「ガンっ!!」
「あたっ!!」
(あれ?!こんなはずじゃ…)
「カンナ!!大丈夫!?」
「お前らしくねぇ!!どうした!?」
「無理せずに脚を!!」
いつも通り、いつも通りに斬って
ザザミの下をくぐったつもり…
くぐろうとしたら…頭をブツケて
よろけた……
くぐれなくなってる。
今までのやり方が通じない……
「抜刀斬りだけで!!」
クロフが叫ぶ
ザザミなんて最初の時から
楽勝だったのに……
そうだ、レイアの時も泣いたじゃん、
泣かないためには…
本当は地味でキライだが、カンナは
脚を斬り始める
「ドスン…」
軽い地響きを起こしながらザザミは寝た
「寝たぁ!!!」カンナは跳ねる
「じゃあ頭に」
「クロフ、イシズキ、ちょっと待って!」
「何だ?マリン?」
イシズキは構えている
「キリンを…想定するなら…」
マリンは巨大なハサミの前に立つ
二人とも頷く、弱い頭じゃなく
あえて一番硬い所
「「「せーの!!!」」」
「バカン!!」と大きな音が響き、
ザザミの爪が割れた
「くーっ!!いてぇ!!」
手応えってやつか、
キリンを殴るためなら……
見れば鋏の甲殻が剥がれ、
身が…みえる…
「「「「うまそう!!!!!」」」」
そんな思いが過るが皆口には出さない
立ち上がるとザザミは逃げていく
「追うぞ!!」
「待ってイシズキ、護衛でしょ」
「俺達の仕事は終わったよ」
「あ!…ちっ…そうか、そうなんだよな」
護衛とは、つまり追い払うだけ、
完全に狩っていけば、アイテムが
尽きるは明白。
竜車の方を見ると、
マルクが横に立って何かしている
「マルクさん、危ないから隠れて
貰わないと」
クロフが言うが
「せっかくのモンスターですから」
スケッチブックを見せる、
キレイなザザミが描かれている。
「これは絵…だよなぁ」
「うっわぁ!上手!」
「すげぇな!!」
さっきのザザミをスケッチブックに
描いていた
「ボクの特技でして…」
照れている、見ると他のモンスターも
「だから今の仕事に?」
「はい、これも仕事の一つです」
マルクさんが現場に来る理由はこれか
「どんなモンスターがいても、
絵に残せる訳か!俺らにゃむりだぜ!」
書士隊の仕事……できるか俺、
絵なんて描いたことあったか?
1日中原稿を写す……?
クロフは悩む、書士隊……
なりたいもの……
俺どうして今ハンター……
何か思ってたのと……
数日後
小さな村から少し歩くと塔、
ここからは徒歩
キリンを思い出す、昨日の事
の様に…
しかしカンナは…
「…ザザミの事?」
クロフは前置き無しで言う
「…え?」
カンナは驚く、数日前なのに
考えてる事を見抜かれてる
「あれからカンナ口数少ないし」
「うん、今まで慣れちゃったモンスター
は、もう一度考え直さないと」
「クックとか……?」
「ザザミでハッキリした…」
痛感した
「イメージ通りに全然できない、
頭の中の自分と現実の自分に、
なんかズレがあるの…」
明らかにカンナは戦力として下がった、
『カンナを守ってくれ』
守らなきゃ………
「マルクさん、疲れない?」
「ボクは大丈夫ですよ、皆さんの方が
装備も有りますし」
足取りは軽い
「あの……遺跡とか調べる仕事は
普段はやらないの?」
「戦闘も出来る方々だけが行きます、
ボク、戦うの出来ませんし」
「今の仕事をやろうと思ったキッカケ
は何かある?」
「学校で割り振られただけで、
僕自身も何がやりたいかは……」
少し困った顔になるが
「そうなんだ……」
(そういえば10才位だし、
年上が聞いていい内容だったか?)
