生きる事は悩むこと   作:天海つづみ

8 / 57
アプリからコピペすると
相性悪いのか
改行し辛く
ごちゃごちゃです



竜人の罪

 

「私にも…聞く権利?」

パティが遠慮がちに聞く

 

「弟子にしようとするのと私に関係が?」

 

「いや…義務かな アンタが話す?」

アルトが村長に問う。

 

村長は押し黙る。話しづらいようだ。

 

「ハンター以前にクロフは

人として問題を抱えてる。」

「その人としての部分も育てろってか?」

「原因はアンタだろ!」

アルトは捲し立てる。

 

パティが問う、

「クロフがああなった原因が村長?」

 

「んー村の始まりが原因…かな」

アルトは村長を見る。

 

 

 

 

しばらくの沈黙の後、ようやく

「お願いします」

と村長が口を開く

 

「じゃ、アタシの知ってる事と

今日の体験からの推測を」

 

 

遥か遠い竜人族の村に

毎日祈りを捧げる大僧正がいた。

 

ある日噂が流れて来る、四人の英雄の話。

その四人は自分と同じ竜人で、大陸中の

モンスターで困ってる人間たちを

助けていると言う。

 

「四大英雄」パティが呟く。

 

大僧正は疑問に思った。

幼くして役目を受け継ぎ祈る毎日。

 

片や人知れず祈る者、

片や戦い英雄と呼ばれるもの。

自分は祈る事しか出来ないのか?

 

まだ少年のような竜人の大僧正は、

弟に役目を押し付け村を飛び出した。

 

「ヤハハ、ただの子供だね」自嘲する。

 

まだモンスターと戦えない竜人は

どうやって人の役に立とうか考えた。

 

知識は人より高い竜人は辺境へ向かい、

個人、多くても数家族で生活していた

人達を集めて村を作った。

 

「もしかしてこのジャンボ村?

大僧正が村長?」

パティは村長を見る。

 

「アッハ!半分正解」アルトは続ける。

 

飢えで死ぬ人が多かった地域で、

竜人は特に農業を伝えた、

数年で村は蓄えが出来て

人口が増え飢えも無くなった。

 

竜人は喜んだ、人々も。

竜人はいくつも同じように村を作った、

辺境は見違えるほど豊かになった。

竜人は尊敬され持て囃された。

 

「愚かだった」村長は下を向いたまま。

 

しかし竜人は知らなかった、

隔絶された竜人の村には

存在しないものが人にはあった。

 

「竜人になくて人にあるもの?」

 

「………悪意だよ」アルトは俯く。

 

「オイラは世間知らずのバカだった」

 

村には土地という概念が出来た、

柵で囲いまた良い土地を探す。

 

土地には優劣があった、

作物が多い所と少ない所、

モンスターが来る場所。

 

土地の奪い合いが起こった、

武器を持ち争いが続いた。

 

 

「ここからアンタが説明しな、義務だ。」

アルトは冷たく言う。

 

 

「ふう…良くご存知ですね」

村長は天井を見上げる。

 

「ジイチャン達から聞いたよ

あっちこっちに村つくって

喜ぶ若造が居るってさ」

 

 

何年続いたろう。

止めるために話そうとしても

聞いてもらえず泣いたよ何度も。

 

争いの末残り二つまで村が減った、

土地は空いた、

争いは終わりを迎えると思った。

 

甘かった。妬みは恨みに代わり、

貧富の差が面子を生み、

裏切り寝返りを繰り返した人々は…

 

それでもなお戦った、独占欲が出たんだ。

最後の戦いが始まった。

 

でも戦わないで耕す者が僅かにいたんだ。

 

「オイラはその人達を集めてここに来た、

ジャンボ村がで」

 

「端折るな」

 

 

「前置きは終わり、この村はジャングルの中に

 突然出来た筈だ、昔の地図に無いからね」

 

「この村が出来たのは知ってます 、

四歳位かな」

パティが言う。

 

「んー、いいや解ってないんだ」

アルトが優しく言う。

 

突然村が出来るか?

