生きる事は悩むこと   作:天海つづみ

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人との距離を近くするには腹を見せる、
隠し事をしない、嘘をつかない、

カミングアウト


その勇気を持てる人を
私は尊敬する。


正直

 

 「よくこの船が分かったなぁ?」

 ナマズのような髭を弄りながら

 太った船長が笑う

 

 「ゼニスさんに教えて貰いました」

 

 「あのギルドナイトか、縁があるのぉ」

 

 

 「おいクロフ!ギルドナイトに

 知り合いが居るなんて聞いてねぇぞ!」

 ……クロフは何者なんだよ

 

 「私もビックリしたよ!

 以外に顔広いじゃん!」

 裏の世界の人とクロフって、真逆じゃん

 

 

 「あの人は……」

 飛行船から降りて来たこと、

 ラオの調査に来たこと、

 その帰りについでに送って貰った

 事を説明する

 

 

 

 「なんだよ……そういうことか」

 イシズキは安心する、ボーッとしたクロフ

 と暗殺者と言われるギルドナイト、

 違和感しかない

 

 

 

 

 反乱の一件でギルドナイトが何なのか

 クロフは大体理解したが、

 ゼニスが暗殺者?とは思っていないし

 思えない、

 ゼニスは優しいと思っている

 

 

 「なんかさ、精悍って言うかさ、

 カッコいい人よね!!」

 カンナがトーンをアゲて言う

 

 

 

 背は少々低いが浅黒い肌と

 毅然とした物言い、

 帽子を深く被るから、一見カッコいい男

 

 ハインツさんの時といいカンナは

 顔で人を選んでる(男限定)

 

 その淡い期待と興味を打ち砕く

 言葉がある、

 クロフは少し意地悪な気持ちに……

 

 「ねぇクロフ、ゼニスさんの事……」

 

 

 

 

 

 

 「……女の人だよ?」

 クロフはニヤッとする

 

 

 

 

 

 「……え……ええっ?!!」

 鳩が豆鉄砲

 

 

 「だッヒャッヒャッヒャ!!」

 

 「うっさい!!イシズキ!!」

 カンナの顔が真っ赤

 

 船員達も笑う

 

 「ヌシに仲間が出来たか、嬢ちゃんも

 喜ぶだろうのぉ」

 ニコニコする船長

 

 「パティ元気にしてますか?」

 

 「元気だがの、手紙1つ寄越さんから

 怒っとった」

 

 「手紙っ?……!」

 今度はクロフが鳩豆

 

 「まさかオメェ手紙書いて無ェとか……」

 

 「半年以上もぉ?!彼女にぃ?!」

 

 「あれ……なんか……ダメ?」

 非難の目線が集まる

 

 「よし、伝書鳩を飛ばすかの」

 

 

 「船長、あのギルドナイトは

 何してたんだ?」

 イシズキがタメ口で

 

 顎を擦りながら

 「なんでもなぁ、変わった荷を

 運ばなかったか聞かれたのぉ」

 

 「変わった?」

 

 「中身が分からねぇモンとかだよ」

 若い船員

 

 「あの港の船全部に聞いて

 回ってたようだの」

 

 大小様々な船があったが……

 

 

 

 

 

 

 港町から北東へ陸地に沿って進む船、

 一応客であるクロフ達は基本ヒマ。

 

 「もう1人は船室から出て来んのぉ」

 

 「マリンも外出れば良いのに」

 

 海は快晴、気持ちの良い風

 

 「いいじゃねぇか、3日は海の上だしな」

 

 クロフは揺れる中小さい紙と格闘する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クロフなら平然と受け止めてくれる、

 ……確証は無いけどそんな気がする

 

 イシズキはもう話したから大丈夫、

 

 問題はカンナ……嫌われるだろう

 

 何て言われる……怖い……

 もしもこれでパーティーがバラけたら、

 私はこれから……

 

 暗い船室、自問自答を続けるマリン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜、月明かりと凪いだ海、

 小さな蝋燭の光の中四人は集まる

 船室でマリンが話始める

 

 「何?話って?」

 カンナは何も察していない

 

 「まぁ、聴いてやろうぜ」

 出来るだけフォローする覚悟の

 イシズキ

 

 「……?」

 ボーッと聞いているクロフ

 

