生きる事は悩むこと   作:天海つづみ

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反乱・裏

 

 シュウ達は逃げて行く

 

 

 

 「マスター、湯浴みしてきます、

 走り回って汗が……」

 ベッキーが襟をパタパタする

 

 「ホッホッ、行っておいで」

 

 「ワシも孫の顔見て寝るかのぉ」

 

 「ギャハハハ!」

 「ロクスじいさんがジジィっぽいぞ!!」

 「ワシゃジジィじゃ!!」

 

 クロフ達は釈然としない、

 G級達はなぜ平然と……

 疑問だらけだ

 

 

 そんな下位の様子を見て

 「3年位前だったか?」

 ガストンが話を振る

 

 「ホッ、そのくらいだな」

 

 説明してもらう

 

 前回のラオの防衛戦の直後

 突然新人のガンナー達による反乱

 があった。

 

 やはりギルドが手薄になっている

 時だった、

 しかしアッと言う間に殴り倒してしまい、

 背後関係が分からなくなってしまった

 

 「背後って何ですか?」

 カンナがガルダに聞く、

 すっかり敬語になっている

 

 「フム、そいつらは利用されただけでな」

 

 「ホッホッ、何も知らんでなぁ」

 パイプに火をつけ

 「その時ギルドの近くで様子を窺って

 いた奴らがいたらしくてな、

 街の酔っ払いが見ていたら、

 失敗した途端に馬車で走って

 逃げたそうだ」

 

 「馬車……ってことは!」

 

 「おそらく貴族の誰か……でしょう」

 ハインツが静かに言う

 

 「反乱が成功したら、大威張りで

 登場するつもりだったんだろ♪」

 

 今まで聞いて来た話から理解できる、

 貴族の中にはギルドを利用したい、

 支配したがる者がいる

 

 「じゃあ今回捕まったのは……」

 

 「わざとに決まってんだろ!!」

 「ギルドマスター、もう少し真剣に

 演技しろよ!!」

 「嘘くさかったぜ!!」

 「ギャハハハ」

 ギルド中が笑う

 

 「あの、皆はボウガンが……その、

 怖くなかった…ですか?」

 下位達がウンウンと頷く

 

 G級の一人が

 「あのなぁお前ら、想像しろ」

 ボウガンをこっちに向ける

 「レウスのブレスとどっちが怖い?」

 

 納得する、普段モンスターの攻撃を

 かわし続ける人にとっては……

 凶器にはならないんだ……

 

 

 

 「だから皆が演技して時間稼ぎ

 してる間にさ♪」

 

 「街中を走り回った訳だ、馬車を

 探してな」

 ガストンが豪快に笑う

 

 

 

 『どこにも居ないわ』

 そういう事か!!

 

 「アッハ!尻尾を掴もうとしたのよ!」

 

 「ホッホッホッ、今回は違う手で

 来た……と見るべきかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エリア1

 

 ここまで離れると露店も人も居ない

 

 「ここまで来れば良いだろ」

 シュウ達はゼエゼエ息を切らす

 

 「シュウ!!これからどうすんだよ!!」

 

 「お前が絶対上手く行くって言うから

 乗ったんだぜ!!」

 

 「お前らこそ乗り気だったじゃねぇか!!」

 

 シュウ達は責任の擦り合いをしている

 

 と

 

 

 

 

 「あらあら、まぁだこんな所に」

 音も無く近付く影

 

 

 

 ビクッと振り返る、

 ベッキーがニコニコしている

 

 「ベッキー……?」

 

 「まさかギルドナイトって……」

 

 「ベッキーなのかよぉ!!」

 ゲラゲラ笑う

 

 「あら、オカシイかしら?」

 顎に人差し指を付け首を傾げる

 

 「女一人で勝てるとでも思ってんのか!!」

 

 「お笑いだぜェ!!!」

 

 「おい、シュウ!コイツ人質にして

 にげようぜ」

 

 「あぁ!利用できるぜ!」

 シュウ達は取り囲む、下卑た笑い顔で

 

 

 

 「あらあら……クズって大好きよ♪」

 背中からギルドナイトセイバーを抜く

 ニコニコ笑いながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うわーバカだわぁ……」

 エリア1の高台に寝そべり、双眼鏡を

 覗く女

 

 僅かな月明かりの中様子を見る、

 谷間の反響で、身の程知らずな男達

 のバカな会話が聞こえる

 

 メイド装備のまま正体晒してる意味も

 理解出来ない男達……

 

 それは『絶対に討ちもらさない』

 自信の表れなのに

 

 「ま、着替える時間も無かったか」

 

 失敗した場合の未来予測さえ

 出来ない馬鹿共、騙すのは簡単だった

 

 収穫はあった、噂に名高い

 ギルドナイトがギルドのマネージャー、

 当然と言えば当然

 

 ハンターの個人情報まで知ってるし。

 

 「馬鹿と鋏ってね~……」

 

 

 

 

 ナイトの特定、任務完了

 

 

 

 

 

 

 

 「ストッ!」

 

 

 

 

 「……え?」

 右手の甲に……投げナイフ……

 しかも麻痺!!!

