生きる事は悩むこと   作:天海つづみ

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 「ビール持って来ます」

 立ち上がろうとするが

 

 「要らねぇよ」

 

 無言が……ツライ……

 

 

 

 

 「あぁ、アルトから聞いたが、書士隊に

 入りたいってか?」

 

 「それが目標だったはずなんですが…」

 

 「迷ってんのか?」

 

 「……やりたかったはずなんですが」

 

 「誰だってそんなもんよ、自分の

 やりたい事を仕事に出来るヤツ

 なんぞ居ネェさ」

 

 「そんなもんですか?」

 

 「ナナキなんざ目標失って

 辞めようとしてるしな!」

 

 「最強なのに?!?」

 

 「聞きたいか?」

 

 「はい!過去に会ってるみたいなんです」

 

 

 

 

 

 

 

 3年程前 ドンドルマ

 

 ボロボロの男がギルドへ入ってくる

 

 「何だよアイツ……」

 「キタネエな……」

 「くせぇな」

 あまりの体臭に皆顔をしかめる

 

 髪と髭が伸び放題、何日も水浴び

 さえしていないだろう

 

 「何か御用ですか?」

 ベッキーもいつもの笑顔がない

 

 「何でもいい……狩りを……」

 

 「…ギルドカードは?」

 

 「……ない」

 

 「アナタは……ハンターですか?」

 

 「……」

 

 「偽物かぁ!?」

 「まぁた酔っ払いか!」

 ギルド中が騒ぐ

 

 浮浪者は言う

 「死にてぇ……」

 

 その言葉にギルド中が睨む!

 全員が殺気立つ!!

 

 道半ばで力尽き、

 死んだ仲間がどれだけ居るか、

 生きたくても喰われ、焼かれ、

 切り裂かれた仲間を思えば当然。

 

 「なんだぁテメェは!!」

 「殺されてぇか!!!」

 皆立ち上がる

 

 「ちょっとアンタ、ふざけてんの?」

 アルトが胸ぐらを掴む

 G級達は我慢ならない

 

 アルトに胸ぐらを掴まれ振り回されるが

 力なく床に倒れ

 「そうだ……死にてぇ」

 

 騒ぎを聞きつけガストンが奥から来る

 

 「何の騒ぎだテメェら!!!」

 

 「あ、オヤジ、変な野郎が……」

 「死にてぇとか抜かしやがって」

 

 浮浪者を見るとガストンは前に立つ

 腕組みして鬼の形相

 

 「死にてぇのか?」

 

 「死にてぇ」

 

 「そうか」

 

 

 ガストンは剥ぎ取りナイフを向ける

 

 「ガストン!!抜刀禁止じゃ!!」

 ギルドマスターが怒鳴る

 「父ちゃん!!やめて!!」

 

 ガストンは構わず

 「オメェみてぇなヤツが狩り場で簡単に

 喰われるとよ、

 人間を嘗めて街や村が襲われる」

 

 

 「……」

 

 

 「迷惑だ、自分で決めろ」

 

 

 「……」

 

 

 「どうした?俺の持ってるナイフが

 お前の死だ」

 

 

 「…………」

 

 

 「自分で刺せ」

 

 

 「……………………」

 

 

 「なぜ出来ねェ?お前の心に

 なにがある?」

 

 浮浪者が胸を抑える

 

 

 

 

 「……ソコは何て言ってる?」

 

 

 

 長い沈黙

 

 

 

 

 「ここがよぉ……勝ちてぇってよぉ、

 勝てるわけねぇのによぉ!!」

 胸を血が出るほど引っ掻きながら

 浮浪者は泣き出す

 

 「何に勝ちてぇ?」

 

 

 「……」

 

 

 「お前生きて勝ちてぇんだろ?

