過去の話
ギルドへハンター達は戻り
一人二人と眠り始める、
無理もない、限界だったのだ、
椅子や床、テーブルに突っ伏して
クロフは興奮が収まらず眠れない
軽いイビキをかいている三人、
みんな寝てしまったので一人で門へ
夜風が心地好い、街の広場では
大勢が騒いでいる
なんだか一人になったのは久し振り
夜の街、一人……今まで経験
しなかった時間帯……
ワクワクする
崩された門を見る、
もうすぐ丸一日……
ラオを思い出す
これを元に戻すのは、
どれほどの大仕事になるのか……
「小僧」
ビックリして振り返る
「ガストンさん?!」
「眠れんのか」
あの迫力は無い、ニコニコ笑う、
「は……はい!」
あれ?なんか……柔らかい空気
二人で向かい合って瓦礫に座る
「ここまで壊すとはな」
小石を拾い投げる
「あ、あのっ…コレッ!!」
ネックレスを指差し
「師匠がっ!……着けとけって!」
緊張する
「おう、大事にしろよ?」
気付く、クロフと変わらない背丈、
まぁ幅が全然違うが
あれほど大きく見えたのに
「聞きたいってツラだな」
ガストンは笑いながらネックレスを
指差す
クロフは頷く
ガストンは語る
「俺が10才の時だ」
今では無くなってしまった北方の村、
そこに暴れん坊のガキがいた、
ワシだ。
ろくに武器も無い時代に、棒切れで
ランポスを仕留めて、浮かれていた。
「棒切れ?」
「村が貧しくてな、加工屋も居なかった」
仲間を集めてガキ大将をやっていたが
ドスランポスが現れてな、
仲間を逃がすために俺は戦った、
勝てる訳なくてな、そんな時だ、
師匠達が現れた、
あっという間にドスランポスを倒してな、
その強さに惚れて弟子入りを志願した。
初めは渋っていたが、ココットの
妻のリネルが助けてくれてな、
同行させてもらった
数年四人にくっついてハンターの基礎
を叩き込まれて、俺もイッパシに
なった頃……
「ちょ!ちょっと待ってください!ココットって
村の名前じゃ?」
「知らんのか?ココット、ミナガルデ、
ドンドルマは英雄の名前だ」
「ええっ!!?」
現在のココット……当時は名もない集落
で事件は起きた。
一人前になったと勘違いしたガキ大将
は、
狩りの時に先行した
討伐対象はモノブロス、
ディアブロスの近縁種。
バカなガキは自分の力を過信した、
捜索が担当だったのに一人で
立ち向かった
まともに攻撃すら出来ず逃げ回ったが、
壁際に追い詰められてな、
体力が限界だった、
デカイ一本角が俺に刺さる寸前……
ワシを見つけたリネル姐さんは
走って来て……庇ってな……
ガストンは顔を伏せる
「そして俺は右目を潰した……」
「このネックレスは形見……?」
「そう……形見だ」
指差し
「ココット大兄ィの手作りだ」
この粗末な感じはそのせいか、
俺が持ってて……
「もっと綺麗な石がありそうなのに…」
「まぁだマカライトが溶かせん時代
だったからな、希少だった」
笑う
「は……?」
間抜けな顔になる
「50年位前の話だぞ、溶けんわい、
燃石炭の使い方が解らん時代だぜ?」
マカライトって普通に手に入るのに、
溶けない?加工出来ない?
それじゃあ
「あの、装備は……?」
モンスターの素材を使う、武器防具の
繋ぎとして良く使われる金属、
しかも下位の。
上位だったら更に稀少な……
それが加工出来ない時代の装備?
「あの頃は武器と言えば鉄、防具は
ボーン装備が最高だったわ!」
ガハハと大笑い
今なら駆け出しの装備……
それでディアブロスの近縁種?!
バケモノ……
「それからハンターは四人になった」
「……へ?」
ガストンが真顔でクロフを見る
「……察しの悪いヤツだな……なぜ
ハンターが一組四人か知らんのか?」
「五人以上は縁起が悪い……
死がつきまとう……って……!」
クロフは声を上げる
「あれ?なんか!?」
「そうだ!四大英雄とはココット、
ミナガルデ、ドンドルマ、リネルだ」
ガストンは親指で自分を指し
「ワシは不吉の五人目よ!」
「あれ?四大英雄……あれ??!」
「すっかりワシが四大英雄の一人に
されたがな」
「あ!師匠に聞いたら事あります!
