……?」
「まだまだ発展途上だ」
クロフ達が宿舎へ行くと
「ホッホッホ、面倒掛けたなナガエ」
「ウチの弟子の良い勉強に
なりましたよ」
「自ら危険に突っ込んだ事は
理解してたか?」
「はい、ですが良かったんですか?
クロフの自信壊すような事して」
「期待しとるから変な自信は
壊すんじゃ、今のうちにな」