「ここでラオと鉢合わせしたのか」
密林の3番、四人で湖面を眺める
「そう、あっちから最初に角が……
水面からザバァって……」
状況を説明するクロフ
「動けなかったのが今は解るわ」
マリンは苦笑い、あんなバケモノ……
クエストはクック、今の四人には
余裕で観光気分
若い木が生えて来ているが、まだまだ
クロフの背丈程にも届かない、
元のジャングルに戻るには
数年掛かるだろう
「それで?原点に帰った訳だけど……
どう?何か感じる?」
マリンがクロフの顔を覗き込む
「良く分かんないけど……
なんか小さい」
「村が?」
「何か……こう……全部っていうか」
手を広げて表現しようとするが、
全然できない
「自分がデカくなったんじゃねぇの?」
「よく言うわよね、故郷が小さく
見えるって」
ヤオザミがノソノソ歩いている、
蜂の巣もないし虫も居ない
「ここも小さい頃からハチミツ採ったり
してたんだけど、何だか……小さい」
見回す、以前のジャングルに比べて、
空に木もないしスカスカなエリア
「あぁ、パティに食わせるためか」
「良く面倒見たわね、親子以上かも」
イシズキとマリンは理解する、
クロフは子供の時代が辛かった分、
人には優しいようだ
パティを優先するあまり、自分を出さず
押し殺す内に感情が無くなった、
いや、感情の出し方が分からなくなった
そして食べ物を貰うために
人の顔色は見てきた、
人を怖がってきた
パティにとって命の恩人
カンナは全く喋らないが、
ようやく口を開く
「ねぇマリン、ちょっと二人で話したい
んだけど……」
「うん……分かったわ」
クックの捜索は二人に任せて
キャンプへ
水辺で納品ボックスに寄りかかり座る
「……で?話って?」
船の件で私に何か……
納得してないんだろう……
それともパティへの文句か?
「クロフって……どう思う?」
カンナは体育座りで顔を伏せる、
どうやら照れている
(うわぁ!…どうしよ!それ聞く?!私は
年上でも恋愛経験無いんだよ??)
冷や汗を出しながら
「た…頼れるし……知識あるし……
だ……だけど
初対面だと頼りないか…な?」
「あのさ……カッコいいって思わない?」
(待ってよ!見た目は大人しい男だよ?
特にカッコいいとは思わないよ?
私に相談するかソレ?!)
「どっどど……どの辺が?」
「だってさ、四英雄の弟子だし、
上位になったのも早い方だし……
それにさ、ハンターとして強いし」
あんただって四英雄の弟子でしょ?!
そういうのは付随する条件であって
本質ではないと思うんだけど……
完全に恋だわ……
悪い所が見えてない……
「ね、ねぇ?カンナはさ、クロフの性格とか
好きになったんじゃないの?」
「分かんないの!理由が無いの!
気が付いたら好きになっちゃた!」
ブンブン首を振る、ツインテールが
空を切る
「私がクロフと組んでるのはね、
堅実なところ……それに……」
空を向く
「この前私を受け入れてくれた事も…
カッコいいとは思わないけど
尊敬出来る人かな」
……そうか……
「何で好きになっちゃたのかな……」
耳まで赤い
パティが現れたせいでカンナは
自分の気持ちに気付いたんだ、
今まで解らなかったんだ……
私は片思いはしたことあるけど
どうしたら……
「あ!ペイントの匂い」
カンナが顔を上げる……真っ赤
「急いで合流しよう!」
立ち上がりカンナを急かす
(助かったぁぁ!!)
村に帰って来た四人、しかし……
ドンドルマでレウス狩りと呼ばれた
カンナだけなぜかボロボロ……
ほとんど避けれなかった
「カンナ、何だか今日は動きが
オカシかったよ?」
顔を見るクロフ……
真っ赤になるカンナ
「らしくねぇぜ?どうした?」
二人に質問され、しどろもどろ……
明らかにいつものカンナではない
マリンがフォローする
「あー、えーと…気になってる事がね、
色々あるんだよね」
うつむき顔が真っ赤のカンナ、
動きがオカシイ?
らしくない?
なんか……
なんか……
ムカつく!!
「誰のせいだと思ってんのよ!!!!」
突然叫び道具屋の方へ走り出すカンナ
「どうして怒ってんだろ?」
クロフは首を傾げる
「あー……」
イシズキがマリンを見ると頷く
こればっかりはどうしようもない、
本人達以外は何も出来ない
しかも中心にいるヤツが……
「朝御飯の時は機嫌良かったのに…
パティと楽しそうに話してて」
この鈍さ!!
