生きる事は悩むこと   作:天海つづみ

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ミナガルデ

 

 

 夕焼けの段々畑、気を付けながら登る

 若者が一人、

 

 作物は少ない…畑自体は見事なのに

 

 右目に眼帯、背は低いが

 ガッチリした体型、歳は16

 

 登り終えるとその体を伸ばす

 

 「荒れてんなァ……」

 

 目の前には小さな荒れた村、

 その中の一軒を訪ねる

 

 

 

 

 「ヒッ!」

 そんな声を上げながら後ずさる家主、

 しかし訪ね人の名を告げると

 別の家へ案内される

 

 

 

 

 「よぉ!中兄ィ!」

 隻眼の若者は声を上げる

 

 「中兄ィはやめろガストン!

 …良く来たな!」

 村人が集まっていた中に小さい竜人、

 後に四大英雄と呼ばれるミナガルデ

 「東と北はどうだ?!」

 

 「小兄ィがハンターの寄り合い

 みたいの作ってな、

 大兄ィも人集めてハンターの訓練

 やってるらしいぜ?」

 

 「ワシもそうしたかったんだがな…」

 

 「…」

 

 「歓迎してやりたい所だがな…」

 力なく首を振る

 

 「…大体分かるぜ…」

 荒れた村、村人の衣類、

 今目の前に出された食事の量と質

 

 苦しいのは誰でも理解できる

 

 「しかし変だな、この辺の村は

 畑は多いし、もっと食い物あっても

 いいはずだろ?」

 

 五人で旅をしていた時は豊かな一帯

 だったはずだが…

 周りの村人を見回すと俯いている

 

 「このあたり一帯に盗賊が出てな」

 

 「兄ィ一人で十分だろ?」

 

 「それがな…」

 

 聞けば頭の良いヤツが二人で率いて

 50人程を動かす

 

 二部隊に別れて別々の村を襲撃、

 しかも竜人の姿を見たら逃げる

 

 「なるほどなァ」

 ガストンは腕を組む

 「こっちの守るべき村は複数、

 兄ィ一人では手が足らねぇか」

 

 「前に三人程を叩き伏せたらな、

 ヤツらは逃げの一手よ」

 苦虫を噛み潰す顔、

 逃げる二兎を追うのは一人では無理

 

 「アジトは?」

 

 「一度それも考えてアジトに行ったらな、

 見張りを常に置いていやがる…

 やはり逃げてな、それ以来アジトに戻る

 際にも斥候を使うようになってな」

 

 「何にしても手が足らねぇな」

 自分達の戦力を理解し、恥も外聞もなく

 逃げる敵

 プライドなど捨てて生き残ることに

 専念している

 

 

 

 

 

 何かを思い付く

 「いや、良いところに来たぞ」

 ミナガルデはニヤリと笑う

 「誰にも見られてないか?」

 

 「あー、そうするか」

 ガストンもニヤリと笑う

 「具体的にはどうするよ?」

 

 「お前の見た目が丁度良かろう」

 

 「その手でいくかぁ」

 

 周囲の村人は顔を見合わせる、

 どんな作戦で戦うんだ?

 

 「私たちは何かやれることは…」

 この家の家主らしき男、

 まだ30半ばといったところ、

 名はケルト

 

 「ケルト、次の襲撃までガストンを

 隠してくれぃ」

 

 

 

 ……………………

 

 

 「今日あたりがいいだろ?」

 ボサボサ頭の大柄な男、斧を担ぐ

 盗賊のカシラ、名をドク

 力でノシ上がった若者 二十歳前後

 

 「この時期なら芋類が良い頃だ」

 もう一人の盗賊のカシラ、

 名をバルト、きちんとした服装で

 盗賊と言うより金持ちの息子の様、

 色白で短い金髪

 頭でノシ上がった少年 15歳

 

 「バルト、いつも通りで良いか?」

 ドクはアジトの洞窟内で斧を素振りする

 

 「そうだな……」

 洞窟の入り口で指を舐めて風を読む

 「少し寒い時期に入りそうだ、今日は

 多目に頂こう」

 