人が全く居ないところに村を作るんだ、

並大抵の事じゃない。

 

初め竜人少年は最初から

人が居る所に村を作った。

 

ジャンボ村は違う。

 

毎日ジャングルを切り開き、獲物を取り、

雨に寒さに脅えて生きなきゃならない。

 

道を作り屋根さえ無いところに

肩を寄せあって生活しなきゃならない。

 

 

「人は目の前の事で手一杯だと

周りが見えなくなる、他人の

小さい子供の面倒なんて特にね」

 

 

「私…」

 

「クロフもね」

 

「オイラもそこまで気が回らなかった、

余裕が無かった」

 

「やっぱりアタシの推測どうりか、

クロフはパティの面倒見てたんだ」

 

「何歳で?アルトが聞く」

 

「ヤ~…、9歳くらい」

 

「まだ親の必要な孤児に

孤児の面倒を押し付けたんだ、

親がいて妹の面倒見るのとは訳が違う」

 

パティが顔を両手で覆う。

 

「親の愛情を受けるべき子供が

親代わりになったんだ」

 

この村は他人の寄せ集め、

しかも戦乱の生き残り、

心は荒んでいた。

 

クロフの面倒を見る人はおらず、

愛情は貰えず、

なのにパティを抱えて途方に暮れた。

 

「ふう、これがアタシの見解」

アルトは溜め息を吐き、

 

「辛くても文句も言えず、愚痴も言わず、

クロフは心を閉ざした、そうじゃない?」

 

「これがアンタがやったことだ、違う?」

ランプ越しに村長を睨む。

 

パティは顔を覆って

俯いたまま、細い肩が震えている。

 

「ヤ、あのぅ」

 

「何?間違ってたら言って」

 

「ヤハハ、概ね正解なんだけど」

 

「続きがあるとか?」

 

「ヤー、捕捉があって…」

村長はパティを見る。

 

パティは俯いたまま。

 

 

「クロフを可哀想って思えるなら、

恩を感じるなら頑張って聞きな」

アルトは優しくパティに言う。

 

村長は語り出す。

 

村が少なくなる度に、多くを殺した者は

英雄視されるようになった

 

村を指揮する立場にあった英雄に

オイラは戦いを止めるよう

何度も足を運んだ

 

その家にクロフはいた、

 

兄弟が多く皆戦士に憧れ、

幼いうちから木の剣で打ち合っていた。

 

クロフは体が弱かった。

兄弟に苛められ父親からは疎まれた。

 

 

パティが堪らず声を漏らす。

 

 

母親も諦めたんだろうね、

クロフは奴隷のように働かされてたよ。

 

だけど転機が訪れる。

 

「戦か」アルトは呟く。

 

最後の戦いが起こり皆死んでしまった。

オイラが行った時、焼け跡で呆然としてたよ…

親兄弟の死体の前で。

 

オイラは連れて行った、生き残りと共に。

 

 

嗚咽…自分を抱き締める

 

 

そしてここに連れて来た、

クロフにとって

再起の場所になるはずだった。

 

 

ガクガク体が震える…爪を立て堪える

 

 

体力もなく働けない子供に居場所は無かった。

 

 

ガチガチと歯が鳴る

 

 

ボロボロの服で

毎日頭を下げながら食べ物を貰い、

役立たず、無駄飯食らいと思われながら、

 

バァン!!!!

 

堪らずパティは走り出そうとする、

テーブルの下で丸くなっていた

白とタマが飛び上がる!

 

アルトは素早くパティを抱き止め、

 

「聞きな!!辛くても!!

アンタは聞かなきゃならない!!」

 

 

 

 

自分より背負った子供に食べさせた。

 

 

 

 

限界だった、パティは声をあげて泣いた。

 

 

 

 

ランプの火が弱い、

獣油が残り少ないのだろう。

 

「だっで……お兄じゃ…いづ…ああうあぁ!」

 

アルトの胸で泣き続ける、

頭を撫でながら思う、

クロフはこうして抱き止めていたのだろう。

 

パティは心の中でずっとクロフに

詫びながら、クロフの前で明るく

振る舞っていたんだろう。

 

続きは明日の方が…村長が薦める。

 

そうだね…撫でながらアルトが答える。

 

パティはしゃくり上げながら

 

お兄じゃんだずけでぇ」

 

アルトは両手で優しくパティの顔を包み

親指で涙を拭う。

 

「本気だな」アルトは冷静に言う。

 

パティはコクンと頷く。

 

 

 

 

 

 

 

自分のせいだった、

元から恵まれてないとはいえ、

更に追い詰めたのは自分だった。

 

 

ハッキリ思い出した、

ボンヤリしていた記憶。

 

暇さえあれば

弱い体で木の実を採ってくれた。

 

川で水遊びしながら体を洗ってくれた。

 

戦場跡で服を探し、

なくて大きな袋を服代わりにした。

 

雨が降れば大きな葉っぱの下で

震える私を抱き締めてくれた。

 

いつも頭を下げながら食べさせてくれた。

 

お腹を空かせて泣く私をいつも笑わせ…

 