 何に勝ちてぇ?」

 

 

 浮浪者はガストンを見上げ

 「あんたらだって勝てるわけねぇ」

 

 またギルド中が殺気立つが、

 ガストンが手を挙げると押し黙る

 

 「試しに言ってみろ」

 

 

 

 

 

 

 「ク……クシャル……ダオラああぁ」

 号泣する浮浪者

 しかし顔は怒りに満ちている

 

 

 

 ギルドマスターはハッとする

 「まさか!!ヌシはポッケの生き残りか!!」

 

 「知ってんのか?兄ィ」

 

 「半年程前に北東の辺境に現れ、

 村を全滅させた個体がいると……

 それに村長のオババから聞いたぞ、

 もう一人の生き残りが消えたと」

 

 「ほう」

 ガストンは胸ぐらを掴み立たせると

 

 「このギルドにはクシャルに勝つ

 者は何人もいる」

 

 浮浪者は顔を上げる

 

 「依頼するか?」

 

 「……」

 

 怒り顔の浮浪者を見るとガストンは

 察する

 「そうか、自分の手で殺してェんだな?」

 

 「…………」

 

 「恨みを晴らしてェんだな?」

 

 

 

 

 「……どうやって……」

 

 「ハンターになれ、オメェに勝てる

 技術を教えてやる、

 その代わり地獄を見るが…やるか?」

 

 

 

 

 

 ガストンが手を離すと力なく

 床に座り、

 浮浪者は頭を下げる

 「……俺に……力を」

 

 

 

 「全員聞けィ!!!コイツは今日から

 仲間だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そうして弟子にした訳だ」

 

 「復讐……村の復讐……」

 

 「おう、それな、ナナキはポッケの

 農夫でよ、農場の管理をしていた、

 作業してる時に突然村が襲われて、

 妻と子供が犠牲になっちまった」

 

 「結婚してたんですか?!!」

 

 「妻と子供を殺され復讐したいが、

 クシャルに対する恐怖が

 染み付いてて怖かったんだ、

 それで迷いに迷ってここにな」

 

 「死にたい……けど生きたい」

 

 「あれは生き地獄だろうよ、

 ナナキと村長だけ生き残ったそうだ、

 そのあと放浪して歩き回ったらしい

 …ワシは独り者だから解らんがな」

 

 「……なぜ生きたいって解った

 んですか?」

 

 ガッハッハと笑う

 「本当に死にたいなら勝手に死ねば

 良いだろ?

 それがワザワザ人前に出てきて

 言うんだ、

 言いたい事があるに決まっとる!」

 

 なんだろう、人間が大きい……

 器が大きいって、この人を

 指すんだろうか

 「そこから最強に……」

 

 「動機が強いからな、

 忘れて前を向く事もできず、

 折り合いをつける事もできん、

 ただただ戦い続けた、

 食う暇寝る暇も無くな」

 

 「それで……倒したんですね?」

 

 「そうなんだがなぁ」

 ボリボリ頭を掻く

 「ハンターになった理由が復讐

 だからな、仇殺したら

 やることが無くなっちまった」

 

 

 

 目標を失う……

 「今は……何で続けてるんでしょう」

 

 「惰性か…流れか……」

 ネックレスを指差す

 「運命や流れに逆らって生きるのは

 簡単じゃネェだろうさ」

 

 

 

 

 「ガストンさんも辞めなかったのは、

 運命や流れですか?」

 

 「大兄ィは運命と言ったがな、リネル

 姐さんはワシのせいで死んだと

 ワシは思っとる……

 贖罪……なんだろうよ、

 一生英雄のために働く、

 これがワシの道になった」

 

 「道になる……」

 

 「まだガキのオメェには早いだろうが、

 道ってのはソコにあるもんじゃねぇ」

 

 「ハンターの……道ってないんですか?」

 

 ガッハッハと笑う

 「人生は何でも同じよ!!

 おっかなビックリ、ヨタヨタ歩いてな、

 色んな物にぶつかって、

 ある時振り返ると道になってる……

 そんな感じだ」

 

 「師弟って道を教えて貰える物では…」

 

 「甘えるな、教えはしない、

 せいぜい横から叩いて真っ直ぐ

 歩かせるだけだ」

 

 

 

 「何か師匠は言葉を大事にするって

 言うか……横から叩くより

 言葉で教えるって言うか」

 

 『気持ちを伝えるなら言葉で話す、

 これしかないんだ』

 

 

 「ワシとタイプが違いすぎるか?」

 ニヤリとする

 

 ヤバい……怒らせたか?

 

 「オメェが良い子だったからだろ、

 拳は必要なさそうだ、

 ナナキも言葉で十分だった、

 言葉で通じると思ったんだろ」

 

 「良い子?」

 俺が?