ギルドで話を聞いてて覚えた、
話しには前置きと本題がある、
ちゃんと使えた。
だけど……うん……
聞いていい事じゃ無かったかも。
「皆絵を早く上手に描けるの?」
「これはボク以外はいません、上手
でもボクほど早く描けませんから」
得意顔
「おい何だよアレ?」
イシズキが指差す
「塔が見え…え……アレ?」
カンナは目をこする
「山が…浮いてんのアレ?」
マリンも
「飛行船とかじゃ…」
村で一度、近くで見たが…大きそう
「すごい、凄いですよアレ!!!
古龍の中でも更に古いと
言われるヤマツカミです!!!」
マルクが叫ぶ、
古龍?…龍……っていうか…
何だアレ
スケッチブックに高速で
描いていくマルク、
丸い山に足?が数本
「だけどこの距離であの大きさってさ」
カンナは目を見開く
「俺の目がオカシイのか?」
イシズキも目をこする
マリンもしきりに瞬きする
幸いにも塔から離れていくようだ
「どっか行くのかな…?」
「チャンスじゃん!!」
「とにかく調査しましょう!!」
マルクのテンションは最高
今回はちゃんとロクスに聞いて来た、
塔とは手強いモンスターの巣窟
であること、
この名前と大雑把な特長も聞いた、
けど、あまりにも……変。
中に入ると
「あれは!!ガブラスです!!」
マルクが叫ぶ。
不吉と災厄の使いと呼ばれる
蛇のような竜、
正確には小型飛竜
頭上をゆっくりホバリングしてくる
初めて見る、何だかニョロニョロした
小さい飛竜……しかも
「ペッ!!」
「うわ!キタネェ!!」
「毒だよ!気を付けて!」
マリンが斬りつけ、一頭が死ぬと、
それを仲間が寄ってきて喰う
「やだぁ!仲間食べるの!?」
「鬱陶しいなコイツら」
大剣がギリギリ届く位の高さを飛ぶ、
マリンなら届く
「誰か音爆弾あったよね!?」
前に本で読んだ
「私持ってるよ!?」
カンナは全然届かない、
一生懸命に片手剣を振る姿は
なんだか面白い
「投げて!!」
カンナは納刀せずに投げる、
投げられる!!
「キィン」という高音、と同時に
ボタボタと5匹落ちてくる
「凄いですよ!!」
マルクが走ってくる
「危ないから下がって!!」
足元を走るマルクを
マリンが避けながら言う
「こんな近くで観察できるなんて♪」
マルクは描き始める
「おいクロフ!何とか言ってやれよ!」
全部片付けてから
「マルクさん、俺達は護衛ですが、
自分から走ってきて…あの、
えと………」
年下にさえ怒るの苦手。
マリンが前に出る
「自分から危険に近付く人は
守りきれん!!!」
睨み付ける、
いつもより厳しい口調、
クロフが緊張する……怖い……
「ご、ごめんなさい」
マルクは丁寧に謝る、
「つい絵に夢中になってしまい」
興味を持ったら一直線な性格か?
怒るマリン、その辺の男よりも怖い
「気を付けます」
小さくなるマルク
奥に進む、大きな階段を、カンナと
マルクを引き上げながら慎重に
「さっきのヤマナントカが戻らなきゃ
良いけどな」
イシズキが見回す
「あれが来たら逃げようよ!」
カンナもキョロキョロ
「うん、キリンがいても今回は逃げる」
「あぁ?何でだよ!チャンスだろ!?」
イシズキは食って掛かるが
「イシズキ、今回はクエストは?」
マリンが腕組みして聞く
「護衛……か」
「私もキリンと戦いたいけど
ガマンしてんだよ?」
マルクの無事
これが今回のクエスト
奥の吹き抜け
「あれは………」
マルクが何か見付けたようだ、
一緒に付いて下に降りる
マルクは木の枝を拾い上げる
「これ…龍木だ!!」
「流木?」カンナが言う
「違いますよ、ヤマツカミに生える木で
龍木です…凄い……」
「木が…生えるの?…古龍に?」
生物に木が生える?
