「お代は次の時でいいにゃ。」
そんな取り引き始めてだ。結局持っていた
マタタビ20個その場で交換し
捻れた角を持たされた。
なんだろう この違和感、
何かがおかしくないか?
物々交換は品が揃ってお互いに納得して
成立する。
明らかにクロフは儲けすぎだ、
猫族だって解ってるはず…
次の機会なんてあやふやな…
「くそっ!」
また意味無く言葉が出る、最近多い。
疑問に頭を悩ませながら、1メートルを
ゆうに越える捻れた角を振ってみる、意外
に見た目より軽い、
大剣ってこんな感じだろうか。
森の中の水辺を歩き10番から隣のエリアへ、
狩場は細かいエリアが複数ある、
この森と丘と言われる狩場には
12のエリアに別れる。
その中の3番へ出る、
見晴らしのいい崖の上で広い、樹は数本
だけで下生えの草が風にそよぐ
気持ちのいい場所。
パティを連れて来たらきっと
喜んでくれるだろう、
村の仕事ばかりだし。
しかし…
「クックだ…」
いい気分をいきなり現実に戻された、
幸い距離はあるし、後ろを向いて
地面を啄んでいる、が見付かれば
縄張り意識の本能で攻撃してくる。
もどるか、それともそーっと後ろを通って…
その時
「あああーーっっっ!!!!!!」
「え?」
見るとクックの更に奥の方、岩の影から
ハンターが飛び出した、女の声だ。
黒くて恐ろしげな防具、
背負ったヘヴィボウガン、
そんな出で立ちの人物がこちらを指差している。
左手にブチ模様の猫族を襟首掴んでぶら下げて…
今朝からの出来事が脳裏に流れる…
そして指差してるのはクロフと、
捻れた角…思わず後退りする。
「まぁてえぇーーーーーー!!!!!」
走って来る!!
訳を話さないと、分かって貰わないと、
自分で出来るか?でも今は…
クックの耳が開く、戦闘体制に入った、
敵はもちろん大声出したハンター、
ゴワカカカと唸りを上げ
地面を軽く足で掻く、威嚇して…
全力で駆け出す、全体重を乗せた突進で
ハンターを潰しにかかる。
一方のハンターは走りながらブチを放り投げ
背中のボウガンを展開し…
クロフはボウガンで射撃するにはオカシイと
感じた、だって射撃武器だよ?遠距離武器だよ?
なのに突っ込んで来るクックに向かって
(正確にはこちらへ)走って距離詰めてる。
クックまであと5メートル、3メートル、
1メートル、その瞬間!
「邪魔だーーーーーーーっ!!!!!」
背中に振りかぶったヘヴィボウガンを遠心力
を効かせてクックの頭に叩きつけた!!
「ゴガン!!!!」
えええええええ!!!!?
そんな馬鹿な!使い方オカシイだろ!
そんな思いに支配されたがすぐに自分の
置かれた立場を思い出す。
横倒しになり足と翼をバタバタしながらもがく
クックの横で、こちらに向き直る恐ろしい存在、
ボウガンをハンマーの様に振り回す
規格外の怪物と目が合う。
ギラリ。
「返せーーアタシのツノーーーーー!!!!!」
走って来る!ボウガンを振り回しながら!
「うわああああーーーー!」
話の通じる相手じゃない、
分かって貰える状態じゃない!
盗んだと思われてる!!
殴られたクックと自分のイメージが重なる!
急いで10番へ戻り、どうしようキャンプに
逃げようか、それとも猫族の集落まで行き
族長に説明して貰って…
多分さっきのブチ模様が砂漠のメラルーだ、
追ってきたのか?誤解は解けるか?
「まぁてえぇーーーーーー!」
武器防具を装備したハンターよりは、
走るだけなら負けはしない、
集落に向かって走り隣の11番、集落の入り口、
小さな滝と水場がある狭いエリアで
ほとんど通路のような形、
入った瞬間後悔する、
こちらは集落で行き止まり!さらに!
ブルファンゴ!こちらに気付いて威嚇!
先程までは居なかったのに、
狭い場所では逃げ場が無い。
どうする!前に猪、
後ろに話の通じないハンター!
考える暇は無い、小さな滝を登り僅かな
段差の上で身を縮める。
… 一瞬遅れて
「まぁてえぇ!」
の声を上げながら走り込んで来る!!
ブルファンゴは既に走って来る!!
「うらぁぁー!!」
「ゴガン!!!」
ブルファンゴは横倒しになりもがく。
何あれ?ナニアレ?あのヘヴィボウガン
何で出来てんの?
そのまま集落に走り込んで行く、遠くで猫族の
悲鳴が聞こえる、女ハンターの叫びも。
なんにゃ!なんにゃ!誰にゃああああ!
どこいった!!!隠すなコラアアア!!!
心の中で猫族に謝りながら暫く待つ、
ブルファンゴは立ち上がりヨロヨロと
10番へ逃げていく。
……静かになったな。
そーっと集落へ入っていくと、
女ハンターが気を失った族長の襟首を掴んで
持ち上げている。
髭と毛並みが荒れて、まさに嵐の直後の様な
変わり果てた集落、倒れてる猫たち、
その中央で。
「あの…あの……うぐ」
「あ?」(濁点を付けてお読み下さい)
族長を掴んだまま振り返る、目がギラリと光る。
「あ…あの…その…」
捻れた角を両手で差し出し頭を下げる、
うまく喋れない。
「あんたがやらせたの!?」
「へ?」
思わず間抜けな声が出る。何の事?
頭の装備を外し顔があらわになる。
デスギア装備から現れたのは真っ白い肌、
茶色の髪をキリンテールにして、
やや勝ち気な鋭い、しかし涼しげな目、
パティとは全く違うタイプ、
大人の凄い美人だった。
悠然と歩きこっちへ来る、殴られるかも
しれないと思うと体がこわばる。
三歩程の距離で止まる、何を言われるか
考えただけでイヤになる、近い近い怖い、
目なんて見れない。
クロフより僅かに高い身長から
さっきとは別人のような口調で、
「何か知ってる?変じゃない?」
優しく女は話しかける、
しかし青年に余裕は無い。
オドオド そわそわ ビクビク
視線が定まらない、緊張で喋れない。
口の中が乾く、話さなきゃ 説明しなきゃ。
「あう…あの…」
「ハッキリ喋れ」
うずくまりたい、耳を塞ぎたい。