 「カシラぁ、配置はどうします?」

 いかにも荒くれの部下達

 

 「ドクは西の、俺は東の村へ行く」

 バルトは指を指す

 

 「竜人が出たらいつも通り標的を

 変えるんだな?」

 ドクは腕組みして聞く

 

 「あの化け物はシャレにならねぇ…」

 部下の一人が苦々しい顔で

 

 「ヤツは一人、こっちは複数、正面から

 ぶつからなければ良いだけだよ」

 バルトは不敵に笑う

 

 一人の見張りを置いて出発する2つの

 盗賊部隊

 

 

 

 

 

 

 

 村人が知らせに入る

 「やっと動いたか!」

 立ち上がるガストン、目がキラキラする

 

 「今日で終わらせてやる」

 ミナガルデ

 

 「あの、大丈夫なんですか?」

 後ろにケルトと数人が待機している、

 皆不安な顔

 

 「任せとけ、逃げられなくすりゃ

 敵じゃねぇさ!」

 アイアンインパクトを撫でるガストン

 

 

 

 

 

 西の村

 

 「お前ら!程々にな!バルトの言う通り

 にやれ!」

 ドクが指示する

 

 「カシラぁ、あんなガキの言う通りに…」

 「そうだぜ?あんたは全員と力比べ

 して勝ったんだ、不満はねぇが…」

 「あんなガキに従うのはな……」

 「よそ者だしよ」

 部下は不満そうだが

 

 「全部奪えば次に餓えるのは俺達だ、

 誰も殺すな」

 「それを教えてくれたのはバルトだ、

 力だけじゃダメなんだ」

 

 ドクは村の柵を力一杯吹き飛ばす、

 決して家は壊さない

 

 「芋を全部出せ!隠すなよ!」

 

 「言う通りにすれば殺しはしねぇ!」

 

 

 

 

 東の村

 

 「俺達だってアンタらに死なれちゃ

 困るんだ、なぁに、全部とは言わない、

 お互いに困らない程度で良いさ」

 バルトは村の代表と話す

 

 奥から籠に入った芋を持って来る村人

 

 部下達は感心する

 「さすがカシラ、力使わずに…」

 

 素直に出された量を見ると

 「ふざけるな!」

 椅子を蹴飛ばす、

 派手な音をたてて粗末な壁にぶつかる

 「たったこれだけのハズあるか!!」

 

 部下も村人もビクッとする

 

 「素直に出せば今なら許すぜ?」

 ニヤリと笑う

 

 

 

 

 帰り道

 「奥に隠してあるの、よく見抜いたなぁ」

 部下は笑いながら

 

 「いや、カマ掛けただけ」

 少年も笑う

 

 「そうなのかよ!!」

 部下達は驚く

 

 「俺の見た目はどう見ても強そうに

 見えないからな、相手に嘗められる」

 

 金髪色白の少年が山賊に…

 

 …悪ふざけにしか見えない

 

 

 

 「カシラ、アンタのお陰で俺達は

 安心して仕事できるぜ」

 

 「ドクよりアンタの方が上に立つべきだ」

 

 少年は首を振る

 「頭だけじゃダメさ、

 なによりまだ子供だしね」

 

 「「「自分で言うかよぉ!!!」」」

 大爆笑

 

 

 

 

 

 

 

 その頃 アジト近くの岩場

 盗賊の見張りの所にガストンが入る

 

 「何だぁテメェは?」

 ナイフを突き出す中年

 

 「おいおい、まってくれよ、盗賊って

 アンタらか?」

 ガストンはニコニコ両手をあげる

 

 「俺らを退治しに来た…

 って訳じゃあねぇようだな…」

 見張りはナイフを下げる、

 退治なら竜人や大勢の村人が来る

 

 同じ荒くれの空気を持つ男を見定める

 

 右目に眼帯、角刈り、傷痕だらけの体、

 農夫に見えない、

 村人が怖がったのは見た目で

 盗賊の仲間に見えたからだ

 

 「俺は真面目に働くってのが苦手でな、

 アンタらの仲間に入れて欲しいんだ」

 ガストンは出来るだけ穏やかに言う

 