「何言ってんだコイツ?」
イシズキは不機嫌、キリンに
会いたい
「じゃあ証拠を、マリンさん、軽く
その大剣を振り下ろして見てください」
直径5センチばかりの木の枝、
リオレイアの大剣では、いくら軽く
振っても斬れるはず…が!
「ガイィィン」
「うそ…」マリンは固まる
「ヤマツカミの背中で、恐らくヤマツカミ
の体液を吸って育った木は、
金属並の強度になるんです」
「これの武器とか防具とかって?」
「存在します」
他にも苔っぽい物を集めていると
「おいこれ!!」
イシズキが何かを見付ける
食い荒らされ、僅かに残った肉片が
潰れた防具を着ている
「遺体……ですね」
「レウス装備だね…」
カンナは口を覆う
「さっきの蛇みてぇなのに喰われたか」
「これ……セドリックだ……」
マリンは膝を着く
何かに潰された様に見えるが…
ハンターが死んだなら自然にまかせる、
それがルール
が、クロフは始めて見る状況
「こういう時ってどうするの?」
クロフは知らない
「…そのままがルールだけど、遺品を
一つ持って帰るのは許されてる」
マリンは付き合いがあったのか
悲しそうだ
「ドンドルマの墓場に行った事ねぇな
お前、盛り土に武器が刺さってるぜ」
「武器……無いね」
カンナは瓦礫の下を見る
「じゃあ…」
クロフは潰れた兜を持ち上げる、
腐った臭いが鼻を刺す
ハンターの末路……
俺達もこうなる所だった、
いや……いつこうなっても
おかしくない、
だから情報は大事なんだ
全員が思い知る
明日の自分かも知れない……
何がキリンだ!!何が古龍だ!!
俺達は遠く及ばない!!
『退くのも勇気だ、生き残れ』
師匠……強くなりたい…
けど……強くなれば危険も増す……
目標……
「ブォン……ブォン……」
「この音まさか!!」
マリンは立ち上がる
「逃げるぜ!!」
「マルクさん!!」
マルクの手を掴み走る
ドンドルマで報告、
セドリックの兜を見せる
「そうかヤマツカミか……
よくぞ無事で帰ったなクロフよ」
ギルドマスターが誉めて…るのかな
「依頼次第では討伐クエストが
発生するが……どうじゃ?」
マルクを見るが
「そ、そんな、私には権限が
ありませんので、
一度本部に連絡しないと」
「とにかく護衛は終わったな…」
イシズキは天井を仰ぐ
「キリンなんて…」
クロフは俯く
「うん…思い上がってたよ私」
溜め息
「私達は…これから…」
マリンはセドリックと組んだ事が
あるらしい
四人で座って暗くなる、
調子に乗ってた、狩り場を嘗めた。
いつの間にか自分達に甘えがあった、
常に死と隣り合わせの稼業なのに、
勝って当然と思ってた。
「おっ?真面目じゃないか」
「師匠…」
ナガエが来ていた
「悩んでるなぁ若人よ、じゃあ俺の
師匠から言われた言葉だ」
「『己の無力を思い知れ』だ
自分の無力を知って、それで初めて
努力でき、成長するんだ」
「無力……うん、無力だ……私」
カンナは俯く
「あの、自分の実力を知るのに……
ちょうどいい強さ……えと…」
ナガエは笑う
「それが先生だよ!」
次の日
パーティーは解散、そして
「武器はハンターナイフで」
マリンが持つと小さく見える
「防具も無し!全部避ける!」
カンナは回避が不安定で自殺行為、
でも今は必要なこと
「罠も無しで良いだろ?」
補助アイテムも最低限
「基本から鍛え直しで行こう」
今の自分のレベルを知る
全員ソロでクックへ
他のハンター達に変な目で見られる、
セドリックのパーティーが全滅したこと
で、現在成功率が下位で一位になった
四人が、クックへ行くのだ当然だろう。
しかも全員インナー、
ハンターナイフ、
まるで駆け出しのハンター。
「クロフ達は謙虚だのぉ」
「ホッホッ馬鹿とも言える」
「あらあら、上位とG級の狩場から
生きて帰ったのに」
本当ならば下位で自慢できる
「ホッホッ盲目で勘も悪い頭も良くない」
「だが強くなるタイプだのぉ」
パイプを吹かしながら
「クロフには一番大事な『臆病さ』を
思い出してほしかったんじゃ」
ランスの戦法を壊し、
わざと失敗するクエストへ行かせた
「あら、そうだったんですか、
上手くいきましたね」
「カンナも怖いと言ったしのぉ」
カンナの自信もスッカリ壊れた
「ホッホッ、恐怖と常に隣り合わせで
強くなるんじゃ、怖いもの知らずは
一見勇敢だが死ぬからなぁ」
イシズキはランポスに囲まれる、
ランポスって厄介だったのか…
忘れてたぜ。
ハンターナイフでは6~7回斬らない
と倒せない、しかもこちらを
囲んでくる
いつもなら回転連斬で密集に
突っ込んで突破するが…
「めんどくせええぇ!!!!」
こんなんでクックに勝てんのかオレ!!