 

 「グビッ」

 

 後ろから何かを飲む音、

 バカな!気配が無かった!

 いつから!!!

 

 「今来たとこじゃ」

 

 読まれてる!?

 こっちはうつ伏せ!圧倒的不利!!

 もう一人いた?!

 

 何か逆転出来る手は……

 

 

 「無理だのぉ」

 

 麻痺が解けるまで時間を稼ぐしか…

 こっちの思考まで読まれてる!

 

 「参った、無理!降参!」

 話で時間を伸ばすしかない……

 動けなくしたのは尋問するため……

 

 「グビッ」

 

 「聞きたいんでしょ?全部話すから」

 動けない……

 

 「興味無いんだがのぉ」

 

 

 

 小さな足音が来る

 

 「おや、終わったようですにゃ……

 ようですな」

 

 

 猫族?!

 

 

 

 「聞いてあげましょうよ」

 崖を駆け上がって来た影

 

 「終わったのか?」

 

 「はい」

 

 「上出来じゃ、声を上げさせなかったのぉ」

 

 「全員ノドを一撃で♪」

 

 

 

 マズイ!!更に不利!!……どうする

 「ね、ねぇ、依頼内容とか聞きたくない?」

 

 「ギルドに反乱を起こす事か?」

 

 「それとも反乱があった『事実』が

 欲しかったかしら?」

 

 

 

 

 

 「……くっ、そうよ、事実が欲しかった」

 だめだ……全部読まれてる

 

 「貴族は交渉材料に

 したかったんだのぉ」

 

 「ギルドの統治に問題あり、

 とか言いたかったんでしょうね」

 

 

 「そうよ……依頼主とか聞きたくない?」

 

 「どうせ知らんじゃろ」

 

 「事実と嘘を混ぜる…基本よね」

 

 

 何なんだコイツら!!

 「本当よ!王宮の人間に依頼された

 んだから!!」

 

 「王宮の人間だったと思っとらんか?」

 

 「え……?」

 確かに王都の中心地の……

 王宮の前で……依頼を……

 

 「本当に王宮の人間だと裏は取ったの?」

 

 「裏……」

 

 

 

 

 「この程度のヤツを送り込むとはのぉ」

 

 「人材不足でしょうか……王宮に

 出入りしてる所まで見た?」

 

 

 

 「ちょっ、ちょっと待って!!裏って……」

 

 

 

 「グビッ」

 

 「暗殺家業はね、先ず依頼主と

 依頼内容を事実かどうか確認するのよ」

 

 「でないと罠の確認に送られて、

 今のお前のようになるからのぉ」

 

 

 「罠!どういうこと?!」

 うつ伏せのまま叫ぶ

 

 「罠だらけの敵地を散歩する馬鹿は

 おらん」

 

 「自分の前を捨て駒に歩かせるわ」

 

 

 

 「私が捨て駒?!」

 捨て駒はあの男達……

 私が利用したはずじゃ……?

 

 「お前は気付かなかったんじゃ、

 シュウ達が罠だった事をのぉ」

 

 「監視対象ですにゃ……であります」

 

 

 「奴らが罠?!」

 アイルーが監視してた?!

 

 

 

 「組織に干渉したいなら組織の

 内情を良く知り、

 尚且つ組織に反感を持つ者……」

 ベッキーは指を立て

 「こんな連中が一番利用しやすいわ」

 

 

 

 何処まで!!

 「私は騙されたの……?」

 

 「都合良すぎると思わなかった?」

 指をクルクル回す

 「『俺は馬鹿です』って顔に書いてある

 ギルドに要らない連中を、

 なんで生かしてると思う?」

 

 

 

 私は罠に……

 

 「簡単だったじゃろ、今ギルドは

 手薄だ、とか」

 

 「抜刀禁止って事は、武器持ったら

 G級でも勝てないから……

 とか言ったんでしょ」

 

 

 

 その通り……だけどね……

 馬鹿め!……もうすぐ麻痺が切れる

 イチかバチか!