「ヤハハ……そっちも大変みたいだね」
いつの間にかマリンの後ろで
小声で言う村長
「え?『も』って?」
「ヤー…こっちはこっちで……」
クロフを道具屋へ行かせてから
村長は話す
今朝パティがギルドの食材を持ち出して
しまった為に、船乗りや行商人の
食事の質が落ちたらしい。
味は普通でも美人のパティが作って
くれる料理は、海の上ばかりの
船乗りにはご馳走であり
楽しみなのだ。
そしてこの交易船はジャンボ村に
とって大事な現金の取引先でもある、
大事な客の扱いを雑にすることは、
いずれ村に損をもたらす。
「クロフから注意させられないかな?」
村長も弱っているようだ
「村長なんだから注意すれば
いいんじゃねぇの?」
「ヤー……パティは優秀でね、
オイラの方が注意されっぱなしで……
こんなことは初めてで……」
「クロフを通じてパティとカンナを……
こう……注意させる……」
マリンは考えるが、クロフはマルクに
さえ怒る事も出来なかった、
自分の気持ちをそのまま言うだけ
の子供……
「出来ないよねぇ……」
ギルドで相談していると、船乗り達の
視線が集まる、不満があるようだ、
クロフが原因であることは確かだ
村のリスクとパーティーのリスク、
同時に発生した問題……
解決出来るのは素直で鈍い子供……
人に意見を言うことは出来るが
説得なんて……
しかも恋愛絡み……
悩んでいるとヨシが道具屋から
ギルドへ来た、
なぜかカンナを連れている、
カンナはうつ向きトボトボ歩く
「村長、ちょっといいか?」
「あれ?クロフは?」
「アイツは店に待たせてある」
パティとカンナを並んで立たせる、
村中の人と船乗り達が注目する
ヨシは咳払いを一つすると
「まず、二人ともクロフを気に入って
くれてること、これは感謝する」
ヨシは二人に礼をする
パティの前に立つ
「まずパティ、今朝の料理を食って
おいてすまないが、お前はギルドの
食材を持ち出したそうだな?」
「はい……」
小さくなるパティ
「それは船乗りと行商人を軽んじた、
そして先々村にとって損になる……
解るな?クロフにとって嬉しい事か?
……違うだろう……のぉ?」
ハッとした表情の後涙をうかべるパティ
「ごめんなさい……私……」
「さて……カンナ、もう言いたい事は
解るな?」
カンナもうつ向きシクシク泣く
「回復薬を買うのは良い、家の稼ぎに
なるからな、しかしだ、
上位のハンターともあろうものが
クロフに気を取られ
下位のクック相手に苦戦するか?
それは仲間を危険にした、
つまりクロフの足を引っ張っているな?」
「ごべんなざぁ…い」
グシャグシャの顔で泣くカンナ
「謝る相手が違う、危険にさらした
仲間に言うんじゃ」
マリンに抱きつき泣きながら謝る
パティも船乗り達へ謝る
「ごめんなさい……大事な仕事を……」
「いいんだよパティちゃん!」
「そういう事もあるわな!」
「また旨い料理頼むよ!」
船乗り達も騒ぐ
「二人で畑に食材を取りに行け、
ワシからは以上だ!」
「ヤー……助かりました」
村長は一礼する
「村長、間違いは間違いだ、キチンと
正しておかねばのぉ、
目の前の確執に気をとられて
結果クロフの足を引っ張っとる」
ヨシは道具屋へ帰って行く
「カッコいいぜ、あぁいう風になりてぇな」
イシズキが笑う
「年季が違うわよ、言葉の重みがさ」
マリンも苦笑い
「ヤハハ……助けられちゃったなぁ、
オイラの方が年上なのに」
「「え!?」」
畑へ行く二人を見送る、と、
道具屋の方からクロフが来る
「何かあったの?」
キョロキョロするクロフ
「はぁぁぁー……」
全員が溜め息、
場が一気にシラケる
クロフの肩に手を置くと
イシズキがニヤケながら言う
「お前が主に悪い」
「???」
夕方
ギルドで村中が集まっているなか
「そういえば嬢ちゃんに荷物がなぁ、
服みたいだぞ」
船長が包みを持って来た。
「私に……ですか?」
封蝋で止められたヒモを解くと
