「四人パーティー一組につき、成功報酬
は30000ゼニーじゃ!!」
「それは…下位も!?」
「もちろんじゃ!!猫族も避難するし、
ネコタク無しだからな!!」
「おおおお!!!!」
「スゲェぞ!!G級の報酬並だぁ!!」
「怪我してもスグキャンプあるしな!!」
ギルド内が大騒ぎになる
「おいおい!参加しかねぇよな?!」
イシズキが嬉しそうに振り返る
「もっちろん!!」
カンナも跳ねる
「私も参加だ!!……が……
やっぱり気になる?クロフ?」
「うん、あの大きさ……色んな人達に
聞いたら桁外れらしいし、
それに比例した体力があるとしたら」
それにこの数日、ギルドは物資を
買えるだけ買い、そして
全員が参加したくなるほどの報酬…
(危ないんだな……今回ばかりは…)
「明日の朝は早い!!
今日は飲んで早く休め!!」
その時
「オヤジ!!」
「え?何だ何だ?」
ギルドはざわつく
「あ、あの人」
カンナが知ってるようだ
ヒョロッと背が高い男
「エレーナ商会の人……」
「なんじゃあ…ホルト?」
ロクスが面倒くさそうに
(え?親子?って言うかエレーナ商会??)
「産まれるんだぞ…あんたの孫が!!
アンタこんな時までハンターかっ!!?」
「やかましい!!こんな時だからこそじゃ!!」
「あんたは母さんが死んだ時も!!」
「出て行け!!ここはハンターの場所じゃ!!」
「この…死ね!!クソジジィ!!」
長い沈黙
「すまんのぉ騒がせての……」
ロクスは謝るが
「いいのか?血の繋がった家族だろう」
ギルドマスターが申し訳なさそうに
「アイツの言い分は所詮町人よ、ワシは
ハンターとしての了見で動くからの」
「合わんのぉ……」
ロクスは射撃しながら思い出す、
苦笑いが出るが、気を引き締め、
じゃがの、ワシはワシの道を行く!!
その時
「撃龍槍発射ァ!!!」
「ドガアァァァーーーン!!!!」
門の両側、四本の巨大な槍が飛び出し
ラオの足に刺さる!!!
「うおおおぉぉーー!!!」
「イヨォシ!!当たった!!!」
「そりゃデカイしな!!」
「外れねぇ!!!」
直径2メートルの大木に鉄板を巻き、
大きな矢じりを付け、
出来上がった巨大な槍を
僅かに大きい鉄管から
大樽爆弾で撃ち出す、
槍の後端に大きな鎖が何本も
鉄管と繋がっているため、
完全には飛び出さず、途中で止まる、
爆圧と燃焼で、冷却と鎖の交換、
爆弾の装填が必要ではあるが、
これで一度使っても、引き込み何度も
使える。
当たれば無事では済まない
最強の兵器
「……………?…」
普通なら怯む…怯んでまた
四つん這いに………
様子がおかしい………
ラオが踏み込む!!
「ドゴオオオォォッッッ!!!!」
構わず体当たりするラオシャンロン!!
「なんじゃとおおっ!!!!」
「なぜ止まらん!!!」
「ごんのばげものぉぉ!!」
バラバラと瓦礫が落ちる、
ラオは後退する…しかし!!
「ビキビキビキ…ガゴオォン!!!」
目を疑う…信じられない物を見る
ラオに刺さった撃龍槍…最強の兵器が
ラオの後退と共に
刺さったまま引き抜かれた………
「あ………あぁ………」
「どう…なるんだ……」
「なんだとぉ!!!」
「おい!!どうなるんだこれ!!!」
「撃龍槍がぁ!!!」
「3本も!!!」
「門にヒビ入ってんぞ!!!」
「ズドォン!!」
数人掛かりで運ぶ大きな鎖が簡単に
引き千切れ、埃の様に
宙を舞い落ちる!!
「ギルドマスターは?!!」
動揺が走る!!
どうなるんだ!!?
皆見上げる!!
「うむぅぅ……」
ギルドマスターは立ち上がる、
衝撃に僅かに傾いた足場…
「やられたか……」
門がダメージを受けて…
よろよろと歩き下を見て愕然とする…
撃龍槍が……膝を折りそうになる
……なるが!
(イカン!!!士気が下がる!!!
ワシは毅然とせんと!!!)
しかし状況は最悪を迎える!!