四大英雄って言うと嫌がるって!!」
「そんな事まで教えたか!バカ娘が!!」
ガハハと大笑い
「嫌に決まっとる!あの人達に比べれば
ワシは邪魔な小僧っ子よ!!」
これか!!これが原因で四人に!!
聞いて初めて解る、凄い、凄すぎる!
「そのあとココットは村に墓を造って、
ギルドマスター兼村長だ、
その墓に自分の剣を立ててな」
ネックレスを指差し
「剣にソイツを掛けて置いた」
ガストンは夜空を見上げる
「だが、すぐにワシにくれてな」
「なぜなんでしょう」
「リネルが助けた命だ、お前にやる、
……ってなぁ」
夜空を見る
「子供のように……かな?」
ニカッと笑い
「だと嬉しいがな!!」
顔を擦りながら
「ワシのせいで死なせたのに、
あの人は恨みもしなかった、
『運命だ』ってな」
「ワシも老いたし引退を考えた時に
ゼルドに渡したんだ」
「引退……?」
意外過ぎる、あのラオの顎を殴る人が
言う事か?
「ミナガルデとドンドルマに専属も
置いたし、役目は終わったからな」
「ゼルドさんとガルダさん以外にも?!」
ガストンは笑う
「皆ワシの弟子でな!東に赤鬼青鬼、
西に黒鬼白姫がいるぞ?」
「え……え?」
ポカンとする
「ソイツの話は終わりだ」
ネックレスを指差す
「俺が……持ってて……」
良いのか?これ?
下位が持ってて良いモノじゃないよ
「ゼルドも何かしらお前を認めたか…
『運命』だろうよ……」
ニヤリと笑う
中央広場の火も少なくなって来た
「あの、もっと聞いても良いですか?」
「おう!シラフじゃねぇしな!」
不思議な存在がドンドルマにいる、
誰にでも意見できて、
尊敬されて……
でも四英雄とかではない
ギルドマスターと対等に話し、
若者をテストする、
歴戦のハンターであることは
間違いなさそう……だけど
「ロクスさんって……」
「あいつかぁ、あいつの話は
この街の始まりから話さんと」
45年程前
「あれ?前より家が増えてんぞ!」
ガストン 15才 右目に眼帯、
粗末なネックレスを着けて
ハンマーを担ぎ軽快に岩を登る
「アルマのヤツはまだいるのかの?」
片手剣を持つ竜人ドンドルマ
「前に来た時は一軒、掘っ立て小屋が
あっただけだよな、小兄ィ」
「四軒に……小兄ィは止めろ小僧が!」
湧水の周りには石を積み、
丸く池のようになり、
それを囲む様に家がある、
呼び掛ける
「アルマぁ!おるかぁ!!」
出て来た老人の話しによると、
アルマは王都へ行ったという。
「さて、ガストン、何から始めたもんかの」
「何だよ小兄ィ、考えてないのかよ」
………………
「そんな時代があったんですね」
今のドンドルマから想像できない
「何処だって似たようなもんだ」
ガストンは寝転がり
「一軒の家の軒下、テーブル一つと
椅子二つ、ここからギルド……
いや、村のためにモンスターを狩り
始めた」
………………
「チンピラぁ?」
ガストンは眉を吊り上げる
「そうなんですよ、なんか居着いてて」
気の弱そうな老人
「ワシらは人殺しなぞやらんぞ」
竜人も顔をしかめる
「何とかなりませんか?」
「ガストン!!」
「どれ、何処にいる?」
ガストンが立ち上がる
高台に小さな平地があり、そこに
ボロボロの服を着て、
村から盗んだ野菜をかじる若者、
ヒョロッとした長身、
立ち上がる
「何だ!!テメェは?!」
「ガゴッ!!」
ガストンは無言で殴る、
若者はその威力に堪らず倒れる、が、
「ちょっ!!まっ!!」
ガストンは更に馬乗りになり殴る!
「があっ!!ま!テメェ!!!」
ゴッ!ガゴッ!ガッ!
無言で無表情で殴る!
「あ……あの……まっ……」
気を失うとガストンは立ち上がり、
村へ戻る、
若者はノビたまま
「歯は折れない程度にしといたぞ」
椅子に座る
「担いで来なかったのか?」
竜人が頬杖したまま
「何だよ?捕まえる話だったのか?」
………………
「話の通じない人から殴られ続ける
訳ですか…」
怖いよこの人
「ワシは読み書きが出来んし、
何を言ったら良いかも解らなくてな」
「そのあとロクスさんは逃げて?」
「それが逃げられない訳があってな、
あいつは盗人で逃げ回っていたんだ」
「元ドロボウ?!」
「ガッハッハ!ハンターの多くは、
元チンピラ、犯罪者が当たり前だ」
ガストンは地面をつつく
「この村はよ、他の村で色々あって、
のけ者になったヤツが集まり安くてな、
皆ワシがブン殴って弟子にしたんだ」
………………
「何なんだテメェは?!