手紙が出てきた
「ヤー……研修に行ってた町から?」
この村以外にパティを知ってる人は
そこくらい
名前を読む
「いえ……違うようです……
四英雄のナナキさん?!」
ビックリするパティ
「えーっ?!師匠からぁ!!」
カンナが叫ぶ
「あの子すごいじゃねぇか!!」
「また四英雄の弟子かよ!!」
「しかも最強って言われる人だろ!!」
船乗り達がドヨめく、
知らなかったらしい
「読み上げます」
パティが静かに読む、全員が聞き入る
「私の不肖の弟子をクロフに育てて
頂いた事への礼として、
何を返したものかと考え、
ヘルパーシリーズ一式をお送りします」
包みからは新しい衣装
「ヤ?!クロフ!!育てたってどういう事?」
「え?…あの…分かんない」
「あーそっかぁ……」
カンナが納得する
「いつの間にかクロフが師匠に
なってたかも」
ナナキに教わったのは最初の一月、
そのあと体の成長と共に才能は消え、
クロフと組んでから学んだ事は多い
「あれ?じゃあ俺達もそうじゃねぇか?」
気が付けばナガエより一緒の期間が
長い
「クロフの堅実さを学んでたわ」
以前はソロが多かったが……
いつの間にか組んでいる
村長に勧められ着替えてきたパティ
「おぉー!!こいつぁ可愛いぜ!!」
「似合うぜぇ!!」
船乗り達から歓声が上がる、
村の中に花が咲いた様
サイズがピッタリで似合うが……
パティは顔が曇っている
「あのさ、お兄ちゃん……」
怒って……るのか?
「何?」
「何で……こんなにピッタリなの?」
「え?……何が??」
「何でスリーサイズがピッタリなの?」
怒って……る……
「あれぇ?そうだよ、パティと師匠って
会ったことないじゃん、
何でサイズ知ってんのぉ?」
静まり返る
「…私の体……解る人って……
お兄ちゃんしかいないよね……」
船乗り達が立ち上がる!!
「どういう事だ?!!」
「まさかクロフ!!」
「俺達のパティちゃんがぁ!!」
「まさか!!嘘だろぉ!!」
「嘘だと言ってくれぇ!!」
「なぁクロフ?そうか?そうなのか!?」
イシズキがクロフの胸ぐらを掴む!!
「え?何?どういう事?」
察しが悪いクロフ、だが誤解ではある
「男の嫉妬はカッコ悪いよイシズキ」
マリンが笑う
「お兄ちゃん!!私の体のサイズ
人に教えたの?!!」
「知らないってば!!」
ブンブン首を振るクロフ
「こんなボーッとしてんのにテメェ!!」
「イシズキ!カッコ悪いってば!」
「クロフぅ、白状した方がイイよぉ?」
カンナがニヤケる
村中が騒ぐ
「ヤー……トラブルだらけで
気が休まらないなぁ」
糸目が下がる
「退屈せんわな!!」
船長と村長は笑いながら
カウンターで飲む
次の日
道具屋
「おはようございまーす」
「おぉ、カンナ!!来たか!!」
ヨシが笑顔で迎える
「あれぇ?パティは?」
「今朝はギルドで船乗りの朝飯だ」
今日 船は港町に向かう
「いらっしゃいカンナちゃん」
メヒコがパンを運ぶ
「私も手伝うよ!」
「俺が手伝うよ、お客さんだし」
クロフは立ち上がるが……
「あんたは座ってて」
ギルド
仲良く話すパティとカンナ
お互いに争っても利は無いことを
理解したし、
クロフの足は引っ張りたくない
まぁ……腹の中は分からないが
「嵐は過ぎたな……」
なんだかモノ足らないイシズキが笑う
「クロフがハッキリしてればねぇ」
パティ一択だろうけどね、
髪の毛掴んで取っ組み合いなんて
見たくないわ
「ヤハハ……両方でも良いんだけど」
「「え?!!」」
「オイラとしては村の人口が増えて
大きくなればね……」
「この村にとってクロフは…何なんだ?」
「ヤー次期村長にしたいんだけど……」
「クロフの目標は…ねぇ」
「ヤー…書士隊じゃなくなったのか…
村に戻るのがオイラの理想だけどね」
「クロフはハンター続けるのかどうか」
空を見上げるイシズキ、
マリンを見ると
「……覚悟はしておくか……」
マリンと頷きあう