 

 「ワシが教えたヤツはみんな言葉が

 通じねェならず者だからな、

 口より手で殴らねぇと」

 

 ロクスさんは無言でボコボコ……

 

 「目標なんてモノはな、無くても

 後からついてくる」

 

 あ、目標の話してたんだっけ

 

 

 

 「長くなっちまった」

 ガストンは立ち上がり腰を伸ばす

 「いででで……」

 

 その姿を見ると老人ではある

 

 「明日の夜だ」

 

 「え……?」

 

 「一度に話しても忘れたり混乱

 するからな、まだ聞きてぇだろ?」

 

 「は、はい!」

 

 「それにもう来たしな」

 ガストンは指差す、東西から人が来る

 

 「あれは……」

 

 「忙しくなるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日

 

 「30000!!」

 「31000!!」

 「こっちは35000ゼニーだぁ!!」

 

 各商会で競りが始まっている、

 凄い金額が左右に動く、

 ラオの素材は滅多に市場に出ない

 ため、商人達は殺気立つ

 

 あの巨体から剥ぎ取ったり、大砲で

 吹き飛ばした厚鱗や重殻が大量、

 しかも一つ一つがデカイ

 

 周辺の村だけでなく、事前に情報を

 聞いていた行商人達が大勢

 ドンドルマに押し寄せた。

 

 

 それに

 

 「村長の指示で来ました!」

 「修理、雑用なんでも!」

 「ドンドルマのために働けと」

 職人、大工、石工、加工屋、

 また、それらを当て込んだ商人、

 飲み屋、飯屋が続々と集まる、

 ドンドルマの人口が一時的だが

 倍増している。

 

 

 ギルドは大忙し

 「上位は各村に向かい警備に入れ!!」

 「G級は緊急事態に備えよ!!」

 「下位は門の作業に入れ!!」

 「各自装備の点検をせよ!」

 ギルドマスターは指示を飛ばす

 

 

 

 

 

 

 「門を解体するぞ!!」

 ロクスの指示が飛ぶ、体中に包帯を

 巻いた状態なのに機嫌が良い、

 聞けば無事に孫が産まれたそうだ

 

 

 

 門はここまで壊れたら基礎から造った

 方が早いと判断された

 

 街中の若者、村の男達、下位が

 作業に入る

 

 「どんくらい掛かるんだかな」

 イシズキが瓦礫を台車に載せる

 

 「今またラオが来たら怖いわね」

 マリンも岩を抱える

 

 「次は私が守るんだ!!」

 カンナは力が無いため水と携帯食料

 を配ってまわる

 

 「クロフはどうした?」

 イシズキは顎をしゃくる

 

 「朝起こしたら腕が上がらないって」

 マリンは自分の二の腕をパンパン叩く

 

 「だらしない!!アイツだけ!!」

 カンナは悪態をつく

 「ロクスさんは大怪我してるのに!!」

 

 肋骨4本と左鎖骨、左下腕の骨折、

 全身打撲だが……笑顔

 

 

 

 「明け方までここでガストンさんと、

 話してたんだって」

 

 「うお!後で聞こうぜ!」

 

 

 クロフが遅れて来た

 

 「遅い!!」

 カンナは怒る

 

 「瓦礫の片付け、出来そう?」

 マリンは腕を触ると

 

 「いだぁ!!」

 筋肉痛で激痛

 

 「出来ねェなら他の仕事探せ」

 

 「いいんだ、今やるべきはこれだから」

 痛む腕で片付け始める

 

 無言で黙々と作業を始めるが、

 

 「強くなろう」

 クロフが言う

 

 「おうよ、強くなろうぜ」

 あんな思いはタクサンだ

 

 「またギルドマスター背負うのは

 勘弁だよ」

 岩を持ち上げる

 

 「強くなろう!!」

 カンナは大きな声で

 

 下位達は掛け声のように

 強くなろう、強くなろうと繰り返す

 

 ロクスはニヤケる

 (良い傾向だのぉ)

 

 

 

 

 

 

 ギルドマスターの部屋、

 ゼルド、ガルダ、四英雄が集まる

 

 「ホッホッ、お前たちが間に合うとはな」

 

 「王家専用の飛行船だと片道3日、

 早いぜ♪」

 

 「アッハ!アンタの兄貴には

 感謝しないとね!」

 

 「兄上には借りができましたよ」

 ハインツはやれやれと首を振る

 