会うたびボコボコにしやがって!!」
顔が腫れて紫の男、ヨロけている。
ガストンはボリボリ頭を掻くと
「オメェは盗人で一生を終えるのか?」
「……」
「俺は馬鹿だから上手く説明できねェ、
人に感謝されてみねぇか?」
「今さら……」
「今歳はいくつだ?」
「20だが……」
「俺は15だ、ガキに説教されるような
情けねぇ人間で終わるのか?」
腹が立つが殴る事も出来ない、
この小僧の強さは普通ではない、
どうしたら良いのか解らない
「お……おぉ?何が出来るんだ俺に?」
「ハンターになればいい」
「ハンターって何だ?」
「人のためにモンスターを狩るヤツだ」
「竜人がやってるアレかぁ?
人間に出来るのかよ?」
「俺はその竜人の弟子だ!」
「あぁ?じゃ村にいる小せェ竜人は!」
「英雄だ!」
………………
「そしてロクスは弟子になった」
「えぇと、ガストンさんの弟子に?」
ボリボリ頭を掻く
「んー、あの頃は小兄ィも狩りやったし、
小兄ィの指導も受けたからなぁ」
起き上がり座ると
「ワシの弟子であり兄弟弟子でもある、
とにかくドンドルマの最初のハンター
がロクスな訳だ」
「一番古い方な訳ですね…」
「何人もいたがアイツは一番臆病でな、
生き残ったんだ」
全て納得できる、すんなりと話が
飲み込める、
この人は余計な説明をしない、
自慢しない、
回り道も理由がある、
全て正面から真っ直ぐ直球
話が途切れた
「他に聞きてぇ事はあるか?」
アタフタする、聞きたい事は山程ある、
なのに思い付かない
「あ、あの、そこから街は……」
慌てて適当に言ってしまうが、
「ワシは一年毎に東西を行き来してな、
何度目だったか……」
ガストンは腕組みして
周辺の馬鹿共を殴って弟子にして、
この辺一帯の村の守りをやっててな、
当時の報酬は金じゃなく、食料や
建築資材、薪だった
「お金自体がなかったとか?」
ジャンボ村は今でも現金は少ない
「ドンドルマは岩山だろ?農地も
森も少ないからな、貴重だった」
そんな訳でモンスターの素材は行き場
が無くて貯まる一方だった、
そんな時、移住してきた人間の中に
商才があるヤツが現れた、
名をエレーナ
「エレーナって!」
「エレーナ商会のエレーナだ」
愛嬌のある娘でな、おしゃべりで
良く笑う
水を飲みに来た行商人に
噂を流させた、ここは凄いと、
行商人を立ち寄らせたら驚いたらしい、
小屋の中に天井まで素材が
溢れてたからな、宝の山だった
その頃、ようやく燃石炭の使い方が
分かり、モンスター素材の価値が
上がってな
最初は物々交換から始めてたんだが、
噂が噂を呼び行商人が大勢来るように
なった。
小屋を交易所にしてな、大成功だ、
物資と現金が行き交う場所になった。
「そこから大きくなったんですね」
「『英雄ドンドルマがいる村』って看板
立てて商売してたらな」
膝を叩き
「ドンドルマになっちまった!!!」
大笑い
「今ではドンドルマ地方だとよ!!!」
「ロクスさんとは……」
「結婚したぞ」
「ロクスさんってエレーナ商会の人
って事ですよね」
「あいつはエレーナ商会の大旦那よ!!
商売なんぞしたことねぇがな!」
誰かが言った
人に歴史あり……
「家に帰ってませんよね……」
「セガレが商売継いだしな」
「何だか……仲悪そうな……
ホルトさん…でしたか
『母さんが死んだときも』って
怒鳴ってて」
「オメェに言って解るかなぁ……」
ガストンは頭を掻く
「ロクスにとってこの街自体が
エレーナとの子供な訳だ、
自分の子供を必死で守ってるだけだ」
「じゃあホルトさんにとって
街が兄弟?」
「エレーナが病気で死ぬ時も
ラオの防衛戦があってな、
ロクスはもちろん参加した」
ガストンはゴロリと横になる
「その辺がホルトには理解出来ねェのさ」