ヒビから聞こえる
「内部崩落!!!撃龍槍はダメです!!!」
「退避だ退避しろぉ!!」
(頼みの兵器が!!……)
更に横の通路からカンナ達数人が
戻って来る
「道が無くなっちゃったよぉ!!」
「6番が崩落しました!!」
「砲弾が運べねぇぜ!!」
「なんと………!」
キャンプへの道が閉ざされた…
半数近くがまだキャンプに……
バリスタと大砲が終わった事を
意味する……
怪我人が避難出来ない……
全ての補給が止まる……
万事休す………
ゼルドとガルダ含め、全てのハンター
が見上げる…
ラオは一旦下がって四つん這いに 、
刺さった槍が抜け出血している
長い…いや本当は数秒かも知れない
沈黙の後…
「撤退せよぉ!!!」
ギルドマスターは叫ぶ
え……?いいのか?撤退って……
ラオが吠える!!その振動の中
門の上にいた者達が降りる
ギルドマスターも降りた……
終わりか?
ドンドルマが終わるのか?
俺達の家が……
全員がギルドマスターに注目する
ギルドマスターは翼の装飾の剣を抜刀、
上に掲げる!!
「残るものはワシに続け!!
行くぞおおおぉぉ!!!」
「ウオオオオオォォォーーーー!!!!」
ゼルドとガルダは大剣を掲げる
G級達も声を上げる!!
クロフもつられて声を上げよ……
「ドムッ!!!」
……………は?……何が……
ギルドマスターの腹に……
ゼルドの拳がメリ込む
「お前ら……ァ…」
気絶?……何が?……何で?
オロオロする若手の中、ベテラン達は
落ち着いている
「若い奴ら集まれぃ!!!」
ロクスの声に集まる
「フム、お前達は逃げろ、それと…」
ガルダは見回し
「マリン…だったか、こっちへ来い」
マリンが前に行くとギルドマスター
を背負わせる、ロープでしっかり
縛り……
「あの、これは…」
マリンは戸惑うが
「お前達若手と、この人さえいれば
ドンドルマは終わらん」
どういう……
ロクスは説明する
「反感を持ってる貴族どもが
負けた事をタネに
支配を強めようとするからのぉ、
交渉ゴトはこの人が生きてれば
十分だからの」
だから…どういう事………?
「クロフ、ごっじごい」
ゼルドに呼ばれ
「あるどにわだしでぐれ」
古ぼけた…ネックレスだろうか?
輪切りにした小さな空骨の真ん中に、
磨いた小さなマカライト鉱石……
それに革のヒモが付いてるだけ、
お世辞にも綺麗なものではない。
「師匠に……?」
ゼルドは歯を剥き出して笑う
「あいづにがえじでやっでくれ」
見るとあっちこっちで
防具の一部を若手に渡す光景
「イシズキ…これを…」
ナガエがゲリョスヘルムを差し出す
「な…なんだよ!!嫌だぞ俺ァ!!」
「俺の故郷は……教えたよな?」
「冗談じゃねえぞ!!知らねぇ!!」
「年寄りの母親が…」
「聞けよぉぉ!!師匠ぉぉ!!」
イシズキが泣き叫ぶ
クロフは墓場を思い出す
「ロクスさん……」
「早く行け」
「無様でも、カッコ悪くても
生き残ったら勝ち……っでぇうぅ……」
クロフも泣き出す、
鈍くても理解できる、
これから何が起こるのか、
これからこの人達が何をするのか、
そしてこの人達がどれほどの
覚悟をもって戦いに臨んでいたのか、
途中でG級達が言った事、
あの時の雰囲気、
あの時皆気付いていたんだ
ロクスは笑って言う
「ハンターはそれでいい、
じゃがの?これは守る戦いじゃしの、
全員で逃げれば、助かった所でギルド
が信用を無くすしのぉ」
「フム、例外だ、守る戦いに負けは
許されん!負けたら守るモノも死ぬ、
信用を無くせば街が衰退する」
「おめぇだぢ、わげぇやづも
まもる!!にげろぉ!!」
ロクスは叫ぶ
「東へ逃げろ!!振り返るな!!
ドンドルマの灯を消してはならん!!」
戸惑う、迷う、いいのか、
これでいいのか、残って……
ロクスは続ける
「この次街を救うのはお前らじゃ!!
行けぃ!!」
一人二人と走りだし
若手全員が四番へ向かう、
残った全ての道具を置いて、
数個の砥石、少しの弾丸……
若手が泣きながら走って行く、
その背中を見送りながら
「はじめっか!!」
「やろうぜ!!」
「あとはあいつらが上手くやるだろ!!」
「あいつらがいれば、
ドンドルマは復活するぜ!!」
「フム、何度でもなぁ!!」
「良い花道が出来たのぉ!!」
「いぐぞおおおぉぉ!!!!」
「ウオオオオオォォォーー!!!!」
切れ味の悪い武器で最後の攻勢、
恐れなど構わず走り込む!!
「ジイサン!!アンタ孫が産まれんだろ!
退いたらどうだ!?」
乱舞しながら
「そうそう!孫の誕生日が命日なんて
笑えねぇぞぉ!!」
ハンマーを振り下ろす
「ウルセェぞ小僧共!!孫に言うのか!?