 「私が上位になりたかった理由だよ、

 聞いてもらわないとさ、

 後で知ったら裏切られたと思うかも

 知れないし」

 

 「裏切り?」

 カンナの眉間に皺が出来る

 

 「仲間には正直でありてぇ、

 嘘は言いたくねぇって事だ」

 イシズキが真剣に話す

 

 「難しい話だね」

 頭がついていかないクロフ

 

 

 

 

 

 2年数ヶ月前のドンドルマ

 1人の少女……とは言っても

 恵まれた体格の(男なら)ハンターが

 ギルドに入る

 

 

 いつものように、そのガタイに目を

 着けられた……そう思ったが……

 

 

 「新人か?」

 クック装備の男、大剣を担ぐ

 

 「ちょうど良かった!」

 ランポス装備で片手剣の男

 

 「あ、今来たばかりで……」

 

 「私らの仲間にならない?」

 弓を持つ少女

 

 ドンドルマに来てすぐにパーティーを

 組めた、しかし……

 

 マリンの役目は荷物持ちだった

 

 

 

 

 「荷物持ちぃ?!」

 カンナは声を上げる、

 想像が出来ない、真っ先に大剣で

 斬り込むマリンのイメージからすると

 余りにも不自然。

 

 「そう、戦うのもシロウトだし

 役立たずだったよ」

 

 

 でもパーティーはそれなりに強くて

 順調にクエストをこなして行った、

 私も必死で付いていった、

 

 ……付いていってるつもりだった。

 

 

 「つもり?」

 クロフが不思議そうに

 

 「皆優しくてさ、色々やってくれるの、

 調合とか、だから私は覚えなかった」

 

 

 ほとんどシロウトのままで上位検定

 まで進むマリン、楽観していた。 

 

 

 

 

 

 「……言いたい事は分かったわ、

 ……地雷だったんだ……」

 カンナは怒ってる……のか?

 

 「地雷?!」

 マリンが?想像出来ない

 

 「たまに居るんだ……このタイプは」

 腕を組み俯くイシズキ

 「周りが優しすぎるとよ、全然

 強くならねぇんだよ」

 

 

 そう、女で愛嬌振り撒くタイプに多い

 らしいけど、自分がソレになっていた。

 何の実力も無い、知識も無い、

 そんなハンターとは名ばかりの

 シロウトが上位検定まで来てしまった。

 

 

 「信じられない」

 クロフは首をかしげる、

 シロウトのマリンが想像できない

 

 「最悪なヤツはG級まで進むらしい

 からな……本当に怖えぇよ……

 自分がG級の腕になってると

 思い込んでるヤツまでいるからなぁ」

 

 

 

 

 「……私には分かんないわ!」

 ソロで戦う事が強さ、誇りにしてきた、

 自慢できた

 「師匠は1人で狩れて一人前って

 言ってたよ!」

 

 「あ、それ俺も言われた」

 クックをソロで

 

 「お前らの言ってることは正しいぜ?

 だけどよ、俺らは師匠が居なかった、

 お前らが当然と思う事さえ

 知らなかったんだ」

 イシズキはフォローする

 

 

 

 

 リーダーやってた彼は勢いがあって、

 「大丈夫!俺にまかせろ!」が口癖で……

 私もソレが頼れる、信頼出来ると

 思ってた……

 カッコいいとさえ……

 

 

 「無謀で無計画ってことよね」

 言い方がキツイ、初めて会った時の

 口調に戻ってきた

 

 「カンナ、オメェだって調合とか

 人任せだったろ?」

 

 「なによ!!」

 自覚はしてるが感情が邪魔する

 

 

 カンナの言う通りだよ、若さと勢い、

 今思えばリスクだらけで無茶な狩り

 ばかりだった……

 堅実とは程遠くてさ……

 回復系のアイテムだけは目一杯

 私が持たされたけど、

 補助アイテムはほとんど無かった

 

 

 「そんなの……ちょっと怖い……

 持てるだけ持って……」

 クロフは呟くように

 

 「臆病だからこそ備えてっからな」

 クロフを見て笑う

 

 「……」

 カンナは黙る、自分もいい加減だった

 

 