 「カシラ達が戻るまではアジトに

 行けねぇ、ここで待つぜ」

 

 「おう、わかったぜ」

 ガストンはゴロリと横になる

 (この地形…)

 

 

 

 

 昼に盗賊達は見張りと合流する、

 岩で囲まれた場所

 

 「そいつは何だ!」

 ドクは斧を向ける

 

 「カシラ、仲間に入りてぇってよ」

 中年は親指で後ろのガストンを

 指差す

 

 「ふーん…」

 バルトは値踏みする、知らない顔だし

 どう見ても堅気ではない…

 危険は無いようだが…

 (村の仲間ではなさそうだ…

 でも雰囲気がただ者ではないな…

 仲間にする場合危険なのは

 ドクより強くて、一味のバランスが

 崩壊すること…)

 

 「何だよ?気に入らねぇか?」

 ガストンは困った顔をしてみせる

 「行く宛がねぇんだよ」

 

 「よし…わかった」

 バルトが場を動かす

 「ドクと軽く勝負してみろ」

 (もしもドクより強ければ仲間にしない、

 ドクの立場は揺らぐが俺が

 支えてやれば良い)

 「ドク、良いか?」

 

 「武器は使っていいのか?」

 ガストンがハンマーを構えるが

 

 「どっちでも良いが…」

 ドクも値踏みする、

 まだ若い、そして明らかに重すぎる武器

 

 調子に乗って無頼を気取った

 無謀な若者(要するに中二病)に

 見えるガストン

 「振り回せるのか?」

 

 

 

 

 

 ………………

 

 

 「でえっ!!」

 地面を転がるガストン

 

 「どうした若造!!」

 「情けねぇぞ!!」

 二人を囲み歓声が上がる

 

 バルトは安心する、

 ドクの相手ではなかった

 

 

 「自分の力を越える武器は足を

 引っ張り弱くなる、自分の弱さを

 認めることだ」

 ドクはガストンのハンマーを斧の背で

 受け流す、

 そのたびにガストンは転がされ

 泥だらけになっていく

 

 「もっ、もう勘弁してくれ!」

 ゼイゼイと息を切らして地面に転がる

 ガストン

 

 「振りが遅すぎる!!」

 

 バルトが前に出る

 「もう良いだろう!」

 その一言で勝負は終わった

 

 

 

 

 

 アジトの洞窟に入る

 

 (やっぱり森と丘じゃねぇか!

 兄ィの言った通りだ!!)

 緑が全て枯れて岩肌が剥き出しだが

 間違いない、勝負した場所は

 キャンプだ

 

 ガストンが考えているとドクが聞く

 「どうしてそんな武器を持つ?」

 180を大きく越える体が見下ろす様に

 

 「あぁ、暴力に慣れてないヤツには

 ハッタリが効くだろ!」

 構えて見せる

 

 「なるほどな、その姿は強そうに見える」

 バルトは納得する、

 自分に欠けている要素

 

 「それよりアンタらは何なんだ?

 ただの盗賊には見えねぇが…」

 ガストンは見回す、女と子供までいる

 

 ドクは酒を飲みながら

 「俺達は元は北の方の出身でな、

 飢饉で逃げて来たんだ、

 俺のオヤジがカシラになって、仕方なく

 盗賊をやるしかなかった」

 

 他の村を受け入れられるほど

 裕福な村は無いだろう

 

 「村から飛び出した俺とは少し違うな、

 ……アンタは毛色が違うよな」

 ガストンはバルトに話を振る

 

 バルトは首を掻きながら

 「俺は領主の所から逃げて来たんだ」

 

 「領主?」

 

 「シュレイド領の貴族だよ、

 親が小作でさ、

 俺もそのままじゃあ小作だろうよ、

 高い税に苦しみながら

 農夫なんてやりたくねぇよ」

 

 「その格好は何なんだ?」

 盗賊らしくない高い服

 

 「貴族みたいだろ?搾取される側から

 搾取する側になったのさ」

 立ち上がり披露してみせる

 