「三頭目!!」
マリンもランポスに苦戦する、
いつもの大剣なら一撃で吹き飛ぶ
はずが、何度斬っても立ち上がる
そう言う事か…!
武器の性能に助けられてただけだ!
強くなる…そうか、これか!
武器は最低、防具は無し、
純粋な自分の力が分かるんだ!
「てい!!!」
堪らず閃光玉を投げる、
すぐに囲まれてしまう
この私が雑魚に閃光使うなんて…
この私?…馬鹿だ
何が『この』よ!思い上がりだ!
ランポスにアイテム?私が雑魚じゃん!
片手剣じゃリーチは無い、遠心力
が無い、つまり威力が無い。
他の武器は?私の持ってる武器は…
『お前は目が良い』
「目って何よ…師匠」
あの時突然師匠が現れた、
最短でディアを倒したんだろう…
遠いな…師匠
倒れたランポスを見る
三頭いたら必死だったけど、
動きが分かる、もう脅威じゃない。
さて、クックは…
「ブフッ」思わず吹き出す、
数ヵ月前までクックを化け物だと…
今は…
「気楽だな…」
ハッとする、
「嘗めたらダメだ」
ドンドルマの入り口、鉄の扉の前
「おう、マリン…」
「あぁ…イシズキ」
「その様子じゃ苦戦したな?」
「アンタこそ髪型グシャグシャだ」
「あ、マリン、イシズキ」
「おうカンナ、お前はどうだった?」
「…リタイア」
「えっ!アンタがなんで?」
「道具使いきっちゃった」
三人で歩く
自信は打ち砕かれた
いや、最初から根拠が無い自信だった
武器と防具……そして……
「弱いな…俺ら」
「…良く解ったよ」
「師匠いつも防具無しだった…
体一つでもこんなに差があるんだ」
クロフに頼った自信だった
ギルドに入るとクロフが居る
「おかえり」
「おめぇは…苦戦しなかったのか?」
クロフはキョトンとする
「うっわ腹立つ『何が?』って顔!」
「クロフ、いつもより大変だった
はずだよ?」
大剣フルミナントからハンターナイフ
「うん、考えた見たら俺元々片手剣
だし、最初クック狩った時
ハンターナイフ改だった」
「うそぉ!!もっと強化しなかったの?」
「なんとなく師匠に言われるまま…」
「最初から最低限の装備か…」
マリンは納得できた、
初めて使う最低のランスで
クックを倒したのだクロフは
「解ったぜ…クロフ、次はお前が教えろ」
「???」
「そうだな、基本の強さが違う」
「アンタってさ、もしかしたら師匠
(ナナキ)に近いのかも」
「教えるって……何を?」
人にモノを教えた事なんて……
「何かあんだろ?なんか」
イシズキが聞き続ける……
『いい答えだ』
『何を学んだ?』
『じゃあどうする?』
「あれか…な?」