 初めてクロフと組んだ時は驚いたよ、

 光虫と素材玉まで全部持って来た

 からね、

 堅実だった。

 

 

 マリンは溜め息を1つする

 

 

 そして上位検定まで来てしまった、

 何とか戦っていたけどね、分断する

 知恵も無かった、

 肥やし玉さえ持って無かった。

 

 期限の時間が迫っていた、そんな時だ、

 

 

 

 

 

 

 「大丈夫、俺にまかせろ!」

 大剣のリーダー

 

 「ここまでかなりダメージ与えたからな

 もう少しだろ?」

 片手剣を研ぐ

 

 「時間掛かっちゃったけど行けるわよね」

 矢の数を確認

 

 「あの、アイテムの数も少ないし……」

 マリンはオロオロする……

 

 言えない……リタイア……

 

 

 「大丈夫だ、いけるって!

 両方弱ってんだし!」

 

 「マリン、私達に任せとけばいいのよ」

 

 「よし!!行くぞ!!」

 

 場所は森と丘の巣穴、リオス夫婦と

 戦った

 

 

 

 「あんな狭いとこで?!」

 クロフが珍しく声を上げる

 自分なら絶対に同時に相手にしない、

 壁際に追い詰められやすいため

 一頭でも慎重になる。

 

 カンナは既に顔を背け壁を見ている

 

 

 

 閃光玉さえ無い、残りの回復薬も

 数個しかない中で乱戦になった、

 私は攻撃を食らわないように逃げ回る

 だけで精一杯だった

 

 

 

 

 「それで……」

 最悪を予測するクロフ、ネコタクは……

 間に合わなかった……のか?

 

 

 うつむくマリン

 「食いちぎられる瞬間にさ……

 目が合ったんだよ……口がさ……

 助けてくれって……」

 

 両手で顔を覆う

  「逃げ出すしか無かったぁ…あああぁ

 あうぁぁああ…… !!」

 

 

 「最っ低ぇっ!!!!」

 

 「カンナぁっ!!」

 

 にらみ会うカンナとイシズキ

 

 

 

 「リタイアするべぎだ……この一言が

 いえながっだ……

 何の実力も…うっぐ…

 無いために止められ無がっだぁ!……」

 泣きながら話すマリン

 

 

 

 

 

 

 ………………

 

 

 長い沈黙

 

 ようやくマリンは少し落ち着く

 

 「上位になれたらさ……あの頃の

 自分と……決別出来る気がして」

 涙を流しながら言うマリン

 

 上位に拘り続けた理由

 

 

 

 「なぁクロフ、俺だってクズだった……

 けどよ、お前は受け入れてくれたよな?」

 

 「受け入れた?」

 分かって無いクロフ

 

 「パーティーから追い出さなかったろ?」

 

 いまいち理解出来ない、

 その必要は感じられない

 

 

 涙を擦りながら

 「もしも受け入れて貰えないなら……

 ジャンボ村に着いたら私は引き返す、

 ……ドンドルマにも行かない、

 故郷に行くよ……」

 

 

 「仲間見捨てたんだね!見損なった!」

 乱暴にドアを開け外に出ていく

 

 「カンナぁっ!!」

 イシズキは止めようとするが

 

 「いいんだ……イシズキ……」

 小さくなるマリン

 

 

 

 

 「クロフ……お前どうする……?」

 

 クロフはポカンとしている、二人は

 違和感を持つ

 

 

 話聞いてたよな?

 

 

 

 「な、なぁクロフ、これからどおしてぇ?」

 

 

 

 

 ……分かんない、分かんないけど

 

 

 

 

 

 

 「このパーティーで笑いたい」

 クロフは平然と言う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポカーンとする二人

 

 

 

 「プッ!!」

 マリンが吹き出す

 

 「あー……」

 イシズキは顔を抑え首を振る

 

 そうだよ、コイツはそういうヤツだ、

 嘘言わねぇし調子にも乗らねぇ、

 駆け引きなんて知りもしねぇ

 

 バカなんだ、

 人の気持ちとか感情に疎い

 子供みてぇなヤツなんだ、

 素直に気持ち言いやがった。

 

 

 だからこそ救われた

 

 

 

 

 

 ……俺達は今コイツに救われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1人で夜の海を眺めるカンナ、

 明かりがないため星がよく見える

 