 

 

………あぁ。

 

 

決して見捨てなかった、どんなに喚いても。

 

 

決して見捨てなかった、どんなに辛くても。

 

 

決して見捨てなかった、

自分より私を優先した。

 

 

私に愛情を注いでくれた。

 

 

いつも幼い心を満たそうとしていた。

 

 

 

また声をあげて泣いた

 

アルトも目を潤ませて

「アンタは人の心を貰ったんだね」

 

村長も涙を拭う。

 

 

 

 

 

 

落ち着いたのか

「あの…油だじできまずぅ」

 

涙と鼻水でせっかくの美人が台無しの少女は、

立ち上がり

隣の部屋へランプの油を足しに行く。

 

 

 

戻ってくると赤い目を擦りながら

 

「どうじだらいいの?」

 

村長とアルトは顔を見合せ、

まだギリギリのパティに向き直る。

 

続けるの?アルトが問うと

パティは涙を拭い頷く。

 

「夜更かしは美容に悪いんだよ?」

アルトが茶化す、空気を変えたい。

 

ジャンボ村はクロフを置き去りに形が出来た

 

「クロフにいつまでそんな生活させた?」

 

村長は天井を見ながら

「一年と…少しか…」

 

「長いな」

 

村長は頭を抱える。

「さすがにマズイと気が付いて

パティはオイラの小屋へ、

 

クロフは…二人に預けた…」

 

「道具屋さん…」パティが言う。

 

「道具屋は本当は夫婦じゃない…」と村長。

 

「え…」パティが驚く。

 

「衣食住揃って礼儀を思い出し

人心を取り戻したんだね」

とアルト

 

「ヤハハ、貧乏だけどね」

 

そしてクロフが壊れそうなことに

ようやく気付いた。

 

「アタシ子供いないけど

クロフの心の中には…んーなんて言うか」

 

油の足されたランプを見て

 

「心の器が無いっていうか

空白って言うか、空っぽ?」

 

アルトは語る

アタシの考えでは親に認められた時、

小さな器が出来る。

そこに愛情を注ぐと器は大きくなる、

これが自信になる。

 

自信が無いからクロフは

自分を俺とも僕ともいわない。

 

びくっと二人が顔を上げる、

心当たりがある!

 

クロフは器が極端に小さいか…

底が抜けてるか

 

だから何を言っても響かない…

反応しない?

 

「受け止められない?」パティが言う

 

その空っぽの、底の抜けた器でも

必死でパティに愛情を注いだ。

 

三人の頭の中に、

底の抜けた器で水を掬い、

パティの器へ注ぐ

ボロボロの少年が浮かぶ。

 

パティはまた顔を覆う。

 

自信が無いから人と話さない、

話さないから人との距離が解らない。

 

「子供は遊んで、じゃれあって、

人との距離を学ぶよね」

村長は寝ているアイルー達を見る。

 

クロフは多分…

9才で心の成長が止まってる。

  

自分の器さえ出来れば自信が出るかも…

 

自信が出来上がれば、自意識が出来る。

俺、僕が言える。

 

そうすれば人と話が出来る、

 

 

多分二人だけじゃない?少し話が出来るの?

 

パティと村長は顔を見合せ

 

「ヤー、あと道具屋の夫婦…猫族もか」

 

根は凄く優しい奴なんだ、

じゃないとパティを見捨てたはず。

 

とにかく人と話しをさせる、

下らない話でも良い、

そうすればいずれ…

 

アルトはパティに向かい

「笑顔が戻るかも」

 

また声をあげて泣く、ただし今度は別の涙

 

自信なぁ…アタシは

ハンターを通じてしか物を教えられない。

 

「取り敢えずクロフをハンターにしてみる?」

パティに問う。

 

パティは頷く。

 

 

「弟子の依頼、確かに受けた!」

 

「ヤハハ!!ありが」

「アンタじゃない!!!」

食い気味

「パティの依頼だ!」

 

 

泣きっぱなし。

 

 

「もうすぐ夜明けか、村長!!あれあるか?」

 

「ヤハハ、当然」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよー!!おーい!!」

ドンドン叩く音が聞こえる

 

おばさんは……

「ごめんねぇウトウトしちゃって」

 

あぁ起きてた再び微睡む…

 

 

が、店から足音が来る。

 

バサァと仕切りの布を捲り

 

「起きてる?」

 

慌てて起き上がると、

ポンと何かを投げてくる。

 

「え…?」

ハンターナイフと剥ぎ取りナイフ

 

「今日からアンタはハンターだ」

アルトは優しく笑う。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。