お前の誕生日に街を捨てて
逃げましたって!!
カッコ悪りぃったらないわい!!」
最後の貫通弾を装填
「オヤジにも拳骨だわなぁ!!」
鉄刀で斬る
「ごのとじでまだげんごずがよ!!」
溜め斬り
「フン!!勘弁願う!!」
斬り上げ
残ったG級と上位、合わせて約150人
回復薬無し、食料無し、砥石……
弾丸………
「ダメだこの通路…埋まってる……」
四番のキャンプへの入り口、
途中で落盤している
「行こう…三番へ…」
若手は走る
…いや…走ってるつもりか…
後ろから聞こえる…ラオの咆哮…
そして…皆の雄叫び…
皆うつむき涙をこらえて走る
ようやく理解する
敗走して理解する
死んでも守るモノがある
カキン………
最後の弾丸を撃ち尽くした
「フン!!ロクスじい!退けぇ!!」
「やかましいぞ小僧!!」
「あんたは俺達と違う!!血の繋がった
家族がいる!!」
ガルダは怒鳴る
「だから退けんじゃあ!!」
「なにずるぎだぁ!!?」
「ワシはここで孫の盾になる!!!!」
ロクスはガンナー達に目配せすると
「若手には見せられんからの!」
ガンナー達は防具を捨てる
ラオの数回の体当たりで、門は
三割ほど崩された
ガンナー達に残るは最後の手段
「ワシに続けえぇぇ!!」
ラオに向かって
インナーだけのガンナーは走る
「少しでも動きを止めるんじゃあ!!」
インナーだけのハンター達はラオの
足を登る!!
武器は剥ぎ取りナイフ一本!
薄く脆い刃だが鋭さなら最高、
鱗や甲殻を剥ぐ、
いくら背中で鱗を剥いでもラオの命まで
は届かない、そんな事は分かってる
やらない訳にはいかない、
たとえ無謀な特攻でも。
「止まれ………」
誰かが呟く
「止まれ……」
広がっていく
「止まれ……」
声が大きくなっていく
「止まれよちくしょーーっ!!!!」
「あそこには大事なもんがあんだよぉ!!!」
「ギルドが!街があんだよぉ!!」
「家族がいんだよぉ!!」
「俺達の家を壊すなあぁぁ!!!」
全員が叫びながら斬り、
泣きながら剥ぐ!!
切れ味と呼べるものは既に無い、
弾丸も無い、
体力もない、
出来る事は悪足掻きに過ぎない、
命を捨てたモノの意地だけ。
「腕がダメなら足で!
足もダメなら食らい付いてでも!!
ワシは盾になる!!」
力を溜めながら、遠目にはゆっくりと
ドオオォォーン!!
ラオの体当たり
ロクスは吹き飛ぶ
エレーナ……見てるか?
ワシらに孫ができるぞ
ワシらの宝に子供が出来たぞ
三番の通路も使えず二番に向かう
突然
「ぐうっ!!」
体が動かない!なんだこれ!!
全員が固まる
前を見ると…二番の方……
太った人がいる…誰だ?
黒い全身の防具で顔が見えない
「……逃げてきたのか?」
歩いてくる……
殺気??リオレウスだってこんなに……
歩み寄る…マリンの方へ、
マリンも直立不動、動けない…が
ギルドマスターを見ると
「おーおー良く寝とるわ」
ガクッと動けるようになる。
もう一人同じ防具の人が走ってくる、
マリンよりも背が高い
同じようにギルドマスターを見ると
「兄貴達ですね」
「さすがワシのセガレよ!!」
「うあああああぁぁあぁぁ!!みんながあ!!」
緊張の糸が切れてしまった
カンナが大声で泣き出す、
大口を開け子供の様に鼻水まで
「みんながああぁぁみんながああぁ…」
立ち尽くしグシャグシャの顔で
よだれを垂らし泣く
皆関を切ったように泣く……と
「いくぞガキ共!!」
太った人が走り出す
「ついておいで!!」
長身の男は軽やかに
動けない、疲労もあるが
皆心が折れている
なぜ泣く?
街の終わり?
知ってる人達の特攻?
その人達に守られたこと?
『己の無力を思いしれ』
無力……自分たちは無力!!
それが一番悔しい!!
街を守る大事な戦いに役立てない、
情けない!!
「おおーい!!」
二番の方からキャンプに残っていた
ハンター達が来る、皆物資を持ってる。
その先頭に二人、同じ防具の人が走る、
すれ違う瞬間、
クロフとカンナの肩を叩き
「アッハ!」
「カンナが泣いてるぅ♪」
二人は泣くのを堪える、
懐かしい声、一番今いて欲しい人の声、
振り向く
泣き声で叫ぶ!!
「「師匠おぉおおぉ!!」」