 「ワシらが来なくてもギリギリ

 何とかなったかも知れんぞ」

 ガストンは笑う

 

 

 「いえ、オヤジあってこその

 ドンドルマです」

 ガルダとゼルドは言う

 

 「なざげねぇ、門が……」

 

 「もう動いて良いのか?」

 ガストンはバンザイすると

 二人は膝まづく、

 モジャモジャのゼルドの頭と、

 ガルダのスキンヘッドをグリグリ撫でる、

 「良くやったぜお前ら、よくぞワシの

 留守を守ってくれたな」

 

 二人は泣きながら頷く。

 

 「うでがなぐなっじまっだ」

 

 「街を守った証だ、誇って良いんだぜ?」

 ガストンが励ます

 「下に行ってお前の健在をみせてやれ、

 G級達も不安だったろうしな」

 

 二人はガストンに一礼すると出ていく

 

 足音が遠ざかると

 

 

 

 

 「報告と説明を聞こう」

 ギルドマスターの声色が変わる

 

 ハインツが答える

 「事前に申し上げました通り、

 旧シュレイド城への追加調査、及び

 強行偵察の結果、存在は

 確認されませんでした」

 

 ギルドマスターは座り直し

 大きな溜め息を吐く

 「そうか……居なかったか」

 

 「だけど油断は出来ないぜ、

 あそこはオカシイ」

 ナナキが腕組みする

 

 「なんじゃと?」

 

 「何かね、視線と殺気があるんだ、

 確実にヤツは居るはずなんだ」

 アルトが指を立てる

 

 「どこに…いや、しかし今は……

 触らぬ神に祟り無し…か……

 して?……ソレは?」

 ギルドマスターは横を見る、

 武器と防具が並べられている、

 そこにあるだけで禍々しい空気……

 

 「地下に行ける所があってな、

 壁のヒビを見つけてよ、

 その壁壊したらな」

 ガストン顎をしゃくる

 

 「ランス、片手剣、ハンマーが祭壇に

 祀られてあり、防具は大量に

 保管されてました」

 

 「それを持って来たのか!」

 パイプを落としそうになる

 

 「書士隊の研究員達も一緒だったし、

 見せたら竜殺しの属性らしくてさ♪」

 

 「アッハ!効果あるかと思ったら」

 

 「大ありだったわ!!」

 ガッハッハと笑う

 

 

 

 「恐らく伝説の素材で……」

 ハインツはランスを指差す、

 ランスと言うより

 角そのもの……

 

 「それに気になる話の証明にも

 なったようですし……」

 

 「ホッ?気になるとは?」

 

 『キョダイリュウのゼツメイにより

 伝説は甦る』

 アルトは天井を見ながら言う

 

 「王家に伝わる古文書の一文ですが」

 ハインツはギルドマスターを見る

 

 「むぅ、まさか巨大竜とは昨日の……」

 

 「その可能性もあります」

 

 「アイツが引き金になるかも♪」

 

 「でな、ワシらは試してみた訳よ」

 

 「ホッ?何の話だ?」

 

 「アッハ!じいちゃん

 寝てたから知らないんだ」

 

 「鼻先で武器の匂い嗅がせたんだ♪」

 ナナキは自分の鼻を指差す

 

 「あのデケェやつさえ恐れたぜ?」

 ガストンは笑う

 

 

 「これで証明されたかもしれません、

 各地にいるラオシャンロンは

 アレを恐れて……

 逃げていると推測できます」

 ハインツはギルドの紋章を指差す

 

 「うぅむ……勝てなくて……

 良かった……か……?」

 

 

 

 

 

 

 「さすがゼルド兄貴だぜぇ!!」

 「不死身かよ!!」

 「ドンドルマの顔は不滅だ!!」

 ギルドではG級達が騒ぐ、

 みんなゼルドの背中をバシバシ

 

 「いででで、もっどやざじぐじろ」

 ゼルドは笑いながら飲む

 

 「フム、飲みすぎるな、キズが開くぞ」

 

 

 

 

 アルトが階段を下りる

 「ベッキー」

 

 「何?姉さん」

 

 「クロフと組んでるヤツの情報ある?」

 

 「心配なのね、クロフ君てアレだし……」

 困った様に笑う

 

 「アッハ!そう、アレだし」

 口下手、引っ込み思案のクロフと

 仲間になるには、

 ……それなりに……

 

 

 

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