 

 起き上がる瞬間

 

 

 

 

 「ストッ!」

 

 太ももに投げナイフ、また麻痺

 

 

 「ぐううっ!」

 

 今度は仰向けで麻痺

 …………しかも

 

 「え?!えっ!何?!コイツら」

 

 ロクスとベッキー、そしてアイルーが

 一匹、それはいい

 

 それより自分の回りに白くて小さい

 何かが数匹……

 

 「な!?何よこれ!!」

 

 「北の雪だらけの辺りで発見された

 新種でのぉ」

 

 「ギギネブラって命名されたわ」

 

 「吸血により成長しますにゃ……

 成長します」

 

 白くて丸くて小さなフルフルのような

 何かがカジリ付く

 

 「ヂュッヂュッヂュッ……」

 

 「ちょっと!やだ!助けて!!」

 

 「体温を感じて接近するからのぉ、

 クーラードリンクを飲むとな、

 襲われ難いんじゃ」

 

 さっきから飲んでいたのは!!

 

 「気付くべきだったわね、話を聞く気が

 無いのに麻痺投げナイフで

 動きを止めたことに」

 

 「やだ!こんな!まだ死にたく無い!!!」

 

 

 

 

 雲が晴れ月明かりでハッキリ周りが

 見えるようになる

 

 白い何かに血を吸われる女は

 戦慄する、目の前でモンスターに

 殺されそうなのに

 

 無表情で見ている女とアイルー……と

 満面の笑みでニコニコしている男

 

 「生き餌がガタガタうるさいのぉ」

 

 ロクスの顔が好好爺から悪鬼の如く

 変わっていく

 

 「た、たすけて!!、私は依頼主に

 忠誠なんて無いの!!

 雇われただけなのよ!!

 何でもするから……」

 

 

 「……見苦しいですね」

 

 「何でもすると言ってものぉ、

 金で裏切り信念も無いヤツなんぞ

 ワシはいらん」

 

 血を吸われ体温が下がったのだろう

 女は震えながら気を失なった

 

 

 「ベッキー、血の匂いが強いのぉ」

 

 「湯浴みすると伝えましたし」

 ニコニコ笑う

 

 

 

 

 ………………

 

 

 

 ギルドマスターの部屋の窓から

 ベッキーが入る

 

 「ホッ、湯浴みはどうじゃった?」

 

 反り血を浴びたベッキーは

 「粛清は完了しました、

 残りは師匠が見ています」

 

 帽子を取ると

 「半年前の粛清中止、理解できました」

 

 「ホッホッ」

 パイプを吹かす

 「何よりも恐ろしく、防ぎ難いのは

 人の悪意よ、ギルドに向かう悪意を

 どう利用するか……

 それを考えるんじゃ」

 

 「それであの子達を泳がせた

 訳ですね?」

 

 「まんまと引っ掛かっただろう」

 

 「私はまだまだですね」

 首を振る

 

 「それにな?わざと差別される少数を

 組織に入れておくとな、

 組織の悪意もソコに向かうからな、

 安定するんじゃ」

 

 ベッキーはキョトンとする

 

 「一番態度が悪い連中がいるとな、

 多少の事は許せるもんじゃ、

 カンナが仲間ハズレにならなかった

 じゃろ?」

 

 「組織の運営……勉強になります」

 ベッキーは一礼する

 

 

 

 「ロクスのヤツはどうする気かな?」

 

 「殺しはせず、逆に貴族を脅す

 材料に……なりそうもない女でした」

 

 

 

 

 そこへ一匹のアイルーが窓から

 入って来る

 「私の任務は終了ですかにゃ……

 ですかな?」

 紳士的で毅然としている

 

 「お疲れ様でした」

 ベッキーが一礼すると

 

 「そんな、上官の貴女が……」

 こちらも一礼

 

 「ハインツの教育の賜物だなぁ、

 馬鹿共の追跡ご苦労だった」

 

 「横流しの件は本部預かりとします、

 では!これにて!」

 赤いコートを羽織ると窓から出ていく

 

 

 「凄いですね、人より頭良さそう」

 

 「人の社会に馴染む速度が早いなぁ、

 まさかギルドナイトの末席に

 アイルーが入るとはな」

 

 

 

 

 「シュウ達の監視ができるとはのぉ」

 ロクスは扉から入ってきた

 

 

 「あの女はどうしました?」

 

 「生きとるから縛ってキャンプにな、

 片腕で力が入らなくての」

 

 「回収して来ます」

 

 「頼む」

 

 「ホッホッ、新しいオモチャは使えるか?」

 

 「腹一杯になると、吸わなくなるのぉ」

 ギギネブラの子供が入った籠を

 パシパシ叩く

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