 村では当たり前だったけど、

 ドンドルマに来てからは見てなかった

 

 1人でこうして考えるのも久しぶり

 

 

 「外は風邪ひくぞ?」

 船長が酒瓶片手に甲板へ来た

 

 「あ……」

 

 「壁が薄くてなぁ、聞こえてしまっての」

 太った体を揺らしカンナの傍らに座る

 

 「よっこいしょ…裏切られたと思うか?」

 

 「そうじゃないような……」

 気持ちの整理が出来ない、

 色々な感情が沸いてくる

 

 「信頼しとるからこそ話したんじゃろ

 ……たとえ嫌われても

 知って欲しかったんだのぉ」

 

 「…………」

 

 

 「ワシも元はハンターだからなぁ、

 知っとるよ……あのタイプは珍しい」

 

 「珍しい……」

 

 「見た目が良い女でハンターだとな、

 何かと周りの男が世話を焼きたがって

 なぁ、半人前が出来上がる」

 美人ではないがの、と小声で言い

 グビッと酒を飲む

 

 「半人前……」

 

 「半人前で逃げ出した、そんなヤツと

 組んでいたら自分が見捨てられる…

 そう思うかの?」

 

 「…………」

 

 「思わんじゃろ?」

 

 「分かんないわよ!!

 見捨てたのは事実でしょ!!」

 

 「想像してみるんじゃなぁ、過去の話と

 今の自分達を比べてなぁ」

 

 「比べる……?」

 

 

 

 「さぁて、冷えてきた、寝るとする」

 船長は立ち上がり中に入る

 

 

 

 

 森と丘の巣穴、私達で2頭同時……

 

 ピンチになったらマリンは……

 

 逃げる……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶対にそれは無い!!

 

 なぜか分からないけど確信できる

 

 それはなぜ?

 

 今までの行動?態度?言葉?

 

 

 

 「分かんないよ……」

 

 頭を抱える

 

 「聞かなきゃ良かった……」

 

 

 

 

 

 

 ………………

 

 

 

 

 

 

 ジャンボ村まで数時間

 

 「クロフ、このままじゃパーティーが

 バラけるぜ?」

 

 「それは……ヤダなぁ……」

 

 「何かイイ手はねェか?」

 俺には気の利いた事なんか言えねぇ、

 クロフに頼る他ねぇ。

 

 

 

 師匠が言った

 『気持ちを伝えたいなら言葉で話す、

 これしかないんだ』

 気持ち……今の……俺の気持ち?

 

 

 

 

 

 

 カンナは1人でボーッと海を見ている、

 いつも騒がしい雰囲気を纏っている

 のに

 

 「あの……」

 

 「何よ?」

 

 「マリンの事、嫌いになったの?」

 

 「別に、裏切るヤツだなんて

 思わなかっただけよ」

 クロフの顔さえ見ない

 

 クロフは少し考え

 「マリンは俺達は裏切ってないよね?」

 

 「そう……だけどさ……」

 うつむく

 

 「俺はマリンに居て欲しいし……

 笑いたい」

 

 「はぁ?」

 クロフに向き直る

 

 

 

 「またみんなで大笑いしたい」

 

 「ちょっと、何言ってんの?」

 子供かコイツは

 

 「カンナはマリンをどうしたいの?」

 

 「私は……」

 どうしたいんだ?自分の気持ちが

 分からない

 

 マリンは過去に逃げ出した、

 実力が無くて死ぬのは目に見えてた。

 

 今は実力はあるし…頼れる。

 

 話してくれたのはなぜ?

 

 『正直でありてぇ』

 イシズキが言った……正直……

 正直にマリンは話した、

 コイツも正直だ、嘘が言えない、

 

 私は……

 

 

 正直……

 

 

 正直……

 

 

 正直……な気持ち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「マリン!!」

 乱暴に客室の部屋を開けるカンナ

 

 「え?……あ……」

 暗い船室

 

 「出てきなさいよ!!」

 

 「許して……?」

 

 「もう何かゴチャゴチャ嫌だしクロフ

 に問い詰められるのもイヤ!!」

 

 「え?」

 泣き腫らした顔のマリン

 

 「一緒にクロフの彼女見るよ!!」

 

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