 「バルトは酒や食いもんより

 服だからな」

 「変わってるぜ」

 

 「まるで金持ちのボンボンだぜ?」

 ガストンは呆れるように

 

 洞窟内に爆笑が響く

 

 

 

 

 

 

 夕方

 

 「ここに住み続けるのか?」

 ガストンが聞く

 

 「皆行く宛も無いしな、バルトは畑の

 知識もあるし、いずれ村にできれば

 良いが……」

 ドクは本来ならば村長の子供だった

 のかもしれない

 

 「俺は畑仕事は懲り懲りだけどな…

 ガストン、ちょっと来いよ」

 バルトはガストンを連れて

 洞窟の反対側、崖から見下ろす

 

 (アプトノスとモスかよ!!)

 数頭が下生えの草を食んでいる、

 このエリアだけ緑がある

 

 「最悪に備えてな、周りの六つの村が

 飢饉になっても生き残れるようにさ」

 水を撒き草を増やし、食べ残しを

 食わせていることを話す

 

 (畜産までやりやがる、コイツらは

 盗賊で終わらすにはもったいねぇ!)

 

 その時

 

 「カシラぁ竜人だ!!」

 

 (お、日没か、時間だな)

 ガストンは後ろに留まる

 

 洞窟内に緊張が走る

 

 「来たか、男は前へ!!

 女と子供は後ろから下へ降りろ!!」

 ドクの指示が飛ぶ

 

 「ガストン!!初仕事だ…おい!!」

 バルトは叫ぶが

 

 ガストンは女と子供が脱出したあと

 崖の入口に立ちはだかる

 

 「わりぃなァ!!」

 ハンマーを構え笑うガストン

 

 動揺が走る

 裏切ったのか

 アイツ最初から

 

 四番からミナガルデ

 「上手く行ったなぁ」

 笑う

 

 「くそっ!!」

 バルトは考える

 あの竜人には勝てない!

 だがガストンなら簡単だ!!

 問題は崖を降りるスピード勝負!!

 

 「ドク!!ガストンを!!」

 

 「おうよ!!」

 ドクは一番後ろに来る

 「お前とは分かり合える気がしたが…」

 

 「俺もだぜ!!!」

 ニカッと笑う

 

 「俺の力は分かるだろう…が」

 ドクは斧を構え

 

 「残念だ!!」

 刃の方で思い切りガストンの頭へ!!

 

 

 

 

 「ガキィィーーーン!!!!」

 

 

 ドクの間合い、ドクのタイミング、

 全て完璧の一撃は……

 

 

 ガストンの頭をとらえた瞬間火花に

 なった

 

 

 

 

 ドクは立ち尽くす

 

 

 手に雷が落ちたような衝撃と火花

 

 

 震える両手……

 

 

 壁に刺さった斧……

 

 

 全て理解した

 

 

 当たる瞬間にハンマーで斧を叩いた

 

 見えないほどの早さで

 

 

 

 「ブラフか!!」

 バルトが声を上げる

 あのキャンプの勝負

 弱いフリをしていたのか!

 

 

 前門に竜人

 

 後門にガストン

 

 盗賊達に逃げ場は……無い

 

 バルトは考える

 (広さが救いだ、前に出させれば

 左右が開く、二人じゃ全員捕まえ…)

 

 ミナガルデの後ろから、大きなネットを

 持ったケルト達が入ってくる、

 横一例に10人ほどが広がる

 

 (くそっ!どうする!全員助かる方法は!)

 

 

 

 

 しかし

 

 

 

 

 ミナガルデ「ん?」

 

 ガストン「お?」

 

 二人が上を見る

 

 「どうしました?!はやく……」

 ケルト達が急かすが

 

 「今回は見送りだなぁ……」

 ミナガルデは剣を下ろす

 

 「仕方ねぇな……」

 ガストンも構えを解く

 

 全員が固まる

 

 何が…………

 

 

 その時ヒュルヒュルと風を切る音、

 天井の穴に星を遮る大きな影

 

 

 

 「グオオォォーー!!!!」

 

 

 

 リオレウス!!

 

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